エントランスへはここをクリック   


巨大資本の論理、
グローバリズムの視点、
官僚独裁主義からの脱却

青山貞一
掲載月日:2012年5月8日
 独立系メディア E−wave Tokyo


 植草一秀先生が、非常に意味深長な論考を書かれている。以下に少々長くなるが引用させていただく。

★植草一秀:「国民の生活が第一」示した仏・ギリシャ選挙結果  

 欧州の政治激変については、昨日付のメルマガに記述したところだが、ブログにもその概要を記載させていただく。
 
 フランスではサルコジ大統領が大統領選での再選を果たせなかった。再選を目指した現職大統領が大統領選で敗北したのは、1981年にジスカールデスタン大統領がミッテランに敗北して以来31年ぶり。社会党は1995年に退任したミッテラン大統領以来、17年ぶりに政権を奪還した。
 
 ギリシャでは、経済緊縮政策を主導してきた連立二大与党が惨敗し、第一党の全ギリシャ社会主義運動が第三党に後退した。
 
 欧州政府債務危機の発火点であるギリシャで緊縮経済政策を主導した連立与党が惨敗し、欧州政府債務危機処理を主導した一人であるサルコジ仏大統領が落選したことは、欧州情勢の激変を意味する事象である。
 
 メディアは一斉に、欧州政府債務危機処理スキーム破綻を警告する論調を強調している。また、易きに流れる民主主義、ポピュリズムを批判する論調を強めている。

 しかし、これらの批評に欠落している視点は、日本を含めて、これらの国が民主主義制度を採用しているという重要な事実だ。 ものごとの是非を判断するのは主権者である国民であって、特定の大資本、官僚機構、ましてやマスメディアではない。
 
 最近の論調を見ると、この根本の部分をはき違えているとしか思えない論評があまりにも多い。
 
 主権者である国民を下々の位置に置いて、高みから、資本の論理、グローバリズムの視点から、別の主張を展開し、下々の国民は、官僚機構の提案する方策を黙って受け入れていればよいのだとの、傲慢な論調が幅を利かせている。
 
 民主主義を否定する、一部の特権層が世界を支配することを当然視する発想を、根本から否定する必要が生まれている。
 
 日本の消費増税提案なども、その典型例のひとつである。 官僚機構の驕り、為政者の勘違いが甚だしい。

 欧州政治情勢激変の背景に、経済のグローバル化に対する批判、資本の論理の矛盾、民意の軽視に対する修正圧力が存在する点を見落とせない。
 
 主権者である国民、市民の意志を軽視する為政者に対する警鐘が鳴らされたと受け取れる。
 
 ギリシャはユーロに加盟し、ユーロに留まるために、いま、超緊縮経済政策を強制されかかっている。しかし、ユーロに加盟することも、ユーロに加盟し続けることも、必ずしもギリシャ国民の悲願ではない。
 
 ユーロに留まるために緊縮政策を強制されるより、ユーロから離脱して、成長しなくとも悠々自適の生活を楽しみたいというのが、多数のギリシャ国民の本音ではないのだろうか。

 
 引用ここまで

 
 日本の御用学者やマスコミにはまったく存在しない主張である。とくに最後のユーロに留まるために緊縮政策を強制されるより、ユーロから離脱して、成長しなくとも悠々自適の生活を楽しみたいというのが、多数のギリシャ国民の本音ではないのだろうかの部分はとりわけ新鮮である。

 もちろん、私は日本が抱える国、地方で1000兆円になんなんとする累積債務をよそに、野田政権下で続く巨大公共事業を再開するような愚作は論外である。

 しかし、国民の生活、さらに幸福をそっちのけでトヨタ、パナソニックはじめ輸出型の巨大企業の論理、そしてIMF、世界銀行体制下で経済のグローバル化の視点、さらに先進諸国に類例を見ない官僚独裁国家など、日本の行状を見るにつけ植草先生の主張はまさに卓見かも知れない。

 私が呼称している「松下政経塾内閣」を見ていると、まさにパナソニックなど輸出型巨大企業をありとあらゆる面で支援する政策のオンパレードだ。円高阻止政策、法人所得税軽減政策、TPP政策、消費税増税政策、どれをとっても国民の生活、幸福など一考だにしない輸出型巨大企業の優遇策ばかりだ。

 鷹取敦氏が以下の論考で明快に解説しているように、輸出型巨大企業は、消費税率がアップすればするほど、受けられる「輸出戻し税」の還付が大きくなる仕組みの恩恵を受けている。

 鷹取論考によれば、業種別で見ると製造業が約45%、卸売業が約43%とこの2つの業種がほとんどであるが、製造業の細分類をみると「一般機械」が3809社でトップ、自動車関連(529社)を含む「輸送用機械」は688社を占めることになる。

 このデータだけをみると自動車関連メーカーの割合は小さいように見える。

 ところが、還付金の総額でみると違った姿が見えてくる。2010年の「消費税還付金上位10社」をみるとトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱など巨大輸出型自動車企業はとんでもない還付金を受けていることが分かる。

 すなわち、消費税還付金は上位10社だけで8700億円、全体で2兆円近くに達し、トヨタ一社の5年間の還付金の合計は1兆3,009億円にも上るのである。

◆鷹取敦:輸出型大企業には痛くもかゆくもない消費税アップ

■消費税還付金
 10社に8700億円 こんな不公平許せない(全商連)
http://www.zenshoren.or.jp/zeikin/shouhi/111212-01/111212.html

 1位:トヨタ自動車(株) 2,246億円
 2位:ソニー(株) 1,116億円
 3位:日産自動車(株) 987億円
 4位:(株)東芝 753億円
 5位:キヤノン(株) 749億円
 6位:本田技研工業(株) 711億円
 7位:パナソニック(株) 633億円
 8位:マツダ(株) 618億円
 9位:三菱自動車(株) 539億円
 10位:新日本製鉄(株) 346億円



 今後、消費税率5%から10%に上がれば、同一輸出額であっても還付額は2倍になる。さらに上がればというよに、まさに濡れ手に泡なのである。これでは消費税増税=>社会保険・国民年金という政府の言い分は、まるでウソ。輸出型巨大企業を税制面で積極支援ということになる。

 日本の巨大企業の多くは輸出割合が大きなグローバル企業であるから、仮に円高となってもこの還付金が増えればウハウハなのである。


出典:経済産業省(通商白書2010)


出典:経済産業省(通商白書2010)

 一方、輸出型巨大企業はもともとロボットなどの導入で生産過程の自動化、合理化を極限まで進めており、日本国内ではどんどん雇用を削減し、また非正規雇用を増やしている。同時に賃金が安いアジア諸国にどんどん直接投資を行って収益を増やしている。

 このように輸出型巨大企業は、国内で払う法人税をどんどん減らし、海外生産販売でタックスヘイブンを謳歌、同時に国内雇用を極限まで減らしてている。一昔前の言い方ならまさに売国奴ではないのか。

 周知のように、リーマンショックの時、トヨタは一気に従業員を解雇したが、そのとき税引き後利益の内部留保額は16兆円にも達していた。これだけの内部留保があるなら少しでも雇用を守るべきではなかったのか? しかも、赤字転落後は法人税も払っていない。

 菅内閣は、官僚独裁国家の手のひらで消費税増税を選挙公約として参議院選挙に大敗した。松下政経塾内閣の野田政権は、命を賭けて消費税率を上げると言うなど、トチ狂っているとしか思えない。いずれも2009年秋の政権交代時に何も国民に公約していない政策であるからだ。

 植草先生が、「これらの批評に欠落している視点は、日本を含めて、これらの国が民主主義制度を採用しているという重要な事実だ。 ものごとの是非を判断するのは主権者である国民であって、特定の大資本、官僚機構、ましてやマスメディアではない」とのべているように、今の民主党政権は、まさに自民党同様。民主主義をはきちがえ、マスコミは輸出型巨大資本、グローバリズム、独裁官僚機構の広報機関、手先となっていると言っても過言ではない。

 いずれも経営が左前になっているマスコミが広告収入ほしさにトヨタ、パナソニックなどの輸出型巨大企業を支援し、消費者増税やTPP政策を支援しているのは本末転倒である。

 永年電力業界からの広告収入欲しさに、原発推進に手を貸し、外国における深刻な原発関連事故を報じて来なかったのが、日本のマスコミである。このようなマスコミはとっとと倒産し消えて欲しいものである。

 公金、税金を湯水のように使いまくる官僚機構や天下り実態に手を付けず、安易に消費税率アップやTPPに走れば、主権者である国民の生活や幸福はさらに劣化することは明らかである。

 ギリシャ同様、EUのお荷物国とされているスペイン、ポルトガル、イタリアなどのラテン系諸国やバルト諸国を見れば分かるように、それぞれ小さいが魅力ある独自の国づくりをすすめてきた諸国、地域が、ユーロに留まるために緊縮政策を強制されるのは、ばかげていると思う。

 実際、それらの国々、たとえばイタリアを旅して強く感じるのは、成長しなくとも悠々自適の生活を楽しんでいることである。もちろん、これはローマではなく、アマルフィ海岸やソレント半島などかつての都市国家でのことである。

 もちろん、同じイタリアでもローマなど巨大都市は巨大資本、グローバリズム、官僚主義の強い影響を受けているが、地方都市の多くは現在でも成長しなくとも悠々自適の生活を(つつましやかに)楽しんでいるのである。

 昨年3月、私たちは南イタリアにいた。周知のようにイタリアはチェルノブイリの翌年、国民投票で脱原発を国民が選択した。現地で体験すれば分かるが、イタリアの地方都市では2月でも暖房温度は上げない。おそらく電気代が高いからだろうが、それだけはない。自分たち国民が自ら選択した結果だからである。

 日本ほど輸出型巨大企業、それを支援する政権、官僚組織などのために国民の生活や幸福が台無しになっている国はそうない。

 自動車工業と道路土建業が栄え、国民の生活は貧しくなる。これが日本だ!

 日本中どこに行ってもイタリアでは考えられない国土幹線道路、都市高速道路、高規格道路が走っている。しかし、津波被災地である三陸地域ひとつをとってみても、何らこれらが地域の観光や産業に生きていない。

 世界有数の景勝地で観光地の南イタリア・アマルフィ海岸には、9世紀から今日に至る曲がりくねったがたがたの狭い道しか存在しない。その道を路線バスやレンタカー「小さいがキラリと光る」ポジターノ、プライアーノ、アマルフィ、マイオーリ、セターラといった漁村、農村を結び、ひとびとが行き交う、これが国民生活を第一にしたまちづくりなのである。

 いくら談合土建で巨額の税金を使いトンネルと橋梁ばかりの超豪華な道路を整備しても、地域の反映はない。これが私たちがよくゆく、南イタリアの経験である。当然、その背景にはかつての都市国家(自治、民主主義、)の存在と持続可能社会を維持してきた歴史がある。

 道路功成って万骨枯れるである!


アマルフィ、ミノーリの上空からソレント半島の先端(カントーネ)を見た立体図
ソレント半島の左側がアマルフィ海岸。半島の右側にソレントがある。急峻な断崖絶壁の地形にカントーネ、ポジターノ、アマルフィなどのまちがへばりついている


 IMF体制下後の韓国のように極限状態まで格差社会、競争社会が進み、国民全体や地方都市までががそれに巻き込まれている国をみるまでもなく、何が国民の生活、幸福にとって大切なのかについて、私たちは本気で考えなければならないときにある。
●日本国民の幸福度は世界43位!(ミシガン大学調査)

 「国民の生活が第一」ということからすると、看過できないことがある。

 日本ではあまり知られていないが、ミシガン大学は幸福度という社会指標にもとづいて世界各国をランキングしている。これはブータンが第一位の幸福度ランキングとは異なり、本格的な定量的な指標によるものだ。

 ミシガン大学の幸福度ランキングでは、日本は何と43位である。GDPで世界2位、3位にあり、これほど勤勉な国民が43位とは驚きである。 



 もう少し詳しく見るとミシガン大学社会調査研究所が、世界97か国(世界人口の90%が在住)の幸福度ランキング調査し2008年に結果を公表している。

 ミシガン大学の社会調査研究所のランキングによると、第1位はスカンジナビアのデンマーク、第4位がアイスランド、米国は第16位、わが日本は第43位であった。


春から秋の季節のコペンハーゲンの景観
出典:Wikipedia


コペンハーゲンの中心部にあるクリスチャンボー宮殿の前の池田さん
 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8  15 Feb. 2010


 日本のあとに、第44位でスペイン、第46位でイタリアがあるが、いわゆる経済先進国のなかでは、底辺にあることが分かった。

 興味深いことは、東南アジア諸国、たとえばタイは第27位、ベトナムは第36位、フィリピンは第38位、インドネシアが第40位などとなっていて、何と何と日本より幸福度で上位にいるのである。

 ミシガン大学社会調査研究所のロナルド・イングルハート氏(政治学)は、幸福度は経済成長とも関係があるが、同時に、その国の民主主義、寛容性、組織や社会のなかでの個人の自由や価値観への寛容性と密接な関係があるみている。

 同時に、上記の東南アジア諸国のように国民所得は低いものの、家族と繋がりが強く、食べ物の種類が豊富、さらに言えば気候が温暖な国々な国々の「幸福度」が高いことも分かった、という見方もある。


 いずれにせよ、重要なことはGDPなど経済、所得以外の社会的要素が幸福度に大きく影響、作用していることを私たちは認識する必要がある。まして財務省の何とかに一つ覚えではないが、財政規律の指標だけで各国の優劣を計るのは間違っている。

世界の国民幸福度ランキング 日本までの順位
1位 デンマーク
2位 プエルトリコ
3位 コロンビア
4位 アイスランド
5位 北アイルランド
6位 アイルランド
7位 スイス
8位 オランダ
9位 カナダ
10位 オーストリア
11位 エルサルバドール
12位 マルタ
13位 ルクセンブルグ
14位 スウェーデン
15位 ニュージーランド
16位 米国
17位 ガテマラ
18位 メキシコ
19位 ノルウェー
20位 ベルギー
21位 英国
22位 オーストラリア
23位 ヴェネズエラ
24位 トリニダード
25位 フィンランド
26位 サウジアラビア
27位 タイ
28位 キプロス
29位 ナイジェリア
30位 ブラジル
31位 シンガポール
32位 アルゼンチン
33位 キプロス
34位 マレーシア
35位 ドイツ
36位 ベトナム
37位 フランス
38位 フィリピン
39位 ウルグアイ
40位 インドネシア
41位 チリ
42位 ドミニカ
43位 日本
44位 スペイン
45位 イスラエル
46位 イタリア
47位 ポルトガル
48位 台湾
50位 スロベニア
....
88位 ロシア
89位 グルジア
90位 ブルガリア
91位 イラク
92位 アルバニア
93位 ウクライナ
94位 ベラルーシ
95位 モルドバ
96位 アルメニア
97位 ジンバブエ


●日本の「国民幸福度」はOECD 34カ国中、第19位

 似たような幸福度に関するランキングが、OECDによって行われている。

 OECDは経済協力開発機構と言い、世界の金持ち国の集まりだ。米国、日本、EU諸国など34カ国が加盟している。

 そのOECDの「国民幸福度」ランキングでも、日本は加盟国34カ国中第19位となっている。OECDの国民幸福度ランキングの上位国は、第1位が オーストラリア、第2位はカナダ、第3位がスウェーデンとなっている。

 34カ国中19位とは??である。

◆国民の幸福度1位は豪州、2位カナダ…日本は?

【パリ=中沢謙介】

 経済協力開発機構(OECD)は24日、各国の生活の 豊かさを示す新たな指標「より良い暮らし指標」を発表した。

 国民の幸福度を国際比較することを目指しており、国民生活に密接に関わる 住居や仕事、教育、健康など11項目を数値化した。

 11指標の平均でトップはオーストラリアで、カナダ、スウェーデンが続いた。 日本はOECD加盟34か国中、19位だった。

 国の豊かさを示す指標には、どれだけ多くのモノやサービスを生み出したかを表す国内総生産(GDP)があるが、新指標は国民の実感に近い豊かさを示す狙いがある。 日本は11指標のうち、殺人や犯罪の発生率に基づく「安全」が10点満点で9・7と ECD加盟34か国中トップ。

 だが、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」はトルコ、メキシコに続くワースト3位だった。

読売新聞 2011年5月24日19時59分


 ただひたすら経済、経済、欧州諸国からエコノミックアニマルと嘲笑されながらも、一丸となって働いてきた結果が世界で43位、金持ちクラブでも19位とは驚きである。

 私は過去50カ国以上を現地調査、学会発表などで訪問してきたが、確かに実感するのは経済的に貧しくても歴史、文化を大切にし、家族や友人とのつながりを大切に生活をエンジョイしている国がEUには多数ある。

 スカンジナビア諸国、カナダ、オーストラリアなど、自然や環境を大切にしながら生活の質を重視し、教育に力を入れている国もある。

 実はそのような国々は、幸福度ランキングでも上位にいるのである。

 つまり、バカの一つ覚えのように経済、経済だ、成長戦略だと言っている国とは異なり、それらの国々では、もちろん経済は重要だが、何よりもそこに生活するひとびとの毎日が楽しく、明るく、お年寄りも活き活きとしていることこそが大切なのである。

 ミシガン大学、OECDいずれの調査でも日本国民は、到底、幸福と感じていないことが分かる。
 
 この種のランキングは、政府はもとよりその御用学者、政府の広報機関と化している御用マスコミから国民には報じられないのである。

 それにしてもこういう重要な事実を伝えない日本のメディアって一体何なんだろう!