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高齢化する農村が
「葉っぱ起業」で甦る!


横石知二氏

2006年8月22日


出典 一新塾ニュース 【第247号】
 




一新塾有志による徳島県上勝町視察(05年11月)はこちら!
http://www.isshinjuku.com/04i_hassin/event/sisatu_2005kamikatucyou.html


 先日のニュース報道で、日本の老年人口(65歳以上)の割合が21・0%で世界最高になる一方、年少人口(15歳未満)は13・6%で最低となったことが、2005年国勢調査の抽出速報集計結果で明らかになりました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060630-00000073-kyodo-pol

 世界に先駆けて日本は少子化、高齢化の時代の試練に飛び込んでいくことになります。

 そんな中、高齢者が働きながら、お金も稼いでイキイキと元気に暮らしている町があります。徳島県の上勝町です。

 上勝町は人口2,200人、町の面積の86%が山で、四国の町がつく町の中で一番人口が少なく、高齢化率は45%を超えています。しかしながら、お年寄りが主役となって高級料亭向けに季節の花や葉を出荷する「いろどり事業」が年間販売額が2億5,000万円を超えるまでに発展、出荷元の農家のおばあちゃんの中には70歳や80歳の方でも数百万を稼ぐ方もいるといいます。

 一新塾第18期の第一回目の講義では、上勝町より「いろどり事業」の立役者である横石知二氏をお招きし、従来の発想を越えた方法で事業を産み、地域を元気にしてきた横石さんの姿勢から学ばせていただきました。
以下、講義録の一部をご紹介させていただきます。

 
一新塾講義ノート

  横石知二氏 (株式会社いろどり代表)講義録

 
テーマ
 
高齢化する農村が「葉っぱ起業」で甦る!

 ≪横石知二氏プロフィール≫
  1958年、徳島県生まれ。徳島県農業大学校園芸学科卒業後、上勝町農協に営農指導員として就職。16年連続で農産物売り上げを伸ばす。

 91年に上勝町役場に転籍。みかんやすだちしか生産していない町の農業形態を変えようと干しいもや椎茸などさまざまな挑戦の末、町おこし事業として「つまもの」の生産・販売を考えつく。

  2002年役場を退職し、(株)いろどりの専務に就任。生産ネットワーク  構築のために同報ファクスに加えてパソコン導入も果たした。


■上勝町の第1号の「よそ者」として

 私が徳島から26年前(1980年)の上勝は、今の上勝とは全く違いました。

私は徳島市で生まれまして、上勝町にスカウトをされて行くことになりました。前の前の町長と組合長が相談して「誰か外から入れんか」ということだったんです。しかし当時は大反対。

 「どうして地元に人を雇うのに地元の子を雇わんのだ?」 「よそ者を入れて税金を使うとはなんちゅうことだ。」ということだったんですね。

 しかし、その町長の方は『地元の人間では事業をできない』と言ったんですね。「田舎地域というのは都会と逆で、皆知っている、みんな親戚のような関係だから事業を推進してゆくことはできないんだ。」と。これを26年前に言ったわけですね。

  少しだけ種明かしをしますと、今、上勝町が元気なのは、128名というUIターンが入ってきています。Iターンの方は約50名近く入ってきているんですが、ゴミを担当しているのはデンマークから帰ってきた24歳の女の子。

 町内の御茶屋さんとかも、神奈川や東京の子、役場のホームページもすごくきれいにできてると思いますが、これも神奈川の子。もう全国から集まってきて上勝町で活躍したいというメンバーがぞろぞろと、こう来るわけですね。そして地域というのが運営されているわけです。

 これが、26年前、第1号で私が行ったというわけです。(笑)

■田舎では、仕組みがなければ人を変えることはできない

 東京では全然逆だと思いますが、田舎では絶対に仕組みがなければ人を変えることはできないです。長年の生活の習慣から抜け出せない。

 日本の農村が結局全部与えられるという環境の中にいる。誰かがやってくれる、そういう環境の中で講演会とか視察とかを実施しても、家に帰ったら元通りで何も変わることはありません。全部その場限りで終わってしまいます。

 上勝が一番強くなったのは、「自分で考える」ということをできるようになったんです。

 同じ道を通る習慣というのは、考えなくていいし、安心だし、変えたくないんです。「変えとうない」んです。だから、よそ者が入ってきたら追い出し、自分を守ろうとします。これが都会と田舎の大きな差です。

 「変えとうない」「安心」「考えなくていい」違った道に絶対に進もうとしない。こういう環境にどっぷり浸かっとったら、一回講演会聞いて、自分の考え方が変わるということはないです。

 だから、仕組みが必要なんです。仕組みによって「違った道に進んでみよう」となるんです。

■地域リーダーから地域プロデューサーの時代へ

 ではなぜ、仕組みによって「違った道に進んでみよう」となるのかというと、これです。

 今までは地方は「組織」という形でリーダーがおったんです。県庁の職員さん農協さんとか。そういう組織の中にしっかりした夢を持ったリーダーがおって「俺についてこい」と引っ張っていたんです。

 それが、今の時代は99パーセント以上、そうできる環境ではなくなってきました。そして、それに変わるものが今ない。だから一人ひとりの力をつけて、地域全体をあげて活性化してゆく、、、、この方法しかないと私は思いました。

 今、いくら市町村や役場で何かをやろうとしても、ものすごく足をひっぱられてしまいます。出る杭が打たれ、足をひっぱられ、「やりたいのにやれないという環境」になっているわけです。

 だから、従来の地域リーダーの仕事をしていた人が、地域プロデューサーの仕事をする。個々の力をつける仕組みとして作りあげて地域全体を持ち上げてゆく、その方法に変えたのが非常にうまくいきました。

■「自分のこと」にならなあかん

 私は、“町の防災無線の活用による電波でファックスを送信する”仕組みをつくり、高齢者専用パソコンを開発し、葉っぱビジネスの道具として誰もが使えるようにしました。

 そうすると、「自分のことにならなあかん。」ということになってきて、問題意識を持つようになってきました。のんびりした生活から、脳を鍛えなあかん、と。私が上勝に行った頃のおばあさんは当時60でしたが、今は80半ば。今の方がはるかに能力が高いです。全然違います。これほど違うかと思うくらい違います。

 与えられた仕事「このことをしてよ。」と言われ「はい」といって「1+1=2」の仕事をする。そうじゃなくて、「0のことを自分で1に」しようとする。この考える力を毎日もってゆくということが、頭を非常によくしてゆくわけですね。血の循環がよくなってきて顔にテリが出てきます。若い子でも、目的を持たない子というのは顔が「大丈夫かな」と思うような顔になってきますが。

 人は、頭を使い、自分のことと思うようになってくると”テリ”がでてきて、行動が伴ってきます。みなさん、年寄りというのは脳はぼけると言いますが、どんどん頭は使えば使うほどいいわけです。