エントランスへはここをクリック   


南相馬市再生可能エネ推進
ビジョン策定会議に出席して
青山貞一 
掲載月日:2012年9月26日
 独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁


 昨日(9月25日)は、第3回目の南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン策定委員会があり南相馬市にでかけていました。委員会は2時間半ですが、東京品川区の自宅から南相馬は仙台経由となり、往復で13時間となります。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012.8.21



 今後の課題は山積していますが、ビジョン策定は今回でほぼめどがたちました。この間、委員会ではカンカンガクガクの議論が続きました。私は伝えたいこと、議論すべきことを忌憚なく話しました。

 以下はその骨子と策定委員会委員リストです。


南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン最終版より 2012.9.25


南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン最終版より 2012.9.25


南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン最終版より 2012.9.25

南相馬市再生可能エネルギー推進ビジョン策定有識者会議委員リスト


 委員会終了後、1時間に一本の常磐線の電車が出るまでの間ですが、櫻井市長を激励してきました。 櫻井さんとは約2ヶ月ぶりですが、私はその間、3回、委員会出席で南相馬に出かけました。櫻井市長には、委員会で忌憚なく、ビシビシ話してきましたよと言うと、櫻井さんは、そのために青山さんに入ってもらったんだから、と言われました。

 南相馬市は地震、津波、放射能汚染さらに沿岸域の農地50平方kmが塩をかぶり農業ができなくなるなど、現在でも陸の孤島化しています。

 南相馬市は積極的に除染に取り組んできましたが、それでも8月に委員会出席のため南相馬市役所を訪れたとき、市役所の前に設置してある本格的な空間線量計は、0.360μSv/hとなっていました。


南相馬市役所前にある線量計の表示
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012.8.21

 この値は、2011年6月19日に私達が南相馬市の海側で測定した下表の値とほぼ同じレベルであることが分かります。

福島放射線現地調査結果(2011.6.19午前)  単位:μシーベルト/時
月日 天気 市町村名 測定地点の地表面 地上1m高 地表5cm高
6月19日 南相馬市 海浜部、路肩 0.35 0.54
6月19日 南相馬市 海浜部、 0.36 0.61
6月19日 南相馬市 海浜部、路肩 0.35 0.78
6月19日 南相馬市 海浜部、土 0.26 0.33
出典:東京都市大学青山研究室、環境総合研究所共同調査結果


南相馬市浜通り海浜被災地で放射線を測定する
撮影:青山貞一 2011.6.19

 櫻井市長は、昨年春、私が南イタリアから帰国した3月17日、携帯に電話すると、南相馬は三重苦で孤立状態、灯油やガソリンもなくなり自衛隊に連絡したが危険物取り扱いの資格がないので南相馬には行けないと言われた」などといっていました。その直後、市長はいまや世界的に有名となったYouTubeによるSOSを世界に発信、全国各地からの物資支援を受けることになります。

◆SOS from Mayor of Minami Soma City, next to the crippled
 Fukushima nuclear power plant, Japan
 
http://www.youtube.com/watch?v=70ZHQ--cK40

 しかも、南相馬市は平成17年に合併し北部の鹿島地区、真ん中の原町地区、南部の小高地区が面積比で約1/3づつとなっています。

 南の小高地区が原発から20km圏、真ん中の原町区が30km圏となっており、人口激減、さらに常磐線が原町〜広野間の福島第一原発隣接地区が完全不通となっています。そんなこともあり、私は一旦東京駅から東北新幹線で仙台駅に行き、北から常磐線で南下するのですが、これが寸断されており、仙台ー亘理間は列車、亘理ー相馬間は代行バス、相馬から原町列車を乗り継ぐので、結局、待ち時間を入れて片道6時間以上になってしまいます。


南相馬市の東日本大震災の津波による被災状況図
下の点線が20km圏、上の点線が30km圏、赤い部分は津波で
塩をかぶった農地などを示している
撮影:青山貞一


南相馬市海浜部の津波被災地(動画からの切り出し)
撮影:青山貞一 2011.6.19


南相馬市海浜部の津波被災地(動画からの切り出し)
撮影:青山貞一 2011.6.19

 再生可能エネルギー開発も、それなりの規模の風力発電やメガソーラーを行うとなると、費用、資金面以外に国の各省庁の縄張り、既得権益などからくる規制ががんじがらめで、おいそれとは行きません。今日も国がいかに現場基礎自治体のまちづくりの足を引っ張っているかが大きな課題となりました。

 ということで、再生可能エネルギー推進ビジョン策定、すなわち計画の策定はどうにかできましたが、それなりの規模で実行に移すとなると、このときとばかり土地利用、とくに農地転用では農水省、林地解除では林野庁、野生生物、自然景観では環境省、電気事業、送電では経済産業省と電力会社などが立ちはだかることになります。

 委員会には、ファンド支援として日本政策投資銀行、あぶくま信金などが参加し昨日はファンド面からどう支援できるかについて意見が出されました。国からは経済産業省東北経済産業局、事業者側は東北電力相双営業所長、相馬ガスが参加していましたが、上述のように他省庁、農水、林野、環境の各省を最初から含めておくことが重要であると感じました。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix


南相馬市原町地区 遠くに見える煙突は原町火力
撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2012.8.21

 一方、基礎自治体の住民側は、南相馬市の3地区、すなわち鹿島、原町、小高の住民協議会からの推薦で3名が参加し、毎回、切実な意見や希望を出していました。

 当然のこととして、三重苦の被災地で風力発電ファームやメガソーラー発電を実際に行う際の事業者候補もあがっており、県や市側といろいろ水面下の議論をしているようですが、仮に国の規制、制約がどうにかなっても、南相馬市の農地や林地に風力や太陽光発電のファームをつくり、東北電力の送電グリッドにつなげればよいわけではありません。疲弊しきった地元経済、雇用とそれらをどう結びつけられるのか、将来、農業と共存させることで持続的な地域経済構築に寄与させられるのかという、ある意味もっとも重要な課題があります。

 閑話休題

 私と池田こみちは、この7月、欧州でも一、二の規模と言われるスコットランドのグラスゴー南部にある巨大な風力発電装置が140基あり18万世帯(50万人規模)に電気を供給している現場を見てきました。ちなみに南相馬市の現在の人口規模は6万5千人規模です。

 グラスゴー南部では、南相馬市が抱える諸問題を早期段階でそれなりに問題解決し、すでに具体的にファームが稼働し、スコットランドと言えばヒツジですが、風力発電ファームの風車の下にはヒツジが放牧され、若いお母さんらが子どもや赤ちゃん連れで、広大なファーム内をトレッキングしていました。

 これと対比すると、日本の現実、実態には唖然とするばかりです。グラスゴー南部のホワイトニー風力発電ファームは、近々40基増設する計画もあります。

◆青山貞一・池田こみち:スコットランドの更新可能エネルギー開発
 http://eritokyo.jp/independent/aoyama-scot008..html

 スコットランドは人口規模は約500万人、面積は北海道並ですが、2020年までに電気エネルギーは100%再生可能エネルギーでまなかう計画が着々と進んでいます。この7月は波力、潮力系の再生可能エネルギー開発の現場には、時間との関係で行けませんでしたが、この分野でも地域への適用については欧州でも先陣を切っているようです。

◆青山貞一・池田こみち:スコットランド+北イングランド現地調査報告
 〜スコットランドのエネルギー開発戦略〜 Scotish Energy Strategy

 
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-scot009..html

 ご承知のようにスコットランドは、全能の「否」が支配する場所、イギリスにあってイギリスでないと言われるように、民族、人種、宗教など何をとってもイングランドと異なり、独自性が強い地域です。

 歴史の皮肉で、13〜14世紀、スコットランドは侵略され続けたイングランドと闘い歴史上はじめて独立しましたが、その後もイングランドからの侵略はとまらず、18世紀(1709年)に併合されてしまいました。

 その300年後の999年にスコットランド議会が再設置され、かなりの分野で立法、権限、財源、税源が認められています。しかし、スコットランドは、それに飽きたらず以前から独立を熱望しています。

 今年の7月、スコットランドにでかけたとき、真っ先に行ったのが、そのスコットランド議会です。テレビ局のスタジオのような斬新な議場でいろいろ議論しました。


復権なったスコットランド議会にて
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S10


現在のスコットランド議会議員 よく見ると女性議員がたくさんいます
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8
 
 すでに2014年にイギリスから独立する国民投票さらに議会での採否がスケジュールされています。

 再生可能エネルギー開発もスコットランドのアバディーンにある北海油田から採掘される石油を温存し、独立後の外貨獲得などに備えるための戦略と言われています。

 スコットランドについては、現在、第一編 英国からの独立に燃えるスコットランドが面白い、第二編 スコットランドの歴史的遺産、第三編 スコットランドの独立精神に学ぶ という長編の論考を書いていますので、でき次第公表します。また第三編については、1時間ものの動画も制作していますので、お楽しみに!