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2018年・東日本大震災
復旧実態調査(岩手県編)

釜石湾口防潮堤3

青山貞一・池田こみち 
環境総合研究所顧問
掲載月日:2019年6月20日
 独立系メディア E-wave Tokyo
断転載禁
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釜石小白浜1  釜石小白浜2  釜石小白浜3  釜石小白浜4  釜石1
釜石2  釜石3  釜石湾口防潮堤1 釜石湾口防潮堤2  釜石湾口防潮堤3
釜石両石1 釜石両石2  釜石両石3 釜石鵜住居1 釜石鵜住居2 
釜石鵜住居3  釜石鵜住居4  釜石鵜住居5


◆釜石湾口防潮堤3
 

 以下も再掲載である。


出典:東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に
関する専門調査会配付資料

 Wikimedia に見る津波による被災と釜石湾港防潮堤。

◆津波による被災

 2011年3月11日、東日本大震災に伴う津波により被災。ケーソンの一部が決壊、破損し、水面にとどまるのは北堤で2割、南堤で半分という状況になった。

 総工費1,200億円という巨費が投じられていたことから、被災直後から分析が進められた結果、港湾空港技術研究所は浸水を6分遅らせたほか、沿岸部の津波高を(推定)13mから(実測)7-9mに低減させたという効果を試算している。

 一方で防波堤を破壊した津波は市街地へと押し寄せ、市街地や建物の床上・床下浸水、また建物の倒壊・流出など甚大な被害が発生した。釜石市全体での死者・行方不明者は1,000人以上にのぼる。 他の被災地と比べれば少なくない建物が倒壊を免れ、街並みの面影が残るなど、被害を抑えられ一定の効果があったという評価もある一方、ハード面での防災には限界があることも指摘された。

 なお、遊覧船はまゆりは東日本大震災発生時には大槌町のドックで定期点検中で、釜石港内では被災しなかった。大槌町のドックを襲った津波により流された同船は、150m離れた2階建ての民宿の上に乗り上げた。その後、震災のモニュメントとして保存する動きもあったものの、下敷きとなっている建物が倒壊する恐れがあったことから、震災から約2ヶ月後の2011年5月10日にクレーンで地上に降ろされ解体された。


出典:Wikipedia


 私たちが2011年に行った釜石市桜木町の住民インタビュー(釜石市2に掲載)では、巨額をかけギネスブックに掲載されているなどで、湾口防潮堤の存在が市民の慢心をもたらしたことも指摘されていた。国、自治体は、ハードばかりでなく、人々の心理など、ソフト、ハートについても客観的な第三者調査を行う必要があるだろう。


◆湾口防波堤の特徴

 ここでは、釜石港湾口防波堤の建設上の特徴を紹介します。

 釜石湾口防波堤は、990メートルの北防波堤と670メートルの南防波堤の2つがあります。この防波堤は水深63メートルにつくられていて世界一深い防波堤です。その大部分は海中に沈んでいるために、普段私たちは防波堤全体の高さを確認することはできません。







 
防波堤は、ケーソンの製作、ケーソンを置く基礎石の造成、基礎マウンド上へのケーソンの据付の順に行われます。

 ケーソンは、大きな津波でも倒れないように、16,000トン(ジャンボジェット機約44機分と同じ重さ)、高さ30メートルの超大型で、1つを造るのに約16カ月間かかり、働く人員は延べ7,400人になります。

 このケーソンの下には基礎となるものをつくりますが、それを基礎石といいます。ケーソンはその基礎石の上に置かれます。

 基礎石をつくるさいの石の使用量は、700万立方メートルで、11トンダンプで約100万台分、東京ドーム約7つ分にあたります。

 ですから、ケーソン1つをつくるだけでもかなりの時間と人数が必要となります。
このケーソンをいくつも並べて壁をつくり、外海からの大きな波や津波を防護する役目をになうのが、湾口防波堤です。

出典:国土交通省釜石港湾事務所

 3.11の津波で粉々に破壊された湾口防波堤は、以下の日本経済新聞の記事にあるように、2018年3月に再建されていた。 

 先に指摘した諸点は再建された湾口防波堤にどう活かされているのか? 3次元の流体力学シミュレーションや模型実験などがどう援用された分析され、評価されたのか、大いに問われる。というのも、総事業費として約657億円の巨額の税金など官費、工費が投入されているからだ。

 マスメディアは、この種の巨額の官費、工費を投入した事業については、ただ3.11の巨大津波に一定の効果があったとする事業者の言い分をそのまま掲載するのではなく、専門家らの多面的なコメントを載せるべきである。

◆震災被害の釜石港湾口防波堤が完成、復興へ期待
  日本経済新聞 2018/3/31 1:31

 岩手県釜石市の釜石港で、東日本大震災の津波で破壊された湾口防波堤の復旧工事が終了した。国土交通省が30日、報道関係者に公開した。湾の入り口にあり、津波の流量を抑えるとともに、外海の潮流や波を遮断し、港内を穏やかに保つ。安全な港湾環境が整い、復興や経済活性化につながることが期待される。


完成した釜石港湾口防波堤のうち長さ約1キロの北堤

 湾口防波堤は総延長1960メートル(北堤990メートル、南堤670メートル)。1896年の明治三陸地震に耐えられるよう設計され、海面からの高さは約6メートル。2008年に完成した。水深が最も深い所で63メートルあり、10年には「世界で一番深い防波堤」としてギネス世界記録に認定された。だが11年の震災では津波で北堤が7割、南堤も約半分が損壊した。

 約1メートルの地盤沈下もあった。復旧工事は12年2月に着工。当初設計のままながら、基礎部分と海上に現れるケーソン(鉄筋コンクリート製の箱)の間に摩擦増大マットを敷くことなどで、より大きな津波でも粘り強く効果を発揮する構造になったという。ギネス記録は継続され、改めて記念プレートが設置された。総事業費は約657億円。

 国交省釜石港湾事務所の下沢治所長は「荷揚げ作業などが安全にできるようになった。物流港湾として発展してもらえればうれしい」と話した。


日本経済新聞


 以下は国土交通省による釜石湾口防潮堤の破壊状況の測量結果。






出典:平成30 年 4 月 2 4 日 国土交通省釜石港湾事務所 
釜石港湾口防波堤完成式のお知らせ ~湾口防波堤復旧工事完了


釜石両石1
へつづく