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八ツ場ダム中止の
再検証委員会は御用学者ばかり?

横田一

Dec. 2009
独立系メディア「今日のコラム」

 どうも怪しい雲行きになってきた。前原国交相が就任早々、宣言した八ツ場ダムの建設中止だ。宣言以降、地元は猛反発、石原都知事ら関係する自治体の首長も噛み付き、大騒ぎになったのは周知の通り。

 それでも、これは民主党の公約「コンクリートから人へ」の1丁目1番地だ。当然、中止を貫くと思ったら、おかしな動きが出てきた。それが今月3日にダム事業を再検証するために発足した「有識者会議」。なぜか非公開の上、会議の顔ぶれを見ると、脱ダム派が全然入っていない。前原大臣よ、もう役人に取り込まれたのか!


 今回の有識者会議には、従来の有識者会議の委員となっている川水系流域委員会元委員長の京都大学名誉教授の今本博健氏や国交省OBの宮本博司氏ら脱ダム派の論客は一人も入らなかった。

 「2名以外の委員は大体知っている」という今本博健氏はこう指摘する。「国交省関係者から事前に一部の委員の名前が漏れていたそうで、多分国交省が選んだのだと思います。土木分野が河川関係が4名、土質関係が1名の計5名の多数となっていますが、いずれも国交省関係の委員会の常連です。前原さんは中立の立場からの議論を期待しているようですが、厳密にいえば専門家に中立の人はいません。

 そういう意味では、ダム建設容認寄りの方を集めたという気がします。他の4名の委員がどのような議論をされるかに興味がありますが、会議をリードするのは難しいのではないでしょうか。参加したというだけで終わる公算大です」。

 通常、委員会の報告書は事務局である河川局が書くが、唯一の例外が今本氏や宮本氏が委員長をつとめた「淀川水系流域委員会」だった。ダムに頼らない治水案(脱ダム案)をまとめることができたのは、このためとみられている。しかし今回の有識者会議は、官僚主導型で期待が持てそうにない。

 「本来ならダム推進派と脱ダム派の両陣営から3〜4名づつ出て、河川整備のあり方を公開で徹底的に議論し、委員が会議の意見をまとめることが重要ですが、実際は、国交省がまとめるのではないか。それだと国交省の意見がやや玉虫色になるだけで、なんのための会議かわからない」(今本氏)。

出典:12月8日付の「日刊現代」に取材協力した記事