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不動産・建設会社
連鎖破綻の大予兆!


青山貞一

掲載月日:2008年9月5日

 当たり前だが、知る人は知っている事実として、昨年暮れ、さらにこの春あたりからカタカナ文字の都市産業、不動産会社の株価が大きく下がりはじめ、秋口(現在)から大規模倒産が起こるといわれていた。

 まずは、以下の表を見て欲しい。

 昨年同時期に比べた今年の株価と下落率である。たとえば、日本綜合地所を例にとれば、昨年2,095円だった株価が今年は141円、下落率が93.2%ということになる。ジョイント・コーポレーションは、昨年3,290円だった株価が今年は102円、下落率は96.8%ということになる。

 以下に示した会社は36社だが、もちろんそれ以外もけっして業績は良くなく、株価は大幅に下落している。以下の36社は見れば分かるように下落幅が80%以上のものである。


出典:日刊ゲンダイ 2008年9月5日号

 かつてのフジタ、飛島など大手の土木・建築会社の株価暴落同様、株式価格の暴落がすぐさま会社倒産となるわけではない。しかし、株価のこれだけの暴落は、会社倒産の予兆であることには違いがない。

 都市産業、不動産会社の株価暴落の理由だが、昨日の日刊ゲンダイ株価暴落36社リストによれば、

 1)公共事業の縮小
 2)マンションの供給過剰
 3)市場低迷
 4)資材高
 5)改正建築基準法
 6)改正独占禁止法

となる。

 私見では法律改正は当然それなりの理由があって社会的規制が強化されたのであり、それを理由とするのは問題であると思うが、おそらく不況、暴落の最大の背景は、米国に端を発したサブプライムローン破綻があることは間違いない。またここ数年のマンションは明らかに供給過剰なものであった。

 上記の1)から6)にはないが、大きな理由としてサブプライムローン破綻の影響は米国だけでなく世界中であり当然、日本の銀行など金融機関も膨大な損支出出している。それもあって、日本の金融機関がここに来て都市産業、不動産会社への資金の貸し渋りが顕在化してきたこともあるはずだ。

 さらに言えば、タクシーの規制緩和同様、政府はこの間、土地利用規制、建築規制を大幅に緩和し、その結果、超高層のマンションが「こんな場所にも?」
という場所にも多数建築されてきた。私が住んでいる東京都品川区小山にも19建ての超高層マンションが建築された。

 これは姉歯事件への対策として行われている改正建築基準法とは別のものである。用途地域、高度規制など各種の土地利用規制を緩和したため、容易に超高層マンションの建築が可能となり、日本中アチコチに超高層マンションが建っている。その結果、供給過剰に輪をかけることになったのである。

 すでに業界大手のアーバンコーポレーションや創建ホームズが民事再生を申請しているが、この秋、続々と倒産してゆく可能性は否定できない。

 ところで、先ほど到着した大前研一ニュースでもこの問題に触れていた。私と視点は異なるが参考にして欲しい。


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今週の〜大前研一ニュースの視点〜
 『不動産・建設業界の不振:
        既存のビジネスモデルを超えた発想が必要』


■┓ オフィスビル賃貸料 7月末の平均賃料が下げに転換
┗┛ 3.3平方メートル当たり、2万2860円
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空室率5%前後から、加速度的に賃料は下がっていく。

 東京都心で、上昇が続いていたオフィスビル賃貸料(募集ベース)
 に一転して先安観が広がってきています。

 三鬼商事がまとめたところによると、指標となる大型ビルの 平均募集賃料は3.3平方メートル当たり2万2860円となり、 前月比0.03%(8円)下がったということです。下落幅は小さいですが、前月まで2年11カ月続いた上昇が途切れた形になりました。

 米国を発端とするサブプライム問題の影響もあって、不動産・建設業界は昨年の夏頃から日本の景気悪化の けん引役になってきました。

 そして、今やスルガコーポレーション、ゼファー、アーバンコーポレーションと相次いで新興不動産ディベロッパーが破綻するなど、業界全体が厳しい局面を迎えています。

 帝国データバンクが発表した2008年上半期の倒産集計によると、国内の負債額1000万円以上の倒産件数は前年同期比で10%強増加していますが、その中でも不動産業(前年同期比7.5%増)と建設業(同16.2%増)の倒産が目立つという結果にも
 現れています。

 このように厳しい局面を迎えている不動産・建設業界ですが、今はまだ「限界の一歩手前」という段階だと私は見ています。

 現在、1坪当たりの賃料は2万2千円前後ですが、バブル崩壊後の1万5千円前後という水準を考えれば、2万円を超える価格はまだ「高い」価格だと思います。

 都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)のオフィスビル空室率と平均賃料の推移を見てみると、2005年に約1万7千円だった賃料が徐々に上がってきています。

 ここに来て頭打ち状態とは言え、全体としては上昇基調だと言っても良いと思いますが、安心できない状況です。

 空室率が2007年秋ごろから上昇しており、3%未満だった空室率が4%を超える勢いです。実は、空室率が4%を超えて5%に近づく水準になると、加速度的に賃料に下がっていく可能性が高いのです。

※「都心5区のオフィスビル空室率と平均賃料の推移」チャートを見る→ http://vil.forcast.jp/c/ajtAaaiPtJt8cWad

 5%前後の空室率になってくると、不動産会社が「割引キャンペーン」のような手段を用いて、競合同士でテナント争奪戦の価格競争を繰り広げることとなり、その結果、賃料が軒並み下落していくという悪循環に陥るのです。

 バブル崩壊後にも同様の状況に陥りましたが、今、再び同じ道を歩んでいます。5%という限界に刻一刻と近づきつつある、というのが現在の状況だと私は思います。


不動産・建設業界は、これからが本当の正念場になる。

 倒産企業が後を絶たず、地獄絵図のような不動産・建設業界ですが、これから先はさらに厳しい局面を迎えることになります。

 ゼネコン、不動産業者、ディベロッパー、その他関連業種を含めた不動産・建設業界全体が影響を受けることになると思います。

 「せっかくビルを建てたのに入居者がいない」「もっと安い値段でなければ入居してくれない」といった事態に陥ることは容易に想像できます。

 これはバブル崩壊後の1994年〜1995年ごろに東京が経験した事態であり、また現在の世界経済の流れでいえば、すでにロンドン・ロサンゼルス・ヒューストンといった海外の都市で起こっている事態です。

 直近では8月26日付けで創建ホームズが東京地裁に民事再生法の適用を申請し受理されています。ゼファー、アーバンコーポに続く、東証1部上場企業の破綻でした。

 また、8月25日付けで首都圏を中心に不動産開発などを手がけるセボンが民事再生法適応を申請、子会社分とあわせた負債総額は785億円にのぼります。

 不動産各社が棚卸資産を過剰に抱えている状況と各社の株価下落率をみても、同業界全体の不振は一目瞭然といえます。

※「不動産各社の棚卸資産の状況と株価下落率」チャートを見る
→ http://vil.forcast.jp/c/ajtAaaiPtJt8cWae

 こうした状況の中でも、大手の一部は利益を確保できる可能性があると思います。

 例えば三井不動産は、単に建築物を貸すだけというビジネスではなく、豊洲再開発プロジェクトにおける「ららぽーと豊洲」に代表されるように自らが建物を建設・保有したうえで商業施設の運営・管理を行っているからです。

 自ら適切なマーケティング施策を打ち、集客力を持てば、テナントを集めることも可能でしょう。

 不動産・建設業界の不況は、これからが「本当に」厳しい局面になります。もはや楽観できる余地はありません。

 三井不動産のように従来のビジネスモデルを超えた施策を打ち出し、バブル崩壊から回復したという経験を活かして、不動産・建設業界がこの不振からいち早く立ち直れるように期待したいと思います。

以上