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情報番組の呆れた実態

テレ朝の八ッ場ダム報道


青山貞一

初出:独立系メディア
掲載月日:2009年11月7日
無断転載禁


 今週月曜日、テレビ朝日のスーパーモーニングで八ッ場ダムの工事現場でもある群馬県長野原町の吾妻渓谷から「紅葉」状況のリポートがあった。

 昨年この時期より少し前、同じテレビ朝日が吾妻渓谷の紅葉リポートをしたが、私達はその前日から現地に出かけていた。

 何と現地ではまったく紅葉がないことを確認しており、テレ朝が何ら現地に行くことなく、インチキなリポートをしていることを本独立系メディアで詳細に書いた。

◆青山貞一:上州高原の晩秋短訪 H吾妻渓谷 2008.11.6

 昨年のテレビ朝日報道は、おそらくその一年前、すなわち一昨年のデータをもとに現地に行かず、勝手に「今週は紅葉」などとスーパーモーニング(以下、スパモニと略)でリポートしていたのだろう。

 テレ朝の紅葉報道の翌日、現地では多くの人たちがそのリポートを鵜呑みにし吾妻渓谷に駆けつけ、がっかりしていたものだ。

 冒頭に書いた今週月曜日のテレ朝、スパモニの吾妻渓谷からの紅葉情報は、これだけ八ッ場ダム報道があった後でもあり、さすがに真っ赤に色づく紅葉をテレビカメラが映し出し、実際に現地にリポータが行きライブで報道していた。

 さらに八ッ場ダムの本体ができる場所近くまでテレビカメラを近づけ、ここにダムが出来ますなど、それなりの現地報道をしていた。

 .....

 問題はこれからだ。

 月曜日のスパモ二では、その後、メインキャスターの赤江氏が吾妻渓谷のモミジ情報を受け、スタジオにいるパネリスト全員に「八ッ場ダムの現場に行ったことがある方」と振ったところ、赤江氏はもとより鳥越氏、吉永氏、松尾氏ら全員誰も現地に行っていないことが分かった。

 言うまでもなく、民主党が308議席をとった今年の8月30日以降、今までまったくと言っていいほど、何も八ッ場ダム事業についてまともな取材、報道をしてこなかったテレビ、新聞各社は、八ッ場ダム問題で一斉に連日、連夜民主党や前原大臣をバッシングしてきた。

 とくにテレビの情報番組では、キャスターやパネリストが連日、したり顔で偉そうに八ッ場ダム問題を論じていたのだが、少なくともテレ朝のスパモニでは、上述のように赤江キャスター、鳥越パネリストなど中心にいるキャスターが2ヶ月以上経つのに、一度も現地に行っていないことが判明したのである。

 従来からスパモニに代表される情報番組では、およそ報道とはほど遠い、現地にも行かず、取材もせず、タレント紛いのキャスターやパネリストが勝手なことをしたり顔で論評してきたことになる。安直な情報番組は、多くの識者から笑止千万、噴飯ものと批判されている、。

 今回分かった上述の事実は、いかにこの種の番組が情報操作による世論誘導を行ってきたかを如術に示すものかを露呈したと言える。とくにスパモニで気になるのは、鳥越氏である。鳥越氏は、他のインチキ評論家と異なり、過去、それなりの現場主義で足を使い、現場取材し、新聞、週刊誌で活躍した人物である。

 その鳥越氏の凋落ぶりは著しい。鳥越氏は自身のガン告知などで同情を買ってきたが、その後のジャーナリストとしての鳥越氏を見ていると、まさに「晩節を汚している」としか思えない。非常に遺憾である。

 かつての桶川事件はじめザ・スクープにおける一連のダイオキシン調査報道など鳥越俊太郎氏は今いずこである。

 そういえば、その昔、このスパモニのレギュラーだった友人の中村敦夫氏(当時、参議院議員)が、番組中で当時の首相である安倍晋三氏の政策などを批判したら、体よく降板させられた話しを聞かされた。顰蹙総理の安倍氏はその直後、自ら政治の舞台から退場している。本来、退場すべきは安倍氏であり、それを批判した中村敦夫氏ではなかったのだ。

 政治との関連で言えば、そもそも、半世紀ぶりに政権が変わったにもかかわらず、パネリストがまったく変わらないのも噴飯ものだ。局側だけでなく、安直に出演する方も恥を知れと言いたい。

 テレビ朝日は、先週深夜に自社番組の評価検証番組をしており、そのなかでこの種の情報番組のあり方についても、黒金ヒロシ氏はじめ数名がそれなりの見識で批判をしていた。

 今回の一件は、何もテレビ朝日のスパモニに限ったことではない。他のテレビ各社も同じようなことをしているのは言を待たない。

 政治がドラスチックに大きく変わろうとしている現在、依然としてこの種の情報番組が、日替わりの知見も見識もなく、自分他話したことにまったく責任も感じないパネリストを使って行われている現実に、この国の大メディアの行く末を見る思いだ。

 情報番組のパネリストは、社会の木鐸としての見識と最低限、現場主義が求められるだろう。

 おそらくこの種の情報番組は、制作費が安くつく一点でどこのテレビ局も多用しているのだろうが、これほど視聴者をバカにしたものはないことを自覚すべきである。

 事実、2009年のテレビ各局中間決算を見るまでもなく、日本の護送船団テレビ各局は、経営面からもじり貧状態にある。

◆青山貞一:民放テレビ各局中間決算、全社大幅減益