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自壊の道をひた走る大メディアG
〜限界を超えたテレビ報道・番組の劣化〜
青山貞一
23 April 2009
独立系メディア「今日のコラム」


 このシリーズでは、その経営の根幹をなす収入の多くを「広告」収入に依存している民放テレビや新聞が、いかに広告主におもねてきたか。またテレビやテレビがメディアあるいはジャーナリズムが本来もつべき社会的な役割を失っているかについて言及してきた。

 昨年、100年に一度という金融、経済危機が起こり、広告予算の源泉となっていたトヨタ、ホンダ、ソニー、パナソニックなど日本を代表する「超優良製造業」が軒並み3月決算で赤字となった。

 その結果、巨大企業のテレビ、新聞向けの広告費も大幅に削減された。もともと電通、博報堂など広告費のマージンで生きている広告代理店の取り分を含め、異常に高額だったテレビ、新聞の広告費に、さすがの巨大企業も大幅に予算を削減せざるを得なくなったわけだ。

 広告主や時の政権与党に気を使い、本来報道すべきことを報道してこなかった大メディアは、日本を代表する巨大企業からの広告収入の激減によって、経営状態が一段と悪化、報道やドキュメント、番組の制作費は限界まで削減され、さもなくとも劣悪だった内容、コンテンツはさらに劣化の道をたどった。

 もとより、新聞、テレビなど大メディアの正規社員は、世間常識から見ると異常に高額な収入を得ている。しかし、金融危機により製造業の営業成績がどん底に落ち、広告費が削減されたからと言って、正規社員の給与が下がることはなかった。

 テレビ局では、依然として非正規雇用者の契約社員などが正規社員の数分の1の給与で使っている、しかも実際の番組を作ってきた下請けのプロダクションは、さらに制作費が切りつめられ、瀕死の状態になっている。

 まともな調査報道や腰を据えたドキュメントは見る影もなくなったのはかなり昔のことだ。

 安直で劣悪、見識や品格などまるでない、言いたい放題のモーニングショー的情報番組が民放テレビを跳梁跋扈している。

 そこでは、またぞろ政権与党のまわしもののようなコメンテーター、うんざりする御用学者、足を使わずまともな取材をしていないインチキ・キャスター、みばえだけで何らキャスターのイロハも分かっていないキャスター、さらには権力側を弁護する東京地検OBなど、これでもかとばかり日替わりメニューのようにテレビの映像にでてくる。

 当然のこととして、ドキュメントやまともな番組は、制作費のさらなる切りつめで質がどん底まで悪化している。そしてお笑い芸人や芸能人もどきによるアホ番組がゴールデンタイムを占拠しているのである。それをあんぐり口を開けて見ている国民も国民であるが。

....

 ところで限られた電波資源の適正な利用などという電波法、放送法の理念はとっくにどこかにぶっとび、劣悪で国民を愚弄する番組、昨今の小沢代表第一公設秘書逮捕に象徴される東京地検特捜部の「国策捜査」と思われても仕方ない政権与党を利する垂れ流し報道、すなわち情報操作による世論誘導が白昼公然と行われている。

 貧すれば鈍するテレビ局は、日曜の午前からパチンコやサラ金のコマーシャルを延々と流す。こんなCMが子供らの教育的見地からみてよくないことは言を待たない。

 他方、鳴り物入りで設置されたBSデジタルハイビジョンでは、何でこんな時間にと驚くような企業によるCM、ショッピング情報がこれでもかと流される一体どこまで宣伝でどこから先が番組なのかわからないものもある。BSハイビジョンはまるで企業広告のための割り当てかと思うほどだ。

 日本国民は過去から現在まで、自分で考える能力にうとく、批判的精神をとっくに失っているから大メディアの報道や番組に影響を受けやすい。

 日本では世論は大メディアによってつくられているといっても過言ではないが、その大メディアが本来の役割である権力監視を忘れ、というよりかなぐり捨て権力、政権与党にすりより、広告費ほしさに大企業にひざまずている。

 その結果、国民は言い方は悪いは痴愚魯鈍化し、大メディアの情報操作による世論誘導にひっかかり、実質、半世紀ぶり政権交代は遠のいている。そもそも、現状追認による既得権益の確保に奔走しているのは、何も官僚や政治家ばかりではない、大メディアや学者らも同じである。

 たまたま日経新聞に小学館のサピオの広告が掲載されていた。それぞれごもっともな見出しである。