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COVID-19パンデミック 2年経過後今の致命率
~2021年9月の感染者数上位30ヵ国について~


池田こみち (環境総合研究所顧問)
 独立系メディア E-wave Tokyo 2021年10月6日
 

図4 上位30ヵ国の累積致命率と直近28日の致命率及びワクチン接種率
注)データ取得時は2021年10月2日午後10時21分 
出典:感染者数と死亡者数についてはJohns Hopkins University Covid-19 Dashboard
ワクチン接種率については、Statistics and Research Coronavirus (COVID-19) Vaccinations, Our World in Data

本文

 2021年10月に入り、Covid-19によるアメリカの死者数が70万人を超えたという報道があり、久しぶりにジョンズ・ホプキンス大学(JHU)のCOVID-19 Dashboard World mapを見てみた。

 アメリカの第二次大戦による死者数が40~50万人とされているので、2020年はじめから次第に拡大しまもなく丸2年を迎えようとする2021年10月、アメリカのCovid-19による累積感染者数は4,362万人余、死者数が累積で70万超にまで達したというのである。

 JHUのデータサイト(Dashboard)では、以前のように時々刻々報告される世界195の国と地域の日々の感染者数、死亡者数の数字ではなく、最新の28日間(4週間)の感染者数の多い順番に示されている。

 表1はその上位30ヵ国について、28日間の感染者数の多い順に死者数、致命率を示し、右側の覧にはその時点までの、累積(Cumulative)の数値を示したものである。さらに、一番右には、参考までに別の資料から2021年10月2日時点の各国のワクチン接種率(1回接種を含む)を示した。

※注)本論における致命率(CFR)について
 2020年5月から11月までの半年間、JHUのCovid-19 データサイト
に掲載されるデータをベースに世界各地の地域毎、経済圏毎、国
毎の致命率を分析し、2020年8月からは日本での感染から死亡ま
での日数(タイムラグ)を考慮した致命率についても分析してきた。
今回は、昨年の分析とは異なり、あくまでも28日間ごとの発表デー
タをもとに、対象期間内の感染者数・死亡者数から致命率を割り出
し、上位30ヵ国について比較したものであり、前提が異なっているこ
とに注意して頂きたい。重症化しやすいとされるデルタ株の蔓延に
伴い、感染から死亡までの日数もより短くなっていることも考えられる

表1 28日間感染者数上位30ヵ国の致命率とワクチン接種率
     2021年10月2日22:21 JHU Covid-19 Dashboard

注)表中CFRの数字の赤色は、世界平均を超えているもの。青色は平均を下回っているもの。 
出典:感染者数、死者数のデータ JHU Covid-19 Dashboard https://coronavirus.jhu.edu/map.htmlから、ワクチン接種率のデータ Statistics and Research Coronavirus (COVID-19) Vaccinations, Our World in Data https://ourworldindata.org/covid-vaccinations?country=JPN から抜粋。

 図1は上記出典のWebサイトから、国を選び、ワクチン接種率を30ヵ国について抜き出したものである。


図1 9月の感染者数上位30ヵ国のワクチン接種状況

 表1の数値をもとに直近28日間(今回の場合2021年9月の数値に該当)の感染者数と致命率を図2に、また、累積の感染者数と致命率を図3に示した。アメリカの感染者数が非常に大きいため、二位イギリス以下の数値が小さく見えるほどである。2021年10月2日夜10時過ぎの世界の感染者数と死亡者数から割り出した致命率は累積では2.0%だが、直近の28日間(9月)では1.7%まで下がっている。

 ほぼ2年近くにわたる累積の感染者数、死亡者数から計算した各国の致命率と2021年9月の感染者数、死亡者数から計算した致命率を比較して、さらにワクチンの接種状況などを加味してみると色々なことが見えてくる。図中の赤線は、世界全体の致命率を示している。


図2 直近28日間の感染者数の多い順に上位30ヵ国の感染者数と致命率


図3 上記30ヵ国のこれまでの累積感染者数と致命率 
 データ取得時はいずれも2021年10月2日夜10時21分時点
出典:感染者数、死亡者数はJHU Covid-19 Dashboard
    致命率はそのデータに基づいて計算 グラフ作成 池田こみち


 図4は、図2の上位30ヵ国について、致命率(累積と28日間)及びワクチン接種率を示したものである。繰り返すが、データ取得時間から直近の28日間といのはほぼ9月の感染状況を示したデータとなる。ワクチン接種率は、2回目+1回目を合わせた接種率となっている。

 致命率を示す棒グラフで青(累積)より赤(直近28日:今回のデータでは9月)が高い国は、依然として感染者数に対して死亡者数が多く致命率が高い状況であることを示している。これをみると、総じて、ワクチン接種率が高いと致命率が低く維持されている傾向が見られるが、例外もあるようだ。


図4 上位30ヵ国の累積致命率と直近28日の致命率及びワクチン接種率
注)データ取得時は2021年10月2日午後10時21分 
出典:感染者数と死亡者数についてはJohns Hopkins University Covid-19 Dashboard
ワクチン接種率については、Statistics and Research Coronavirus (COVID-19) Vaccinations, Our World in Data


 まず、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7か国)諸国がこれら30ヵ国に含まれており、いずれもワクチン接種率が60%超~70%超と高いにも係わらず、依然として感染者数が非常に多いことがわかる。

 しかし、これらの「先進国」の致命率について、9月のデータ(図3)でみると、いずれも低く世界平均を下回っており、感染しても死亡する割合が低下していることをうかがえるが、約2年間の累積データ(図2)では、ドイツとイタリアの二ヵ国は、累積の致命率がそれぞれ2.2%、2.8%と世界の累積致命率2.0%を上回っており、初期の爆発的な死者数が影響しているものと思われる。

 アメリカは感染者数ではダントツに多いが、累積では1.6%、9月の28日間では1.4%と僅かに低下している。ワクチン接種率では2回接種した人の割合が多く、全体でも68%と高い。死亡者が少ないのはこの高いワクチン接種率が影響しているとも考えられるが、高止まりとなっており接種が進まないことから今後も感染者数は増える可能性がある。

 BRICSのうち中国を除く4ヵ国(ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ)も30ヵ国の中に含まれている。

 これらの国々では、今年6月~7月にかけてピークを迎え、ワクチン接種率は50%程度ではあるが、既に感染爆発を経て自然免疫ができたとも言われているインドの致命率が最も低く、累積CFRが1.3%、9月のCFRが1.0%と低くなっている。ブラジルもインドと同様、今年4月~7月頃にかけて長期間、感染者数、死者数共に高い状況が続いていたが、ワクチン接種率は現時点で70%を超えており、致命率は累積が2.8%、9月が2.5%と僅かに低下傾向を示している。

 ロシアと南アフリカについては、累積致命率より9月の致命率がいずれも高く、ロシアでは2.8%から4.0%へと上昇、南アフリカでは3.0%から4.6%へと上昇している。ロシアはワクチン製造国であり、世界に輸出しているにもかかわらず、国内の接種率が33%と低いこと、南アフリカに至ってはわずか21%の接種率に留まっていることなどが大きく影響しているものと思われる。

 G7、BRICS以外の国々についてはアジア、ヨーロッパ、中南米、中東と各地域に分散しているが、9月の致命率が累積の致命率を目立って上回ったのが、アジアではマレーシア(1.2%⇒2.0%、接種率73%)、インドネシア(3.4%⇒7.1%:接種率34%)、中南米では、メキシコが累積致命率が7.6%と高いが9月には5.9%へと僅かに低下しているが、ワクチン接種率は49%に留まっている。対称的に医療大国と言われる社会主義国キューバは、ワクチン接種率は84%と30ヵ国のなかで最も高く、致命率は0.8%~0.9%に押さえ込まれている。

 世界で最もワクチン接種が進み、接種率は72%にまで達し、既に3回目のブースター接種も始めているイスラエルは、致命率が累積で0.6%と低く維持されていたが、9月には0.4%までさらに低下している。

 日本のワクチン接種率は10月初旬イスラエルと同じ、72%にまで達している。オリンピック開催時期に重なって第5波の感染のピークを迎えたが、致命率は累積で1.0%、9月が0.9%と世界の中では優等生の数字となっている。

 ただ、国内的には東京や大阪などの大都市を中心に医療体制の崩壊で本来死ななくても済んだ感染者が自宅放置のまま亡くなるという悲劇が相次いたことから、本来致命率はもっと低く抑えられたことを思うと日本の危機管理の課題が浮き彫りになったことは間違いない。

 わずか、30ヵ国について概括的にこの間の動きを見てきたが、2年を経過しようとしている今もなお、メキシコのように高い致命率となっている国もあり、世界はまだまだパンデミックとの闘いが続いていることが見て取れる。その背景には国や地域の経済格差や政治体制の違いが人々の感染症との闘いに大きな影響をもたらしていることは間違いない。

 先進国と途上国の間のワクチン接種の不均衡・不公平を解消すべく、WHOは先進国のブースター接種(3回目接種)を控えるように求めているが、イスラエルに続き、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本など先進国では政府が早々とブースター接種を認め既に実施している。

 一方で、ワクチン接種により死亡した人々も多く、副反応に苦しんだ人も多いことから、ワクチン接種率が低くても感染者数、死亡者数を低く維持することが出来ている国や地域の政策をしっかり学び、個人個人がリテラシーを高めてパンデミックとの付き合い方、リスク管理の在り方を身につけていくことも求められている時代であることは間違いない。