エントランスへはここをクリック   


え〜!
科学技術振興予算を増額?
〜パソコンでSPEEDIは可能A〜
青山貞一 Teiichi Aoyama
東京都市大学大学院教授
環境総合研究所所長
掲載月日:2011年11月15日
独立系メディア E−wave
 無断転載禁


パソコンでSPEEDI!

 図1をよくみると、(財)原子力安全技術センターが最初にスパコンを導入した時期の1990年代のスパコンの速度は、10〜100Gflopsである。おそらく当時、スパコンの価格は数10億円と推定されるが、実はこの速度、現在、Intel社から売られている最新CPUの速度、たとえばIntel Core i7 4コア 3.5GHz の速度(112Gflops)とほぼ同等なのである!!


表1 パソコンの年代別演算速度

 上の表1に従来のパソコンの演算速度を示す。現在Intel社から売り出されている第二世代のCPUである Core i5 2500KやCore i7 2700Kシリーズの演算速度は上記の値の100〜200倍高速になっている

 ところで、私たちの研究所(環境総合研究所)が研究開発したSPEEDIとほぼ同じ構成をもつ3次元流体計算プログラム(有限差分数値計算法)で使っているコンピュータは、本体価格わずか5万円台のパソコン(CPU:Intel Core i5 2500K、メモリー: 8GB、HDD: 2TB)である。Intel の第二世代Sandy Bridge CPUのうち、末尾にKが付くCPUはオーバークロックが可能であり、2500Kの場合、付属の空冷ファンだけで最高5GHzのクロック周波数で演算できるという秀逸なものだ!(下の図2、図3を参照)。



図2 インテルの最新 Sandy Bridge CPU
Intel Core i5 2500Kの外観 出典:インテル社

 下の写真は、 5.2GHzのOC(オーバークロック)で稼働中のIntel Core i5 2500Kである。現時点でパソコンCPU最高速である。


図3 5.2GHzのOC(オーバークロック)で稼働中のIntel Core i5 2500K


本体価格5万円のパソコンでSPEEDIの機能を実現

 私たちがごく最近使用しているBTOパソコン(CPU:Intel Core i5 2500K、メモリー8GB、HDD2TB)のCPUは、ほぼIntel Core i7 4コア 3.5GHz と同等であるから、何とSPEEDIが最初に数10億円かけ導入したスパコンと現在の本体価格5万円台のパソコンで同じ速度がだせることになるのである。

 図4と図5がBTOパソコン(CPU:Intel Core i5 2500K、メモリー:8GB、HDD:2TB)の実物の写真である。写真中インテルと書いてある部分が心臓部のCore i5 2500Kである。


図4 3次元流体シミュレーション用に開発したBTOパソコン
    (CPU:Intel Core i5 2500K、メモリー:8GB、HDD:2TB)
   撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


図5 3次元流体シミュレーション用に開発したBTOパソコン
    (CPU:Intel Core i5 2500K、メモリー:8GB、HDD:2TB)
    撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8

 その後、(財)原子力安全技術センターが2005年に導入したスパコンは、さらに上記の100倍から1000倍も早いはずだが、実はその速度は、パソコン同様並列処理方式による速度アップが中心であり、CPU単体での速度は、あたまうちとなっているはずだ。

 私たちの研究所は、かつて(財)原子力安全技術センターが数10億円かけ導入したスパコンとほぼ同等の速度を、現在、わずか5万円の高速パソコンで実現している。しかし、センターがさらに数10億円かけ導入した最新スパコンをもってしても福島原発事故時に稼働しなかったことからも、ただ予算を投入しスパコンの速度を上げれば、実用に供せるとも思えない。

 ひとつは、技術の問題であり、すでにコンピュータの単独CPUの計算速度はとっくに頭打ちになっており、現在のスパコン、パソコンともに、いわゆる並列処理技術により、従来のCPU能力の10倍、100倍、1000倍を達成しているという。これは一言で言えばハードよりソフト(アルゴリズム、プログラム)の問題であり、頭の使い方の問題である。

 事実、長崎大学は多くのパソコンCPUを使い並列処理技術を駆使することで、スパコン並みの速度を実現している。

◆スパコン開発で「ゴードン・ベル賞」 
  長崎大助教ら受賞 「国内最速」安価で実現


 長崎大工学部の浜田剛助教(35)のグループは26日、国内最速のスーパーコンピューターを開発し、米電気電子学会の「ゴードン・ベル賞」(価格性能部門)を受賞した、と発表した。

 同賞はスーパーコンピューター分野のノーベル賞といわれ、市販の画像処理装置(GPU)を使って安価に高速計算を実現したのが受賞理由。同部門の受賞は8年ぶりという。

 政府の新年度予算概算要求の事業仕分けでは、次世代スーパーコンピューター開発予算(267億円)が大幅削減とされたばかり。浜田助教は「高性能の計算機は重要だ」としながらも、巨費を投じた従来の開発方針について「素直にいいとは言えない。方向性が逆」と述べ、低価格化が可能との見方を示した。

 浜田助教らのスーパーコンピューターはGPUを760個並列につなげたもの。1秒間に158兆回の計算ができ、国内最速の「地球シミュレータ2」の同122兆回を上回ったという。

 GPUを大量につなげられるプログラムの開発が成功のカギとなり、数百億円規模が必要とされる開発費用を3800万円に抑えたという。天体物理学などの複雑な計算での活用が見込まれる。

出典:http://alfalfa.livedoor.biz/archives/51529842.html

 実はこの長崎大学の浜田助教らが開発したスパコンのもととなる760個のGPUは私がしょっちゅうパソコンの部品やBTOパソコンを購入している秋葉原の某部品販売・BTOショップなのである!

 実際、私たちも、本体価格5万円の複数の高速パソコン(スーパーパソコン)とソフト(アルゴリズム、プログラム)を工夫することで、ほぼ実時間(リアルタイム)に放射性物質の移流、拡散をシミュレーションする理論を構築している(残念ながら、青山らが3月9日から3月18日までイタリアに出張しており、3月12〜15日の事故当時、日本にいなかった)。

参考
◆青山貞一:EBTO「スーパーパソコン」を駆使する時代の到来

つづく