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ナチスと戦い命を落とした2700万人のソ連市民
ソ連をヒトラーのドイツと比較する欧米人は
ロシア人の記憶を侮辱している

RT 論評 公開:2021年5月8日
27 million Soviet citizens lost their lives fighting the Nazis,
Westerners comparing USSR to Hitler's Germany insult their memory

 RT 8 May, 2021

池田こみち Komichi Ikeda(環境総合研究所顧問)
独立系メディア E-wave Tokyo 2021年6月10
日 公開


ブルガリア・プロブディフのブナルジクの丘(「解放者の丘」)にあるソ連の解放者兵士の記念碑(アリョーシャ記念碑)。© Sputnik / Alexey Vitvitsky

<筆者紹介>
 ブラッドリー・ブランケンシップ氏は、プラハ在住の米国人ジャーナリスト、コラムニスト、政治評論家。CGTNでシンジケート・コラムを担当しているほか、新華社通信をはじめとする国際的な通信社のフリーランス・レポーターとして活躍しています。

<本文>

 今年も戦勝記念日がやってきて、第二次世界大戦の歴史修正主義が再び動き出した。このように再び話題になるのは、過去をめぐる議論が今日の地政学に深刻な影響を与えるからである。

 第二次世界大戦に関する単純な歴史的の真実を不必要に議論させようとする悪者が、毎年恒例となっているようだ。 西側諸国からロシアに対する緊張が高まると、それに応じて、戦時中のソ連の疑いようのない英雄的行為を否定するために、歴史が修正されたり、歪曲されたりする。 その中には、戦争に勝ったのはソ連ではなくアメリカであり、ソ連はナチス・ドイツと結託していたというものもある。

ソ連は戦争を始めたのではなく、戦争を防ごうとしたのだ

 さらに、アメリカの代弁者であるVictims of Communism Memorial Foundationの学術評議会メンバーであるショーン・マクミキン博士(Dr. Sean McMeekin)の最近の著書のテーマにもなっているように、これらの修正主義者は、実際に戦争を始めたのはドイツではなくソ連であったと考えている。マクミーキンの著書は文字通り『スターリンの戦争』というタイトルで、皮肉にもヒトラーの命日の前日にVoCとオンラインで話している...)。

 これらの歪曲は、共産主義をナチズムと同じくらい、あるいはそれ以上に悪い大量虐殺のイデオロギーであるかのように仕立て上げることで、ソ連、そして現代ロシア、さらには国際的な共産主義運動を否定することを意図している。

 確かにドイツとソ連は1939年に不可侵条約を結んだが、それは同盟関係ではなかった。フランス、イギリス、そしてポーランドも1939年以前にドイツと同様の条約を結んでいたからだ。これは、欧米の軍事的圧力や制裁で孤立していたソ連が、不可避の侵略から身を守るための時間稼ぎを目的としたものだった。

 実際、数百の機密解除された論文を分類した引退したロシア対外情報庁の少将が引用した電報の分析に基づく2008年の報告によると、ソビエト連邦は実際に英国とフランスと同盟を結んで1939年、戦争が始まる前に、ドイツを潰そうとした。しかし、西欧諸国が足を引っ張るので、モスクワはベルリンと協定を結んだ。これを機にソ連は、第一次世界大戦後のポーランド・ソビエト戦争でポーランド人が奪ったベラルーシやウクライナの一部を占領し、現在では「ソ連のポーランド侵攻」として欧米で悪名高い。これは、第二次世界大戦の悲劇はソ連がヒトラーと同じくらい(あるいはそれ以上に!)非難されているという主張の裏付けとして広く使われており、クレムリンの最大の宣伝機関のひとつであるドイツ外務省(これは皮肉)は、昨年の戦勝記念日のプレスリリースでこれを非難しなければならなかった。

 そこでドイツ外務省はこように述べている。「ポーランドへの侵攻によって第二次世界大戦を引き起こしたのはドイツだけであり、ホロコーストという人道に対する罪を犯したのもドイツだけであるということに、何の疑いも持たないようにしなければならない。このことに疑念を抱き、他国に加害者の役割に押し付ける者は、犠牲者を不当に扱い、歴史を自分の目的のために利用し、ヨーロッパを分裂させることになる。」と。

ヒトラーのインスピレーション

 チスとの類似点を描くのであれば、ここにもある。アメリカの弁護士でイェール大学教授のジェームズ・Q・ホイットマンは、2017年に出版した著書「Hitler's American Model」の中で、確かにナチスはアメリカ合衆国から非常に多くのインスピレーションを受けていたことを明らかにした。

 彼らは特にアメリカの人種、市民権、移民法に触発され、彼らのプロパガンダには白人至上主義の模範としてアメリカがしばしば引用されていた。ナチスは東欧人を野蛮人と見なし、東欧を征服するために、アメリカが先住民を大量虐殺した、いわゆる「マニフェスト・デスティニー」を呼び起こしたのである。

注)マニフェスト・デスティニー(英語: Manifest Destiny)
 元々はアメリカ合衆国の西部開拓を正当化する標語であった。
 「明白なる使命」や「明白なる運命」、「明白なる大命」などと訳
 出される。「文明は、古代ギリシア・ローマからイギリスへ移動し、
 そして大西洋を渡ってアメリカ大陸へと移り、さらに西に向かい
 アジア大陸へと地球を一周する」という、いわゆる「文明の西漸
 説」に基づいたアメリカ的文明観である。


 さて、ナチスが米国を揺るぎなく賞賛していたというわけではない。彼らはアメリカを、自由主義的な退廃と衰えない「人種混合」の場であり、いずれは自壊すると考えていた。彼らにとって当時のアメリカは、人口動態の変化によって不可逆的に衰退していくかつての偉大な文明であり、今で言うところの「大いなる代替わり」の陰謀であり、それはアメリカの人気政治評論家の一部と不気味に似ている。

 一方で、著名な学者マイケル・パレンティが名著『黒シャツと赤シャツ』の中で指摘しているように、アメリカをはじめとする欧米の実業家たちが、ソ連に対抗するためにファシストの台頭を支援したことは否定できない事実である。パレンティが書いているように、ヘンリー・フォードとフォード・モーター・カンパニーは戦前・戦中のナチスを支援し、ロックフェラー傘下のチェース銀行はナチスの資金洗浄に協力したのである。

◆米国の影響力の拡大が歴史的認識を変える

 戦時中、数え切れないほどの人々や国が言葉にならないほどの暴力を受けたが、欧米の多くの人々は知らないかもしれないが、ソ連では約2700万人が、(ナチスが)自分たちのレーベンスラウム(生活空間)を拡大するために自分たちを絶滅させようとしたファシストの侵略者の手によって亡くなったことは、繰り返しお伝えしておく価値があると思う。

 これは、ほとんどの人が理解できない文化的記憶であり、残念ながら欧米では第二次世界大戦に関する歴史の議論にはほとんど含まれていない。しかし、これは繰り返す必要がある。さらに、今日の出来事は、ヨーロッパにおけるアメリカの影響力の拡大が、戦争に関する意見の変化と直接相関していることを示唆している。

 ロシアのプーチン大統領が、ソ連をナチスドイツに例えたり、スターリンをヒトラーに例えたりする言論を禁止しようとしているのも不思議ではない。ヨーロッパの多くの国では、ナチスのシンボルマークやホロコースト修正主義者の発言が禁止されており、実際、欧米の一部のアクターから出てくる語り口は、この2つのカテゴリーに当てはまる。それは偽物であり、非常に危険なものだ。

 共産主義者やロシア人でなくても、明らかな歴史的事実を認め、ナチスに近い過激派が推し進めるあからさまな嘘に反論することはできる。アメリカの伝説的な作家、アーネスト・ヘミングウェイの言葉を借りれば、
「自由を愛する者は、赤軍(ソ連軍)に決して返せないほどの負債を負っている」ということになる。