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官製談合と随意契約
(1)

〜「官」から特定の「民」に
金が流れる小泉改革〜


青山貞一

2006年4月15日



 
国土交通省や日本道路公団と民間企業との間での橋梁工事をめぐる官製談合事件が一昨年から昨年にかけて日本中を駆けめぐった。これは橋梁だけでなく、最近ではトンネル排気設備に至るまで官製談合が蔓延している。

◆トンネル排気事業談合 荏原製作所が幹事役か NHK

 昨年秋からは、防衛庁と民間企業との間で永年にわたり信じられない官製談合が全国規模で行われていたことも発覚した。

 霞ヶ関の省庁に絡む談合(官製談合)は全国規模で頻発、蔓延している。公正取引委員会が、たびたび勧告、公表、命令などをだしても、いっこうに談合は収まるところを知らない。

 なぜか?

 その答えは簡単である。行政側、公団側が談合を容認してきたからだ。単に容認するだけでなく、積極的に業務、利益の配分に役所側が関与してきたからだ。まさに官製談合そのものが日本中に蔓延しているからだ。

 防衛施設庁をめぐる官製談合では、天下りした元官僚を受け入れ先の企業がどう処遇、優遇しているか、その度合いによって防衛施設庁から関連業者に行く業務の発注量を決めていたと言うから、あにはからんやである。昔の共産主義国家ではあるまい。
 
  まさに小泉改革とは名ばかり、本来、率先して行われるべき事を後回しにし、、「改革」だと口先ばかりの「改革」を叫んできた小泉政権は、本来、最優先すべき事をまったくしてこなかったツケだ。

 ところで、このところ霞ヶ関の省庁から特定の財団法人、社団法人などに天下りする「民間」組織への巨額な業務発注が問題となっている。

 本来、一般競争入札とすべき業務が、指名競争入札はおろか、特命随意契約で永年垂れ流されている。その実態が最近になって明らかになってきた。

 ことの発端となった環境省に至っては、発注業務の92%(他の調査では94%超という報告もある)が特命随意契約であることが判明した。しかも、発注先組織の60%以上に、環境省の官僚が天下っていることも判明した。

◆鷹取敦:データでみる環境省随意契約の不透明な実態

◆随意契約:省庁所管法人と16400件,5400億円に 毎日新聞

◆環境省の随意契約割合92%、東京新聞「総合・核心」

 省庁の中では、ついこの間まで地味で目立たなかったのが環境省だ。しかし、同省は、それをいいことに自分たちの天下り先をつくるために、特定の財団、社団、コンサルタント、シンクタンク、銀行系調査会社、企業などに、せっせと、集中的に業務を「特命随意契約」で発注していた。

 これは社会的に到底許容できることではない。どこのコンサルタントでもシンクタンクでも出来る仕事を特命随意契約で天下り先組織に高値で発注したことも分かっている。これでは自由な競争どころか、民業圧迫、役人天国のやりたい放題ではないか。すべて官僚が幅を利かす共産主義社会顔負けの行状である。

◆池田こみち、鷹取敦:全く不可解な環境省の特命随意契約理由

 このように、カラスが鳴かない日があっても、新聞紙上で官製談合や随意契約、天下り問題が記事にならない日はないと言って良いだろう。

 あまりにも問題、事件が多すぎることもあり、何でもすぐに忘れる日本人はこれら霞ヶ関をめぐる犯罪的な事件を看過しがちだ。しかし、もし、小泉政権が本気で「改革」を唱えるのなら、法制度、手続面、罰則面ですぐさままさに改革をすべきである。その場しのぎを繰り返してきた結果、霞ヶ関では官僚らのやりたい放題がまかり通っているのである。

 まして官僚の身内やそれに近い者を集めて談合防止手引き書をつくって、果たして何の意味があるのだろうか? 国がしたり顔で都道府県に手引き書を示したところで、長野県はじめ先進自治体はとっくに制度、手続き改革を具体的に行っている。笑止千万ではないか。

 さらに今になって首相が、「原則は一般競争入札」などと言っても何の意味もない。アホも休み休み言えといいたい。

◆池田こみち:環境省の「談合防止手引書」は果たして有効か

◆随意契約は見直し必要 首相「原則は一般競争」(西日本新聞)

 当然のことだが、霞ヶ関の省庁から「民」に業務発注される各種工事や調査業務などの原資は、税金である。

 その税金を自分たちが天下ったり先輩たちがすでに天下っている独立行政法人、特殊法人、財団法人、社団法人さらに特定の大企業に、何らまともな審査も、チェックも、競争もないまま垂れ流していることは、小泉政権の最大の課題ではないかと考える。

 業務発注の不公平、本来の民業圧迫に加え、業務発注が歪められることによる国家的な経済損失は、計り知れないからだ。

、しかも、多くの場合、およそまともな業務遂行能力を持たない組織に、特命随意契約でバンバン業務が流れている現実がある。

 特命随意契約で霞ヶ関から天下り先の「民」に流れた仕事とカネは、事務局費、管理費などの名目で委託額の数10%をピンハネすることで天下りの高額の給与などに化ける。

◆鷹取敦:環境省随意契約に依存する(財)日本環境協会

 その後、実際に業務を行う企業、コンサルタントなどに再委託されている。実質的にろくな仕事をしない天下り組織や窓口会社にマージンなどでカネが流れ、最終的に仕事をする組織は予算ギリギリのところで業務をしなければならない。さらに実際に仕事をする組織から仕事をしない組織にカネをキックバックさせている現実もある。

 霞ヶ関やその出先の役人達は、官製談合や随意契約問題が発覚しても、そのときだけじっとおとなしく我慢していれば、そのうち忘れ去られるだろうとたかをくくっている。

 「官から民へ」を改革の旗頭としてきた小泉政権だが、これでは、まさに官から民とは、官から特定の民に仕事とカネが流しす、まさに政府公認の巨大官製談合システムではあるまいか。

 小泉政権がしてきたことの多くは、「改革」どころか、「官」から特定の「民」に広義の意味での利権を集中して流すことに他ならない。郵政民営化もまさにその変種にすぎない。事実、郵政会社は今や民業を圧迫する一大特定「民」となっていることからも明らかである。 

 小泉政権が本当に改革を志す気があるなら、まず、霞ヶ関及びその関係団体において「官製談合と特命随意契約」を根絶すべきである。

つづく