エントランスへはここをクリック   

「崖っぷちの世界」
金融資本主義終焉の
はじまり(3)
青山貞一
掲載月日:2008年10月10日


欧米への影響

 ところで震源地、火元の米国では、No1銀行であったバンク・オブ・アメリカの株価が10月8日26%も下落した。その結果、株価は20ドル割れ直前となったが、今後、世界一の銀行であるバンク・オブ・アメリカの株価は10ドル割れするとアナリスト、ストラテジストが公言している。

 これは英国でも同じである。G8最古で老舗の銀行、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドの株価は8日一日で20%も下落している

 既報のように北極海に近いアイスランドでは政府が非常事態宣言を出した。預金者保護を宣言したものの、そのための資金が銀行になく他国の資金援助を受けるはめになっている。

 今後、銀行間でカネを融通する際の金利が一気に跳ね上がる可能性が高い。また実体経済を担う製造業などの企業への資金貸し出しも厳しくなり、実体経済にも深刻、甚大な影響が出る。

 いや日経平均株価の大暴落に見られるように、世界に冠たる優良企業であるはずのトヨタ、ソニーの株価もドカーンと下落している。これら外需に対応した巨大企業は、同時に起きている円高の影響をもろに受けるから、さもなくとも国内需要が飽和し下り坂となっていることと合わせ、今後、首切り、レイオフ、工場閉鎖などが起きる可能性が高い。

米新車販売、総崩れ ビッグスリーと日本勢、軒並み不振

 9月の米新車販売台数が93年2月以来15年7カ月ぶりに100万台を割り込み、低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発した金融危機が実体経済を直撃していることが鮮明になった。

 米大手3社(ビッグスリー)に比べ落ち込みが小さかった日本勢も軒並み2〜3割減。米国の繁栄の象徴だった自動車市場の不振は、世界経済全体が収縮の過程に入ったことを示している。


毎日新聞 2008年10月2日

 ところで、米国の連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など主要6カ国・地域の中央銀行が10月8日、協調利下げに踏み切ったという情報が伝えられた。中国やアラブ首長国連邦(UAE)も同時に利下げを公表し、9日には韓国、香港、台湾も追随したという。

 これらの情報、とくに中国、アラブ、韓国、香港、台湾が利下げを公表したということは、はサブプライムローン)の焦げ付きに端を発した金融危機が欧米日本だけでなく、中東、アジア諸国に外延的に拡大していることの証左でもある。

 利下げにより企業や家計が資金調達する際の金利が下がり、経済を活性化する要因となるはずだが、果たしてこれにより、世界同時株安を抑制する効果があっただろうか? 答えはノーである。

 周知のように世界的な強調金利下げにもかかわらず、ニューヨークのダウ工業株、東京の日経平均株価はさらに一段とさがってしまった。こうして金融危機を沈静化させる欧米諸国の政策は次第に手詰まりの様相を見せている。


原油・穀物価格への影響

 ましてや、もともと資金繰りが厳しい中小企業、下請け、孫請け企業は、ガソリン・軽油・灯油などの高騰、各種資源価格の高騰を含め、今後倒産に追いやられるだろう。

 これら原油高騰による影響も、もとをたどればサブプライムローン崩壊による株価の下落に伴う、投資先の先物原油への振り替えにあると「独立系メディア」では何度も証拠をあげ解説してきた。

 ごく最近、下の記事にあるように、OPECが「金融危機が深刻化し、世界経済が減速する中、原油価格が下落しているため、減産などの対応策を検討する」という、KYな談話を出した。あれだけ実際の需給と無関係に価格が高騰し、巨万の利益を上げたOPEC諸国が、原油価格が下落しているために減産に入るというのである。

 減産に入った途端、ここ半年のように、ヘッジファンドなどが株価から原油先物に投資することになったら、一バーレル当たり150〜170ドルなど、トンデモないガソリンなどの高騰になりかねない情勢だ。

 OPEC諸国はこの間味わった原油価格高騰をまさに人為的に再現しようとしていることになる。

OPEC、臨時総会を11月開催 減産など検討

 【ロンドン=清水泰雅】

 石油輸出国機構(OPEC)は9日、11月18日にOPEC本部のあるウィーンで臨時総会を開催すると発表した。金融危機が深刻化し、世界経済が減速する中、原油価格が下落しているため、減産などの対応策を検討する。具体的には日量50万―100万バレルの生産枠引き下げの可能性を話し合う見込みだ。(01:31)

日経新聞 2008年10月9日


 さらにこの春から夏にかけて顕著になったように、WTIの先物原油の暴騰だけでなく、小麦、大豆、トウモロコシなどの主要穀物の先物価格が再暴騰する可能性もある。なぜなら、株価の極端な低下でいまだ規制が緩く透明性に乏しいヘッジファンドが先物に運用の矛先を移す可能性が大であるからだ。


金融資本主義でぼろ儲けしてきた者への風当たり

 G7諸国で、さもなくとも悪化している雇用状況が悪化し、失業者が蔓延する可能性は大きい。永年、経済一流、政治三流と言われてきた日本だが、その経済が行き詰まれば、終わりだ。

 原因の発端となったのは米国を中心にG7諸国における極度な金融資本主義は、言い換えれば博打(ばくち)的資本主義である。

 実際に物をつくったり、サービスを提供して稼ぐのではなく、株、証券、債権、先物、FXなどのやり取りでごく一部のひとびとが巨額のカネを稼ぐ世界だ。たとえば米国では、今回の一大金融危機以前には、米国の富の50%をわずか400人に資産家が占めている実体がある(あった)という。

 その中には、マイクロソフト、グーグルなどソフトやデルなどPC,IT系企業の社長らが含まれているが、問題なのは、投資銀行など金融業界の会長、社長らが数多く含まれていることだ。上位10人だけで何と27兆円もの資産があることになる。

 しかもブッシュ政権は徹底してそれら金持ち優遇税制をおこなってきた。


出典:日刊ゲンダイ 2008年10月10日号

 米国政府が考慮中の公的資金の投資銀行などへの安定化策のための注入額は、米国国民一人当たりにすると約25万円、一世帯当たり約65万円となる。

 一方、救済される予定の米国大手企業500社のCEOの平均報酬は、2007年だけでも一人当たり約13億7000万円に上る計算だ。さらに、今回の金融危機の原因を作ったサブプライムローンなどの証券化商品を世界中に売りまくった米国証券大手5社の経営者は過去5年で約3210億円もの報酬を手にしている。

 日刊ゲンダイの記事によれば、米国連邦下院に参考人として呼ばれたリーマンブラザースのfファルドCEOは、公聴会が終わった後、「恥を知れ」とか「カネを返せ」といったヤジを飛ばされたそうだ。当然だろう。


つづく