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相次ぐトラブルで
試運転終了延期へ
六ヶ所村再処理工場

青山貞一


掲載月日:2009年2月6日
独立系メディア「今日のコラム」


 先に述べたように、社団法人日本広告審査機構(通称、JARO)は、東京電力など電力会社でつくる電気事業連合会(通称、電事連)が雑誌に掲載した広告に関連し、原発がCO2を出さないというだけで「クリーン」であるという表現は適切ではない、という裁定を電事連に出した。これが波紋を広げている。

 ※正確に言えば原発がCO2を出さないというのは間違い。
   石炭火力や石油火力に比べれば稼働時に少ないという
   だけであり、建設時さらに供用時にもCO2は排出される。
   原発があたかも地球温暖化対策の切り札のように日本
   や欧米諸国で喧伝されている現状は非常に憂慮すべき
   ことである。筆者


●相次ぐトラブル

 巨大な費用をかけ青森県六ヶ所村に建設を進め現在、試運転を行っている核燃料再処理工場だが、相次ぐトラブルが起きている。

 最新の情報として、事業主体である日本原燃は、この1月22日、高レベル廃液ガラス固化建屋で、配管から高レベル放射性廃液が漏れるトラブルがあった―と発表した。

◆六ヶ所再処理工場内で高レベル廃液が再漏洩:日本原燃が公表

 漏れた場所は、セル(コンクリートで密閉した部屋)内で、外部への放射能漏れなどはないという。原燃は約20リットルの廃液を回収し、漏れた量に相当するかどうか確認している。原燃によれば、配管を閉じている金具部分から廃液が滴っているのを発見。遠隔操作で金具のボルトを締め直したところ、漏れは止まったというから、お粗末そのもの。

◆漏洩箇所図


六ヶ所村再処理工場の位置

◆青山貞一:衛星から見た青森県六ヶ所村の核廃棄物再処理工場


 今回のトラブルにおける最大の問題は、この再処理工場の高レベルガラス固化体建屋において大量の高レベル廃液が漏えいしていることである。漏洩は全体で約21リットル、160億ベクレルであると報じられている。

 今回の高レベル廃液の漏洩事故により、青森県六ヶ所で進められている再処理工場の操業開始は以下のNHKの報道にあるように、2009年8月に延期される模様だが、この8月操業再開には何ら技術的な裏付けや根拠がある訳ではなく、再開時期は不透明である。

 いずれにせよ、巨額の資金と時間をかけ強引に青森県六カ所村に建設し、反対を押し切って試運転している核燃料再処理工場が、高レベル現役の漏洩など相次ぐトラブルを起こしているにも関わらず、「原発はクリーン」とは大いに呆れる。


ガラス固化再開遅れる見通し
東奥日報】2009年1月22日(木)

 日本原燃は二十二日、六ケ所再処理工場の高レベル廃液ガラス固化建屋で、配管から高レベル放射性廃液が漏れるトラブルがあった―と発表した。漏れた場所は、セル(コンクリートで密閉した部屋)内で、外部への放射能漏れなどはないという。原燃は約二十リットルの廃液を回収し、漏れた量に相当するかどうか確認している。

 二十一日午後に、配管を閉じている金具部分から廃液が滴っているのを発見。遠隔操作で金具のボルトを締め直したところ、漏れは止まったという。原因調査のため、中断中のガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)製造試験の再開は、さらに遅れる見通し。年度内のアクティブ試験終了(完工)も厳しい状況になって
きた。

 トラブルを受け、国の原子力安全・保安院は二十二日、原燃に対し、三十日までに原因と再発防止策を報告するよう指示した。保安院核燃料サイクル規制課は「法令報告対象ではないが、高レベル廃液の漏えいは看過することができない」としている。

 原燃によると、二十一日午後三時ごろ、セル内にある漏えい液受け皿の液位上昇を伝える警報が出たため、廃液を調べたところ、セシウム137で一ミリリットル当たり百六十億ベクレルという高い放射能濃度が出た。セル内を監視カメラで観察したところ、溶融炉へ高レベル廃液を送る二本の配管から、廃液が滴っているのが見つかった。

 廃液は、配管のすぐ下にあるトレー(幅十センチ、奥行き五十センチ、高さ二センチ)に一リットルほどみられたほか、七メートル下にある受け皿でも約二十リットル確認された。トレーからあふれた廃液が落ちたとみられる。

 原燃は昨年十二月中旬、攪拌(かくはん)用の棒が曲がったトラブルによる炉内の損傷を調べるため、炉上部の「原料供給器」を取り外し、供給器につながる配管をフランジと呼ばれる金具で閉じていた。

 フランジはそれぞれ三本のボルトで締めているが、どちらも十分に締まっていなかった。一方、配管を閉じた際には、廃液が管に流れ込まないようにしていたという。

【NHKニュース 09/1/30】

再処理工場試運転終了延期へ

六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理工場で、相次ぐトラブルで中断している作業の再開の見通しが立っていないことから、事業者の日本原燃は、最終段階を迎えている試運転の終了時期を、予定している来月から半年後の8月に大幅に延期する方針を固めました。

再処理工場は、原子力発電所から出る使用済み核燃料を再処理し、燃料として利用するプルトニウムを取り出す施設で、3年前に始まり最終段階を迎えている試運転は、現在、放射性レベルの高い廃液を炉の中でガラスと混ぜて固める作業に入っています。

ところが、先月炉の中を傷つけたことがわかったほか、今月21日には、放射性レベルの高い廃液が、配管から漏れているのが見つかるなど、相次ぐトラブルで中断していて、作業の再開の見通しは立っていません。

このため日本原燃は試運転の終了時期を予定している来月から半年後の8月に大幅に延期する方針を固めました。

日本原燃は、30日、延期を正式に発表し、国に届け出ることにしています。

 なお、この六ヶ所村の再処理工場の建設費は、当初7600億円とされたが、2001年時点ですでに2兆2千億円に膨らんでいる。これら建設費に加え、今後は施設修繕費・人件費等の運転費用、各種事故トラブル対策費用、施設の解体・撤去費用、発生する超ウラン廃棄物の処理費用などが必要になる。

 電事連はそれらを含めた計画総額は10兆円以上にのぼると2002年に試算しているという。問題は、これらの費用の大部分は電気料金として国民、消費者が負担するはめになる。


出典:http://cnic.jp/rokkasho/what/index.html

 にもかかわらず、電事連はじめ東京電力などの電気事業者が一大スポンサーとして広告を出稿していることもあり、大マスコミは原発や再処理工場関連の事故に、「黙してて語らず」を決め込んでいるようだ。