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ロシア・ウクライナ紛争は
欧州に大きな損失をもたらす予兆

GTボイス:環球時報 24 Feb, 2022
GT Voice: Russia-Ukraine conflict f
orebodes heavy loss for Europe

SOURCE / GT VOICE

翻訳:青山貞一(東京都市大学名誉教授)
独立系メディア E-wave Tokyo 2022年2月25日
 

ロシアのエネルギー大手ガスプロムのウェブサイトに掲載された、ドイツ領海でのノルドストリーム2のパイプ敷設作業の様子(写真:新華社)

本文

 ウクライナ情勢が予想以上に早く変化している。ロシアのプーチン大統領は24日、ドンバス地方での「特別軍事作戦」を許可した。

 ウクライナの現場での展開は、欧州に政治的・経済的な影響を広範囲に及ぼすだろう。フランスやドイツなど一部の欧州諸国がいかにEUの政治的独立を目指そうとも、ロシアとウクライナの争いが軍事衝突に発展した後は、米国主導のNATOに従わざるを得なくなる可能性が高いのである。

 また、欧州大陸での紛争は、年初からパンデミックから回復の兆しを見せていた欧州経済にも打撃を与えることは間違いないだろう。ウクライナ紛争が深刻化すれば、回復の足取りもおぼつかない。

 EUの中には、ロシアと長年にわたり経済・貿易面で密接な関係を保ってきた国もあり、米国とその同盟国によるロシアへの厳しい制裁が、エネルギー供給を含む地域のサプライチェーンに衝撃を与えることも考えられる。ロシアは多くの欧州諸国にとって石油や天然ガスの重要な供給国であった。

 そして、この紛争は予期せぬ結果を次々ともたらすだろう。欧州における軍事衝突の直接的な影響の1つは、欧州市場から米国への資本流出で、これは米国で急騰するインフレを抑制するために金利引き上げを検討している連邦準備制度理事会が直面している圧力を部分的に緩和すると予想される。

 一方、米国主導の対ロシア制裁により、多くの欧州諸国は米国から供給される高価なLNGに頼らざるを得なくなる。 もちろん、原油やガスの価格が上昇し続ければ、欧州諸国のインフレはさらに悪化する。

 例えば、ロシアからドイツへのガス供給能力を倍増させるために計画されたガスパイプライン「ノルドストリーム2」プロジェクトがある。ウクライナ紛争により、ドイツがパイプラインの認定を保留すると言い出したため、基本的にガスパイプラインプロジェクトを進めることは不可能だ。Nord Stream 2がなければ、ドイツをはじめとするEU諸国のエネルギーニーズが損なわれる。

 この状況下で利益を得るのは、米国だけかもしれない。Nord Stream 2の稼働によって、欧州市場における米国のLNGのマーケットスペースが狭まることを心配する必要がなくなるだけでなく、ロシアの天然ガスに比べて2〜3割高い価格のLNGで、さらに大きなマーケットシェアを獲得することができるようになるのだ。

 ドイツとフランスが外交交渉を通じてロシアとウクライナの緊張を緩和しようとしたことは否定できない。紛争が決してEUの利益にはならないことを両国はよく知っているからである。

 しかし、米国がNATOをロシアの玄関口まで拡大してロシアを集中的に封じ込め、ロシアが自国の安全を確保しようとしたため、軍事衝突に至った。これ以上の緊張の悪化を避けるために、欧州諸国はロシアの合理的かつ正当な安全保障上の懸念を考慮し、ワシントンに軌道修正を求めるべき時である。