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東京新聞は小沢控訴審判決
をどう報道したか?
掲載月日:2012年11月12日 
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■陸山会事件 小沢代表二審も無罪 東京高裁「一審で審理尽くされた」(東京新聞)2012年11月12日 夕刊(1面)

指定弁護士控訴を棄却 違法性認識否定

 資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、政治資金規正法違反(虚偽記入)罪で強制起訴され、一審で無罪判決を受けた元民主党代表で「国民の生活が第一」代表の小沢一郎被告(70)の控訴審判決公判が十二日、東京高裁で開かれた。小川正持裁判長は「一審で審理は尽くされた。元秘書との共謀を否定した一審判決は正当で是認できる」と述べ、無罪の判断を示した。

 検察官役の指定弁護士は上告を検討できるが、理由は憲法違反などに限られ、見送られれば無罪が確定する。

「一審で審理尽くされた」

 検察審査会の起訴議決で強制起訴された被告の控訴審判決は初めて。一審と同様に無罪となり、制度の在り方をめぐる議論に影響を与えそうだ。

 四月の一審・東京地裁判決は、小沢代表が陸山会に貸し付けた四億円を二〇〇四年分の政治資金収支報告書に記載せず、本来は〇四年分に記載すべき土地購入の支出を〇五年分に先送りする方針について、小沢代表が石川知裕衆院議員(39)ら元秘書から報告を受け、了承したと認定した。

 しかし詳細な報告はなく、小沢代表は違法な記載があったと認識していなかった可能性があるとして、元秘書らとの共謀を認めず無罪を言い渡した。

 控訴審では、一審判決が否定した「違法性の認識」の有無が最大の争点だった。

 指定弁護士は九月の控訴審初公判で、控訴審後の補充捜査で得た「反小沢」とされる元秘書の供述調書など約十点を新証拠として申請。だが、いずれの証拠も採用せず、一回の公判で結審した。

 小川裁判長は判決理由で、一審で審理は尽くされたと述べ、別の裁判で一審有罪となり控訴している石川議員と池田光智元秘書(35)が、土地購入自体が先送りできていたと思い込んでいた可能性を指摘。虚偽記入の一部に故意がなかった可能性にも言及した。

 その上で、小沢代表の無罪の結論には影響しないとして、 無罪に当たる「控訴棄却」を言い渡した。


■控訴審判決 小沢代表笑顔なく 指定弁護士は天仰ぐ(9面)

沈黙のまま 再び無罪

 元民主党代表で「国民の生活が第口代表の小沢一郎被告(七〇)に対する東京高裁の判断は、一審と同じ無罪だった。東京地裁の一審判決から半年余り。収支報告書の作成を「秘書に任せていた」と繰り返し主張していた一審の姿とは打って変わり、控訴審では本人の発言機会がなく、沈黙を守ったまま。再度の無罪にも笑顔はなかった。

 午前十時半、東京高裁の102号法廷。

 「被告人は証言台の前に立ってください」。

  小川正持裁判長の声が空気の張り詰めた法廷に響く。

 「主文、本件控訴を棄却する」。一審に続く二度目の「白」の宣告。やや緊張した面持ちだった小沢一郎代表は裁判長にゆっくりと頭を下げた。報道陣が速報のために飛び出し、傍聴席の支持者らから拍手が湧いた゜検察官役の指定弁護士三人は険しい面持ち。一人は腕組みをして天を仰いだ。 一方、弁護人は表情を変えず、判決理由に耳を傾けた。小沢代表はこれまでと同様、濃紺のスーツ姿。この日を含め、昨年十月の一審初公判から一年余り続いた計十八回すべての公判の行方を見届けた。

 小沢代表は一審の法廷で、収支報告書の作成について「秘書に任せていた」「私の関心事は天下国家のこと」などと主張し、共謀を全面否定。一方、「国家権力の乱用で、許されない暴力」などと検察捜査への批判を繰り返していた。控訴審では、被告人質問が行われず、本人が発言する機会はなかった。

 (中略)

■強制起訴 控訴に課題

解説

 小沢一郎代表に再び言い渡された無罪判決は、公判段階で初めて事件にかかわる指定弁護士が、独力で有罪立証する難しさをあらためて浮き彫りにした。

 検察官役の指定弁護士はたった三人。一審では、東京地検特捜部が集めた証拠をベースに有罪立証を試みればよかったが、二審では、自らの補充捜査で。有罪を立証する必要があった。

 今年二月には、最高裁が「事実認定がよほど不合理でなければ、一審判決を尊重すべきだ」との基準を提示。控訴審での逆転判決のハードルは高まり、指定弁護士には大きな負担になった。

 東京高裁は、指定弁護士が集めた新証拠を一切採用せず、一日の公判で結審した。一審で審理が尽くされているとの判断からだ。

 一審では計十六回の公判が開かれ、小沢代表本人が疑惑に答えたり、特捜部検事の虚偽捜査報告書問題が明るみに出たりした。「法廷で黒白をつけるべきだ」という強制起訴制度があったからこそ、公になった事実だ。

 一方で制度の不備も浮かんできている。検察審査会法は「指定弁護士は事件を起訴し、公判の維持を行う」と規定しているが、控訴についての判断基準などは明示していない。

 控訴に当たり、指定弁護士の一人が「有罪になるか分からないのに被告人の立場を長引かせてよいのか」と葛藤していた姿が忘れられない。

 裁判制度が始まったことが、一審判決尊重の流れを決定付けた。同じく市民が司法手続きに参加する強制起訴制度でも、この流を重く受け止めたい。一審無罪なら控訴できない規定を設けてはどうか。今回の無罪判決を議論の契機にしてほしい。

(池田悌一)