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岡部氏、証言覆すも
県警は田中前知事を
地検に書類送検

青山貞一


2007年3月4日



 田中康夫前知事の後援会元幹部が長野県内の下水道維持管理事業受注を自社に有利に「働き掛け」することを記録した文書を破棄したとして、田中前知事、岡部氏、田附氏の3人が公用文書等毀棄(きき)の疑いで県議会の百条委から告発されていた問題で、長野県警捜査二課と長野中央署は2月28日、3人の捜査書類を長野地検に送付した。

 ※ 田中前知事ら3人の捜査書類 県警が地検に送付 信濃毎日
 ※ 田中前知事らを地検へ書類送付 長野県警、公文書棄損ほう助容疑 中日新聞

 書類送検に先立ち、長野県警は2月中旬、東京で2日間にわたり田中康夫氏に事情聴取していたことが2月26日判明している。

 ※ 開請求の文書破棄ほう助容疑、田中康夫前知事を聴取 読売新聞
 ※ 田中康夫前知事 長野県警が任意で聴取 下水道事業問題で 毎日新聞

 長野県議会が百条委員会まで設置し、公用文書等毀棄問題を審議し、さらに田中前知事を県警に告発したのは、百条委の証人として岡部英則・元県経営戦略局参事(現阿南介護老人保健施設所長)が「知事から破棄を指示された」と証言してきたからである。

 その岡部氏は2月28日、「知事室で指示を受けたことはフィクション(作り話)だった」と県警が地検に書類送検した直後に信濃毎日新聞のインタビューで答えている。しかも、岡部氏は県警によるこの間の事情聴取でも同様の供述をしたという。

 岡部氏が過去一貫して証言してきた「知事室で指示を受けた」ことが「フィクション(作り話)だった」であったとすれば、県の百条委員会が県警に告発した田中康夫前知事による「働き掛け」記録文書の破棄そのものが根底から揺らぎ、前知事の刑事告発そのものが正当性を失うはずである。

 にもかかわらず、長野県警が2月28日に岡部氏、田附氏に加え、田中康夫前長野県知事の「働き掛け」記録文書の破棄について、長野地検に書類送検したのはなぜか?

 岡部氏は、過去一貫して 「2003年10月9日午前に県庁1階知事室に呼ばれ、記録文書を公開しない方向で調整するよう指示された」としてきた。

 それを覆した理由について、地元新聞のインタビューに次のように答えている。

 「9日朝知事室で秘書とメモをやりとりしたが、知事室に呼ばれて前知事から指示を受けたというのはフィクションで、同日以外にも『知事から直接指示を受けたことはなかった」。虚偽証言した理由は「知事が文書破棄にかかわっていたことを何とか公にしたい思いがあった。仕方ない手段だった」と。

 さらに「長野県警の捜査を受ける中で、自分が文書破棄に向けて動きだすよりも前に経営戦略局内で破棄に向けた動きがあったことや知事の関与の可能性が分かってきたため」、そして「県警による事情聴取が終わり地検に捜査書類を送付することになったため」と話している。

 ※ 「田中前知事が破棄指示」は作り話 証言の元県参事 信濃毎日

 岡部氏が一貫として「知事から破棄を指示された」と証言し続け、それを根拠に長野県議会が百条委員会を設置し「働きかけ」問題について膨大な時間をかけ審議し、最終的に長野県警に刑事告訴したのがこの間の経緯である。

 したがって、もし岡部氏が「知事室で指示を受けたことはフィクション(作り話)だった」のが事実であれば、長野県警が少なくとも田中前知事を書類送検する必要はないである。

 にもかからず、2名でなく田中前知事を含め長野県警が地検に書類送検したのは、岡部氏の証言とは別に新たな確証を県警が得たからに他ならない。

 その確証が何なのかについて長野県警は現時点で公表していないが、今後、地検の捜査の中で知事の関与が明らかになるものと思われる。

 長野県警は百条委の告発を受理した後、県職員らに対して膨大な数の事情聴取をしてきたことが複数の職員から明らかになっている。

 県警の事情聴取の最後の最後、すなわち2月中旬に2日間にわたり東京で田中康夫前知事に事情聴取している。これは2月28日に県警が地検に書類送検する直前のことである。

 上記を総合すると、岡部氏が「知事室で指示を受けた」ことが「フィクション(作り話)だった」と、今までの証言を覆したが、それに関わりなく、県警が得たからに他ならない、のではないか。

 すなわち、岡部氏の今までの証言は、「働き掛け」を記録した文書の破棄を知事から指示された、というものであった。しかし、仮に知事から指示を受けたことが事実ではないとすると、知事の後援会元幹部による知事への「働き掛け」公文書棄損ほう助の具体的証拠がこの間の事情聴取からでてきた可能性が高い。

 福井新聞の記事によれば、田中前知事が代表を務める新党日本の事務所は「田中代表はコメントを出す予定はない」としているが、参院議員選挙に立候補を予定している田中康夫氏は、受けている容疑について答える説明責任そして義務がある。

 なお、田中氏が知事時代に抜擢、重用し、経営戦略局で「脱ダム」関連政策を担当した野崎真氏が収賄、詐欺で2度にわたり逮捕され、起訴されている件について、田中氏はだまり続けている。これについても田中氏はコメントすべきであろう。

書類送検とは
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

書類送検(しょるいそうけん)は、刑事手続において、司法警察員が被疑者を逮捕せず、または、逮捕後釈放した後に、被疑者を非拘束のまま事件を検察官送致(送致、送検)すること。被疑者の逮捕・勾留の必要がない事件や、被疑者が送検以前に死亡した事件、時効が成立した事件の被疑者が判明した場合などで行われる。「送検」や「書類送検」という言葉は、マスメディアで多く使用される用語であり、訴訟法や実務上は使用されない。

検察官送致とは、司法警察員が、逮捕された被疑者、書類および証拠物、事件を検察官に送る手続を指す。一般に、司法警察員が被疑者を逮捕しない場合の送致を書類送検と言い、逮捕した場合の送致を身柄送検(みがらそうけん)と言うこともある。

原則として、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない(刑事訴訟法246条本文)。ただし、例外的に送致しなくともよい場合が定められている(微罪処分、同条但し書。)。なお、司法警察員が告訴または告発を受けた場合には、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない(同法242条)。送致を受けた検察官は、裁判所に起訴するかしないかを決める。

司法警察職員が被疑者を逮捕した場合、司法警察員は、身柄を拘束してから48時間以内に検察官送致しなければならず(法203条)、送致を受けた検察官は24時間以内に裁判所に勾留を請求するか釈放するか決めなければならない(法205条)。これに対し、司法警察職員が被疑者を逮捕していない場合には、「速やかに」検察官送致しなければならないとされている。