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小沢代表秘書いきなり逮捕で
固唾をのむ自民大物議員

青山貞一 Teiichi Aoyama 3 March 2009

独立系メディア「今日のコラム」

青山貞一ブログ版


 民主党代表の小沢一郎衆議院議員の第一公設秘書が西松建設側の政治献金問題に絡んで東京地検に逮捕された。

 準大手ゼネコン「西松建設」(東京)の裏金問題に関しては、東京地検特捜部が今年の1月19日、同社元社長の国沢幹雄容疑者(70)が海外から裏金7千万円を不正に日本に持ち込んだことに関与していた疑いが強まったとして、外国為替及び外国貿易法(外為法)違反の容疑で逮捕している。

 西松建設関連の2つの政治団体は、「新政治問題研究会」(1995年11月設立)と「未来産業研究会」(1999年6月設立)だが、両政治団体ともに、西松建設の土木本部営業管理部長だった人物が代表で、一連の西松関連事件で裏金を管理・支出する役割をもったとされる西松建設の子会社「松栄不動産」の役員も務めていた。

 「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の両政治団体は、西松建設が政界に献金するためにつくった政治団体。この献金方法は、外為法違反容疑で逮捕された前社長、国沢幹雄容疑者(70)が発案したとされている。

 今回の小沢代表の公設第一秘書の逮捕劇の核心は、次にあると思える。

  すなわち、西松建設側がいろいろな方法で裏金をつくり、ふたつの政治団体を通じて小沢議員の陸山会事務所に献金したことに関連し、秘書側が西松建設とふたつの政治団体の間での違法な裏金作りを認識しながら両政治団体から政治献金を受け取ったかどうかにある。さらに言えば小沢代表側が献金を受け土木業務など何らかの見返りをしたかどうかにある。いわゆる受託収賄である。

 もし、違法性の認識がなければ、「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の両政治団体からの献金を受けた陸山会なりが政治資金規正法に基づき政治資金収支報告書を総務省に提出していれば、道義上は別として形式上違法性を問われないからである。

 実際、以下の記事にあるように、過去、何度となく迂回献金が問題とされたが立件の多くは見送られている。

迂回献金、立件見送りが大半 疑惑は過去にも度々

 政治資金規正法は、企業や団体が政治家個人に献金することを禁じており、企業の献金先は政党や政党支部、政党の資金管理団体に限られる。政党側への献金が実際は特定の政治家への違法な迂回献金ではないかとの疑惑は過去にも度々浮かんだが、ほとんどのケースは立件に至っていない。

 2004年に発覚した日本歯科医師会の政治団体「日本歯科医師連盟(日歯連)」をめぐる事件で、日歯連の元幹部が東京地検特捜部の調べに、自民党の5議員あてとして計4000万円を同党の政治資金管理団体「国民政治協会(国政協)」に献金した、と供述した。

 特捜部は一部の議員について収賄容疑での立件も検討したが、最終的には「趣旨があいまいだ」などとして見送った。

 事件では、旧橋本派の政治団体「平成研究会」に対する日歯連の献金1億円を政治資金収支報告書に記載しなかったとして、村岡兼造元官房長官の有罪判決が確定し、橋本龍太郎元首相は嫌疑不十分で不起訴になった。

 ゼネコン汚職では1994年、鹿島が渡辺秀央元郵政相側に計4000万円を迂回献金したとの疑惑が浮上し、特捜部は一部が政治資金規正法違反にあたるとみて捜査。

 KSD事件でも01年、村上正邦元労相=受託収財罪で有罪確定=が、国政協を経由した5000万円の迂回献金を受け取ったと指摘されたが、いずれも国政協に入った金が実際に政治家に渡ったことの立証が難しく、この献金にかかわる収賄や政治資金規正法違反での立件は見送られた。

2009/03/03 19:41   【共同通信】

 しかし、上記の確証がないなかで、東京地検がいきなり小沢代表の公設第一秘書を逮捕することは非常に考えにくい。事実、もしそうでなければ、「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の両政治団体からの献金を受けた代議士、知事らの関係者はすべていきなり逮捕されることとなる。逮捕されなければならないだろう。

 周知のように、1975年、政治資金規正法は政治活動に関する寄附の制限が導入されるとともに、政治団体の収支公開が強化された。1992年、政治資金パーティーに関する規制、政治団体の資産公開、政治資金の運用の制限などが新設された。

 1994年、選挙制度改革・政党助成制度の導入と軌を一にして、企業・団体からの寄附の対象を政党(政党支部を含む)、政治資金団体、新設された資金管理団体に限定。その上で1999年、資金管理団体に対する企業・団体からの寄附が禁止された。

 これにより、政治団体に対して設立の届出と政治資金収支報告書の提出義務を課して政治資金の流れを明らかにするとともに、政治活動に関する寄附(政治献金)や政治資金パーティーの制限、株式などによる投機的運用の禁止など政治資金の取り扱いを直接的に規制し、違反した場合には罰則なども課せられる。

 今回、小沢氏の公設秘書がいきなり逮捕されたわけだが、おそらく先に逮捕されている西松建設の関係者の証言から東京地検は、小沢衆院議員の公設秘書が西松建設とふたつの政治団体の間での違法な裏金作りを認識しながら両政治団体から政治献金を受け取ったことの確証を得て逮捕に踏み切ったものと思われる。そうでなければ、民主党代表の第一秘書をいきなり逮捕することなどありえない。

 一方、小沢代表の第一公設秘書は、あくまでも2つの団体からの政治献金は、政治資金規正法の範囲での献金であり、したがって政治資金収支報告書にもその旨を記したと主張するだろう。

 先に長野県村井知事の側近中の側近の右近氏が、東京地検に任意で3日間取り調べを受けた翌日に首つり自殺をしたが、その際も、先に逮捕されている西松建設の関係者が1000万円を村井知事側に供与したと証言したことが判明している。長野県知事の場合、知事の側近中の側近は、上述のように任意で取り調べを受けている。

 今回はいきなりの逮捕であり、一部で指摘される「国策捜査」でもない限り、よほどの証拠がない限り、いきなり逮捕はあり得ないわけだ。

 先に私は小沢代表側が献金を受け土木業務など何らかの見返りをしたかどうかにある。いわゆる受託収賄である、と述べた。
 
 これに関連し東京新聞に興味深い記事がある。


 「ゼネコン各社がそろって献金しているのに、うちだけ出さなければ、仕事を邪魔される。献金はそれを避けるためだった」。西松建設の幹部は、小沢一郎代表サイドに多額の献金を続けてきた理由をこう打ち明けた。

 政治資金収支報告書によると、事件の舞台になったダミーの政治団体「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」は、小沢代表の資金管理団体「陸山会」以外にも、岩手県の政党支部や旧自由党の政治資金団体「改革国民会議」、民主党岩手県連に毎年百万−五百万円ずつ寄付。西松建設子会社の「松栄不動産」も二団体と連動するように献金していた。

 西松側から小沢代表側への献金総額は、二〇〇〇−〇六年だけでも九千万円以上になる。小沢代表以外にも尾身幸次元財務相側に千二百万円、森喜朗元首相側に五百万円などの寄付をしているが額は小沢代表側に比べると、多くはない。

 小沢代表の地元、岩手県発注の事業で、西松建設は〇二−〇三年、花巻空港建設関連で総額約五十八億四千二百万円の工事を受注。〇三年には、二十六億千四百五十万円でトンネル建設工事を受注しているが、受注実績が他のゼネコンに比べて突出しているわけではない。

 西松建設の幹部は「岩手での小沢氏の影響力は絶大だが、特定の工事の口利きというより、仕事を妨害されるのを防ぐ狙いだった」と説明。自民党時代から持つ建設業界全体への強い影響力を考慮して献金を続けてきたという。

 別の準大手ゼネコン関係者も「小沢事務所はゼネコン各社に金額を割り振り、きっちり寄付を要求していた。仕事で意地悪されないためには、各社横並びで献金せざるを得なかった」と明かした。

 ....以下略

2009年3月4日 東京新聞朝刊


■固唾をのむ自民党大物代議士

 西松の裏金作りによる違法な政治家への献金に関連し、以下に2つのリストを示そう。これらは昨年末から今年の1月に公表されたものである。

 ともに2つの政治団体が献金し総務省に政治資金収支報告書を届け出た政治資金提供リストである。

 2つの表を見ると、リストには確かに小沢一郎衆院議員関連の政治団体への献金もある。しかし、件数の上では圧倒的に多くの献金先は自民党の閣僚経験者であることが分かる。また森喜朗、尾身幸次、二階派、加藤紘一、藤井孝男、川崎二郎、山本公一、旧橋本派、山口俊一ら自民党の総理、大臣経験者が多数いる。

 今後、捜査は以下にある自民党の大物代議士あるいはその秘書に次から次へと逮捕が及ぶかどうかが大きなポイントとなるだろう。

◆賞与補てんで迂回工作か 西松建設の政治献金

 政治団体を使った脱法的な献金疑惑が浮上している準大手ゼネコン西松建設が、政治団体に納めた社員の会費を賞与に上乗せする形で補てん、会費から支出される献金を同社が事実上負担していた疑いの強いことが17日、関係者の話で分かった。

 こうした迂回工作は、政治家個人への企業献金を禁じた政治資金規正法に違反する疑いが強いため、東京地検特捜部は同社の担当者らから事実関係を聴取。

 管理本部長として関与したとされる元副社長藤巻恵次容疑者(68)=外為法違反容疑で逮捕=や、政治団体設立を主導したとの指摘が出ている国沢幹雄社長(70)の認識を確認、裏金が流用されていないかなども調べているもようだ。

 関係者によると、政治団体は新政治問題研究会と未来産業研究会。代表を務める西松建設OBが、課長級以上で賞与が比較的高い優秀な社員に対して年2回の賞与時に会費納入を請求、会費を政治献金に回していた。

 会費を納めていた元幹部の1人は、西松建設の担当者から「賞与で補てんしておく」と約束されたという。

 両政治団体は2004−06年、小沢一郎・民主党代表や森喜朗元首相らの資金管理団体などに献金していた。

2009/01/17 19:04   【共同通信】

 なぜなら、自民党の代議士なり秘書は西松関係の政治団体からの献金の違法性についてまったく知らなかったで済むのかという問題があるからだ。

 さらに言えば、2つの政治団体から大物政治家への献金は相当前から分かっていたのに、なぜ、この時期にしかも、政権交代寸前の小沢代表の第一公設秘書をいきなり逮捕したのかである。 

 それにしても不思議なのは、新聞、テレビなど大メディアは、ともに西松建設関連の2つの政治団体から自民、民主の多くの政治家、それも総理、大臣クラスの議員に関連する2つの政治団体に献金が行っていることを十分知りながら、それらについてはほとんど報じないことである。

 東京地検は政府・自民党による「国策捜査」でないことを明確にする意味でも、以下に出てくる政治家やすでに名前がでている知事らについてもしっかりと捜査をしなければならない。

参考写真
出典:西松建設OBが団体作り多額献金 規制後も“抜け道”
    中日新聞(2008/12/29)


出典:2009年1月26日(月)「しんぶん赤旗」