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平成25年物議後の

平成26年の「日展」に行く

<応募と入選の実態>


青山貞一
掲載月日:2014年12月4日
 独立系メディア E−wave Tokyo


 朝日新聞のスクープ記事に見る物議は、なかなかである。

 そして、官選芸術の頂点に位置する「日展」なら、スクープの内容は十分ありそうなことである。さらに言えることは、果たしてこの問題は「書」の部門だけの問題なのか、日本画、洋画はじめ他の部門にはこの種の物議は無いのかなど、はてしなく考えてしまう。

 一方、朝日新聞のスクープと言えば、今年(2014年)、朝日は「二つの吉田調書」、すなわち従軍慰安婦問題と福島第一原発から第二原発への東電社員の移動に関連し、国家主義者らから前代未聞の大バッシングを受け、最終的に安倍首相はその家臣等の軍門にくだってしまった。

 私自身、朝日新聞はもともと権威主義、正義感や社会的正義の押しつけ、さらには官僚顔負けの無謬性などが鼻につく新聞社であると常々感じている。とはいえ、上記の「二つの吉田調書」で朝日新聞の最高責任者は簡単に謝って辞めてしまった。果たして安直に謝って辞めたことが、果たして今後の日本のジャーナリズムにとって良かったことなのか? である。私はけっしてそうではないと思っている。 以上余談


撮影:池田こみち  ただし、この写真は2013年のもの


撮影:池田こみち  ただし、この写真も2013年のもの

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撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8

 本題からだいぶ離れてしまったが、以下は今年(2014年)、東京六本木にある国立新美術館の入場券である。下のものは、絵の輪郭をデジタル処理し見やすくしたものである。


日展の入場チケット


青山による日展の入場チケット(デジタル処理後)

 日展は、開催期間中毎日、夕方4時過ぎるとトワイライトチケット言って午後4時から閉館の午後6時までが300円で閲覧できる。実際、午後4時過ぎに入館したところ、大人が300円であった。

入場料

 当日券 トワイライトチケット
(16:00以降販売 の当日券)
 前売券・団体券
一般 1,200円 300円 1,000円
高・大学生 700円 200円 500円


 次は、問題があった翌年の今年の作品の応募状況である。

 以下の表は今年の「日展」への部門別の応募点数、入選点数、うち新入選数の統計である。部門としては、日本画、洋画、彫刻、工芸美術そして昨年問題があった書の5部門である。ちなみに部門を問わず、1万円を払えば応募ができるとある。

 最も応募点数が多いのも「書」であり、入選者数も943と群をぬいている。実際、見てみると、「書」関係が非常に多いと感じた。これはある意味当然である。他の作品に比べ、作品のできは別として、制作時間が圧倒的に日本画、洋画、彫刻、工芸美術の方がかかるからである。

 一方、応募者に対する入選点数の割合を調べて見ると、表の最下段の%となった。

 応募者に対する入選者の割合は、彫刻が一番高く約67%、次が工芸美術で約50%、続いて三番目が日本画で約42%、四番目が洋画で約32%、最も入選/応募点数で倍率が低かったのが応募点数が圧倒的に多い書であり、約10%であった。

 統計的に見ると、ここに朝日新聞がスクープした問題が入り込む余地がでてくるものと推察することができる。日本画や彫刻応募に対する入選作品数の割合が50%程度なのに、書は10%程度しかないからである。

  第1科
日本画
第2科
洋画
第3科
彫刻
第4科
工芸美術
第5科
合計
応募点数 491 1,996 155 796 9,200 12,638
入選点数 205 640 104 396 943 2,288
うち新入選数 28 66 8 24 274 400
応募者に対する
入選者の割合(%)
42 32 67 50 10 18
割合は四捨五入

 ちなみに、応募料は1点10000円とすると、1万円×12638点=1億2638万円、また全国各地で行われる日展の有料入場者(2013年度)は、5万8109人でるから、平均入場料をひとり800円として4648万7200円、合計で1億7千万円超、それに会場で販売していた作品の絵はがき、出版物などが事業収入となる。

 公益法人としての日展の公開されている年度事業報告(下記)には、上記の個別の事業収支の金額は存在していない。一体、審査員一人に幾らの謝金をどういう前提で支払っているのかについてもまったく存在していない。これでは、平成25年に起きた「物議」、批判にまともに応えているとは言えないだろう。

 これらの事業収入がどう適正に使われているかについても重要な課題となるだろう。

 以下は「物議」以降の日展側の対応であるが、あまりにも形式的な対応である。これでは到底再発防止にはならないものと思える。

2014.7.29 日展改革案について(PDFファイル)
2014.7.29 平成26年度役員・会員新人事(PDFファイル)
2014.7.29
改組 新 第1回(平成26年度)日本美術展覧会 開催概要
改組 新 第1回(平成26年度)日本美術展覧会 審査員・出品委嘱者・無鑑査出品者

2014.4.15 記者会見の開催について(PDFファイル)
2014.3.26 第二次第三者委員会報告書の公表について
2014.1.17 第二次第三者委員会の設置について(PDFファイル)
2013.12.19 第二次第三者委員会及び日展の改革を検討する委員会の設置について(PDFファイル)
2013.11.7 10月30日付朝日新聞報道に関する本法人の対応について(続報)(PDFファイル)
2013.10.31 10月30日付朝日新聞報道に関する本法人の対応について(PDFファイル)

 以下は日展の現在の常務理事以上の役員のプロフィール。ただし、公開されているもののみ。出典:Wikipedia

◆寺坂 公雄(てらさか ただお、1933年9月6日 - )は、日本の洋画家、日本藝術院会員。広島県出身。愛媛大学卒。1954年「画室の隅」が光風会展初入選。同年「室内」が日展初入選。1988年から1999年まで山梨大学教授。2001年「デルフォイへの道」で日展文部科学大臣賞。光風会常務理事。2005年「アクロポリスへの道」で日本芸術院賞。同年芸術院会員。2009年日展事務局長。2013年日展理事長。

◆奥田 小由女(おくだ さゆめ、1936年11月26日 - )は、人形作家、日本芸術院会員、文化功労者。大阪府堺市出身。奥田元宋の妻。旧姓・川井小由女。ほどなく広島県に移る。1955年広島県日彰館高等学校卒業後、人形作家を志して上京。1966年光風会展入選、1967年新日展入選、日本現代工芸美術展入選。1972年日展特選、光風会会員となる。1977年杉浦非水記念賞受賞、1979年日展審査員、1983年光風会を退会、現代工芸美術家協会理事。1988年日展評議員、同文部大臣賞受賞。1990年日本芸術院賞受賞、1998年日本芸術院会員、2008年文化功労者。日展常務理事。2014年日展理事長。

◆中山 忠彦(なかやま ただひこ、1935年3月20日 - )は、日本の洋画家、日本芸術院会員。日展理事長。白日会会長。福岡県小倉市(現・北九州市)生まれ。9歳で大分県に疎開、1950年、15歳で県展に入選、中津西高校(現大分県立中津南高等学校)卒業後上京、伊藤清永に入門。アルバイトのかたわら三輪孝主宰の阿佐ヶ谷洋画研究所に学ぶ。1954年日展に入選。1958年白日会会員に推挙される。1965年の結婚以来、良江夫人をモデルにした美人画を描き続け、1996年日本芸術院賞受賞、1998年芸術院会員。2009年より日展理事長。『中山忠彦画集』(ビジョン企画出版社、2006)がある。

◆能島 征二(のうじま せいじ、1941年12月5日 - )は、東京都台東区浅草出身の彫刻家である。日本芸術院会員。社団法人日展常務理事。社団法人日本彫刻会常務理事。茨城県美術展覧会会長。1945年に母親の郷里である茨城県笠間市に疎開、中学時代には笠間焼の粘土を用いて塑像を作り始める。彫刻家の小森邦夫に師事、高校在学中に県展に入選するなど早くから才能を発揮し、感性豊かで格調高い人体ブロンズ像を多く制作している。茨城県水戸市の公園等には、能島の作成した水戸黄門像や徳川慶喜像などがある。


つづく