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八ッ場ダム工事のその後B
新川原湯温泉駅
青山貞一・池田こみち・鷹取敦
掲載月日:2013年5月6日
 独立系メディア E−wave Tokyo

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 移設される吾妻線の新川原湯温泉駅近くで永年乳業を営んでこられ、一貫してダム建設に反対されてきた豊田牛乳の社長夫妻だが、工場の真ん前に吾妻線の新駅が出来、完全に孤立状態?となっている様は、何とも寂しい限りだった。


吾妻線の新川原湯温泉駅近くの軌道
撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28


吾妻線の新川原湯温泉駅近くにて
撮影:鷹取敦、CASIO EX-H20G 2013.4.28

 下の写真は、上の写真の反対側から撮影した新川原湯温泉駅。右上に豊田牛乳社屋が見える。


移設される吾妻線の新川原湯温泉駅。右上に豊田牛乳社屋が見える
撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28

 下は、2012年8月、東京都大田区の2名の区議会議員と現地視察した際に豊田乳業の豊田社長とお会いした際のコラムである。

●巨大ダムは公費乱費の典型

 一方、JR吾妻線の付け替え工事だが、水没予定の吾妻線川原湯温泉駅の移転先となる新川原湯温泉駅の基礎工事の一部が着手されていた。

 新駅予定地の真ん前に位置する豊田牛乳の社長と、いつものように青山が議論を行った。社長によると吾妻線の付け替え工事は、今後5〜10年後と聞いていると述べていた。

 これが事実だと、今後、八ッ場ダム工事の本体工事が開始されたとしても、吾妻渓谷がダム化するのは5から10年後ということになる。なぜなら、JR吾妻線の新川原湯温泉駅が出来ないことには、仮にダム本体が完成してもせき止めることはできないからである。


豊田牛乳  川原湯温泉駅は、豊田牛乳の真ん前に作られることになっている。
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


豊田牛乳社長との議論 左が社長
撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G


豊田牛乳社長との議論 左から奈須さん、青山、右が社長
撮影:鷹取敦 Digital Camera CASIO EX-H20G

 私や池田は、今まで20回以上、八ッ場ダム工事現場に足を運んでいるが、現地に行くたびに豊田牛乳に行き、社長や奥様と議論してきた。

 今回は残念ながら奥様はいらっしゃらなかったが、夫婦そろって一貫して八ッ場ダム建設や国土交通省の対応に批判的で、忌憚ない意見を伺っている。

出典:2012年8月現地調査時のブログ

 以下は2010年7月に、青山研究室の学生(田中君と荒井君)を連れ八ッ場ダム工事現場に行った後に書いたブログのうち、豊田乳業社長と青山が議論した部分である。

豊田乳業(川原湯温泉)

 
川原湯温泉ではいつものように、豊田乳業の工場で牛乳をいただく。

 豊田乳業の庭で荒井さんが撮った植物(白い花)は、銀梅草 (ぎんばいそう)といって自生しているものは極めて少なくなっているそうだ。近くの林で見つけて移植したとのことであった。


撮影:荒井翔平さん、Canon Digital 一眼

 今回は豊田豊田乳業取締役で昨年お話を伺った奥様のご主人、豊田武夫さんがいらしたので、八ッ場ダム問題について30分以上議論をする。ご主人は吾妻川、白砂川の水質にも関心を持っていた。その昔は、ご自身も水質測定したことがあるという。

 ご主人はざっくばらんに胸のうちをお話してくださった!


豊田武夫さんと議論する青山貞一
撮影:荒井翔平さん、Canon Digital 一眼


豊田武夫さんと議論する青山貞一
撮影:荒井翔平さん、Canon Digital 一眼

 下は豊田乳業の工場の写真だがこの写真の手前に、新たなJR吾妻線の新たな川原湯温泉駅ができることになっている。すでに伐採や土地造成の工事に入っているが、ご主人に聞くと、過去何度となく再来年と聞かされているという。まさに蕎麦屋の出前でないか。今回も再来年と言われたとおっしゃっていた。


豊田乳業の工場  
撮影:荒井翔平さん、Canon Digital 一眼

 ご主人によれば、JR吾妻線は古く構造的にも危ないので、ここまで来たら長野原町内は新たに建造されている軌道を使用した方が良く、新らたな川原湯温泉駅の設置にも賛同しているとのことであった。

 前にも書いたように、豊田乳業の前に新らたに川原湯温泉駅ができたとしても、今後、鎌倉時代に開設された鄙びた従来の川原湯温泉から運動場のような造成地(下の写真参照)に移築される温泉(街)に、果たしてどれだけお客が行くかは分からない。


川原湯温泉の移転先。この写真は2009年9月に撮影したもの。
撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S8 2009.9.18

 鄙びた渓谷の縁にある古い川原湯温泉だからこそ、顧客があるのであって、運動場のようなまっ平らな造成地まで源泉のパイプを敷いて温泉街をつくったら従来の客でさえ、ほとんど行かなくなるのではないかと思える。



 吾妻線の事業主、JR東日本にとって、八ッ場ダム事業は、おそらく何らメリットがないのではないか? おそらく吾妻線の巨大橋梁工事もJR関連企業ではなく、国土交通省の息のかかった土建業者が請け負っているはずである。

 確かに立派でピッカピカの橋梁や軌道それに新川原湯温泉駅はできた。しかし、それらはあくまでも沿線のうち、長野原町部分のみである。


従来の川原湯温泉駅近くを走行するJR吾妻線
撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28


従来の川原湯温泉駅近くを走行するJR吾妻線
撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28


JR吾妻線のトラス型鉄橋。背後にある山頂がおそらく
ダム本体が見れる見晴台となる?
撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28


JR吾妻線のアーチ型橋梁とトラス型橋梁。これらも水没する
撮影:青山貞一、Nikon cool Pix S8 2013.4.28

 水没地域の住民や温泉の取り壊し、移転もかなり進んでいるが、川原湯温泉の移転は、ほとんど進んでいない。おそらくこれは、吾妻線の新川原湯駅及びその前後の軌道の付け替えと連動していることが遅れの原因と思える。

 しかし、源頼朝が開設したとされる鄙びた川原湯温泉は、あの場にあればこそ、日本各地の温泉マニアなどが来訪するのであって、運動場のような造成地まで源泉を引いたからと行って、観光客や湯治客が集まるとは到底思えない。

つづく