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株価大激落と不動産・建設融資
焦げ付きで地銀経営危機!

青山貞一
掲載月日:2008年10月17日


 震源地、米国をはじめとした国際的な公的資金注入策で、急反発した日経平均株価だが、10月16日再度、1089円大暴落した。その結果、日経平均株価の終値は8458円45銭となった。東証下落率は11.41%となり、 「スターリン暴落」抜く、史上ワースト2位の株価大暴落である。

16日の東京株式市場、暴落1089円安−再び9000円割れ

日刊工業新聞(掲載日 2008年10月17日)

 16日の東京株式市場は米国やアジアの株安などを嫌気して急反落し、日経平均の下落率は11・4%と87年10月20日に次ぐ戦後2番目の大きさ。終値は前日比1089円02銭安の8458円45銭と3営業日ぶりに9000円台を割り込んだ。東証株価指数(TOPIX)は同90・99ポイント安の864・52。(17面に関連記事)

 主要国の金融安定化策を受け15日まで2日続伸した東京市場だが、実体経済の悪化懸念などから前日のニューヨーク株式市場が急落。東京も米国の株安を受けて主力株を中心に売り込まれる全面安の展開となった。米国の景気後退をはじめとした経済の先行き不透明感が強まっていることが、株価の下押し要因となっている。

 ところで、これら世界同時株安が深刻化するなか、G7では比較的公的資金の銀行への注入が不要と思われてきた日本だが、国会で予防的に公的資金を地方銀行などに注入できる「金融機能強化法」の復活を麻生首相と中川財務大臣が粋がってぶち上げた。

 しかし、これら首相と財務大臣の発言が、逆に「日本の銀行はそんなに苦しいのか」と市場関係者に不安を与える結果となってしまった。

 日刊ゲンダイの10月17日号では、「中川発言で高まる不安、公的資金を注入しないと危ない銀行はどこか」という記事を掲載している。

 それによれば、「
実際、銀行の現状を洗ってみると、地銀を中心にイエローカード状況といえる。特に、不動産や建設向け融資が焦げ付いた29行がこの不況の直撃を受け、公的注入しないと危ない状況だ。

 上場している地方銀行87行のうち3分の1にあたる31行が、2008年9月決算で業績を下方修正し、12行が最終赤字に転落した。銀行経営にイエローカードが出た状況といえるだろう
」とある。

 下の表は、不動産、建設向けの貸出比率が高い主な地方銀行リストである。



 日刊ゲンダイの記事では、「データは銀行が9月中間期決算を発表していないため、いずれも2008年3月時点のもので、貸出比率が高いから”危ない銀行”と決めつけることはもちろんできない。
 
 しかし4月以降、倒産の増加で不動産、建設向けの不良債権処理コストが膨らんでいるのは明らか」。

 ちなみに上のリストには含まれていないが横浜銀行は、2008年3月時点で不動産、建設向けの貸出比率が17%であったが、不動産、建設向けの不良債権処理コストが予想の3倍以上、すなわち50%を超えており20093月期決算を大幅に下方修正に追い込まれている。
 
 しかも9月末までの処理コストの約70%が不動産・建設事業者向けである。

 ......

 ところで、民間調査大手の東京商工リサーチによれば、不動産・建設向けの不良債権の処理コストは一般に、大手銀行で60%、地方銀行では80%に膨らんでいるとされれ、2008年4−9月期は前年同月比で2倍増になると指摘されている」としている。

 体力が大手銀行に比べて弱い地方銀行にとって、一連の株の激安に加え、不動産・建設向けの不良債権の処理コストの著しい増加は、経営を著しく圧迫することは間違いがない。

 すでに筆者は、青山貞一:不動産・建設会社、連鎖破綻の大予兆!を記したが、その余波が地銀を直撃していると言えるだろう。

 麻生首相と中川財務大臣が「金融機能強化法」を復活させる旨を発言したことで、市場関係者の間で地銀が危なく、そこに公的資金を駐中するためか、という憶測を呼んだのは不思議ではない。

 もっぱら、これは憶測ではなく事実であろう。
 
 野村証券金融経済研究所は、「国内87銀行(大手、地銀)の不良債権コストは2008年4−6月期で前年同期比2.3倍の約1520億円にのぼり、地銀の経営状況はきわめて悪化している」という由々しき状況に陥っているのは確かだ。