エントランスへはここをクリック   


第一編
英国からの独立に燃える
スコットランドが面白い

③希有で秀逸な人材と知性の宝庫
 
青山貞一 池田こみち 環境総合研究所 顧問
掲載月日:2012年9月15日
 独立系メディア E-wave Tokyo
無断転載禁


第一編 英国からの独立に沸くスコットランドが面白い!
①今に生きるブレーブハート   ⑥再独立に燃える国民と議会
②スコットランド人の気質と精神風土   ⑦世界一の持続可能な国へ
③希有で秀逸な人材と知性の宝庫   ⑧2020年再生可能エネ100%
④闘いと苦難の歴史   ⑨国旗と国花それに准国歌
⑤闘いの続行と再独立への道   ⑩独立精神を学ぶ2200kmの旅

スコットランドは人材の宝庫そして知性の殿堂である!
  

 スコットランドを知れば知るほど、スコットランドの魅力に惹かれる。その理由のひとつは独創性、独自性そして創造性が実に豊かなことだ。しかも、「隗よりはじめよ」、「率先遂行」など、独創性があるだけでなく、考えた理論を現場で実行に移すことの重要性を深く認識している。

 スコットランド人には、それのためのミッション、パッション、アクションの3つが備わっているように感じる。ミッションは社会的使命、理念、知性、理性、パッションは情熱、感性そしてアクションは行動、実行である。いくら高邁なミッションを持っていても、アクションがなければ社会は変わらない。そのアクションを促すのがパッション、すなわち感性であり情熱である。


◆スコットランドをイングランドからの独立に導いた2人

 ところで歴史的に見るとスコットランドは、外部から侵略してくるローマ帝国、バイキングそしてイングランドとの闘いに明け暮れてきた国である。

 闘わなければ死か隷属という極限的で過酷な状況に絶えず置かれてきた。欧州ではどこの国にも似たような状況はあっただろうが、とりわけスコットランドにとって、ブリテン島で国境線を接するイングランドとの闘いは、建国以来つづくものであった。

 外敵と闘い、独立するためには、まさに命をかけ闘わなければならない。その意味でスコットランドの歴史における最大のテーマ、ミッションは独立であった。生死をかけ民衆とともにイングランドと闘い歴史上はじめて独立を勝ち取ったのは、ウイリアム・ウォレス、ロバート・ザ・ブルースの二人であろう。13~14世紀のことである。


ウィリアム・ウォレス
ウォレスは映画、Brave Heartの主人公としても世界的に有名
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


ウォレスの意志を継いで独立を果たしたロバート・ザ・ブルース
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


スターリングの国立ウォレス記念塔内にあるスコットランドの偉人像
Source: National Wallace Monument



◆女性蔑視、差別のなかで若くして断頭台に消えたメアリースチュアート

 16世紀後半、若くしてスコットランド、イングランド、フランスの王位継承権を持ちながらイングランドのエリザベス女王によって断頭台に送られ露と消えた悲劇の女王、メアリー・スチュアートも、スコットランド独立に命を捧げた重要なひとりだ。

メアリー女王の足跡を辿る旅:スコットランド・エジンバラ城 You Tube


イングランドのエリザベスに19年間幽閉されたあげく
断頭台で処刑されたスコットランドのメアリー・スチュアート女王
スコットランド国立博物館にて
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


メアリー・スチュアート女王のデスマスク
NHKBS 悲劇の女王メアリースチュアート


身長が180cmあったというメアリー・スチュアートのレプリカの前にて
本物は息子のジェームス6世によりロンドンのウエストミンスター寺院
にエリザベス一世と並んで葬られている。
スコットランド国立博物館にて撮影
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8


息子のジェームス6世によりロンドンのウエストミンスター寺院
にエリザベス一世と並んで葬られているメアリースチュアート一世
NHKBS 悲劇の女王メアリースチュアート


◆世界の産業革命を先導したのはスコットランド人

 人口わずか500万人のスコットランドは、多くの分野で信じられないほど多くの人材を輩出してきた。

 それも数学、物理学、化学、細菌学など基礎的科学にはじまり、電気通信、医学など技術・工学の分野、さらに文学、思想、哲学、経済学に至るまで、あらゆる分野で希有で秀逸な能力をもつ人材を輩出してきた。これは世界に類例を見ないことだ。

 スコットランドは産業革命より前から世界の科学技術の中心地であり、それを支えた多くの科学者・技術者を輩出している

 たとえば、蒸気機関を発明した
ジェームス・ワット、世界の発明家で電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベル、 物理学者でマクスウェルの方程式など電磁気学の基礎を作ったジェームズ・クラーク・マクスウェル

   
  ジェームス・ワット        アレクサンダー・グラハム・ベル


ジェームズ・クラーク・マクスウェル

 世界史に残る細菌学者
アレクサンダー・フレミング、物理学者であり化学者で熱素説のジョゼフ・ブラック 、化学者で発明家のチャールズ・マッキントッシュ、建築のチャールズ・レニー・マッキントッシュ、スターリングの公式で知られる数学者のジェームズ・スターリング

 
    アレクサンダー・フレミング          

 スコットランドには多くのノーベル賞受賞がいる。ジョゼフ・ジョン・トムソンは電子と同位体の発見者であり、質量分析器の発明者であり物理学賞を受賞した。化学賞を受賞した化学者ウィリアム・ラムゼー。霧箱で知られる物理学賞を受賞したチャールズ・トムソン・リーズ・ウィルソン。アーサー・ヘンダーソンは政治家、軍縮主義者で平和賞を受賞している。ジェームズ・マーリーズは経済学賞を受賞するなど多くの研究者、経済学者、政治家らがノーベル賞を受賞している。

  
 ジョゼフ・ジョン・トムソン       ウィリアム・ラムゼー

  
ャールズ・トムソン・ウィルソン    アーサー・ヘンダーソン

 生活に近い分野では、ファックスを発明した
アレクサンダー・ベイン、テレビを発明したジョン・ロジー・ベアード、空気入りタイヤを発明したジョン・ボイド・ダンロップ、道路のアスファルト舗装(マカダム舗装)を発明したジョン・ロウドン・マカダム、消毒による無菌手術を開発したジョゼフ・リスター、また19世紀、当時「暗黒大陸」と呼ばれていたアフリカ大陸を縦断したデビッド・リビングストンもスコットランド人である。

 探検と言えば、オーストらリア、ニュージーランド、ハワイなどを発見した
ジェームス・クックの父親もスコットランド人である。

   
 デビッド・リビングストン    ジェームス・クック

 以下の地図は、カナダ最東端にあるニューファンドランド島を表したもの。上はジェームズ・クックの探検によるニューファンドランド島地図、1775年。下は現代の測量技術によって描かれたニューファンドランド島の地図である。


ジェームズ・クックの探検によるニューファンドランド島地図、1775年


現代の測量技術によって描かれたニューファンドランド島の地図
出典はともにWikipedia


◆傑出した社会科学、人文科学者もスコットランド人

 社会科学、人文科学分野でも傑出した人材を輩出している。たとえば「経済学の父」と言われ国富論など著し経済学の基礎をつくった
アダム・スミス、哲学者であり歴史学者、政治思想家出でもあったジェームス・ヒューム、歴史家のジョージ・ブキャナン、社会学の祖とされるジョン・ミラーもスコットランド人だ。

  
   ジェームス・ヒューム          アダム・スミス

 詩人で作家の
ウォルター・スコットはスコットランド人の心の故郷となっている。スコットはエディンバラ大学で法学を学び、父の跡を継いで弁護士となるが25歳より文筆活動を始め、当初は詩人として、後に歴史小説作家として名声を博している。スコットランドの作家としては存命中に国外でも成功を収めた、初めての人気作家といえる。日本にも関係ある歴史家、トーマス・カーライルもスコットランド人である

  
  ウォルター・スコット         トーマス・カーライル
 
 さらに詩人のキーツ、シャーロック・ホームズの生みの親
コナン・ドイル、『宝島』や『ジキル博士とハイド氏』の作家ロバート・ルイス・スティーヴンソン、俳優のショーン・コネリー、ユアン・マクレガー、ジェラルド・バトラーなどはスコットランドの生まれである。


ロバート・ルイス・スティーヴンソン

 日本との関係においても、幕末から明治維新に工部大学校(東京大学工学部の前身)の初代総長となった
ヘンリー・ダイヤー、同じく東大医学部の前身東京医学校の初代校長ウィリアム・ウィリス、そして軽井沢開発のアレクサンダー・クロフト・ショーなどもいる。

    
ウィリアム・ウィリス          アレクサンダー・クロフト・ショー

 スコットランド人口は現在でも約500万人だが、上記の希有な人材が活躍した頃はさらに少なかったことから察しても、スコットランドがいかに自然科学、社会科学、人文科学を問わず、また理論、実学を問わず、世界の知性の殿堂であったかが分かるというものである。

 最後に2012年イギリスのロンドンでオリンピックが開催されたが、イギリスがここまでに獲得したメダルの合計は48個、そのうち11個がスコットランド人選手によるものだ。
 イギリス代表のメダルの約4分の1に貢献しているスコットランドだが、繰り返すように人口は約500万人、イギリス全体の人口の約12分の1に過ぎない。実はオリンピックでのスコットランドの大活躍、実績に刺激され、「スコットランド独立論」が熱を帯びている。

 ここでもスコットランド人の希有な人材が光っている!

つづく