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高輪泉岳寺中門に見る

電柱と電線による景観破壊


青山貞一 Teiichi Aoyama
池田こみち
Komichi Ikeda

Octoberr 23, 2014
独立系メディア E-wave Tokyo
Alternative Media E-wave Tokyo

無断転載禁


 東京都港区高輪にある国指定史跡、泉岳寺の中門の隣に8階建てのマンションが計画されている問題については、すでに鷹取敦氏による計画の概要、さらに2014年10月20日夕方の青山貞一、池田こみちによる現地調査の概要を紹介した。

 下のモンタージュ写真を見れば明らかなように、江戸の元禄時代に起きた赤穂浪士による忠臣蔵の一大象徴拠点である泉岳寺の入り口隣にぴったりくっついて8階建てのマンションができれば、歴史的景観だけでなく都市景観も台無しとなるのは誰の目にも明らかだ。


出典:「国指定史跡・泉岳寺の歴史的文化財を守る会」サイト 

 しかし、マンション建設以前から泉岳寺の歴史的景観を破壊しているのは、言うまでも無く東京電力の電柱であり電線である。電柱はまさに「殿中」なのである。

 下の写真は2014年10月20日夕方の青山貞一、池田こみちによる現地調査の際に撮影した動画を静止画として切り出したものであるが、泉岳寺の中門左に建つ電柱と電線による景観の破壊はいかんともしがたい。

 もちろん、8階建てのマンションの建築以前に写真でも見える背景の超高層ビルの存在も泉岳寺の歴史的景観を損ねていることは言うまでも無い。
 

撮影:青山貞一 独立系メディアE-wave Tokyo共同代表

◆青山・池田:泉岳寺中門隣に8階建マンション!? 紛争の現場に行く

 そこで上の写真のうち、東京電力の電柱、電線、それに背景にある超高層ビルをコンピュータモンタージュにより消してみた結果が下の写真である。

 一見して分かるように、江戸時代とは言わないが一気に明治時代の景観が再現される。


撮影及びモンタージュ:青山貞一 独立系メディアE-wave Tokyo共同代表

 2011年の3.11による東京電力福島第一原発事故以来、東京電力に対する国民の怒りは頂点に達しているが、実を言えば、世界一高い電力料金を取りながら、欧米では当たり前となっている電柱、電線の地下化が日本ではごくごく一部を除き実現していない。

 そのため、日本各地至る所でアグリーな景観が出現している。とりわけ、泉岳寺に限らず、都市にある寺社仏閣など、ヨーロッパで言えば旧市街に相当する地域における景観破壊はいかんともしがたいものがある。

 ちなみに、下に掲げた写真は世界的に有名なポーランドのワルシャワ歴史地区で撮影したものである。ワルシャワの歴史地区は、第二次世界大戦で粉々に破壊されたが、戦後、戦前と寸分違わぬ町並み、景観を復旧させたことで有名である。

 見て分かるように一切の電柱、電線が地下化されており景観を損ねていない。


修復された聖十字架教会。この教会の柱にショパンの心臓が埋め込まれている
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.8


修復されたワルシャワ旧市街を背景に
撮影:池田こみち Nikon Cool Pix S10 2009.3.8


早朝で雪があがったしっとりとしたワルシャワ歴史地区のクラクフ通り
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.8


最終日の夜ワルシャワに戻り撮影したワルシャワのクラクフ通りの夜景
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.13

 下はワルシャワの王宮前で撮影したものだが、もし、この写真の中に東京のような電柱や電線があったらどうなるであろうか?


修復された王宮の前の筆者現在は博物館となっている
撮影:池田こみち Nikon Cool Pix S10 2009.3.8


ドイツ軍(ナチスドイツ)に攻撃されるワルシャワ王宮
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 下はエストニアのターリン旧市街、歴史地区(世界遺産)の旧市庁舎近くである。まったく電柱も電線もないことが分かる。 


エストニアのターリン旧市街、旧市庁舎広場(世界遺産)にて
 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S10 
20 Feb. 2010


エストニアのターリン旧市街、旧市庁舎広場(世界遺産)にて
 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S10 20 Feb. 2010


 
下の写真は、ワルシャワから南に行ったアウシュヴィッツ強制収容所近くにあるクラクフ(Krakow)である。

 クラクフは世界的に有名な古都であり、世界遺産でもある。写真を見るとまさに中世にタイムスリップしたような旧市街における都市景観が現出している。

 もし、以下の写真にアグリーな電柱や電線があったらこの世界遺産の景観は台無しとなる。
 
 最近になって日本でも欧州に比べ半世紀以上遅れて、やっと東京駅前や丸の内ビル街などで一部電柱、電線の地下化が行われ出した。

 しかし、京都など日本全体の旧市街とも言える地域では、電柱、電線とともに土地利用規制や形態規制が実質ないも同然、とんでもない歴史的町並みや景観の破壊となっており、チンケなマンションがそこかしこに林立している。

 「美しい日本」などというなら、ポーランドのワルシャワやクラクフを少しでも見習ったらどうなんだろうか。また国民自身は、都市の景観などに無頓着なことも大問題である。国民が無頓着だから国や自治体、電力会社も意に介さなかったと言ってもよいだろう。

 3.11の原発事故は同時に、日本の電力会社の見識や知性のなさを浮き彫りにしていると言って良い。日本が文化面で真に先進国になるためには、都市の景観や歴史的景観を考慮したまちづくりが不可欠である。

<動画で見るポーランドの都市景観>


◆世界歴史探訪 ポーランド・ワルシャワ歴史地区 (E-wave Tokyo)

◆世界歴史探訪 ポーランド・クラクフ歴史地区 (E-wave Tokyo)


クラクフ歴史地区の中核部、中央市場広場。
右側にある大きなルネッサンス風の建築物が織物会館。右側の塔が旧市庁舎の塔


クラクフ旧市街の小市場広場
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10
2009.3.9



<参照:全体目次:ポーランド 
●ポーランド現地調査総目次(前半) 2009年3月7日〜3月10日
訪問先概要(町並修復・復元・保存) 【クラクフ歴史地区 視察】
【ワルシャワ歴史地区 視察】 3月9日:クラクフ歴史地区視察1
3月8日: ワルシャワ中央駅周辺 3月9日:クラクフ歴史地区視察2
3月8日: ワルシャワ歴史地区視察 1 3月9日:クラクフ・ヴァヴェル城・大聖堂
3月8日: ワルシャワ歴史地区視察 2 3月9日:クラクフ歴史地区視察3