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トキメキ、生き活き
オンリーワンの上勝町A

青山貞一


2007年3月9日


無断転載禁


 もくさんで森西さんとの議論を終える。

 「ゼロウエイスト宣言」の中核、ゴミ35分別(資源化)で全国的に有名な日比ヶ谷ゴミステーションに行く。


上勝町のひとつのシンボル
日比ヶ谷ゴミステーション

 周知のように、上勝町は日本で最初にゼロ・ウエイスト宣言をした自治体。「ゼロ・ウエイスト」とは、明確な目標年を定め、ごみの発生量そのものを減らしていこうという考え方。

 実はこの宣言は、私たち環境総合研究所と大いに関係がある。

 その昔、ゼロ・ウエイスト政策を日本でも広めようとする私たち環境総合研究所とグリーンピース・ジャパンは、その道の第一人者、米国のセントローレンス大学のポール・コネット教授を日本に呼び、東京のサンシャインビル(豊島区)の会議室でゼロウエイスト・シンポジウムを開催した。

 シンポジウムでは、ポール・コネット教授(セントローレンス大学)、青山貞一(環境総合研究所)、池田こみち(環境総合研究所)、佐藤潤一(グリーンピース・ジャパン)の4人が講演した。


サンシャインビルでのゼロ・ウエイスト・シンポジウム
で講演するポール・コネット教授

 このサンシャインビルでのゼロ・ウエイスト・シンポジウムが大きなきっかけとなり、佐藤さんがゴミ34分別を実践、ユニークな活動をしている上勝町にポール・コネットさんを連れて行き、結果的に上勝町がゼロ・ウエイスト宣言をすることになった。
 
 ゼロ・ウエイスト・アカデミーは、「ゼロ・ウエイスト宣言」した上勝町が、その目的を達成するために、行政、市民、事業者等がゴミ=資源とみなし、3R(ゴミの発生抑制、再利用、資源化)をすすめるための環境学習の場、いわば実践学校である。

 ゼロ・ウエイスト・アカデミーはそのホームページで次のようゼロ・ウエイストが目指すものについて説明している。

@焼却中心のごみ処理政策からの脱却

 現在日本では、国土の狭さや、衛生的な観点から家庭ごみのうち約7割が焼却処理をされています。焼却処理を中心としたごみ処理政策によって、各家庭にはゴミ袋という名のブラックボックスが置かれ、一緒くたにして家の外に出しておけば収集車が持っていってくれるので、人々はそこにどのくらいの資源の無駄使いがされているか、またその処理に必要なエネルギーとお金にまで思いを馳せることもありません。お金を出して買ったものでもいらなくなればぽいっとブラックボックスに投げ込めばいいのです。

 ゼロ・ウェイストはまずこのようなブラックボックス状態の「出口」(=ひとつのものが不要になって人々の手を離れる瞬間)にメスを入れることから始まります。焼却・埋め立て処理を最終手段として、可能な限りの再利用や再資源化をまず第一に考えます。

A拡大生産者責任の制度化

 リサイクルできない製品や、リサイクルができても分別に手間がかかりすぎる製品、あるいは有害な物質を含んだ製品を作りっぱなしにしている企業に対し、現在自治体の請け負っている処理の責任を嫁す制度を求めていきます。このことは、ごみの原因となる製品のライフサイクル全体を見直し、商品のデザイン・設計の段階からごみとなるもの、有害なものをなくしていくことにつながります。

 さらに、

始まっています。

 徳島県上勝町では、2001年より34種類もの分別を実施しています。その結果焼却されるごみは年々減少し、約80%のリサイクル率を達成しています(2004年現在)。しかし34種類に分別をしても、再資源化できないもの、どうしても焼却あるいは埋立をしなければならないものが日々の生活の中からでてきます。そのような製品のリサイクル手段を創出すること、あるいはデザイン・材質の変革を求めていくことで、燃やされるごみが少なくなり、また分別もしやすくなると考えられます。

こうして進める!ゼロ・ウェイスト

以上のように、焼却をやめることでごみ問題の根本的な解決をせまり、その過程で材質・設計を重視した製品を作り上げていく。その推進役となるのが「ゼロ・ウェイスト」なのです。

私たちの生活の出口とも言えるごみには、そのありかたが表れます。そこには環境保護という視点だけでなく、あらゆる要素が含まれています。ゼロ・ウェイスト実現のために、私たちはごみ処理という観点からだけでなく、教育、福祉、経済、国際交流、芸術、情報化の推進といった多方面から取組みます。


 下は、もくさんの真ん前にある日比ヶ谷ゴミステーション。


分別収集拠点、日比ヶ谷ゴミステーション

 この日比ヶ谷ゴミステーションでは、現在、35分別をしている。

 ひとくちに35分別と言うが、東京などの大都市では最大でも10数種類がせいぜい。たいへんなことだ。


青山貞一:公共政策論講義でのパワーポイントより

 高齢者世帯を含め上勝町民は、現在、ゴミを35に分別し、このステーションにもってきて、それぞれのカゴに入れる。カゴの上には、分別することで何がどう改善されるのかのわかりやすい説明がある。この説明文がなかなかおもしろい。



 ※ 上勝町の35種類の分別の詳細

 回収された年間350トンの内、約8割の物が全国各地の工場に送られ、新たに資源として活用されている(=リサイクル)。

 上勝町のゴミ資源化率は、約8割である。日本全体のリサイクル率はわずか18%程度である。

 分別されたゴミ=資源は、その地元徳島県だけでなく各地にもらってもらう(あるいは買ってもらう)里親を探し、そこに引き取られてゆく。





 ゼロ・ウエイスト・アカデミーには、行くたびに新たな試みをしているが、今回は再利用(リユース)で「くるくる・ショップ」プロジェクトをのぞいてみた。


リユースショップ、くるくるの看板

 「くるくる」では、いらなくなった食器、家具、衣類などを再利用している。


くるくるショップの一部

 おもしろいのは下の写真にあるように、鯉のぼりを再利用した上っ張りだ。



 夕方、そのゼロ・ウエイスト・アカデミーが主催する講座で笠松町長の挨拶のあと、青山が冒頭説明、環境総合研究所副所長の池田こみちさんが「カナダ・ノバスコシア州とハリファックス市」における「ゼロ・ウエイスト」の社会実験について講演した。


挨拶する笠松上勝町長

 青山は上勝町と「ゼロ・ウエイスト」や私たちとの「なれそめ」についてエピソードを紹介した。


冒頭説明する青山貞一

 池田さんは、カナダ・ノバスコシア州とハリファックス市がこの間、全面的な州民、市民参加で行ってきた「ゼロ・ウエイスト」について約1時間講演した。


カナダ・ノバスコシア州の循環型社会づくりの
講演を行う池田さん

 青山の調査、分析、評価によれば、主要先進国における一人当たりのゴミ処理における税金負担額は、日本が一番高い。

 カナダのノバスコシア州が一番低く、上勝町はその中間であることが分かっている。

 また焼却炉などゴミ処理用施設建設費は日本がダントツに高い。日本には一般廃棄物用だけでまだ約1500カ所もの焼却炉・溶融炉があるが、ノバスコシア州はすでに脱焼却を達成し一般廃棄物用の焼却炉はない。

 上勝町内では焼却が停止されているが、紙おむつなど一部のものを町外で焼却しており、それがノバスコシア州より日常的なゴミ処理関連費用が高くなっている主要な原因である。


熱心に聞き入る町長と町民

 講演後、質疑。さすが現場主義、実践重視の上勝町、質問の内容にもリアリティーがある。

 私と池田は、すでに5回、ノバスコシア州に行き、また2003年にはノバスコシア方式の中心にいたバリーさん、そして昨年10月にはノバスコシア州、ハリファックス市から2名を日本に呼ぶなどして、詳細に至るまで実態を調査している。その経験から質問に答えた。

 世界中どこでも一般廃棄物で一番重量が多いのは、生ゴミだ。ノバスコシア州では農村部では各戸で庭先コンポスト化を、また都市部で生ゴミを堆肥化する工場を20カ所もっている。

 質問はその堆肥化問題に集中した。池田さんは、 日本で堆肥化を話すと、すべて農業用堆肥と考えられるがノバスコシア州では堆肥は土壌改良材とするものから農業に使えるものまで何段階かある。州政府が指針をもっており堆肥の品質検査を定期的にしている、と話した。

...

 ゼロ・ウエイスト・アカデミーでの講演と質疑終了後、宿泊先の町営の第三セクター、月ケ谷温泉「月の宿」(上勝町で最大の宿泊先)に私たちはチェックイン、その後、笠原町長、松岡夏子さん、ゼロ・ウエイスト・アカデミー理事長、上勝町収入役等などと懇親会を開催した。


町営の第三セクター、月ケ谷温泉「月の宿」


懇親会まっただなか。青山のリクエストで
理事長と町長が上勝町歌を合唱。

 つづく