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<論考>九十九死に一生

頸椎骨折手術Informed Consent全記録

A頸椎(第二頸椎)とその機能について

青山貞一
Teiichi Aoyama

掲載月日:2010年11月11日〜30日
独立系メディア「今日のコラム」
無断転載禁
Table of Contents

◆頸椎とその機能について

 上述したように頸椎は椎骨の一部で、頭を支えるための骨である。ほとんどの哺乳類の頸椎は七つの骨で構成されている。

 脊椎の中でも最も可動性が高く上下左右など様々な方向へ動かすことができる。 第一頸椎(C1)、第二頸椎(C2)は他の五つの骨と異なる形態をしている。

 第一頸椎と第二頸椎の位置は下図の通りである。


第一頸椎(C1)と第二頸椎(C2の位置
出典:Wikimedeia Commons 

 第一頸椎は環椎(Atlas)、第二頸椎は軸椎(Axis)とも呼ばれる。

 第三頸椎(C3)から第七頸椎(C7)までは似た形をしているが下にある椎体ほど大きく、特に第七頸椎は長く大きな棘突起を持ち、体表から容易に観察したり触れることができるため隆椎とも呼ばれる。

 頸椎の中で最も運動が起こりやすいのは第一頸椎と第二頸椎の間であり、これを環軸関節と呼んでいる。

 下は7つある頸椎の相対的な位置を示している。

 第二頸椎はAである。

 第一、第二頸椎は、頭を上下、左右に回転させるためのターンテーブルの機能を持っている。人間の頭の回転角、仰角は第一、第二頸椎と密接に関連している。
 

7つの頸椎  側面図
出典:http://c-koritsu.com/blog/?p=3328


それぞれの位置 背面図
出典:http://www.orihime.ne.jp/~one-/tekious.htm


出典:http://hernia-portal.net/helnia/helnia_06.shtml

 第一頸椎は鉛直面内での頭を回転させる機能を、第二頸椎は頭を水平面内で左右に動かす機能を司っている。下に掲載したコンピュータグラフィックスは、英国のエジンバラ大学が動画で制作し、世界中どこからでも、また誰でもが見れる。もとの動画では、第一頸椎、第二頸椎の動きがシミュレーションされていて、非常に分かりやすい。

 下は第一頸椎。頭の上下の回転をつかさどる。


出典:http://video.about.com/backandneck/Cervical-Spine-Anatomy.htm

 下は第二頸椎。頭を左右の回転をつかさどる。


出典:http://video.about.com/backandneck/Cervical-Spine-Anatomy.htm

 下は動画による第一頸椎、第二頸椎の機能の解説である。

 いずれも英国など海外で作成された動画だが、第一頸椎、第二頸椎の機能、役割がよく分かる。日本の医学や医療でもこの種の動画をつくり、Informed Consentのときに患者や家族に説明すべきだと思う。とくに頸椎は構造、機能が複雑であり、いくら医師が口で説明してくれても理解しずらいからである。

 医師だけが理解していても、患者や家族が理解できなければInformed Consentなどできない。日本では模型をもとに説明することが多いようだが、この模型について調べたらひとつ数万円で販売している

 私を診断し慈恵医科大付属病院の医師も模型をもとに説明してくれたが、わかりにくい。

 欧米のように3次元の立体動画として、You Tubeなどに
公開してくれれば、誰でもがすぐに理解することができる。以下に頸椎の実例を示す。


出典:http://video.about.com/backandneck/Cervical-Spine-Anatomy.htm


Source:Low Back Pain: Herniated Disc Surgery

◆第二頸椎と脊髄・神経系との関係

 通常、今回私が経験した第二頸椎を骨折し、陥没させるような大事故では、下図にあるように頸椎のごくすぐ近くを通る脊髄や末梢神経系を破断したり、破断しなくとも損傷するそうだ。

 2人の専門医師は、それぞれ、もし破断すればその場で「頓死」すると言われた。破断により呼吸機能が停止するからである。またもし死なない場合には大部分が「下半身不随」となると言われた。

 その意味からすると、私は九死に一生を得ただけでえなく、九十九死に一生を得たことになる(これが私が病床で書いた論考のタイトルが意味することろである)。

 このように人の脳の命令を伝える神経系は中枢神経系として大脳、小脳から脳幹、頸椎、脊髄を経由し、神経が内臓、腰、足、指などに末梢神経系に達している。7つの頸椎は脳と首より下の内臓を結ぶ上で一番重要、大切な骨であることが分かった。


脳、脊髄と頸椎の位置関係
出典:http://square.umin.ac.jp/jsss-hp/intro/08.htm

 また脳神経系の模型を見ると、頸椎周辺には下図で分かるように、脊髄、神経組織、機能だけでなく、動脈、静脈など血液のハイウエイ(赤く見える部分)が上下に走っている。もし、階段からの落下で、それら動脈、静脈にすこし損傷があれば、大出血で命が危なくなる。幸い、私の現場での事故観察、診断では出血はなかった。


脳と頸椎の位置関係
出典:http://www.towatech.net/productdetail/10006798.html

 下は頸椎から水平方向に伸びる抹消神経系(黄色)である。一番上がC1,一番下がC7である。もしC2、すなわち第二頸椎近くが折れ、脊髄や末梢神経系が破断したり、損傷を受けると、図中黄色く左右に伸びている先の内臓器官の制御が不可能となるわけだ。


出典:http://video.about.com/backandneck/Cervical-Spine-Anatomy.htm


出典:http://video.about.com/backandneck/Cervical-Spine-Anatomy.htm

 下は断面図、脳から脊髄を通り腰、足、手はじめ内臓各所に神経系が縦断するが、頸椎はその中心部を形成していることが分かる。通常、第二頸椎が折れ、陥没するような場合には、脊髄や神経根に大きなダメージが加わることがよく分かる。


同断面
出典:http://square.umin.ac.jp/jsss-hp/intro/08.htm


頸椎断面図 非常に複雑な形をしている
出典

 下は脊髄と頸椎との位置関係である。頸椎の真ん中を脊髄が上下に走っている。赤いパイプは動静脈。脊髄から出ている白い糸状物は後頭部の末梢神経などに繋がっている。従って第二頸椎が骨折、陥没するような大事故では、脊髄や神経系が破壊される可能性が大きいことが下図からよく分かる。


脊髄と頸椎との位置関係。
出典:http://www.towatech.net/productdetail/10007061.html

つづく