■岡田外務大臣とゲイツ米国防長官との会談

　10月20日（火曜日）夕刻（17時頃）、岡田大臣は来訪のゲイツ米国防長官と会談したところ、概要以下のとおり。

1．日米同盟（含む再編）

（1）岡田大臣から、鳩山政権の下でも日米同盟の重要性は十分認識しており、同盟関係を今後30年から50年にわたり持続可能なものとするよう、さらに深化させていきたい。目前には具体的問題があるので、日米間でよく協議し、前向きに乗り越えていきたい、また、来年は日米安保条約改定の50周年に当たることから、これに向けて日米同盟を更に深化・発展させていきたい旨述べた。

　これに対しゲイツ長官から、日米同盟は、米国のアジアの安全保障政策の礎であり、日米安保条約改定の50周年を過去の成果を祝うのみならず、将来への協力をうたう年としたい旨述べた。また、米国としては、鳩山政権と協力し、合意された米軍再編を実施していきたい旨述べた。

（2）在日米軍再編の問題については、ゲイツ長官から、普天間飛行場の移設につき検証を実施しているのは承知している、普天間代替施設の現行案は日米両国で長い時間をかけて様々なオプションを検討した結果作成されたもので、現行案が唯一実現可能である旨述べた上で、日米合意に従って米軍再編を着実に実施することが必要であり、またできる限り早期に結論を出してほしい旨述べた。

　これに対し岡田大臣から、（イ）普天間飛行場の移設について現行案に至った経緯を検証中である、（ロ）現行案に係る日米間の合意の存在は十分に認識している、（ハ）同時に日本国内の政治状況は変化している、たとえば先の総選挙で沖縄の4つの小選挙区すべてで現行案に批判的な議員が当選したなどと説明した上で、現行案に係る検証結果を踏まえ、できるだけ早期に結論を得たいが、困難な政治状況は理解してほしい旨述べた。

2．アフガニスタン・パキスタン支援

（1）ゲイツ長官から、日本による補給支援を高く評価している旨述べた上で、日本がいかなる対アフガニスタン・パキスタン支援を実施するかは日本が決定することであるが、米としては日本の地位にふさわしい力強いアフガニスタン・パキスタン支援の実施を期待している旨述べた。

（2）これに対し、岡田大臣から、補給支援に関しては、臨時国会に法案を提出する状況にはない旨説明した上で、我が国としても両国支援の重要性を十分認識しており、農業支援や職業訓練等、日本の得意分野をいかした支援策を取りまとめている旨発言した。

3．核問題

（1）岡田大臣から、核をめぐる問題については、日米間で緊密に協議していきたい旨述べた上で、現在行っている「密約」にかかる調査については、基本的に日本国内の問題として扱う考えである、先制不使用については、政府部内で検討中であるがこの問題についてもよく協議していきたい旨述べた。

（2）これに対し、ゲイツ長官より、核のない世界をめざすという目標を日米両国は共有するが、抑止の柔軟性は必要である。核の問題については、米としても日本側と今後ともよく協議していきたい旨述べた。



■日米防衛相会談の概要

　１０月２１日、北澤防衛大臣は訪日中のゲイツ米国防長官と会談を行ったところ、会談でのやりとりの概要は次のとおり。

１ 日米同盟全般

　北澤大臣より、日米安保体制を基調とする日米同盟は、アジア太平洋地域の平和と安定の礎であるのみならず、グローバルな課題に対応するための基盤となるものであり、今後とも、同盟の信頼性・実効性を維持・向上させていくために、不断の取組みを続けていかなければならないとの認識を述べた。
　また、北澤大臣より、来年の日米安保条約改定５０周年に向け、具体的な協力アイテムの検討を進めたい旨述べた。
　これに対し、ゲイツ長官より、日米同盟は米国の北東アジア政策の礎であり、この地域において日米両国は複雑な状況に直面しているが、日本が指導力を発揮している災害救援・人道支援の分野における協力など、日米協力を強化するチャンスであること、自分（ゲイツ長官）は２００６年に米政府に戻ったが、日米間の友好関係、同盟関係が、過去に比べて劇的に進展していたことに注目したこと等の発言があった。

２ 地域情勢

　北澤大臣より、地域情勢について、各国の協力関係が緊密化していく機運が高まっているが、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の急激な軍事力の近代化等の厳しい状況があるとの認識を述べ、ゲイツ長官より、日米両国は、この地域において複雑な状況に直面しており、特に、北朝鮮がミサイル発射や核実験を実施するなど、その能力を強化し、より危険かつ予測困難な存在となっている旨述べた。

３ 米軍再編

　北澤大臣より、米軍再編の重要性に言及しつつ、普天間飛行場の移設・返還を早期に実現しなければならないとの認識を述べた。
　また、北澤大臣より、現在進めている、普天間飛行場代替施設（ＦＲＦ）の経緯の検証作業に関し、米側のこれまでの協力について謝意を述べ、引き続き米側の理解と協力を求めた。
　さらに、北澤大臣より、日本国内の政治状況について、先の衆議院選挙で当選した沖縄選出の議員全員がＦＲＦの現行案に反対していること、沖縄県議会においても反対派が多数を占めていることを説明した。
　ゲイツ長官より、新政権が過去の政策を見直す作業を行うことは理解できる、米側としては、日米で合意された「ロードマップ」は唯一の選択肢であると考えている旨述べた。
　また、ゲイツ長官より、ＦＲＦについては、過去にあらゆる代替案を検討していること、ＦＲＦについて進展がなければ、米国議会は在沖海兵隊のグアム移転に係る歳出を認めないこと、ＦＲＦとグアム移転事業の２つの要素は不可分であること、ＦＲＦについて進展がなければ、在沖海兵隊のグアム移転もなく、沖縄における米軍の統合及び土地の返還もないこと等について発言があった。
　これに対し、北澤大臣より、日米の合意の重みは十分理解しており、本件についてあまり時間を浪費すべきではない旨述べた。

４ 在日米軍駐留経費負担（ＨＮＳ）

　北澤大臣より、包括的な見直し作業に関し、国民の理解を得るため、透明性を確保する必要がある旨述べ、米側の協力を求めた。
　ゲイツ長官より、ＨＮＳの重要性に言及しつつ、米側としても協力し、可能な限り効率化を目指したい旨述べた。

５ ミサイル防衛（ＭＤ）

　北澤大臣より、ミサイル防衛の分野は日米の協力が着実に進展しており、今後も確固たる防衛態勢を目指して協力を推進したい旨述べた。
　ゲイツ長官より、ミサイル防衛の分野における協力は日米関係における成功例であり、さらに協力関係を発展させていきたい旨述べた。

６ 海賊対処

　北澤大臣より、米側の協力支援に感謝し、今後とも活動を継続していく旨述べ、ゲイツ長官より、日本の活動への参加を歓迎する旨述べた。

７ 防衛計画の大綱及び４年ごとの国防計画の見直し（ＱＤＲ）

　北澤大臣より、防衛計画の大綱について、今後１年かけてじっくりと検討し、来年度の予算については、政府としての基本的な指針を総理に具申し、これを示してもらうことにより、必要な防衛力整備を進めていく旨述べた。
　ゲイツ長官より、現在、米側で作業を進めているＱＤＲについては、まだ結論は出ていないが、その中で確実なことは、同盟国、友好国との関係が強調されていくということであり、日米同盟は引き続きアジア地域における安全保障政策の中で中心的な役割を担っていくこととなる旨述べた。

８ アフガニスタン・パキスタン

　北澤大臣より、アフガニスタンへの支援については、アフガニスタンの治安状況や各国の支援の状況等を十分に研究しつつ、支援策について政府部内で協議をしていく旨、また、防衛省においても部内検討を指示している旨述べた。
　ゲイツ長官より、これまでの日本の支援を評価していること、インド洋における給油活動を継続するか否かは日本の判断であること、支援のメニューは様々であるが、アフガニスタン国軍及び警察に対する財政的支援はニーズの高い重要な分野の１つであること等について発言があった。

９ 情報保全

　ゲイツ長官より、情報保全における日米の協力については進展がみられるが、さらに協力を進めたい旨述べ、北澤大臣より、本件は重要な問題であり、情報の共有を進めるため一層の強化を図りたい旨述べた。

１０ その他（核を巡る問題）

　ゲイツ長官より、「密約」に関する調査について、意図しない形で悪影響が出ることがないよう留意する必要があり、日本側と緊密に協議していきたい旨述べ、同じ趣旨は、昨日岡田外務大臣に述べたとの説明があり、北澤大臣より、本件については、日米同盟に否定的な影響を与えないようにすべきものと述べた。（了）