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東京大気汚染公害裁判
全面解決報告集会
参加記(1)


青山貞一
鷹取敦

掲載月日:2007年11月17日

無断転載禁


 今日、2007年11月17日土曜、青山や鷹取も証人出廷した東京大気汚染公害裁判全面解決報告集会が東京流通センター(TRC)であり、招待を受け参加した。参加者は推定で1000名近くである。

 私(青山)がこの東京大気汚染公害裁判で証人となったのは、第一次訴訟(1996年5月、東京地裁、原告99名)であり、1999年9月のことである。

 東京大気汚染公害裁判は、その後、第二次、第三次と最終的に第六次(2006年3月40名)まで提起され、原告の累計は実に633名に及んだ。そしてこの間、108名の原告が各種の呼吸器疾患などで亡くなっている。鷹取は二次以降に証人出廷した。


東京流通センター(TRC)で2007年11月17日開催された




壇上の挨拶を聞く、西順司原告団長(左) 撮影:鷹取敦


報告集会で挨拶する西順司原告団長 撮影:鷹取敦

 本裁判における原告は東京に居住する喘息患者などの住民である。他方、被告は国、東京都、首都高速道路公団そしてトヨタ自動車をはじめとするディーゼル自動車メーカー(トヨタ・日産・三菱・マツダ・日産ディーゼル・いすゞ・日野)である。メーカーは国内でディーゼル車を製造・販売している会社を対象としており、ホンダは含まれていない。


会場を埋めた原告ら
撮影:鷹取敦



会場を埋めた原告ら 撮影:鷹取敦


全国から集まった支援者 撮影:鷹取敦


参加した原告の方々 撮影:青山貞一
 
 まず本裁判における請求の趣旨は、

 (1)汚染物質の排出差し止め、

 (2)損害賠償の請求がある。請求額は1次訴訟20億円、2次訴訟21億円、3次訴訟29億円、4次訴訟47億円、その後、5次、6次まで。

 訴訟類型は以下の通り。

 (1)国、東京都:国家賠償訴訟

 (2)自動車メーカー:不法行為による損害賠償請求

 次に上記請求の原因は以下の通り。

 (1)国、首都高速道路公団、東京都、の道路から発生する大気汚染に付き幹線道路の設置管理者としての責任、

 (2)国、東京都が公害規制を怠ってきたきた責任、

 (3)自動車メーカーが排ガス対策を怠って汚染物質を大量に排出する自動車を製造してきたことが不法行為である。

 主な争点は以下の通り。

 (1)自動車排ガスと疾病との因果関係、

 (2)国、東京都など道路設置管理者の責任、

 (3)汚染の範囲、面的汚染の存在、

 (4)自動車メーカーの責任、

 (5)汚染排出量の差し止め

 さらに裁判の経過は以下の通り。

 提訴までの準備段階が1993年9月から1996年5月までとなっている。1995年6月18日に提訴方針を決定。

 1996年5月から2002年10月までが提訴から第一次訴訟判決までとなる。私(青山)が証人出廷したのは、1999年9月である。

 なお第一次提訴は1996年5月31日である。そして2002年10月29日に第一訴訟判決があった。この判決内容は原告側に納得できない不当判決であり控訴する。

 2002年11月から2006年9月は第一次判決から東京高裁までの結審の時期である。この時期にトヨタ東京本社前座り込み始め第六次までの提訴が行われる。

 2006年9月27日、東京都知事が医療費助成制度創設を表明する。その翌日、東京高裁が結審後に、「早期に抜本的・全面解決」を求める勧告を出す。

 2006年2月から2007年8月までは、医療費助成制度、メーカーの財源負担、首相官邸への直訴行動、トヨタ東京本社前無期限、24時間座り込み能動が行われ、東京高裁が和解案を提示する。

 そして2007年8月8日、東京高裁、東京地裁それぞれで和解条項が口頭で示され最終的に和解が成立した。

 ......

 東京大気公害裁判は控訴審の東京高裁で2007年6月に和解勧告骨子が裁判長から示され、同年8月8日に和解調書ができあがっている。それぞれ長文であるが以下に和解に至各種文書を示す(いずれもPDF)

 ご覧頂くと分かるが。和解骨子は骨子とはいえ非常に膨大なものである。

 @医療費補助制度の創設、
 A環境対策の実施、
 B解決金の支払い、
 C連絡会の設置

の四つから構成されている。

 和解内容案は、Aを前提に、Bとしてトヨタを中心に自動車メーカーが12億円を原告側に解決金として支払う、@の医療費保障制度はその資金として自動車メーカーが5年間で200億円、当初33億円を拠出することなどとなっている。

 Aの項目は膨大なものだが、ひとつの目玉として欧米ですでに規制の対象となっているPM2.5(超微粒子)の規制にむけた体制づくりがある。

 和解条項で、都は都内全域で全年齢を対象にした自己負担なしの医療費助成制度を創設し、国と首都高、メーカーも財源を拠出する。

 ただし、助成対象はぜんそくのみで、公害健康被害補償法や都条例(十八歳未満)でも対象にしている慢性気管支炎と肺気腫を含んでいない。制度も、都は五年後に見直す方針となっている。

 解決一時金は、メーカーは総額十二億円を原告側に支払う。

 さらに、国、都、首都高は公害対策を実施。国は、大気汚染物質の微小粒子(PM2・5)について検討会を設置し、環境基準の設定を含め検討する。東京都は幹線道路への植樹帯設置や大気観測体制の整備、自動車交通総量の削減、低公害車の普及促進をはかる。

 国側が和解協議で固執していた「環状道路の整備」は、和解条項に盛り込まれなかった。

 和解条項では、和解の円滑な実施に向け、関係者が意見交換する連絡会を設けることを明記した。

(2)につづく