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情報操作による世論誘導
 C現役検疫官も「大本営発表」批判
青山貞一 26 May 2009

独立系メディア「今日のコラム」


 政府関係者にも勇気と正義感があるひとがいるものである。 

 医師で検疫官の木村盛世氏のことだ。5月上旬より政府の新型インフル批判を繰り返していたが、昨日(5月25日)夜のテレビニュースでも、「厚労省は大本営発表を繰り返すだけ」と手厳しく日本政府のインフル対応を真っ向から批判していた。

 ※木村盛世氏のブログ

 新型インフルエンザで封じ込め対策はまったく無意味だり、今の検疫は人権侵害と問題視される可能性はないのか?と彼女は疑問を呈した。

 このように新型インフルに関する政府の過剰な対策を強く批判するのは、現役の厚生労働省検疫官で東京空港検疫所支所検疫医療専門職である。

 木村盛世氏はWHO(世界保健機関)が推奨していない機内検疫を中止し、国内対策に重点を置くべきだと主張してきた。

 さらに彼女は、「厚労省は大本営発表を繰り返すだけ」と問題視し、「医療者自らがWHOやCDC(米国疾病対策センター)などの情報を入手し、情報発信していくことが必要」と説いている。

 この木村盛世氏は、筑波大学医学群を卒業したあと米国ジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生大学院の疫学部修士課程に入学し修了。公衆衛生学修士号をもつ。

 内科医として勤務した後、米国CDCの多施設研究プロジェクトコーディネーターをかわきりに財団法人結核予防会、厚労省大臣官房統計情報部を経て、現在、厚労省のバリバリの検疫官専門(感染症疫学)だ。

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 私はすでに以下の論考で、今回の新型インフルエンザの毒性がかなり早期の段階から「弱毒性」であることが分かり、米国ではオバマ大統領が「馬が出てしまった後に馬屋の戸を閉めても意味がない」と言明、通常の季節インフル並みに対応にしたことは賢明であった。

 さらに日本政府の新型インフル、とくに弱毒性が判明した後に間違った対応を継続することにより、結果的に情報操作による世論誘導で日本全体をパニックに陥れ、社会を疲弊させてと述べた。

 しかし、まさか厚生労働省の現役検疫官が日本政府のやり方を「厚労省は大本営発表を繰り返すだけ」と手厳しく批判していたとは知らなかった。

◆青山貞一:「弱毒性」インフル判明後も過剰反応で疲弊する日本

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 以下は、5月25日、その現役の検疫官を参議院予算委員会に民主党など野党が参考人として招聘しようとしたところ厚労省が拒否したという記事だ。

与党、水際対策批判した検疫官の出席拒否 野党は反発

 参院予算委員会は25日の理事会で、新型の豚インフルエンザの水際対策の効果に疑問を呈した厚生労働省検疫官らの

 政府参考人出席を求めた民主党と、政府を代表する立場にないことを理由に反対した与党との間で意見がまとまらず、委員会の開会が約1時間遅れた。

 与党が難色を示したのは、羽田空港の現役検疫官で医師の木村盛世氏。木村氏は朝日新聞など報道機関への投稿や取材に
 「水際作戦は無意味」「検疫が政治的パフォーマンスに利用された」などと発言している。

 出席を要求した民主党の鈴木寛氏は「舛添厚労相側は容認したのに厚労省が木村氏の出席を拒んだ」と指摘したうえで、

 「本人から(出席の)了解いただいている。厚労省の横暴で開会が遅れたことは極めて遺憾」と抗議。木村氏の出席は今後、与野党で協議していくことになった。
朝日新聞 2009.5.25
http://www.asahi.com/politics/update/0525/TKY200905250417.html

 本来、当人が承諾すれば参考人招致は可能なはずだが、彼女が公務員、しかも厚生労働省の現役公務員(検疫官)であることをたてに厚労省が参考人招致を拒否しているということになる。

 私自身、過去9回、衆参の環境系委員会、予算委員会に野党系党派からの参考人招致され出席しているが、すべて自分が所長をしている環境総合研究所の青山貞一への招聘だったのでまったく問題なく招聘に応じた。

 通常、大学の場合でも与野党を問わず参考人出席はほとんど問題なく承諾されており、異例なことである。
 
 以下は、木村盛世氏へのロングインタビュー記事。

 ◆木村盛世:新型インフルエンザ、水際封じ込めはナンセンス

  以下は5月25日の彼女のブログ。国家公務員からこのようなひとが沢山出てくることを切に期待したい!!

憲法違反ともいえる厚労省の行動

                                   木村盛世

 今までの検疫のやり方は、普通のインフルエンザを「特別で危ない病気」として扱いまるで患者を犯罪者なみに扱っています。この姿は、医師の行動ではなく、警察の行動そのものです。検疫は、検疫法に基づいて実施されていますが、検疫法は旧内務省時代、つまり日本国憲法の成立以前に作られた法律です。

 旧内務省は、警察と今の厚労省の機能、両方とも持っていたので、その時代の名残だと考えられます。実際、機内検疫を受けた米国人が、窓の外を見たら、まさしく警察が外で監視していたと言ますし、私の勤務する空港にも、検疫のための警察官を待機させています。

 この行為は法律的にも重大な問題があります。憲法第99条では「公務員は憲法を尊重し、擁護する義務を負う」、また憲法第13条では「公共の福祉に反しない限り、個人の自由を尊重しなければならない」とそれぞれ規定しています。

 公務員は、人権の制限による被害と、公共の福祉のベネフィットの間で利益衡量を行わなければなりません。検疫を行うのも公務員ですから、検疫を実施する場合には、人権制限することが適切かどうか、またその手段に合理性があるかどうかを検討しなければいけないはずです。

 検疫法は、ハンセン(廃止)、エイズ法(廃止)、結核予防法(廃止)と同 じく、古い日本の体制そのものです。これを金科玉条にするのは極めて危険であり、慎重に執行するのが正しい、というのが法令の専門家の常識です。

 この検疫法をきちんと整理しなかったことが今の新型インフルエンザ「スティグマ化」に拍車をかけていることは間違いありません。

2009年5月25日

 

つづく