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ジャン・ユンカーマン監督


沖縄 うりずんの雨」A

試写会参加記


青山貞一 Teiichi Aoyama 池田こみち Komichi Ikeda

掲載日:2015年5月30日
独立系メディア E-wave Tokyo


 また沖縄本島、石垣島など八重山諸島における1)日本軍の慰安所、2)米兵により性暴力発生被害発生場所を落とした地図が試写会全員に配布されました。
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 米兵により性暴力発生被害発生場所の数の多さに驚かされましたが、日本軍の慰安所が当時、140箇所もあったことにもおどろかされました。

 本島(数10箇所、以下の地図参照)はもとより、宮古島(15箇所)、伊良部島(2箇所)、石垣島(6箇所)、西表島(3箇所)、小浜島(2箇所)、伊江島(2箇所)、南大東島(2箇所)、伊江島(2箇所)、渡嘉敷島(1箇所)など、資料館の館長は、日本軍のいるところどこにでも慰安所はあったと映画のなかで言明しています。

 なお、以下の地図は沖縄本島の中南部を拡大表示しています。
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出典:試写会での配付資料のうち沖縄本島の中南部を拡大表示
原典:WAM,女たちの戦争と平和資料館
    
 以下の沖縄県内の慰安所の分布図は、おそらく上記の地図の出典となった地図と思われます。

沖縄県内の慰安所(1944〜1945年)

出典:太田昌秀『死者たちはいまだ眠れず』(新泉社2006年08月)p116―118
 
 上記の分布図で単位面積あたり著しく慰安所の数が多い宮古島について別途調べて見たところ、凄まじい実態が分かりました。以下は宮古島の慰安婦問題の実態を詳報する動画です。ただし、これは「沖縄 うりずんの雨」の映画の中には含まれていません。

 ◆宮古島の慰安所・戦場のうた / 元“慰安婦”の胸痛む現実と歴史

 また12歳の女性をレイプした3人の米軍男性のその後を追跡し、そのうちの一人の単独インタビューにこぎ着け、米国まで追跡し、単独インタビューし非常に貴重な証言をえています。

 なお、以下は 「うりずんの雨」を見ての池田のメッセージです。

 2時間半があっという間に過ぎたような気がしました。頭で知っていること、気持ちで理解していることを映像と証言によってさらに強く全身にたたき込まれた気がしました。

 なかでも、第3部のタイトルともなっている「凌辱」(りょうじょく)、という言葉が重くのしかかりました。辞書を見ると次のようにあります。

 【1】人をあなどり、はずかしめること。
 【2】人を暴力ではずかしめること。特に、暴力で女性を犯すこと。

 Wikipediaには次のようにあります。

 【1】プライド・個人の尊厳を傷付ける言動に出ること。
 【2】女性に対し暴行の手段に出ること。→性的暴行・婦女暴行・性的虐待・強姦

 たしかに、第3部では、沖縄で多発する米兵による性的暴行にスポットをあてながら、例え米兵の犯人が特定された場合でもまともに罪を問われることも無く刑に処せられることも1つのケースを除いてないことを被害者側だけでなく米兵の証言からも見せつけていました。なかでも当時12歳の少女が暴行された事件は、今も多くの人々の記憶に残る悲惨な事件であり、それをきっかけに反基地運動が県民全体に広がったことも忘れていません。

 しかし、このドキュメンタリーは、全体を通じて、沖縄そのものが米兵や米軍、米国から凌辱されているだけでなく、沖縄県民以外の日本人、もっと言えば、日本政府、日本という国に凌辱され続けている実態を描いていると感じました。

 上記の辞書にある【2】の意味、すなわち、性的虐待や暴行は、沖縄がこの100年間余りの間、中でも第二次大戦以降に受けてきた計り知れない「凌辱」の一部に過ぎないのです。

 普天間基地の辺野古移転に対する県民の民意がこれほどまでに凌辱されていることへの県民の怒りを私たち本土の人間はどこまで共有できているのだろうかと思います。

 私自身がこの間、少しだけ関与してきた返還された基地の跡地における枯葉剤やダイオキシン問題についても同じです。沖縄が直面している苦悩をメディアはどれほど伝えているでしょうか。政治は沖縄を未だに「捨て石」にしているのではないかと思います。

 この映画を見て改めて沖縄の人々が受けてきた「凌辱」について知り、その痛み、苦悩と怒りを共有することが私たちの義務であり、その上で一人一人が何ができるのか、何をすべきか胸に手を当てて考えたいとい思います。,