エントランスへはここをクリック   


UR跡地巨大マンション
完売後「建築確認」取消
F都市政策の不在と
都市環境政策の確立を

青山貞一
Teiichi Aoyama池田こみち Komichi Ikeda
掲載月日:2016年2月5日
 独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁

                 

◆都市環境政策不在の大都市高密度化の弊害!

 本件で完売後に建築確認の取り消しが出た背景には、建築確認問題以外に、山の手線内側の瀟洒で閑静な住宅地に隣接して、およそ似つかわしくない巨大なマンションが建築確認さえ取れば(今回はさらに開発許可も)いくらでも建築できること、その背景には国土交通省が土地利用規制、容積規制などを大幅に緩和したこともあります。

 それぞれ土地の歴史や文化、景観、環境などを考えず営利一辺倒で巨大マンション、タワーマンションが都市産業により続々つくられているのです。
,
 また昔から東京23区に一戸建て住宅はけしからんという、私達東京の原住民(青山の父親は江戸時代からの宮大工として新宿区四谷が本籍)からするとトンデモナイ言いがかりでもあります。

 東京23区=超高層マンションでなければならないなどという理由はまったくないどころか、これが過密や景観悪化、交通混雑、地価の高騰の原因となり、そして歴史文化を破壊しているのです。

 そればかりか、ただでさえヒートアイランド、温暖化で夏場の暑さが厳しくなっているのに風通しは悪く、緑も失われてしまうことになります。


◆都市環境政策の確立を!

 最も重要なことは、都市開発、マンション建設、住宅開発に際して、守らなければいけないのは建築基準法だけではないはずです。都市の開発や建物の建築によって環境が悪化することを避けることが重要なのではないでしょうか。具体的には「都市の環境容量」を考え都市の成長管理や総量規制を考える時期にきています。既に遅いとは思いますが!

 さらに具体的には次のようなことが指摘できます。

1.廃棄物問題
 文京区には清掃工場(焼却炉)がありません。文京区の一般廃棄物は、江東区の清掃工場など他区の清掃工場に運ばれています。しかし、文京区は、プラスチック容器包装類の分別を行っていないため、江東区民はせめて他人の区の清掃工場でごみを焼却してもらうのに、分別ぐらいしてほしい、と嘆いています。当然のことです。巨大マンションの建設は当然ごみの排出量を増加させることにつながります。区長以下、文京区はまずはごみの分別をせめてより細かくし、環境への負荷を減らす努力をすべきでしょう。

2.ヒートアイランド
 ただでさえ熱帯夜に悩まされる都心です。緑を減らし、コンクリトートの巨大建物は熱を蓄積するだけでなく、風通しを阻害します。そもそも面積が狭く過密化している文京区ですから、土地利用を規制し、ゆったりと緑を配置し風がとおりやすい設計とすることが望まれます。

3.景観(歴史的文化的な佇まいや風情が感じられる街作り)
 経済効率性を重視して敷地一杯に巨大マンションを建てることにより傳通院から善光寺坂を下ってくる町並みの風情が大幅に壊されます。堀坂の幅員が多少広がっても、電線や電柱は見苦しく残されたままの状態です。空き地の開発は、それによって町並みが改善されることを大前提とする必要があるでしょう。

 この事件の経緯をみていくと、地域住民がもっともな主張をしていても、都市計画や建築計画、事業推進の手続きの中に、まったく「環境」という概念、理念が出てこないことが問題です。法律や手続きの不備の問題は否めません。東京都や23区はただでさえ過密一極集中のまちをどのようにより快適な住環境として整備できるのかについて、区民の意向を重視したまちづくり住民参加のまちづくりに徹していくことが大切です。今回の文京区長のように安易に開発許可を出し続けるだけでは区長としての責務が果たせません。このような混乱を招いた原因は区の体質にあることを猛省すべきでしょう。

 上記の諸点については、著名な建築家で東京都港区青山に戦前から住まわれた大谷幸夫氏の「空地の思想」に端的に書かれていることです。ちなみに、大谷 幸夫氏(1924年(大正13年)2月20日 - 2013年(平成25年1月2日))は東京大学名誉教授であり日本の建築家、都市計画家です。


本稿はこれで終了