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ウクライナの不幸で利益を
得るワシントン

Washington benefits from Ukraine’s misfortune
GT War in Ukraine -#317

Mar 24, 2022


翻訳:青山貞一(東京都市大学名誉教授)
  独立系メディア E-wave Tokyo 2022年3月25日

危機を搾り取る イラスト: 劉瑞/GT

本文

 3月24日までに、ロシア・ウクライナ紛争は1ヶ月を経過した。平和を愛する世界中の人々は、回避できたはずのこの血なまぐさい紛争が早く終結することを望んでいる。

 しかし、ロシアとウクライナの紛争解決の鍵を握る米国とNATOは、戦争終結に向けて何ら現実的な動きを見せていない。それどころか、いまだに矛盾を激化させ、対立をエスカレートさせ、ロシアとウクライナの交渉に支障をきたしている。

 ジョー・バイデン米大統領は2日、欧州に出発し、NATO首脳会議、G7サミット、欧州理事会に出席する予定だ。報道によると、バイデン氏は欧州の同盟国と協力してウクライナへの次段階の軍事支援を調整し、ロシアに対する新たな制裁を発表する予定だ。

 紛争発生から1カ月を迎え、バイデンは欧州で集中的な外交攻勢を行ったが、彼の議題には火に油を注ぐようなものはない。

 バイデンの欧州歴訪に触れたジェイク・サリバン米国国家安全保障顧問は、「この戦争は簡単にも急速にも終わらないだろう」として、ウクライナでは今後厳しい日々が続くと述べた。

 これは米国の「判断」というより、ワシントンが慎重に導いた方向性である。ワシントンは戦争が終わらないことを望んでいる。そうすれば、紛争から地政学的価値を得るために、紛争を最大限に利用することができる。つまり、ウクライナの不幸から利益を得ようとしているのである。

 このため、米欧は仲が良いように見えても、実質的な相違は深まっている。米国はロシアとウクライナの交渉を遅らせることに執着しているが、欧州は安全と安定を望んでいる。

 欧州では反戦の声が高まっており、その中にはワシントンのウクライナへの武器供与に対する不支持の声も含まれている。ウクライナにやみくもに武器を送ることは、自分たちが追求する安全保障の目標とは逆の方向に向かっていることに、ますます多くの欧州人が気づいている。

 また、長期にわたる極端な制裁の結果、米国は金持ちになり、欧州はツケを払い、ウクライナは血を流すことになるに違いない。ワシントンはこうした小賢しい考えを隠すことができない。

 また、このようなことから、バイデンは欧州の意思が揺らいでいるときに「安定化」させなければならない。ワシントンがポケットから「大西洋横断友好」「民主同盟」などの小カードを取り出し、世界のVIPクラブへのパスとして友人に配り、幻の「名誉」を利用して高額な「会費」を引き出すことは想像に難くない。

 また、ワシントンは「クラブに入らない」中立国に強い圧力をかけ、一方ではインドを「揺れている」と批判し、他方では中国の平和への「脅威」をセンセーショナルに報道するのである。これは典型的なマフィアの手法ではないだろうか。

 「結び目を解くのは実行者次第 」という諺があるように。ロシア・ウクライナ紛争は米露の対立が激化した結果であり、問題の鍵は米国の手中にある。

 もしワシントンが本当にウクライナ国民の「つらい日々」を続けさせたくないのなら、なぜ欧州と「協調」してウクライナに武器を送り、ロシアを制裁することを選択し、ロシアとの直接対話を拒んだのだろうか。

 答えは明らかだ。米国は真の和平協議を望んでいない。だから、ロシア・ウクライナ紛争の出口がどこにあるか分かっているにもかかわらず、ワシントンは盲路の果てにある「通行禁止」の看板を必死に拭いている、という不条理なシナリオが見えてくるのである。

 ワシントンは、「民主主義」の名の下に覇権主義を推進し、「平和」の名の下に戦争で大儲けするというショーを行うのが得意である。

 しかし、このようなやり方が決して時代遅れにならないとは言い切れない。時間が経てば、人々はいずれそれを見抜くだろう。ロシア・ウクライナ紛争の推移は、ワシントンの温情主義者としての本性を証明するものだろう。