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図書紹介

「審議会革命」
英国公職コミッショナー
制度に学ぶ
青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2013年3月5日 
独立系メディア E−wave




日隅一雄翻訳、青山貞一監修
「審議会革命」英国の公職コミッショナー制度に学ぶ
 現代書館 


◆公職任命コミッショナー概略(pdf)
◆青山貞一:みんなのメディア作戦会議第2弾参加記

監修者(青山貞一)あとがき
   

 日本は明治維新以降、一貫して脱亜入欧を旗印に、欧米に追いつけ追い越せと科学技術や経済だけでなく、法制度や行政機構を次々と導入してきた。だが、よくみると導入したのは欧米の制度や機構の「うわべ」であって、それらを実社会でしっかりと機能させるための「たましい」や「しかけ」は根付いていない。

 たとえば民主主義の基本となる情報公開、行政手続、公文書管理、行政不服審査、環境アセスメントなどの制度・手続はその典型である。いずれも先行する欧米諸国に30年〜40年遅れて導入したものの、どれも例外規定が多かったり、行政機関や官僚の裁量が多く、結果として社会経済的弱者の救済ではなく、行政や事業者など強者の既得権益擁護に活用されているといってよいだろう。

 民主主義の基本は立法府が行政府をコントロールすることだが、日本はここでもうまくいっていない。その結果、「政」「官」「業」が強固な利権の構造を構築し、さらに「学」「報」、すなわち御用学者と御用メディアが加わり、民主主義がまったく機能せず、いつも市民、国民は蚊帳の外におかれている。

 本来、GO(国、自治体)やPO(企業)を監視すべきNPO・NGO(非営利、非政府組織)も、日本ではGOやPOの補完物となり本来の社会的役割を果たしているとは言い難い。

 本著が主題としている公職任命コミッショナーは、英国で生まれた制度・手続である。日本は政治制度として大統領制ではなく英国同様、議院内閣制を導入したが、ここでもよく見ると同じ議院内閣制でも日本と英国では著しく異なることが分かる。

 日本では大部分の立法が議員立法ではなく、通称閣法、すなわち霞ヶ関の官僚が法案の骨子から肉付けまでをつくっている。そのうえ国会審議でも議員はその内閣法案を追認するだけだ。与野党で法案について一字一句まともな審議をしている英国とは異なるのである。

 さらに日本では行政改革や民営化の一環としてサッチャー首相時代のエージェンシーをもとに独立行政法人(独法と略)制度を導入した。だが、これまた日本と英国では全く様相が異なる。日本では独法や国立大学法人は特殊法人などの看板の掛け替えに過ぎず、相も変わらず省庁の天下り再就職先、そして高級官僚のいわゆる「渡り」の温床となっている。

 また省庁や自治体の審議会、審査会、委員会なども同様だ。行政組織や官僚に都合の良い御用学者や御用メディアを委員に選任しており、役所のシナリオ通りの「出来レース」が横行している。そこではまともな審議、審査はされず、「政」「官」「業」「学」「報」のペンタゴンの権益が追認されている。

 「審議会革命」公職任命コミッショナー〜市民のための行政を実現する方法〜は、その題にあるように、日本の行政を市民の手にとりもどすための政策提言である。独法や審議会委員などを選ぶための方法が提案されている。基本は情報公開によるプロセスの透明性の確保であり、それとともに独立性、第三者性、実力本位、清廉潔白、機会均等などをどう確保するかがポイントである。

 翻訳を含め執筆に当たられた日隅一雄弁護士は、NHKの経営会議委員などメディアを重視している。しかし、当然のこととして本著で提起していることは国、自治体のあらゆる行政に関連するものである。

 本著の刊行がきっかけとなり、日本社会で公職任命コミッショナー制度が議論され導入され御用学者の温床となっている審議会が本来の役割を果たすようになることを切望するものである。