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ポーランド軍はロシアにとって
どのような脅威となるのか
ポーランドは最近、非常に
アグレッシブだ

Какую угрозу несет России
польская армия

文:アレクサンドル・ティモーキン VZ
 War in Ukraine-#914 June 1 2022


ロシア語翻訳・青山貞一(東京都市大学名誉教授)
独立系メディア E-wave Tokyo 2022年6月2日


写真:Artur Widak/Global Look Press


本文

 ロシアのパトルシェフ安全保障会議書記は、「どうやらポーランドは、ウクライナ西部の領土を押さえる行動に出ているようだ」と述べた。

 そして、やはりポーランド軍のウクライナへの出現は、ロシア軍との衝突を招きかねない。ポーランド軍の強さはどの程度なのか、それを倒すために知っておくべきことは何なのか。

 ポーランドが1939年に奪った土地を取り戻すため、ウクライナに軍隊を派遣する計画があるとの報道が続いている。

 特に、ロシア当局、つまり外務省も安全保障理事会も、このことを直接的に表明している。ポーランド人自身は今のところ否定しているが、注目を浴びることなく、すでに一部の部隊に予備役を召集し、さらにアメリカとの演習を口実に、部隊を全面配備して厳戒態勢を敷いているのだ。また、ポーランドはルーマニアに軍を移し、今、演習を行っている。

 プーチン大統領は、ウクライナでロシアに干渉しようとすれば、そうする国々は歴史上一度も直面したことのない結果に直面すると約束している。したがって、もしポーランド人がウクライナに入ろうとすれば、ポーランドとロシアが軍事衝突を起こす危険性がある。

 また、この場合、ポーランド人の不適切な行動を仮定することによっても発生する可能性がある。ポーランドとの軍事衝突の危険性については、どのような点に留意すべきであろうか。


ポーランド軍

 ポーランド軍は、典型的なヨーロッパの「中堅」軍である。彼らは決して小さくはなく、NATO同盟の中では、動員策がなくとも強力なグループの中核となり得る。

 しかし、現時点では、ウクライナ軍の平時の戦力である現役兵12万5000人と予備兵5万人(ウクライナ軍は19万4000人)よりも小規模である。ポーランドは今、30万人への兵力増強に着手しているところだ。

 しかし、数字というのは厄介なものである。2つの例を見てみよう。

 ポーランド軍の兵力は6万2,000人。地上部隊の基幹は第11機甲騎兵師団、第12、16、18機械化師団の4師団で、それぞれ約1万4千人の兵員を擁している。ロシアはポーランドが全く持っていないよりもはるかに多くの軍隊をウクライナに駐留させている。

 しかし、ポーランド軍はロシア軍のような大隊戦術群の連合編成ではなく、明確に師団単位で戦うことを意図している。そして、これは、一般的にはロシアが数的に優位であるが、戦闘の接触場所ではポーランド側になる可能性があることを意味する。

 例えば、同じ第11師団が、NATOでは多かれ少なかれ普通であろう20~25kmの攻撃帯を受け取った場合、その3つの旅団司令部は、旅団の防空部隊にカバーされ、師団の砲兵連隊と師団の対空ミサイル連隊にサポートされた9個大隊と3個砲兵大隊(彼らは砲兵大隊を保有している)を敵に移動させるであろう。

 同時に、ポーランド軍は弾薬を大量に消費する余裕がある。師団の兵站はきめ細かく、各隊に1個ずつ、計6個の車両大隊があるからだ。弾薬や燃料がどんどん出てくる。

 また、ロシアは20kmの範囲にいくつの大隊群を持つことができるのか?詳細は省くが、ドニエプル以遠の唯一の橋頭堡、ミコライフとクリヴィ付近のリグでは、戦線1キロメートル当たりの密度は何倍も低い。つまり、ロシアは数の上では有利だが、まだ実現する必要があるのだ。

 もう一つの例。ポーランドは、空戦可能な戦闘機の数が、ロシアがSu-35だけで持っている数よりも少ない。同時に、Su-35はF-16Cよりも、MiG-29よりも、何倍も戦闘力が高い。ロシアは、技術的な優位性だけでなく、数値的な優位性も持っていることがわかった。しかし、またもや細かい点がある。

 まず、ポーランド軍のウクライナへの投入がNATOのすべてから承認されないとしても、ポーランド機はいかなる場合でもNATOの支援を受けることになる。例えば、アメリカや他のNATOの長距離レーダー探知機(AWACS)は、ポーランドに航空状況の完全な情報を提供する。今、どこに、どの飛行機が飛んでいるのか、戦闘機の大量離陸があるのか、について。早期警戒機A-50を保有するロシアには、そのような能力はない。

 第二の疑問は、アメリカ人がポーランド人に航空攻勢をかけるための訓練をどの程度施すことができたかということだ。欧米の航空は、敵機を破壊し、防空を抑え、地上で活動するというアルゴリズムで動いている。同時に、アメリカの航空戦の「流儀」では、敵の戦闘機に対する作戦も含め、大規模な攻撃には航空を使うことが求められている。

 あるいはもっと単純に、ポーランド人は何十台ものマシンを投入して攻撃してくる。そして問題は、実際、彼らがそのような力を運用する方法を知っているかどうかということだ。もし、そうなったら?

 そうなると、ウクライナで大規模な空爆を行ったことのないロシアは、地上で直面したのと同じことを空でも直面することになるかもしれない。それぞれの戦闘で数的に劣る(空でも技術的に劣る)敵は、状況認識で(NATOのおかげで)優位に立てるので、時には圧倒的に優位に立つことができるだろう。

 つまり、ロシア空軍の司令部は、A-50迎撃機の支援を受けて大軍で行動できるように、その航空部隊の準備態勢をチェックすべきだということだ。このチェックが行われていない以上、ポーランドとの数値的な比率を語ることは意味がない。

 また、その他の要素も考慮する必要がある。このように、ポーランド軍の防空能力を分析すると、その弱さが際立つ。ポーランドの防空能力は、AFU の防空能力とは比較にならないほど劣り、わが国のそれと比較することさえできない。

 しかし、この弱いポーランドの防空システムは、抑圧されていない強力なウクライナの防空システムと一緒に機能することになる。そして、これは大きく変化する

 そんな 「些細なこと」がたくさんある。例えば、ポーランドのヘリコプターMi-24は、我々のMi-28やKa-52より劣っている。しかし、ヘリコプターは地上部隊の一部であり、ポーランドの地上部隊が航空攻撃を要請しても、ヘリコプターが空軍に所属している我が国と比べると、あまり指令が通らない。

 つまり、ポーランドの部隊リストと「紙」の特性では決まらない。インターネットで見れば--すべてが悪い、現実にどうなるかを推測してみれば--いろいろなことが違って見えてくる。しかし、ポーランドに関連する主なリスクは異なる。


砲撃と反砲撃

 ウクライナの戦場で主力を担っているのは、周知の通り砲兵隊である。メディアやTelegramでは、「砲撃戦」という言葉がしきりに出てくる。どういうことなのか?

 実は、ロシアもAFUも、敵を倒すための最大限の仕事を砲兵に割り当てようとしている(AFUの場合は、試みたと言った方が正しい)。シェルを無駄にするのは、人を無駄にするよりもずっと良いことだから、これは正しいことだ。ただし、ここでもニュアンスの違いがある。

 対砲撃戦という言葉がある。砲弾を探知するために特別に設計された移動式地上レーダーステーション(レーダー)を使用する特殊砲兵偵察隊は、敵の砲撃の位置をすぐに特定する。そして、砲兵司令官はドローンなどで敵の射撃兵器の位置を把握し、それに対して砲撃の指示を出す。もちろん、交戦国はこの戦術を熟知しており、数分間陣地から砲撃した後、反撃の砲撃を受けないように最大限のスピードで陣地を離れる。これこそが「砲撃戦」なのだ。

 つまり、技術的にはポーランドの方がウクライナよりはるかに優れた対射能力を有している。そして、ポーランド人の銃の被弾を防ぐ能力は、ロシアとさえ比較にならないほど高い。もちろん、このことは、ポーランド人が本当にこのような戦い方をするように訓練されているのかという疑問を再び呼び起こすことになる。しかし、利用できる戦闘機器や通信・指揮統制システム、NATOの戦法からすれば、アメリカ並みの戦いができるはずだ。そして、アメリカ人は、2003年のイラクでの戦闘の経験から、反対する大砲は数時間で「やっつける」のだそうだ。

 欧米並みの大砲に対抗して、砲撃戦を展開するための資源はすべて持っている。しかし、そのためには組織的な対策が必要であり、今すぐにでも実施する価値がある。


巡航ミサイル

 ※注)巡航ミサイル(英: cruise missile)
  巡航ミサイルは、飛行機(航空機)のように翼と推進力を持ち、
  長距離を自律飛行し目標を攻撃するミサイルである。

  
  
「トマホーク」巡航ミサイル
  Source: WikimediaCommons  パブリック・ドメイン, リンクによる


 ポーランドは米国製巡航ミサイルJASSM-ERで武装している。F-16機から発射される小型で視認性の低い巡航ミサイルである。その特長は、プレスリリースによると航続距離が900kmを超える。はっきり言って、ジトーミルから西に50キロのところ、つまり一般に西ウクライナと呼ばれる地域の東の境界線上にあるポーランドのF16は、モスクワを攻撃できるのだ。

 もちろん、このミサイルは途中で撃ち落とされる可能性もある。一方、S-400といえども、ターゲットは難しい。また、ロシアとウクライナの国境全体に、対空ミサイルシステムをパリンパリンと積み上げることは不可能である。

 ポーランドはこのようなミサイルを何基持っているのか?2017年の初回納入は40台、米国議会は計70台を承認した。マスコミに知られていない機密の配達があったのかどうかは未知数だ。しかし、有事の際には、アメリカは数百、数千のこうしたミサイルを在庫切れでポーランドに渡すことになる。そしてポーランドは、事態が完全に悪化した場合、兵器庫によって標的の選択を制限されることはない。


エスカレートする要因はカリーニングラー


ロシア領カリーニングラードの位置
出典:グーグルマップ

 ロシアがウクライナでポーランド人を事実上排除した場合、ポーランドにはウクライナ戦争を少なくとも全ヨーロッパ戦争に発展させうる切り札、つまりカリーニングラードへの攻撃がある。

 持つのは至難の業だがロシアからカリーニングラードを奪う必要性は、ロシア軍の実戦力が明らかになったウクライナでの作戦開始時からポーランドで議論されていた。

 そして、退役軍人が主導していたとはいえ、こうした機会に事態を打開しようとしたポーランドの関係者は一人もいない。

米国はウクライナに軍事的優位の幻想を与えている

 カリーニングラード飛び地はとても遠い。軍隊やそれなりの規模の部隊の輸送は、船便でしかできず、1日かかる。我が国の港からバルティスクまで水路で約1000km、そのほとんどがフィンランド湾の狭い回廊で、南岸はNATOに占領され、フィンランドが加盟した後は北岸も占領されることになる。

 仮に2個師団がウクライナに行くとして、ポーランドにはカリーニングラード用にあと2個師団と1個空挺旅団、それにウクライナから移せるものと予備役のユニットが残ることになる。ポーランドはカリーニングラードへの兵力移動でロシアを上回り、容易に火力優勢を作り出す。バルティスク海軍基地のわが艦船は、国境を越えずにポーランド領内からポーランドの砲撃で破壊することができる。

 ポーランドはミサイル兵器を搭載した艦船が少ないが、その分、空軍が海上での打撃任務を遂行することができる。また、ポーランドは対艦NSMミサイルを搭載した沿岸ミサイルシステムを持っており、視認性が低く、従来のジャミングの影響を受けにくい。そして、素早く大量に機雷を敷設する能力と、ロシアの機雷を破壊する多数の掃海部隊も持っている。


ポーランドはウクライナではない

 軍隊の数が減れば、このナッツを割るのは難しくなる。そして、ポーランド人は、その不十分さと、わが軍の血を流したいという明らかな願望とは別に、また兵士の勇敢さとは別に、上に挙げた非常に重い切り札を持っている。

 もちろん、彼らは我々のような戦闘経験はなく、現実的にどの程度の準備ができているかは不明である。でも、どんな展開になってもいいように、自分で準備しておくに越したことはない。