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世論操作紛いの
NHKの首相参拝
欠陥アンケート!

青山貞一

2006年8月16日


 千葉県議会議員(無所属市民の会)の吉川ひろし氏から以下のメールが届いた。内容は、NHKが8月15日の夜に放映した「アジアの中の日本」という番組の中で実施した「首相が靖国神社に参拝することの是非」に関する生アンケートに関するものであった。


皆様へ・・・

 8月15日の夜にNHKが「アジアの中の日本」という生番組を放映しました。ご覧になった方も多いと思います。さて、その番組の中で、「生アンケート」が実施されました。設問は「首相が靖国神社に参拝することの是非」でしたが、結果は以下の通りでした。

参拝に賛成・・・63%
参拝に反対・・・37%

 私は、この生アンケート調査結果が、「携帯電話からに限った」ことで大きな疑問を持ちました。ご承知のように、携帯電話でNHKの生アンケートにアクセス出来る人は限定されます。

 特に、今回の場合は、ダイヤルを回すという方法ではなく、なにか携帯から特別なアクセス操作が必要な方法でしたので、これができるのは若者が多いと推測されます。

 私たち夫婦は、携帯電話は持っていますが、アクセスの仕方が分からないので、参加できませんでした。

 公器を使った全国的な世論調査で、母集団が特定世代に偏るような結果が、「首相の靖国参拝に賛成63%」といわれても納得できません。そこで、今朝、さっそくNHKに抗議の電話をして、どうして「携帯」に
限ったのか?

 しかも携帯電話でむずかしいアクセス操作が必要な方法を取ったのか?」という質問をしました。

視聴者統括局コールセンターの西村部長という人が対応しましたが、

吉川

 携帯からの生アンケートは、世論を誤誘導する恐れがあるので、何故、携帯に限ったのか説明して下さい

西村

 私もテレビを観ていて、これでは民意を反映しないのでは? 変だなと思った。今朝、担当に確認したら、サーバーの容量を超える大量サクセスが予想されたので、携帯に限ったとのことです。

吉川

 一般家庭電話からのアクセスも可能にしないと、携帯操作でのむずかしいアクセスでは中高年齢者の意見が反映されない不平等な結果の恐れもある。今の技術でアクセス容量に対応するのは可能では?NHKの今回のやり方は納得できない!」

西村

 担当に、そのように伝えておきます

吉川

 NHKとして、今回の生アンケートは不適切な方法であったとテレビで謝罪してほしい

西村

 本当に申し訳ありませんが、担当に伝えます

吉川

 やり直しを求めますので、担当ディレクターから電話をほしい

西村

 私も、はらわたが煮えくり返っています。どうしてこんなやり方をしたのか・・・

 その後、今日の12時30分に「担当の原神プロヂューサーから私に電話がありました。

吉川

 生アンケートのやり方がおかしいので、実態を知りたい。そもそも、この企画をするときに、携帯では高齢者からのアクセスは困難であるという議論はなかったのか?

原神

 企画段階で、そのような議論がありましたが・・・、容量のことを優先してしまい高齢者からのアクセスが困難であるとの問題については、そのままになってしまった

吉川

 アクセス件数が首相の靖国参拝の項目は49,264件ということだが、年齢別のアクセス数を知らせてほしい。多分、若い世代に偏っている気がするので・・・

原神
 16日の夕方までには、データをまとめて、それをFAXさせていただきます

吉川

 「いずれにして、天下のNHKといしてはお粗末である。何等かの対応を考えてほしい

原神

 わかりました。検討してみます

吉川ひろし(千葉県議・無所属市民の会)

 私は先に環境省が実施した環境税導入アンケートが調査の大前提を無視した欠陥アンケートであることについて報告した。以下にその報告(ブログ)を示す。

◆青山貞一:環境省の環境税導入に関する欠陥アンケート!

 今回のNHKの生アンケートも、環境省のインチキなアンケートとほぼ同じものである。ひとことで言えば、統計上の大前提を無視し、結果的に世論誘導と言われても言い訳がたたない、とんでもないアンケートである。

 この種のインチキかつ世論誘導的なアンケートが環境省やNHKなど、公的機関が頻繁に行われ、しかもその結果が公表、放映されるとなると、ただただあきれるばかりではすまない。

 繰り返すが、この種のアンケート調査では、次の原則、方法を採用することが客観性を担保、保証するために理論上必須条件となる。

@サンプリング方法:
この種の調査では、母集団の集団特性及びその社会的属性によって特性が異なることから、無作為抽出法が用いられる。無作為抽出法には、完全無作為抽出法; 層別抽出法; 二段 抽出法; 層化二段無作為抽出法.などがあるが、 よく用いられるのは層化2段無作為抽出法である。

◆参考(出典):無作為抽出の方法

(1)単純無作為抽出法

母集団から調査対象をすべて等しい確率で抽出する方法


(2)2段無作為抽出法(多段無作為抽出法)

例えば、母集団の地域が多い場合、まず調査する地域(市区町村等)を無作為に抽出し、その地域の中から最終単位 (対象)を無作為抽出する方法


(3)層化無作為抽出

母集団を均質ないくつかの層に分けて、その各層から標本を無作為抽出する方法

A母集団
この種の国の調査では、アンケート調査の母集団は、たとえば全国20歳以上の者などとする。母集団としてよく想定されるのは、選挙人名簿である。

B標本数
標本数は、統計学に依拠し、母集団の規模によるが、この種の国の調査では最低3000人〜5000人規模が必要となる。これら母集団と票本数との間には統計学上の関係(標本誤差、標準偏差)がなりたつ。

C設問設定:
アンケート調査の設問(質問)は、いわゆる誘導質問(尋問)とならないよう十分に注意を払うこと。

 いうまでもなく、今回のNHKの生アンケートでは、@のサンプリング方法、A母集団選定がとくに問題となる。というより、間違っている。、

 吉川議員が言われる携帯電話の操作に係わる応答手段の問題以前に、インターネットのホームページを使った環境省の欠陥アンケート同様、NHKの携帯電話による生アンケートでは、客観的アンケート調査でもっとも重要なサンプル(標本:答える人)のの無作為抽出ができないのである。

 しかも、吉川議員の以下のNHK担当者とのやり取りを読むと、視聴者統括局コールセンターの西村部長が「私もテレビを観ていて、これでは民意を反映しないのでは? 変だなと思った。」と述べている。

 同時に、その西村部長は、「今朝、担当に確認したら、サーバーの容量を超える大量サクセスが予想されたので、携帯に限ったとのことです。」とも述べている。

 問題は携帯電話に生アンケートの手段を限定したことではなく、上記のようにアンケート調査の基本的方法であるサンプリング法及び母集団の設定を間違っていることである。

 もし、意図してこの種のアンケート調査をじっししたとすれば、以下に示す放送法第一章第一条などに抵触する可能性も出てくる。

第1章 総 則
(目的)

第1条 この法律は、左に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
1.放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
2.放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
3.放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

 社会調査のイロハを知らないで天下のNHKが結果的に世論誘導を思われても仕方ないインチキ調査を行い、しかも全国放映したことは、公共放送として万死に値するものである。
  
 逆に知っていてこの種のアンケートを行ったとすれば、それはNHKが世論誘導、世論操作をおこなったことになりかねない大問題である。

 いずれにしても、民放、新聞社、省庁など公的機関が、アンケートと称して行うこの種の社会調査がいかに客観性がなく、結果として世論誘導、世論操作となるかについて、私たちはもっと目を光らせる必要があるだろう!!