エントランスへはここをクリック   

異常に高額
日本のPCと航空運賃(2)


青山貞一

2008年2月1日


 (1)では、日本に比べ外国製のそこそこハイスペックのパソコンがいかに安いか、逆に言えば、日本のパソコンがいかに高額であるかについて述べた。

 ここでは国際航空運賃について報告してみたい。
 
 国際航空運賃はまぐろ同様、時価である(笑い)。一年を通じて安い月は多々あるが、正月過ぎの1月から2月一杯は、一年中で最も安い月といえる。もちろん、これは北半球相互のばあいであり、北半球から南半球を往復する場合は、別である。

 ところで、今の国際航空運賃は、B747、A300クラスの大型ジェットの場合、定員の70%以上が乗っていないと、一機当たりの就航が赤字になる可能性が高い。したがって、ギリギリ航空運賃を安くしてでも航空会社は満席にしたい。

 ただ、世界の一流航空会社は、それなりのメンツ、プライドもある。はじめから格安航空運賃に会社名がでると、大学の偏差値同様、安く見られる。そこで航空各社が考え出したのが、<航空会社:未定>とか<航空会社:欧州系未定>としてチケットを数ある販売会社が売り出す方式である。

 格安航空チケットを利用する場合、<未定>だから、あまり知らない航空会社になるのでは、と心配する向きもあろう。だが、その心配はほとんど無用である。私の経験では、世界の誰でも知っている超一流の航空会社が、ぞろぞろとこの未定の中に入っているのである。

 未定の場合、実際にどこの航空会社のどの便、さらに経由地がどこで、何時に出発し、何時に着となるかが分かるのは、出発時から逆算して約20日前である。

 したがって、一流の航空会社で超廉価に欧州や米国を往復するなら<航空会社:未定>とか<航空会社:欧州系未定>を選ぶのはかなり得策である。それほどリスクもない。かつてのアエロフロートのように、目的地に到達する前に、強制的に一泊させられることもない。

 当然のこととして出発日と日本への到着日は見積時に教えてくれる。また欧州に行くのに南回りとなる場合は、その旨を教えてくれる。いくら安くても何度もアジアの諸都市を中継されてはたまらないからだ。

 以前、国際学会でスペインに出かけたとき、成田→台北→バンコック→ウィーン→バルセロナとなったことがあった。ウィーンで数泊したものの、やはりこれだけトランジットすると疲れる。

 さらに、廉価に複数の都市を訪問する場合、最も簡単なのはオープンジョーを使うことだ。おーぷんじょーは、たとえば行きを、成田→トロント→ハリファックスとし、帰りをハリファックス→ケベック→トロント→成田などとし、ハリファックス→ケベックを自分で切符を手配する方法である。

 もちろん、帰りをハリファックス→セントジョーンズ→プリンスエドワード→トロントなどとしても良い。この場合には、ハリファックス→セントジョーンズ→プリンスエドワード→トロントの切符を自分で手配する。ただし、場合によっては、オープンジョーが効かない航空券もあるので要注意。

 多くの場合、現地の空港で国内線の航空券は、日本の場合よりかなり安い。たとえば、クロアチアのザグレブからドブロブニク国際空港にクロアチア空港往復する場合、日本円で1万6千円程度で買える。インターネットとカードを使い、日本からあらかじめ予約しておくことも可能である。ただし、たとえばウィーン、ドブロブニク往復などl、同じクロアチア航空でも国際線となると往復で3万円ほどとなる。

........

 それはそれでよいのだが、便乗値上げと言っても良いくらい、このところ国際航空運賃が不可解な動きを見せている。

 ひとつは航空運賃そのものの値上げ、もうひとつは燃油特別付加運賃、すなわちジェット燃料の値上げである。これが同時に起きていることから、今までにない不可解な状況が出現している。

 私は大学における研究に関連し海外出張を行うが、この2月にイタリア、3月に米国西海岸にでかける。

 燃油特別付加運賃、空港施設使用料、諸税、航空保険特別料金などを別にした、いわゆる単純な航空運賃は成田・ローマ往復が約48,000円、成田・サンフランシスコが往復で約46,000円であった。

 成田からローマ往復が約48,000円、成田・サンフランシスコ往復が約46,000円は、使う航空会社がルフトハンザとユナイテッドと、いずれも一流航空会社であることからみても、信じられない安さであると言える。

 しかし、問題はその後である。

 格安チケット会社は、なかなか見積もり単独で対応してくれない。結局、請求書が来る段階でわかるのだが、燃油特別付加運賃がともに35000円となっており、結果的に燃油特別付加運賃、空港施設使用料、諸税、航空保険特別料金などを税金を含めた航空運賃は、いずれも約9万円となっていた。

 もとの航空券が46000円から48000円なので、その約2倍の値段になったことになる。これにはびっくりだ。

 成田からローマとサンフランシスコは距離が異なるが、燃油特別付加運賃はいずれも約35000円となっているのも不思議だ。ちなみの昨年の3月時点では、この燃油特別付加運賃は半分以下の約15000円であった。

 原油の値上げもピークが過ぎているはずなので、何か便乗値上げのような気がする。

 ということで、成田-ローマが48000円、成田ーサンフランシスコが46000円というチケット会社の広告を見て喜んではいけない。今年からはほぼその2倍となるのだ!航空運賃だけが廉価でも、欧州は米国など遠距離の場合は、最終額はその2倍となることを覚悟しなければならない。

 昨年11月、成田-ロサンゼルスの航空運賃は40800円だったが、最終的には74290円となっている。もっぱら、これはユナイテッドではなく、大韓航空である。このときの燃油特別付加運賃は24000円であるから、単純にこれが10000円増えたことになる。

 KE: 大韓航空

航空券代金        :¥40800
成田空港施設利用料 :¥ 2040
現地出入国税      :¥ 6500
燃油特別付加運賃   :¥24000
航空保険料       :¥ 600
米国民間航空保安税 :¥ 350

 やはり、格安航空券を高額化させているのは、原価がよく分からない燃油特別付加運賃のようである。
 
 .......

 とはいえ、ローマ往復やサンフランシスコ往復がそれぞれ9万円は、JAL,ANAなど日本の航空会社に比べれば、はるかに廉価であることに変わりはない。

 安売りで国際航空チケットで有名なe-tourによれば、ANAの場合、2008年2月で一番安いローマ行きは、約155000円(ただし、燃油特別付加運賃、空港施設使用料、諸税、航空保険特別料金などを税金を含めた航空運賃)であった。JALの場合も約150000円だった。

 燃油特別付加運賃、空港施設使用料、諸税、航空保険特別料金などを税金を除いた航空運賃だけだと、欧米の航空会社の料金の2倍以上高額である。

 これでもずいぶんとANA、JALも国際航空運賃が下がってのことである。いずれも行き帰りの便が変えられないとか、マイレージが付かない場合あるとかといった安栗チケット固有の問題は同じである。

 .....

 この種の国際航空運賃は、PC同様、グローバル化が私たちにもたらす数少ない恩恵であるはずなのに、この分野でも日本は異常に高額だ。

 では、なぜ、日本の航空運賃はかくも高額なのか?もちろん、国土交通省の各種規制、指導はじめ航空会社の経営体質などいろいろある。

 私見ではあるが、たとえば国際線が高いのは、日本の国内線航空事情が大いに関係していると思える。

 日本の国内線では、無理矢理地方空港を建設したものの、航空会社が知事などの要望で大型機を飛ばすと、大赤字になってしまう。

 最近では就航を取りやめたり、せいぜい中型機に切り替えるケースが増えている。大型機と中型機では、燃料使用量が違うだけでなく、ジェット機の着陸料も異なる。

 この1月正月明けに、羽田から北九州空港までその中型機で飛んだ。航空運賃は片道1万円そこそこで安かったが、何と航空機内はがらがら20%程度しかのっていなかった。北九州空港ははじめから中型機までの航空機を離発着させているが、20%の乗機率では航空会社はまっさおだ。

 日本国内での黒字路線は限られており、JALやANAはその分、国際線が安くできないという推察も可能だ。カリフォルニア州と同面積の日本に大小100近くの空港があるのだから、航空会社はまともに全部に付き合っていたら、大赤字となる。

 各地に赤字路線がたくさんあるために、日本の航空会社の国際線料金が高いのは、なんとも困ったことである。これはあたかも、ほとんど車が通らない高速道路を造り続けるために日本の高速道路全体の料金が何時になっても下がらない、ことに似ている。

つづく