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農業・食品だけでない、
TPPに関連する
多くの分野
青山貞一
掲載月日:2013年3月3月
 独立系メディア E−wave Tokyo



 米国の市民団体、パブリック・シティズンがTPP草案を暴露してこの方、マスコミや政府が言っている内容を鵜呑みにしない国民は、TPP(環太平洋経済連携協定)がどのようなものか次第に理解しはじめている。

 しかし、自民党議員が200名以上加わる議員連盟「TPP参加の即時撤回を求める会」は、安倍総理がオバマ米大統領と日米首脳会談を行った後、TPPについて「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないとの認識に立った」と表明すると、国内、特に自民党の様子は一変したいう。

抜かりない対応で毒気抜く首相 党内のTPP反対派も意気消沈
〈週刊朝日〉 3月4日(月)16時9分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130304-00000004-sasahi-poldot.

 2月22日、安倍晋三首相(58)がオバマ米大統領と日米首脳会談を行った後、TPP(環太平洋経済連携協定)について「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないとの認識に立った」と表明すると、国内、特に自民党の様子は一変した。

 慎重派の牙城である議員連盟「TPP参加の即時撤回を求める会」は、首相の帰国後の26日に会合を開いたが、参加者は80人。訪米前は230人以上が名前を連ね、気勢を上げていたのがウソのような静けさだ。

「みんな冷たいよな(苦笑)。農林族の中心メンバーは、相変わらず机をバンバンたたいて威勢がよかったけど、後ろのほうに座った議員はスマホをいじったり、寝ていたり」(出席した議員)

 慎重派と推進派が混在する自民党の外交・経済連携調査会は27日の決議で「守るべき国益」として、【1】コメ、麦、牛肉、乳製品、砂糖などを関税撤廃対象から除外【2】自動車の安全基準を維持――など6項目を列挙した。

「逆にこれで安倍さんは国会で追求されても答弁しやすくなったね。『六つを守る』と言えばいいから」(前出の盟友)

 首相側に抜かりはない。「選挙区向けのアリバイ作りで反対の態度をとっている議員も多い。それもわかった上で、安倍さんは彼らに丁寧に接している。農林族議員と国会内ですれ違うときも、しっかりと頭を下げているしね」(側近議員)

 政権支持率が高止まりしている以上、農林族が束になっても、けんかにならない。さらに自尊心をくすぐることで、「毒気」さえ抜いてしまっているのだ。

※週刊朝日 2013年3月15日号

 さらに慎重派と推進派が混在する自民党の外交・経済連携調査会は2月27日に「守るべき国益」について、【1】コメ、麦、牛肉、乳製品、砂糖などを関税撤廃対象から除外、また【2】自動車の安全基準を維持――など6項目を挙げ、決議したという。

 これで自民党の反TPP派議員は、反対の旗を降ろそうとしているらしいが、トンデモナイことだ。

 パブリック・シティズンによって暴露されたTPP草案の英文書をざっと見ると、化粧品、医療機器、医薬品、農薬、殺虫剤、著作権、知的所有権という用語が頻繁に出てくる。さらにTPPは、潜在的に雇用、賃金、農業、移住、環境、消費者の安全、金融規制、インターネットプロトコル、政府調達などに大きな影響を与える世界最大の自由貿易協定であると言っている。と同時に、TPPは「貿易に関する協定」ではなく、市民の生活や各国の既存のルールを踏みにじる「ATROCITY(残虐行為)」とまで言い切っている。

 つまり、TPPは、農産品や加工食品だけでなく、というより上記の分野に照準に合わせているのである。

 以下は、リークされたTPP草案の一部である。今後、要点を日本語訳にしてみたいと考えるが、そもそも日本政府や国会議員は、リークされたTPP草案をしっかりと読み、理解した上で賛成、反対を表明しているのであろうか? 
 
US Documents
 ・Leaked TPP text on Copyright Limitations and Exceptions
     (links to keionline.org) August, 2012

 ・Leaked US Proposed Investment Chapter (Links to citizenstrade.org)
    June, 2012

 ・Leaked US Proposed TBT Annexes on Medical Devices,
     Pharmaceutical Products and Cosmetic Products
     (links to citizenstrade.org), October, 2011

 ・Leaked US Proposed Transparency Text (links to citizenstrade.org),
     October, 2011

 ・Leaked US Proposed IP Text (links to citizenstrade.org),
     October, 2011

 ・Leaked US Trans-Pacific FTA Paper on Eliminating Pre-Grant
     Opposition, July, 2011

 ・Leaked US Proposed IP Text (links to keionline.org), February, 2011

 New Zealand Documents
 ・Leaked Proposed Intellectual Property Text, February, 2011

 ・Leaked Paper submitted by New Zealand on IP Proposal, December, 2010

 Chile Documents
 ・Leaked Preliminary Intellectual Property Proposals, February, 2011

 ・Regulatory Coherence
  Leaked Regulatory Coherence Text (links to citizenstrade.org),
  October, 2011

 一件、TPPと関係なさそうに見える著作権、知的所有権についての協議内容を見るだけでも、このことは分かる。

 たとえば、「国境なき医師団(Doctors Without Borders )のJudit Rius Sanjuan, Medecins Sans Frontieres/が以下でコメントしているように、

  For example, competition among generic manufacturers is what brought down drug prices for HIV/AIDS by 99 percent, from US$10,000 per person per year to roughly $100 today. Trade agreements of the type being pushed this week in Peru threaten these types of crucial gains in access to life-saving medicines.”
 発展途上国のエイズ・HIVに関連し医師団が使っているジェネリック薬品の一人当たりの価格は、メーカー間の競争で10万ドルから100ドルと、100分の1に下がっている。ペルーで今週行われている貿易協定は、救命医療で使うこの種の医薬品の入手に脅威を与えている。

のである。

 国境なき医師団の医師が指摘している点は、従来から米国のラムズフェルド国防長官(当時)について指摘されてきたことである。

 以下は、青山貞一が以前書いたブ部ロブの一節である。

 引用はじめ

 カリフォルニア州に本拠を構えるバイオテック企業ギリアド社は、インフルエンザ治療薬として現在世界中から注目されている『タミフル』の特許を所有している。

 1997年からブッシュ政権入閣までの2001年の間、ラムズフェルド国防長官はギリアド社の会長を務めており、現在でも同社の株を保有しているが、その評価額は500万ドルから2,500万ドルの間であることが、ラムズフェルド氏自身による連邦資産公開申告書で明らかになった。

 申告書ではラムズフェルド氏が所有する株数の詳細は明らかになっていないが、過去6ヶ月間における鳥インフルエンザ大流行の懸念とタミフル争奪戦の予測により、ギリアド社の株価は35ドルから47ドルに急騰。これにより、すでにブッシュ政権内で最高額の資産を持つ国防長官は、少なくとも100万ドル以上資産を増やしたことになる。

 スイスの医薬品大手ロシェが製造販売しているタミフル(ギリアド社は販売額の10%のロイヤリティーを受け取っている)で利益を得た政界有力者はラムズフェルドだけではない。

 ジョージ・シュルツ元国務長官はギリアド社役員として、2005年度に入ってから同社の株700万ドル分を売却している。

 他にも、前カリフォルニア州知事の妻ピート・ウィルソンがギリアド社の役員に就任している。 「政界とこれほど繋がりの深いバイオ企業は他に類を見ない」とサンフランシスコのシンク・イクイティ・パートナーズ社アナリストのアンドリュー・マクドナルド氏は評している。

 さらに重要なことは、合衆国政府が世界最大のタミフル購入者であるという事実だ。今年7月には、米国防総省は兵士への配給用に、5,800万ドル分のタミフルを注文しており、議会も数十億ドル分の購入を検討中である。2005年度におけるロシェのタミフル売り上げ予測額はおよそ10億ドルで、前年度は2億5,800万ドルであった。

 引用終わり

 つまり、米国流の知的所有権をそのまま途上国との貿易協定に適用すると、従来、安く買え、途上国援助の医師等が使用していた医薬品がバカ高くなる可能性を指摘しているのである。

 上の医薬品はほんのは一例だが、日本政府、国会議員は、マスコミや官僚の情報ではなく、自分たちでしっかり目を見開き、問題の本質を見て欲しい!