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   東南アジア最後の秘境 ミャンマー

まとめ
       
青山貞一 Teiichi Aoyama  池田こみち Komichi Ikeda
掲載月日:2016年8月4日
独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁
(138) 最終日・バガンの朝   (139)シュエズィーゴン・パヤー   (140) ニャンウー空港
(141) ヤンゴン国際空港   (142) バガンの漆器   (143)ポッパ山とナッ神信仰
 
(144) まとめ

補遺・ミャンマー中部で大地震、バガン遺跡にも大被害

 ミャンマーから帰国後、2016年8月24日午後4時4分(日本時間午後6時34分)に、ミャンマーの中部で起きたマグニチュード(M)6.8の地震により、仏教遺跡のバガンが大きな被害を受けました。11世紀から250年にわたって1万を超える仏塔や寺院が建てられ、現在残るのはそのうちの2200程度ですが、多くが地震で損壊しました。

<参考> ミャンマー地震で崩れ落ちたバガン遺跡
      ミャンマー中部で24日起きたマグニチュード(M)6.8の地震で、
      2016 年 8 月 26 日 08:11 JST ウォールストリートジャーナル

 以下の4枚の写真の出典は、2016 年 8 月 26 日 08:11 JST のウォールストリートジャーナルです。


Source:The Wall Street Journal 2016 年 8 月 26 日 08:11 JST


Source:The Wall Street Journal 2016 年 8 月 26 日 08:11 JST


Source:The Wall Street Journal 2016 年 8 月 26 日 08:11 JST


Source:The Wall Street Journal 2016 年 8 月 26 日 08:11 JST

 以下はハフポストのミャンマー中部地震の関連記事(主に写真)です。

 ミャンマーでM6.8の地震 バガン遺跡の仏塔に被害 ハフポスト紙



まとめ

 アジアというとインド、スリランカ、それにヒマラヤ山系のチベット、ネパール、ブータンなどが含まれますが、東南アジアにおける巨大仏教遺跡といえば、間違いなくバガン(ミャンマー)、アンコールワット(カンボジア)、ボロブドゥール(インドネシア)の三つがあります。

 いずれも重要遺跡であることには違いがありません。しかし、アンコールワット(カンボジア)、ボロブドゥール(インドネシア)がともに、まさにひとつないし2,3の巨大遺跡が現存しているのに対し、バガンは推定で2500もの寺院、仏塔などの遺跡が40平方kmの草原に散在して現存する点で類例ない遺跡といえます。

・アンコールワット(カンボジア)


アンコールワット(カンボジア)  出典:Wikipedia


アンコールワット(カンボジア)  出典:Wikipedia

・ボロブドゥール遺跡(インドネシア)


ボロブドゥール遺跡(インドネシア)  出典:Wikipedia


ボロブドゥール遺跡(インドネシア)  出典:Wikipedia


ボロブドゥール遺跡(インドネシア)  出典:Wikipedia

 バガンはいくつかの理由で(「バガンの概要」にあります)、世界遺産に登録されていませんが、バガンには王や王族が創建した以外に膨大な数の仏塔や寺院、僧院がある点でも他の2つの遺跡とはまったく異なります。

 今回バガンに行ってみてわかったことは、村民の生活空間の比較的近くに、仏塔や寺院、僧院があり、それが村民らの祈りの場として存在、機能している点です。それは巨大仏教遺跡が世界的な観光の対象としてだけではなく、村民の心の礎、祈りの場として今なお存在していることにあります。

 事実、調査によれば、圧倒的多くのパゴダ(仏塔)は、その民自身の寄進により創建されています。その意味では、カンボジア、インドネシアの仏教遺跡が王朝が創建した巨大遺跡であるのに対し、バガンは王や王族だけでなく、一般村民が創建したものである点に大きな特徴があると言えます。

 バガンのパゴダなどの仏教遺跡が創られた経緯や今日まで人々の暮らしとともに守られてきた歴史の背景には、バガンに根付いた上座部仏教のもとで、世界的にも希有な社会の富の偏在を補正する社会的慣習と制度が今なお、バガンの社会に浸透していることがあります。

 今回のミャンマー現地予備調査は、欲張ってヤンゴン3日間、マンダレー3日間そしてバガン3日間の時間をとりましたが、いずれも日数は十分ではなく、まさに「群盲象を評す」、だけの論考になっていますが、現地の高温多湿の厳しい気候の中、また、当然初めてのミャンマー視察にあって、それなりに見るべきものを見ることができたと思います。

 ※群盲象を評す(ぐんもうぞうをひょうす、群盲評象)は、数人の盲人が象の一部だけを触って感想を語り合う、というインド発祥の寓話。世界に広く広まっています。真実の多様性や誤謬に対する教訓となっているものが多いとといえます。盲人が象を語る、群盲象をなでる(群盲撫象)など、別の呼び名も多いようです。


ミャンマー・バガンのスラマニ寺院にて 2016-6-8 
撮影:サンフランシスコからこられた観光客 Nikon Coolpix S9900

 また今回の現地視察は、一切の旅行代理店、パッケージツアーを使わず、一からすべての準備を自分たちで敢行したこともあり、所期の目的を達することができよかったと自賛しています。

 東南アジアのフロンティアー、秘境と称されているミャンマーですが、2015年の総選挙でNLDが大勝し、今後、民主化が進展する直前での現地視察だったことも感慨深いものがあります。というのも、ミャンマーの国民の多くは、あらかじめ予想した通り、見知らぬ人々に本当に親切であること、貧しくてもいつもほほえみを絶やさず、しかも、寄進に象徴されるように、共助の精神に満ちていること、など、現在の大部分の日本人が忘れてしまったことを励行されています。

  そうしたミャンマーならではの良さが、諸外国から大挙して観光客がミャンマー、とりわけ、
バガンに押し寄せることにより、すくなからぬ影響をもたらす可能性を憂慮します。というのも、今のミャンマー、とりわけバガンなどにはいわゆる市場経済システムはあってないようなものであり、市場でも計画でもない第三の共助的経済システム(Third mutual sharring, assistance and economic system in common)があると思えるからです。

 しかし、膨大な数の仏教遺跡を維持管理し、同時に日常生活の場としてゆくためには、どうしても資金が必要となります。その意味では、遺跡を保全、保護、修復するとともに、押し寄せる観光客にどう対応してゆくべきかかが問われます。
 
 それにより世界遺産の観光地にありがちな、各種料金の暴騰、観光客へのダブルスタンダードの料金設定やぼったくりなどなどをどう抑制し、親切と微笑み、共助の国を継続するかが問われると思います。

 今回の現地視察(10日間)は、国際線往復航空運賃、国内線航空運賃、ホテル滞在費、入域料、施設入館料、食費などすべてを含め、ひとりあたり約11万円と超リーズナブルなものとなりました。

 本論考をお読み頂いた皆様もぜひ、暇をみつけ、つくり、ミャンバーを訪れてみてください。きっと、貴方の価値観を根底から変える何かを得ることができると確信します。また21世紀の世界的課題である「本来の幸福とは何か」、「持続可能社会とは何か」についても再考させられることと思います。


 青山貞一、池田こみち 環境総合研究所顧問  2016年8月10日
 東京都品川区の青山自宅にて

 ※なお、本報告(論考)は、青山貞一が執筆し、追加記述、翻訳を池田こみちが、
   また池田こみちと鷹取敦が校正を行いました。またWikipedia、グーグルマップ
   さらに現地の地図、仏教遺跡文献には大変お世話になりました。ここに、心から
   御礼を申し上げます。

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