エントランスへはここをクリック   

東京地方検察庁特捜部は、

正念場


三井 環
(市民連帯の会代表・元大阪高検公安部長)

掲載月日:2013年12月28日
独立系メディア E-wave



東京地方検察庁特捜部は、正念場

 猪瀬直樹東京都知事に対する贈収賄事件を、きちんと捜査出来るのか。またまた、天の声が下りてきて、捜査が挫折するのか

    三井 環(市民連帯の会代表・元大阪高検公安部長)

1、 市民連帯の会代表三井環は、平成25年11月23日付と、 同年11月29日付の2通の告発状を東京地検特捜部長宛に提出した。 そのメインの告発事実は、次のとおりである。 他の告発事実は、市民連帯の会のホームページをチェックしてみれば、全文が記載されている。

◆三井 環:猪瀬知事らを公職選挙法違反で告発
◆三井 環:猪瀬知事らを公職選挙法違反で告発(追加分)

 メインの告発事実は、

  被告発人猪瀬直樹は、東京都の副知事であるが、被告発人 猪瀬直樹が、知事に就任した暁には、徳洲会グループの病院の許認可および補助金の支出に便利な取り計らいをしてもらいたい趣旨で、その職務に関し、平成24年11月20 日頃、現金5,000万円の賄賂を収受し、 被告発人徳田毅、同虎雄は、共謀の上、上記日時場所にお いて、上記趣旨で、現金5,000万円の賄賂を供与 たものである。

2、 告発の経過
 徳洲会グループは、昭島市で東京西徳洲会病院を経営し、平成 24年5月には、特定医療法人「沖縄徳洲会」が西東京市に老人医療施設「武蔵野徳州苑」を開設した。 「沖縄徳洲会」は東京都に150床の認可申請をし、東京都がこ れを認可した。

 また、「沖縄徳洲会」の工事費全額約7億5,000万円の補 助金を東京都は支払った。 さらに、徳洲会グループは「武蔵野徳州苑」がある。

 その1か月後に、本件5,000万円が被告発人徳田虎雄、 同毅から被告発人猪瀬直樹に対し、供与された。 東京都の補助金の額は、一般歳出の約3割にあたる約1兆3, 3000億円に達し、中でも医療関係が突出しており、約7,0 00億円を占めている。

 なお、被告発人猪瀬直樹が、東京都知事に就任すれば、 病院許認可権および補助金の支払の全権を独占できることになる。 被告発人徳田虎雄および同毅は、これを狙って都知事に就任した暁には、許認可と補助金の支払をよろしく頼むと いう趣旨で、現金5,000万円を供与し、被告発人猪瀬直 樹はこれを収受したものと思われる。東京都知事と強いパ イプを持つことは、徳洲会グループにとっては最重要課題 であった。

3、 平成 25 年 11 月 26 日午後3時頃から、東京都品川区平塚 2-9-1-104 三井環事務所において、猪瀬直樹東京都知事らに対する事件で、週刊誌(青山註:週刊現代)の取材を受けた。 取材中、「徳洲会の内部の人物である」と名乗って、三井環 事務所の固定電話 03-3783-1148 宛に、電話があった。

 三井環が直接、電話応対をすると、「私は徳洲会の内部の人間である。猪瀬都知事は、口車を合わせてくれといって、本 人から直接、何回も電話を受けている。11月26日、猪瀬 知事が記者会見し、昨年の 11 月 20日付けの5,000万円の 借用書を示すなどして、個人の借入であると、会見したが、 その借用書は最近、知事自身が作成したものである。徳洲会には、借用書などはそもそも存在しない。」と訴えた。

 三井環が「名前を名乗ってくれませんか」というと、「それだけは勘弁してください。私の立場もあるので」と答えた。 上記通報のとおり、徳洲会内部には借用書は存在せず、被告発人猪瀬直樹は、口車を合わせてくれるように電話するなどして、罪証を隠滅している。 そもそも、現金5,000万円は裏金であって、借用書や領 収証などは存在しないものである。

4、 そもそも本件事件の発端は、平成25年11月22日、特捜部幹部が朝日新聞に、昨年11月20日頃に被告発人 徳田虎雄の指示により、同徳田毅が、議員会館で現金5、0 00万円を猪瀬直樹副知事に手渡したという内容の記事が大々的に報道されたことによる。 国家公務員法の守秘義務違反の犯罪にもなるにもかかわ らず、なぜ特捜部幹部がリークをしたのであろうか。

 考えられるのは、リークをして、風を吹かす場合と、猪瀬事件の捜査方針に関し、上層部と特捜部との意見の違い があった場合、特捜部幹部がリークをすることが考えられる。 いずれにせよ、朝日新聞の報道がきっかけで、他社も大々的に報道し、週刊誌も大々的に報道するに至った。 私が、第一回目に告発したのは、朝日新聞が報道したその翌日である。

 なぜ告発をしたのか。取材記者に対しては、猪瀬知事が 会見で大嘘をついているので、それに腹を立てて告発をしたと説明している。 その告発の真意は、「けもの道」が現在も生きているかどうかを検証するつもりであった。

 5、 「けもの道」については、月刊タイムズの2012年1 2月号に「検察の犯罪」というタイトルで書いているので、読んでほしい。

※ けもの道 三井 環(元大阪高検公安部長) - YouTube

 この「けもの道」によって、時の小泉内閣と検察の間で 貸し借りができたのである。検察は裏金づくりという最大 の弱みを内閣に握られたのである。そのため、政界捜査において、その裏金づくりの弱点を 突かれて、事件が挫折することもあった。

  その典型的な事件が日歯連事件である。紙面の都合で、日歯連事件の詳細は書けないが(権力に握られる検察 三井 環著 双葉新書)、要は2001年7月頃、高級料亭の「口 悦」で、橋本竜太郎元総理、野中広務元自民党幹事長、青木幹雄自民党参議院幹事長の3人に対して、日歯連会長から小切手1億円が手渡され、それを政治資金収支報告書に記載しないで、裏金に回したという事件である。 当時は、参議院選挙が間近で、国会では、診療報酬の改定が議論されていた。

 捜査をすれば、選挙運動資金であれば、公選法違反、診療報酬改定の働きかけであれば贈収賄事件に発展した。 当時の検事総長は松尾邦弘で、「けもの道」の当事者であった。

 当時は、「けもの道」の当事者である小泉内閣でもあった。野中広務には、平成14年3月頃、新都ホテルの野 中の事務所において、野中の依頼により、私は「裏金づく り」の実態と、「けもの道」の実態を話をしたことがある。 野中が松尾検事総長に対して、「裏金問題をどうしまし ょうか」とでも尋ねれば、橋本、青木、野中の起訴はあり 得ないし、結果はそのとおりになった。

 そして、贈収賄事件等の捜査は、松尾検事総長の指示により、打ち切られたのである。 それに反発した特捜部の検事が辞任したくらいである。 結局、「けもの道」を知らないで引退した村岡兼造だけが在宅起訴をされ、中途半端なまま、捜査は終結した。

 検察審査会は、青木、野中に対して、起訴相当の判断をした(当時は強制起訴の制度はなし)。 裁判官は、1億円の小切手を受領した3人に対しても、 起訴すべきではなかったかと、珍しく捜査批判をした。 この事件は、明らかに「けもの道」を利用して、捜査が途中で打ち切られた事案である。

6、 猪瀬東京都知事は、小泉元総理、石破自民党幹事長な どと人脈がある。当時、「けもの道」を知っていたのは、 「けもの道」の当事者以外では、当時の自民党政調会長麻生太郎(現在の副総理)と、野中広務くらいであった。

 現在では、多くの政治家が知っている。猪瀬知事は知らな いかもしれないが、「けもの道」を知っている大物政治家 が動いて、小津博司検事総長に、「裏金問題をどうしますか」 と尋ねれば、猪瀬知事の捜査が打ち切られる可能性は否定 できない。

 どのように捜査が進むか、私が注目しているところである。 平成13年11月に、当時の原田明夫検事総長が裏金問題に蓋をするため、記者会見までして、「検察の裏金問題は 事実無根である。

 そもそも存在しない」と、国民に大嘘を つき、「けもの道」を利用した結果が、日歯連事件のような、 捜査を中断せざるを得ない結果となり、現在も「けもの道」 が尾を引いているのである。 原田明夫がとった「けもの道」は、検察史上、最大の汚点として語り継がれることになるであろう。 現在の特捜部長はじめ、特捜部の人たちは、「けもの道」 を知る人はいない。