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情報リーク・情報操作
による世論誘導

東京地検特捜部

青山貞一 Teiichi Aoyama
 25 March 2009
独立系メディア「今日のコラム」

 
 以下は昨年3月時点で書いた論考です。 青山貞一
 総選挙、政権交代前夜に、東京地検特捜部が小沢代表の公設第一秘書を突然逮捕することではじまった今回の一件は、昨日(2009年3月24日)、大久保秘書の拘留期限ぎりぎりのところで、東京地検は大久保秘書を「起訴」した。

 大久保公設第一秘書の起訴を発表した東京地検の佐久間達哉特捜部長は、捜査の正当性を強調したが、逮捕後2日間で地検には約100件のメールが寄せられ8割近くが批判的な内容だったという。

 今回の一件がきわめて異例、異常であったことは、東京地検による大メディアへの連日の捜査情報のリークでも分かる。

 東京地検特捜部は、まさに連日連夜、逮捕され取り調べられている西松建設社長などの供述をあたかも100%事実であり、真実であるかのごとく、大メディアに垂れ流し続けたのである。そして大メディアは何ら自ら検証することもないまま、地検のリークの情報を新聞の一面、ニュースのトップで連日連夜垂れ流したのである。

 私はここで、敢えて刑事事件は「推定無罪」であるなどというつもりはない。私が言いたいことは次のことだ。

 一昨年、私が勤務する大学の大学院生(中国からの留学生)が神奈川県警に突然逮捕され、逮捕から22日後に起訴された。その後を含め、実に4ヶ月間も警察の拘置所に拘留された。本事件では、改正刑事事件訴訟法に新たに規定された公判前整理手続が援用された。

●神奈川県警+横浜地検の准冤罪事件
青山貞一:神奈川県警+横浜地検共作による留学生准冤罪事件@
青山貞一:神奈川県警+横浜地検共作による留学生准冤罪事件A

 この事件は結果的に警察の誤認逮捕や検察の強引な誘導捜査、取り調べなどが次々に明らかになり、横浜地裁の大島裁判長は、逮捕・起訴された大学院生に完全無罪を言い渡した。しかも、地検は控訴しなかったことから一審で無罪が確定した。このようなことは、刑事事件総数の0.1%にも満たないというから、いかに神奈川県警、横浜地裁がしたことが杜撰きわまりないものであったかが分かる。

 私は7000名近くの学生、教職員がいる大学の全学リスク管理委員長をしており、本件では事件化してからは最初から最後まで関与することとなった。すべての公判にも参加した。

 ここで問題なのは、検察側は公判前整理手続きを導入したことで、捜査、取り調べの情報を被告側弁護士にのみ提供し、マスコミはもとより、親族や私にも一切情報提供しなかったことだ。しかも、公判に影響を及ぼすという理由からである。

 だが、あやうく冤罪事件になりかかったこの事件で分かったことは、警察・検察側は自らの強引な捜査・取り調べ、供述強要などに係わる情報資料を公判前整理手続きにもとづいてすべて被告側弁護士に渡していなかったことである。

 本事件に係わったK弁護士によれば、警察や検察は公判前整理手続きが導入された後も、自分たちに都合の悪い証言や資料は弁護士側に提供せず、公判に入ってからそれを執拗に指摘することで、やっとのことで情報がポロポロとでてきたと言われた。

 小沢代表秘書逮捕、起訴に関連し、特捜部長や検事総長などは司法、検察の独立性、公平・公正性などを強調した。3月25日の衆院総務委員会NHK21年度予算審議で原口筆頭理事の質問に答えて、総務大臣及び法務副大臣は、検察がメディアに捜査中の情報を漏洩することは有り得ない、と述べている。

 また検察は公判前整理手続きやこの春からはじまる裁判員制度でも捜査情報の漏洩には厳罰で対応することを口にしている。

 しかし、刑事事件で東京地検特捜部が現実に行なっていることは何か?

 それは事実であるか否かにかかわらず検察がリークしたい特定の情報をあらゆる手段でメディアに垂れ流すという事実である。

 今回の一件でも、東京地検特捜部は、連日連夜、記者らに捜査情報をリークしていたのである。さらに問題なのは、検察に飼い慣らされた大メディアの記者である。

 彼らは飢えた犬が餌をもらったときのように、与えられたリーク情報を金科玉条として一面トップに掲載してきた。およそ報道機関にあるまじき対応に終始してきたのである。

 もし、警察・検察が刑事事件の捜査情報を特捜部長らが言うように徹底的に守秘するのであれば、なぜ、顕示された事実が真実であるかどうかわからない情報、すなわち最高裁まで行かなければ最終判断できない情報をこともあろうか、を大メディアにリークするのであろうか?

 これでは、情報操作による世論誘導と言われても致し方ない。

 同時に、リーク情報をありがたくもらい受け、何ら自らの検証もせず、第三者のコメントもないまま一方的に垂れ流すNHKや民法テレビ局、大新聞は、およそメディアとはいえない。

 彼らは司法権力による情報操作による世論誘導に加担していると思われても仕方ないだろう。

 今回の一件でも大メディアはいずれも恥を知れと言いたい。

 さらに言えば、特捜部長らは捜査の公平、公正性について主張している。

 しかし、これもチャンチャラ笑わせる話しではないか。

 なぜ、二階経済産業大臣はじめ自民党の幹部代議士には一切手を付けないのか? 

 周知のように自民党が得ている企業からの政治献金額の総額は、確か民主党より4−5倍も多いはずだ。今回の一件でも横田一氏らの現地調査によれば、二階大臣はいろいろカネにまつわる話が取り沙汰されている。

 なぜ、東京地検はこの時期に、突然、政権交代間近だった民主党代表の側だけをことさら大仰に責め立てたのか? 

 これでは政府・自民党の意向を受けた「国策調査」と言われても仕方ないだろう。

 いずれにせよ、今回、東京地検がしたことは、民主党に対してだけでなく、国民に対しても大きな疑問を投げかけたことは間違いない。こんな司法当局が関与する裁判員制度でまともな刑事事件の審理ができるわけがないだろう。

 そういえば、政権交代が恐怖なのは自民党だけでない。霞ヶ関の省庁も同じだ。さらに実は警察、検察にとってもそうなのだ。

 民主党は常々、警察、検察の捜査、取り調べの可視化の法制化を提案している。自民党政権なら99.9%この可視化法案はない。もし、民主党などが政権を取り、可視化法案を通したら、杜撰な誤認逮捕、見込み捜査、誘導尋問、供述強要などまるで公安警察並みの日本の警察、検察の捜査実態が白日の下にさらけ出される。

 これは決して穿った見方ではない。