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【解説】
ソ連誕生から100年
「ソ連は多大な犠牲と
世界の模範の歴史」

Sputnik日本語  War in Ukraine #2268 30 Dec 2022


独立系メディア E-wave Tokyo 2022年12月31日
2022年12月30日, 23:10 ソ連の国旗 - Sputnik 日本, 1920, 30.12.2022 © Sputnik / Alexander Mokletsov / メディアバンクへ移行

本文

 100年前、1922年12月30日にソビエト社会主義共和国連邦が誕生した。

 ソ連は人類史上、最も野心的なプロジェクトと名付けてもいいだろう。

 マルクス・レーニン主義のイデオロギーで武装したソ連は全世界の資本主義システムと欧州大国の帝国主義に挑戦を投げつけた。

 ソ連の歴史には暗い、血塗られた頁もあるが、何といっても全く新しい公正な社会を建築し、高い思想と探求心をもつ新しい人間を生み出すことを目指した国であった。


ソ連は「悪の帝国」だったのか?

 ソ連を最初に「悪の帝国」と呼んだのはロナルド・レーガン米大統領で、1983年のことだった。

 逆説的なのは、ソ連がもし帝国であるなら、逆の意味をもった帝国だっということだ。

 植民地主義と帝国主義のルールに基づいて植民地を強奪し衛星国を搾取する代わりに、中央の巨額の資源が構成共和国の発展や同盟諸国への支援に向けられていた。

 ソ連幹部は実質、現在は独立国である複数の旧ソ連メンバーに国家の基礎を築き、それらの国の歴史を書き、それぞれの文化や言語の発展に貢献してきた。さらにソ連は構成国の工業化と発展加速を促進させ、その成果はソ連構成諸国によって現在も活用されている。


ソ連が世界に貢献したこと

 ソ連の対外政策は多くの場合において国内ロジックに応えたものであった。ソ連は社会主義国家や第三世界の途上国にほぼ無償で、時には自国の発展を損ないながら、全面的な支援を行ってきた。またソ連は世界中の植民地運動に多大な支援を提供してきた。

 ソ連の社会・政治スローガンは、労働者と農民を主要な政治・社会パワーとして推進、進歩的なジェンダー政策なども含め、共産主義普及を恐れていた主要西側諸国にその社会政策を見直しさせ、労働者の権利と自由を大幅に拡大し、「中流階級」を軸にし始めるなどの影響を与えた。


ミハイル・ゴルバチョフ氏 - Sputnik 日本, 1920, 31.08.2022 ミハイル・ゴルバチョフ氏「すべてがうまくいったわけではない」 8月31日, 21:20

ソ連人とはどのような人物か

 約70年もの間、ソ連全土で新しい都市、工場、道路、原子力発電所が建設され、研究者は発見をし、冒険家は山頂や北極を制覇した。

 ソ連は教育と医療を全国民が受けられるようにし、学術研究を重視し、幅広い層に自己実現の環境を整備した。そうして「育てられた」ソ連人は誠実で、創造力に富み、自己犠牲や偉業の精神をもち、常にどこでも一番になることを目指した。

 ソ連人は多くの分野で先駆者となり、世界に多数の発見をもたらした。それはソ連の宇宙開発だけでなく、原子力(世界初の原発が建設されたのはソ連)、医学、生物学、他の科学分野での発見でもある。哲学、歴史、考古学、言語学などの人文系の研究者らも世界の学術界に多大な貢献をした。

最も厳しい戦争におけるソ連の勝利

 大祖国戦争で疲弊した英雄的世代はわずか数年の間で、荒廃した国の経済を立て直し、さらに富を増やすことができた。最も困難な戦争にソ連は勝利した。

 ソ連にとって最も厳しい試練は1941年から1945年の大祖国戦争だった。戦時中、ソ連は欧州全体の軍事・経済力や人口に直面した。

 ナチズムの敗北に決定的な貢献をしたのはソ連だった。ナチスドイツとその側で戦った欧州各国の軍は東方前線で最大8割の人と装備を失った。ソ連の人的・経済的損失は巨大なものであり、ロシア国防省のデータによると、大戦犠牲者の数は2660万人であり、国富の3割も失われた。

 対ドイツ勝利をおさめ、ソ連軍は軍国主義日本の敗北に決定的な貢献を果たした。1ヶ月で関東軍を壊滅させ、中国北東および朝鮮半島北部を解放した。


モスクワの赤の広場で「戦勝記念日」の軍事パレード - Sputnik 日本, 1920, 09.05.2022
モスクワの赤の広場で「戦勝記念日」の軍事パレード
5月9日, 18:04


現在のソ連の評価

 ソ連は存在した約70年間で多くの危機を乗り越えてきた。しかし犠牲者と国民の成功は現在にいたるまで全世界の模範として残っているだろう。ソ連誕生100周年に際してスプートニク通信は北米の研究者に話を聞いた。

 カナダの歴史家で「Rising Tide」基金副会長のマシュー・エレット氏はソ連の「印象的な遺産」について次のように評している。

 「ソ連の出現は世界史に新たな、そして重要な1章を開いた。ファシズム、銀行独裁、貧困に立ち向かうために一丸となった国民は何ができるか、ソ連は最良の形で示した」

 金融アナリストで元ヘッジファンドのチャールズ・オーサー氏は、いかにソ連が「全世界を救ったか」について語った。

 「おそらく、西側で最も過小評価されているソ連の業績は、第二次世界大戦で枢軸国の勝利のためにソ連が払った巨大な、数百万人の犠牲だろう。我々の多くは、特に米国は、この極めて重要な闘いでソ連が被った損失と犠牲が遥かに多いことを認識できないでいる」

 モスクワのアメリカ大学のエドワード・ロザンスキ理事長は、ソ連には統一を維持するチャンスがあったと語る。

 「基本的にソ連システムはまだ一定期間、存在することができたと思う。しかし西側との軍拡競争、経済的非効率などの要因が重なり、何といっても最大は共産主義と自由を共存させようとナイーブな試みをしたミハイル・ゴルバチョフなどの要因であるが、この実験に終止符が打たれてしまった」