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沖縄の記憶
Memory of Okinawa
8.市民・観光客を遠ざける那覇新港 

青山貞一 Teiichi Aoyama
28 Feb. 2009 転載禁


 ここ数年、毎年のように沖縄本島にでかけている。調査や研究などの仕事ででかけているのだが、それとは別に沖縄に残された希有な自然を自分の目に焼き付け、そして記憶と写真に記録にとどめようとしている。

 沖縄の自然環境やそれをとりまく海洋生態系は、世界的に見ても稀有なものであったはずだが、常軌を逸した米軍基地の存在、それに今や「常習化」している公共事業への依存症によって、次々に破壊され、見る影もない。

 現在の沖縄、とくに本島で紺碧そしてマリンブルーの海や珊瑚の浜辺を見つけるのはそう容易でなくなっている。

 私の「沖縄の記憶 Memory of Okinawa」シリーズでは、沖縄本当に残され同時に絶滅の危機に瀕している自然生態系や歴史文化遺産を写真を中心に紹介する。

 その第8回目は、沖縄本島に見る「市民・観光客を遠ざける那覇新港」である。

 2009年2月13日〜15日の沖縄現地視察で訪問した場所・機関


 私はたまたまこの那覇新港に2回視察する機会をえたが、この地域には、ごく一部の市民と関係者以外誰も行かない。しかしよく見ると、いろいろな疑義が沸いてきた。



那覇新港の土地利用図  出典:ライブドア地図情報


那覇新港の衛星画像  出典:グーグルマップ


■気になる那覇新港周辺の公共施設1

 ところで、下の写真にあるように、那覇新港に隣接し大きな廃棄物の焼却炉がある。2007年に視察したときも気になっていたのだが、焼却施設のすぐ隣にどう見ても焼却灰っぽいものが野積みされている。まさかいまどき焼却灰を野積みしていることはないだろうが、やはり気になる。

 今回、その道の専門家である池田こみちさんと鷹取さんにも現場を見てもらったが、やはりサンプリングして分析しないと分からないと言うことになった。もちろん、勝手にヤードに入って試料採取するわけにもゆかない。


那覇新港に隣接し大きな廃棄物の焼却炉
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 2009年2月

  港に隣接しており、一年通じて風が強い地域なので、万一、焼却灰だとすると、港や外海にダイオキシンや有害物質が飛散する可能性が高い。また隣にはおそらく中学校のグランドがあり、沢山の子どもが野球をしていた。これも気になる!


焼却炉の隣にあるヤードに野済みされているは焼却灰??
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 2009年2月


堤防の上から焼却炉の隣のヤードを観察する池田さん
うしろにある山が中央市場の産廃?
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 2009年2月

 下は2007年11月に青山ゼミの院生、宇都宮君の修士論文の研究で来たとき撮影した焼却炉。


この写真は2007年11月に撮影したもの
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10


■気になる那覇新港周辺の公共施設2

 もうひとつ気になるものがある。下の写真である。那覇新港の突堤に隣接するこの山は何だろうか? どうみても建設土砂なり産廃の山に見える。これも2007年来たときも大いに気になった。今回、やはりその道の専門家である池田こみちさんと鷹取さんにも現場を見てもらったが、やはり私同様、産廃の山ではではないかと推察する。


突堤と平行して延々と続く、不思議な産廃の山??
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月

 突堤と平行して延々と続く、不思議な産廃の山??


突堤と平行して延々と続く、不思議な産廃の山??
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月

 ではこれの設置、管理者は誰かと調べてみた。すると、下の写真の立て札にあるように、何と沖縄県中央卸売市場であった。これにはびっくりだ。


警告を出すのはよい、まずは市場敷地内の産廃処理をすべきではないか
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 2009年2月

 以下は浦添市長と警察署長の警告。臨港地域がゴミため場となってしまったのには訳がある。まちづくりそのもののあり方に関係しているのではないか。


この写真は2007年11月に撮影している
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10

 怪しげな建設土砂、産廃らしき山の裏側に回ったら、何と沖縄県中央卸売市場があった!
 

何と沖縄県中央卸売市場があった!
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 2009年2月


■気になる那覇新港周辺の公共施設3

 気になる3つめは、この那覇新港には、どうみても不要と思われる膨大なテトラポットがあることだ。


那覇新港には何処を向いても、テトラポットの山、山..また山
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月

 以下を見て欲しい! どうみてもテトラポット業者の回し者としか燃えないようなテトラポットの数だ。


テトラポットの大会

 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月

 突堤の上は結構幅員がある。ここでは左側も右側もなぜかテトラポットだらけ。このテトラポットはどうみても不要だ。突堤の上でポーズをきめる池田さんとそれを笑って見つめる鷹取さん。


なかなかすばらしいポーズが決まった池田さん
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月 

 私は下を見て呆れ笑っててしまった! 立派なスーパー堤防に加え、こんな膨大なテトラポットがなぜいるのだろうか?


 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 2009年2月

 海側にいるひとは、シャコを採っている市民。干潮時には干潟が広がり、いろいろな海産物が採れるという。子どもずれの夫妻、釣りを楽しむひともいた。

 ただし、砂浜側に降りるのは至難の業。テトラポットの中をくぐっる鷹取さん。


 
テトラポットの中を鷹取さんが降りていった
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月


 よく見ると堤防に外側に何でこんなに沢山のテトラポットがあるかについて、沖縄総合事務局の弁解がましい説明があった。波を消し、港内の静穏性を高め、荷役の作業の安全性を確保するために波消ブロック(=テトラポット)を設置しますとあるが、どうみてもこのブロック、テトラポットは、「ためにする公共事業」ではないか。かくも過剰な公共工事のために沖縄の海は死滅してゆき、累積赤字は増える!

 今でも日本には50万社のゼネコン、土木工事会社があり、500万人以上の社員がいる。この数は米国の3倍、ドイツの9倍。それらを食わすためにあの手、この手で国、自治体は公共事業、公共事業を捻出してきたというのが、この種の環境破壊、景観破壊の実体ではないか? 市民はこのような不要な公共工事によって海か遠ざけられ、アクセスが阻害される。



テトラポットについての弁解がましい説明
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月

 下は2007年11月に青山ゼミの院生、宇都宮君の修士論文の研究で来たとき撮影したスーパー堤防と突堤。膨大なテトラポットが見える。このときは好天。


この写真は2007年11月に撮影したもの
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10


■堤防壁面のアバンギャルド絵画

 一方、那覇港に面するテトラポットだらけのスーパー堤防の内側がどうなっているかといえば、下の写真にあるように、すばらしいアバンギャルド絵画が所狭しと書かれていた! 

 よくもまぁ、こんな場所に書いた、と思える立派な絵画もある。 以前、ベルリンの壁に書かれた絵画を彷彿とさせる。ここまで来ると、落書きなんではなく、芸術だ。


スーパー堤防の内側(海側)は、アバンギャルド絵画のオンパレード
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月


 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月

 
スーパー堤防に立ってポーズをとる池田こみちさん。堤防の外側(焼却炉、中央市場などがある)にも膨大な数のアバンギャルド絵画が描かれている。


 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10  2009年2月

 下の写真は、海、スーパー堤防、産廃の山?、焼却炉の位置関係を示している。堤防の後ろには相当な幅をもつ第2の堤防(鉄とコンクリート)がある。


左からテトラポットの海、スーパー堤防、焼却炉、中央市場の産廃の山?
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 2009年2月

 以下は、沖縄新港を2回みての私の率直な感想。

 私は世界の港を沢山見てきたが、沖縄はハブ港問題以外に、ウォーターフロントをまちづくりにまったく生かしていない、と思う。香港、ボストン、シドニー、ハリファックス、セント

ジョーンズ、サンディエゴ、サンフランシスコ、横浜などなど、世界各地では、いかにウォーターフロントに市民が近づけるか、海と市民が共生するかが大きなポイントとなっている。

 しかし、どうだろう、那覇港は単なる廃棄物など、嫌悪施設などばかりで、市民にとって、観光客にとっては、せっかくの海との接点が台無しとなっている。そもそも近づけない。素材をまったくまちづくりに生かしていないと言える。実にもったいない。

つづく