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シムシティを楽しむ! 
再生可能エネルギー
によるまちづくり @前提

青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2014年6月23日  
独立系メディア E−wave

無断転載禁




◆1ヶ月間、シムシティを試行した感想!

 シムシティをはじめてから1ヶ月が経過した。この間、東欧、北米西部、大洋州、オセアニア、欧州などのクラウド・サーバーにアクセスし、世界の15カ所でまちづくりに挑戦してきた。

 当初、ほとんど右も左も分からずにやっていたシムシティであるが、分かれば分かるほど奥が深く実社会との関連でいろいろ考えさせられるものであることが分かった。

 さらにシミュレーションゲームとしても、マニュアル、ガイドに書かれていない隠れ技、裏技などノウハウ的なものも多数ある。さらにオプションの設定がもつ意味も次第に分かってきた。

 わずか、5000円ほどのソフトで、これほど楽しめるとは思わなかった。またソフトを製作したひとたちは、相当、都市計画だけでなく環境政策、エネルギー政策、交通政策、住宅政策、財政などに詳しい本当のまちづくりプランナーではないかと思える。

 そんなこともあり、シムシテイでは、ただ単にゲームを楽しむというだけで無く、環境政策、エネルギー政策、産業政策、土地利用政策、交通政策、住宅政策、公害対策、医療政策、警備対策などをまちづくりのなかで同時に考慮することの重要性、個別政策だけでなく都市経営全体のあり方を学ばなければ、都市経営などできないと思うに至った。
 
 私自身、3年間、長野県知事の政策顧問として実際に県レベルであるがまちづくりに関与してきた。その実務経験との関連においても、このような本格的なシミュレーターを全国各地の知事や市町村長に使ってもらいたいと本気で思う。

 もちろん、日本のように国の税源、財源、権限が強く、自治体とは名ばかりの国とは異なり、シムシティでは本来の意味での自治体としてのまちづくりが問われる。しかも、絶大の権限を持つミニ大統領としての市長の理念と方法がまちの存亡を左右するのである。


◆再生可能エネルギーによるまちづくりの社会実験!

 この号では、風力、太陽光、波力など再生可能エネルギーを有効に活用したまちづくりについて実際にシムシティで試みた経験をもとに報告したい。

 シムシティ2013版は、人口規模で言うと1万人〜20万人程度のまちづくりが課題となる。となれば、原発はもとより石炭、石油などの火力発電をいっさい使わず、15万人程度の人口規模を持つ自治体の電力需要をすべて再生可能エネルギーでまかなうことが可能なはずである。
 
 もちろん、広大な土地と資金があれば、風力発電、太陽光発電の組み合わせで自律的なまちづくりが可能である。しかし、シムシティ2013では、おそらく東京都新宿区ほどの面積もない狭い土地でまちづくりを行うことが義務づけられている。したがって、仮にいくら資金があったとしても、この目的を達成するのは容易ではない。 

 しかし、この1ヶ月の試行錯誤で、1万人、5万人そして10万人規模はもちろんのこと、15万人の自治体で全面的に再生可能エネルギーだけで電力をまかなうことに成功した。これにより化石燃料価格の上昇が都市経営を圧迫することがなく、また原発事故を憂慮することがないまちの経営が可能となっている!


高効率、高性能のメガソーラーシステム


さまざまな風力発電を組み合わせたウィンドファーム


シムシティにおける発電、送電、変電について

 シムシティでは、ライフライン系インフラ、すなわち電気・電力、上水、下水などは、すべて道路、橋梁、トンネルなどが同時に送電線、送電網あるいは上水道、下水道となっている。道路には砂利道から高速道路まで多くの種類があるが、いずれも送電線や上水道、下水道をを兼ねている。

 したがって、道路のあるところであれば送電線、送電網、いわゆるグリッドが供給されているものとみなしてよい。変電設備は、風力発電から原子力発電までそれぞれの発電システムに付随している。

 下はシムシティにおける電力グリッドの例である。黄色い線が送電線、黄色の円の大きさが電力使用量を示している。


シムシティにおける電力グリッド

 したがって、日本のように送電線がないので風力発電ファームが設置できない、さらに設置されていても送電線の容量が小さいので設置できないということはない。

 一方、コストについては、建設コストに加え維持管理のためのコストがあるが、電気料金は総じて住宅、商業・業務、工業の施設に関連する税金(に類するもの)として徴収されており、明示的には存在しない。

 さらに列車(電車)や路面電車などの電気系交通機関が使用する電気・電力はそれぞれの維持管理費に含まれており、やはり明示的に電気料金としては徴収されていない。

 ただし、シムシティでは、電気、電力は重要なインフラ、ライフラインとなっており、一定時間以上停電が続くような場合には、市民や企業から苦情がでるだけでなく、市民や企業が他のまちに移住し、住宅やビルは廃墟となり、まちは税収がその分減り、経営破たんの原因ともなる。
 

シムシティにおける発電(電力供給)の種類

 シムシティでは、大きく分け7種類の発電方式(発電施設)が用意されている。

 @風力、A石炭火力、B石油火力、C太陽光、D原子力、E核融合、F波力の発電である。ただし、核融合と波力はまだ実験段階にあり、他の発電システムのようには使用できない。

 核融合発電までありながら現時点でないのは、水力、地熱、潮力くらいである。カナダやアメリカ合衆国で電気料金が安い州は、いずれも水力発電(ハイドロ)が盛んな地域であることからすると、水力が存在しないのは??である。

 ただ、シムシティでは河川が地図上に存在しても、水力発電、中小水力を設置可能な河川として存在していないのは少々残念である。またアイスランドのように地熱が盛んな国もあり、日本はいたるところに温泉があるように地熱の宝庫なので、将来のバージョンアップではぜひ、地熱発電も入れてほしいものである。

 さらに日本では大型のごみ焼却場ではゴミ発電が盛んだが、当然のことながらゴミ焼却はいくら環境保全対策を行っても有害化学物質を排出するので、到底再生可能エネルギーとは言えず、メニューには含まれていない。

 以下、実際にシムシティの画面に出てくるアイコンで発電システムの概要を示してみる。

 アイコンの下にある2つの数字のうち、上の段の数字は1時間当たりの発電量、下の数字は単位時間当たりの建設費となっている。

 シムシティではシムミリオンが貨幣単位となっているが、建設費が月単位換算なのか時間軸が明らかになっていない。そこで建設費についてはとりあえずシムシティにおける表示をそのまま示した。一方、発電能力は1時間当たりのMW(メガワット、100万ワット)である。

◆シムシティにある発電メニューのアイコン


 風力発電      石炭火力発電    石油火力発電  太陽光発電    原子力発電
  3MW/h      75MW/h      150MW/h   8MW/h    200MW/h
  8000         17000         27500        33000      145000


 核融合発電      波力発電
 200MW/h     30MW/h
  155000        60000



シムシティにおける発電システムのオプション

 次に各発電方式ごとにそのオプションについて一つ一つを見てみよう。オプションとは、たとえば風力発電の場合、初期投資をして建設した後に出力を増やしたい場合、一から初期投資することなく、オプションでタービンやモジュールを廉価に追加できることを指している。

 したがって、このオプションを使うことにより土地面積、建設コストともに大幅に節減することができる。ただし、必要となる土地面積は、それぞれの発電方式でまったく異なり、最後は実際にオプションのタービンやモジュールを実際に土地の上に置いて決めることになる。これが意外と微妙であった。

○風力発電

 風力発電は、現在、世界中で利用されている主要な再生可能エネルギー源と言ってよいだろう。ドイツ、デンマーク、スウェーデン、スコットランド、イングランド、カリフォルニア州、中国など、世界各地に設置されており、日本でも5月中旬に出かけた青森県だけでも200基もの風力発電が設置されている。

 標準の風力発電は10mphで1時間当たりのピーク電力が3MWとなっている。日本各地で使われている風力発電は概ね1時間当たり1MW〜3MWなので、ほぼその規模と考えて良いだろう。



 風力発電のオプション(追加)には、設置するための砂利道、看板、それに標準規模(3MW)の風力タービン、5.1MWの風力タービン、さらに15MWの垂直タービンなどがある。

 当初は建設費、維持管理費がそれなりに高額であるが、オプションでタービンを増やすことにより、MW当たりの単価はかなりの割引となる。したがって、オプションをうまく使ことが再生可能エネルギー利用の大きなポイントとなる。また風力発電のオプションでは大きな直径を持つ風力発電タービンや垂直翼をもつタービンがある。土地面積を必要とするが、場合によっては3MWのものを多数設置するよりはるかに効率的となることがある。


 

○石炭火力発電

 ここでは、化石燃料系の発電は使用しないが、標準の石炭火力発電所は、17000シムミリオンで、1時間当たり75MWの発電能力を持っている。単純に比較すれば1台で標準の風力発電の25倍の発電能力を持つことになる。



 石炭火力発電にもオプションがある。標準のもの、汚染が少ないもの、さらに汚染がすくないものだが、いずれも出力は1時間当たり75MWである。化石燃料系の発電システムの問題は、いうまでもなく燃料価格の上昇とともに、大気汚染である。
 
 実際のシムシティでは、石炭火力の立地に際しては、年間通じて卓越する風向が示されるので、風上に住宅地がないように立地を選定することになる。これを間違えると、膨大な費用があとから町全体にかかることになる。

 実際にやってみて大気汚染問題はきわめて重要なものであることが分かった。大気汚染により市民が呼吸器疾患などの病気となると、診療所や病院を増やさなければならなくなる。さらにベッド数が足りなくなると、病棟を増設しなければならなくなり、全体として財政を圧迫することになる。これは石炭火力だけでなく、石油火力でも同じである。

 オプションでは同じ出力でありながら汚染が少なくなっている。ただし、それに応じて建設コスト、維持管理費が高くなる。




○石油火力

 ここでは、化石燃料系の発電は使用しないが、標準の石油火力発電所は、27500シムミリオンで、1時間当たり150MWの発電能力を持っている。単純に比較すれば1台で標準の風力発電の50倍の発電能力を持つことになる。



 石油火力発電にもオプションがある。標準のもの、汚染が少ないもの、さらに汚染がすくないものだが、いずれも出力は1時間当たり75MWである。

 実際のシムシティでは、石油火力の立地に際しては、年間通じて卓越する風向が示されるので、風上に住宅地がないように立地を選定することになる。これを間違えると、膨大な費用があとから町全体にかかることになる。




○メガソーラー発電

 メガソーラー(大規模太陽光発電)では、標準の風力発電がピークで8MWとなっている。風力の3倍弱だが、建設コストが4倍強となっている。



 太陽光発電のオプション(追加)には、標準規模(8MW)のメガソーラーより大きな12.1MWがある。さらにピークで37.5MWの濃縮太陽電池がある。これは日中の余剰電力を蓄電するためのバッテリーである。




○原子力発電

 ここでは説明を省くが原発もある。

 規模は200MWである。シムシティ開発の本場米国ではスリーマイルズ島事故があった。またチェルノブイリ事故さらに2011年の福島第一原発事故が起きていること、さらに初期投資、維持管理費が高額なことから、メニューにはあるものの推奨されていない感じがある。とくにシムシティ2013は人口規模が少ないまちを想定していることもあり、原子力発電の設置は物理的にも困難である。地域全体がPAZ内に入ってしまうこととなる。

 なお、個別自治体とは別に複数の自治体が連携し起こすビッグ・プロジェクト(偉業といっている)などで原発が使えないことはないが、ひとたび事故が起きると周辺地域全体に深刻な放射能汚染が起きることから、おそらく偉業でも原発は使われないものと思われる。

 私が東欧3のサーバーで3か所まちづくりをした後にかかわったまちづくりでは、韓国人が経営破たんした後のまちを手掛けてみたが、韓国人は何と原子力発電所を市街地の一角に置いていた。これ以外、いまのところシムシティのマルチプレイで原発立地はみたことがない。




○核融合発電

 さらに核融合発電という、物騒な発電もある。規模は原発同様200MWである。




○波力発電

 波力発電もある。規模は1時間当たり30MWであり、垂直風力タービンに類する規模である。建設費は1MW当たりでは風力よりも少ない。ただし、波力発電は当然のことながら海、波浪がないところでは使えない。




つづく