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現実味帯びてきた菅内閣不信任(3)

青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2011年6月2日
独立系メディア E−wave


 6月1日深夜現在、社民、共産が棄権となることを決めたので過半数は232、賛成のためには82議席が必要となっていた。その時点での民主党内で菅総理不信任案に賛成する議員は、以下のように推定していた。

@小沢グループ              60−70
 (うち政務官など5議員、原口議員は含まず)
A離党を申し出ている衆院議員で賛成しそう
 (以下のNHKニュース参照)      15
B鳩山元総理                 1
C原口元総務大臣              1
D鳩山グループで賛成しそうな議員   5−7
 (本来60名いるがこれはいつも優柔不断)
============================================
            合計      82−94

◆離脱届の16人 不信任賛成へ
6月1日 14時52分 NHK

 民主党の会派離脱届を提出した16人の議員グループは、菅内閣に対する不信任決議案への対応を協議し、菅総理大臣は原発事故などへの対応が不十分で信任できないとして、採決では全員が賛成する方向で調整を進めることを確認しました。

 1日の会合には、ことし2月に会派離脱届を提出した、民主党の小沢元代表に近い16人の衆議院議員のうち14人が出席し、菅内閣に対する不信任決議案について、グループとしてどう対応するか協議しました。

 その結果、菅総理大臣の原発事故などへの対応は不十分で信任できないとして、決議案の採決では全員が賛成する方向で調整を進めることを確認しました。

 すなわち、最低でも82人おり、ギリギリのところで菅内閣不信任案が可決されることになっていた。

 周知のように、6月2日午前11時から開催された民主党代議士会で菅首相の話しが終わった後、挙手した鳩山前首相が2日朝、官邸で菅首相と話し合い、「一定のメドがついたら....」菅首相が辞職すると話したことにより、状況が一転し、午後1時30分からの衆議院本会議では、菅内閣不信任案への民主党からの賛成は、松木議員と横粂議員の2名だけとなった。

 一方、棄権、欠席した議員は、小沢一郎元代表、石原洋三郎、内山晃、太田和美、岡島一正、笠原多見子、金子健一、川島智太郎、木内孝胤、黒田雄、古賀敬章、瑞慶覧長敏、田中真紀子、三宅雪子、三輪信昭ら小沢グループ議員、さらに石川知裕、佐藤夕子の2名の計17議員であった。

 その結果、菅内閣不信任案は否決された。

 松木、横粂両議員及び17名の衆議院議員は、「一定のメドがついたら....」菅首相が辞職するという鳩山前首相の話を信用できないとした。

 事実、裁決後、「一定のメドがついたら....」の真意をめぐり与野党それぞれ大きな議論となった。菅、鳩山会談に同席した岡田幹事長は、「一定のメドがついたら....」=「2次補正編成時」を否定し、「復興法案成立や2次補正編成と退陣は必ずしも直結しない」と述べ、首相側近からも「一定のメドがついたら....」辞職するという言質はないという談話が流れた。

  菅首相と鳩山前首相が交わした覚書の確認事項は次の通り


▽民主党を壊さないこと

▽自民党政権に逆戻りさせないこと

▽大地震の復興並びに被災者の救済に責任を持つこと

 〈1〉復興基本法の成立

 〈2〉第2次補正予算の早期編成のめどをつけること


 すなわち、菅首相と鳩山前首相は、6月2日午前の会談で「民主党を壊さない」など3項目の確認文書を作成し、それをベースとして菅首相から「退陣表明」を引き出した形となり、鳩山氏周辺は「筋書き通り」とほくそ笑んだようだ。

 しかし、小沢氏は両者の「手打ち」には疑義があった。そこで菅首相との会談を終えた鳩山氏からの連絡に対し、小沢氏は「どこまで詰めた話なのか」と確認をしたという。

 午後1時30分からの本会議の中、小沢氏の意を受けた鈴木克昌総務副大臣らが菅首相に詰め寄り、退陣する期日と小沢氏の処遇につき文書での回答を迫る質問状を突き付けた。

 また輿石東参院議員会長は本会議後の記者会見で菅首相に速やかな「決断」を促した。そして不信任案否決後の臨時閣議で「引き続き被災地の視点に立ち、震災対応をしっかりやりたい」と菅首相は強調したという。

 国会内の民主党控室を訪れた際も「党の不満をキャッチできなかったのが今回の反省材料だ。これから風通しを良くしていきたい」と語ったという。

 代議士会の壇上で神妙な顔を見せていた菅首相本人は、相も変わらずまともな反省はない。してやったりとほくそ笑んでいたのだろう。

 そして案の定というべきか、菅直人首相は2日夜の記者会見(以下参照)で、民主党代議士会で表明した退陣の時期について「言葉通り、一定のめど(がついた段階)だ。復旧から復興に向かっており、復興に向けては2011年度第2次補正予算も必要となる。新しい社会づくりに向かっていく方向性にめどがついた段階と申し上げた」と述べた。

 復興に向けては2011年度第2次補正予算も必要となる。新しい社会づくりに向かっていく方向性にめどがついた段階となれば、これは菅首相の認識次第で辞職は6月どころか9月さらには来年以降になりかねない。

◆菅直人首相は2日夜の記者会見

 代議士会の場で私自身の言葉で申し上げたところです。

 言葉通り一定のめどであります。

 つまりは今復旧から復興に向かっているわけでありまして、その復興に向かっては(平成23年度)第2次補正(予算)も必要になりますし、あるいはいろいろな体制づくりも必要となります。

 さらには原子力事故の収束も残念ながらまだステップ1の途中であります。

 やはり安定的な形にもっていくにはまだ努力が必要だと思っています。

 そして、今申し上げた新しい社会作りというものに向かっていく、そういった方向性、そういうものに一定のめどがついた段階という意味で申し上げました。

 そして、わが党には50代、40代、30代の優れた仲間がたくさんおります。そういう皆さんに責任を移して、そしてがんばっていただきたいと、このように思って申し上げたところであります。

...

 訪米については、これから日米関係というものは個人の関係であると同時に、党と党の関係、あるいは国と国の関係でありますので、どういった形になるにしろしっかりと責任を持ち、あるいは責任を引き継いで参りたいと、このように思っています。

...

 同じ答えで恐縮ですが、皆さん方も私の代議士会での話は直接かテレビかで聞かれたと思います。

 そこで申し上げた通りです。

 そして、その私が一定のめどがつくということについては、今直前のご質問にもお答えした通りです。


 そして、午後11時20分過ぎ、日本テレビの報道番組(ニュースZERO)に出演した岡田幹事長は、「菅首相は退陣という言葉は一切していない」と述べている。

 さらに「菅さんはそのようなこと(退陣)を言っていない。それは菅さんに確認してもらった方がよい」とも述べた。

 「菅さんに仕事をさせることが重要だ」とも述べ、「退陣はマスコミが勝手にそういっていることだ」と言明した。すごい話である。

 政治=言葉と言われるが、多くの民主党議員も、この場に及んでも菅首相と鳩前首相の「口先」に誘導され、菅内閣不信任案を否決したことになったわけだ。

 鳩山氏はもとより小沢グループもツメが甘いといえばそれまでだが、岡田幹事長の上記の言説は、間違いなく菅首相も分かっている話(=確信犯)であり、今後の国会審議や外交に対する影響は計り知れないものであり、結果として国益、国民益を大きく損ねる可能性が大だ。

 これ以上ない無責任で保身に汲々としてきた菅首相だが、この場に及んでも首相の座にしがみつき、国会議員、国民にけじめをつけていないことになっている。いわば騙された議員も議員だが、姑息な手段で責任を回避した菅首相やその執行部は、政治家に値しないひとびとであると思う。

◆首相 具体的退陣時期は明言せず
  NHKニュース 6月2日 23時27分

 菅総理大臣は、2日夜、記者会見し、東日本大震災からの復旧や東京電力福島第一原子力発電所の事故の収束に一定のめどが立った段階で退陣する意向を表明したことについて、具体的な退陣の時期は明言しませんでした。ただ、原発事故については、来年1月を目指すとされている原子炉の冷温停止が、一定のめどに当たるという認識を示しました。

 菅総理大臣は、2日の党の代議士会で「震災に一定のめどがついた段階、私がやるべき一定の役割が果たせた段階で、若い世代の皆さんにいろいろな責任を引き継いでいただきたい」と述べ、震災から復旧や事故の収束に一定のめどが立った段階で退陣する意向を表明しました。

 これについて、菅総理大臣は2日夜の記者会見で、記者団が具体的な退陣の時期を質問したことについて、「代議士会で私が言ったことばどおりだ。東日本大震災の復興に向かって、今年度の第2次補正予算も必要となるし、あるいはいろいろな体制作りも必要となるし、東京電力福島第一原子力発電所の事故の収束もまだ途中であり、安定的な形までもっていくにはまだ努力が必要だ」と述べ、具体的な退陣の時期は明言しませんでした。

 そのうえで菅総理大臣は、福島第一原発の事故について「事故の収束に向けた工程表でいうと、ステップ2が完了して、放射性物質の放出がほぼなくなり、冷温停止という状態になる。

 そのことが、私は、この原子力事故のまさに一定のめどだと思っている」と述べ、工程表では来年1月を目指すとされている、原子炉の冷温停止状態が、事故の収束に向けた一定のめどに当たるという認識を示しました。

 さらに菅総理大臣は、今月22日までの今の国会の会期について、「大震災の状況のなかで、国会で必要なことはいつでも議論できるようにしてほしいという意見もあるので、事実上の通年国会、12月のある時期までということになると思う」と述べ、12月まで大幅に延長する考えを示しました。

 民主党の鳩山前総理大臣は、2日夜、NHKの取材に対し「菅総理大臣は、私と会談した際には、『今年度の第2次補正予算案の早期編成のめどをつけたら辞任する』と約束したのに、話が全然違う。

 人の好意を裏切るのか。


 もう一度、菅総理大臣に確認し、私との約束がうそだったということになれば、両院議員総会を開いて、党の規約を改正してでも、直ちに辞めてもらうしかない」と述べました。

 
 しかし、辞任の時期は別とし、ひとたび首相というポストにいる人間を巡り「辞任」という言葉が出ると、野党からだけでなく諸外国からもまったく相手にされなくなる。まさにレームダック状態となる。ひょっとしたら、菅首相は政治の素人でも分かるそのようなレームダックを知らないのではないか。

 ひとたびレームダックとなった首相は、その後、あらゆる立法、行政実務は誰も信用しなくなり、ついて行かなくなる。そのような首相が大震災や原発事故対策の責任者となることに、菅首相周辺の幹部はもとより、民主党議員はどう考えるのだろうか?

 また今後、参議院で問責決議案が野党から出されるだろうし、各種重要法案についても野党が反対することは目に見えている。衆院で再議となった場合には、前衆院議員の2/3が必要となる。となれば、その都度、レームダック化した菅首相は激しい野党の攻撃にさらされるだけでなく、小沢グループはじめ民党内からも辞職時期を曖昧にしたことについて批判にさらされることになるだろう。

 その意味でも、自分の保身、民主党の保身を優先し、国難に責任を果たさないひとびとが国の政治家となっている現状を憂うものである。

内閣不信任案:菅首相、年明けの退陣可能性を示唆
 毎日新聞 2011年6月2日 23時53分(最終更新 6月2日 23時59分)

 菅直人首相は2日の民主党代議士会で、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の対応に一定のめどをつけた段階で退陣する意向を表明した。これを受け、自民党など野党3党が提出した内閣不信任決議案に当初、賛成を表明していた鳩山由紀夫前首相や、小沢一郎元代表に近い議員らのほとんどが反対に転じ、不信任案は同日午後、反対多数で否決された。ただ、首相は同日夜の会見で退陣時期が年明けになる可能性を示唆しており、早期辞任を求める声が党内外で高まるのは必至だ。

 不信任案には、民主党と国民新党・新党日本などが反対。自民、公明、たちあがれ日本、みんなの党などが賛成した。共産党は棄権し、社民党は欠席。民主党からは2人が賛成し、元代表を含む15人が欠席・棄権した。同党執行部は、同日夜の役員会などで賛成者を除籍(除名)とし、欠席・棄権者については岡田克也幹事長が事情を聴いた上で判断することを決めた。

 首相は代議士会で「震災への取り組みに一定のめどがついた段階で、若い世代にいろいろな責任を引き継いでほしい」と発言。同日午前の首相との会談後、代議士会に臨んだ鳩山氏は「震災復興基本法案を成立させ、11年度2次補正予算の早期編成にめどをつけた段階で身を捨ててほしいと申し上げ、首相と合意した」と、早期退陣で一致したとの考えを示した。その上で「首相は重大な決意を申された」と強調。不信任案への反対を呼び掛けた。1日夜の段階で不信任案賛成の意向を示していた鳩山氏の翻意で、民主党内の大量造反の動きは事実上、封じ込められた。

 ただ首相は代議士会で、具体的な退陣時期には言及しなかった。2日夜の会見でも「福島第1原発が冷温停止状態になるのが一定のめどだ」と述べ、東電の工程表が冷温停止の時期としている1月までは続投する必要があるとの見方を示した。

 鳩山氏が不信任案否決後、「(退陣が)夏では遅すぎる。6月ぐらい」と話したのに対し、岡田幹事長は「復興法案成立や2次補正編成と退陣は必ずしも直結しない」と指摘。首相退陣の時期が、早くも党内対立再燃の火種となっている。

【松尾良、田中成之】

◆「退陣しなければ裏切り」=首相会見に不快感
 −国民新幹事長
 :時事通信

 国民新党の下地幹郎幹事長は2日夜、菅直人首相が記者会見で自らの退陣の時期を明言しなかったことに関し、「国民も政治家も首相の(退陣)発言を信じている。

 それを裏切るとすれば、日本の政治全体の信頼が国民、国際社会からも失われる」と不快感を示した。都内で記者団に語った。

 また、首相と鳩山由紀夫前首相の会談に同席した平野博文元官房長官は取材に対し、「両氏の確認文書を否定するならば即時退陣を求めていく」と強調した。
(2011/06/03-00:05)

◆民主・石井副代表「菅首相は名誉ある撤退を」
2011.6.2 23:22 産経新聞

 民主党の石井一副代表は2日夜の党役員会で菅直人首相に対し、「菅内閣はレームダックに入り、いつやめるかが焦点になってきた。

 特例公債法案も平成23年度第2次補正予算案も復興基本法も全部通してもらう約束を野党に取り付けて、即時に退陣を決意すべきだ」と述べ、速やかな辞任を求めた。

 石井氏は党役員会終了後、記者団に対し、「輿石東参院議員会長と3日に首相官邸を訪れ、首相に『残された道は名誉ある撤退だ』と進言したい」と語った。