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メアリー・ステュアートの足跡を追って
スコットランド
2200km走破


スコットランド再生エネ開発

青山貞一 Teiichi Aoyama  池田こみち Komichi Ikeda
2018年8月公開予定
独立系メディア E-Wave Tokyo 無断転載禁
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ホワイトリー風力発電  スコットランド再生エネ開発  風力以外の再生エネ計画
  

 今回のスコットランド及び北イングランド現地調査のひとつ目的は、同地域におけるエネルギー事情を調査することにあった。

 ここでは、スコットランドの2020年までのエネルギー戦略についてその概略を報告したい。

<スコットランドの従来のエネルギー政策>

 以下のグラフと表は、スコットランドのセクター別の全エネルギー消費である。電気エメルギーが全体の約1/4、輸送用エネルギーが全体の1/4強、圧倒的多くは熱エネルギーとして使用されていることが分かる。


ENERGY POLICY: AN OVERVIEW
Source: Scotland Government

 スコットランドは、日本同様もともと原子力と化石燃料が過半を占める国(地域)だった。 スコットランド北東部アバディーン沿岸には、北海油田が広がっており、これがスコットランドの経済基盤、また英国からの自立、独立するうえでの重要な基盤となっていると思われる。戦略資源である!

 下のグラフはスコットランドと英国全体(イングランド、ウェールズ、スコットランド)の電気のエネルギー別の割合を示したものである。 スコットランドは、現状でも原子力が約30%(青の部分)あり、英国全体の19%に比べその割合は多くなっている。


原発・火力を含めた発電源の割合  出典:スコットランド政府

 下図は2000年から2010年における燃料別のスコットランドの発電量である。この間の原発による発電割合は、おおよそ25%〜30%となっていることが分かる。


出典:Department of Energy and Climate Change, The National Archives, United Kingdom

 以下はスコットランドの原発の立地位置である。スコットランドの原発は、歴史的には4地域、合計12基あったが、現在、スコットランドの原発は大部分が閉鎖されており、稼働しているのは、2地域それぞれ2基、合計4基だけとなっている。

 スコットランドの原発事情について、以下を参考のこと。
 ◆青山・池田:スコットランド現地調査報告 スコットランドの原発事情


スコットランドの原発立地   出典:日本原子力会議

 このようにもともと原子力と化石燃料が主体であったスコットランドだが、スコットランドは、過去10年間で自然エネルギーを中心とした再生可能エネルギーの割合(電気エネルギー分)を31%と、飛躍的に増やしてきた。

 その多くは風力、水力などの更新可能エネルギーである。さらに今後10年で更新可能エネルギーがスコットランドの全電力消費の100%を賄うという戦略的な計画を持つに至っている。

 上述のように、スコットランドは、現状で自然エネルギーなど再生可能エネルギーが全電気エネルギー消費の31%となっているが、何と2020年までに再生可能エネルギーで全電気エネルギー消費の100%をまかなう戦略的計画をたてていることに私達は注目してきた。

 スコットランドでも福島第一原発事故が、再生可能エネルギー開発を後押ししていることは言うまでもない。スコットランドの原発事情、さらにイングランド北西部のセラフィールドでも書いたように、福島原発事故は、イタリア、ドイツ、スイスなどもともと脱原発あるいはそれに近い政策をとってきた欧州諸国だけでなく、英国(イングランド、ウエールズ、スコットランド)も大きな影響を受けてきた。

 もともと英国、とくにイングランドでは、公共、公益事業については経済効率や投資効果を重視してきたが、福島原発事故は、英国における今後の原発建設、投資を萎縮させているのである。

<再生可能エネルギーの開発実績と将来戦略>

 スコットランドの再生可能エネルギー(発電ベース)の内訳を見ると、風力、水力とバイオマスなどがあるが、過去10年、圧倒的に伸びてきたのは、ドイツ、デンマーク同様、風力発電である。

 以下のグラフは、2000年から2010年のスコットランドの再生可能エネルギーの電力設備容量の推移を示している。凡例は、青色が水力発電、緑色が風力発電となっていることが分かる。過去10年間、水力発電の規模はほぼ横ばいであるが、風力発電が指数関数的に伸びている。


スコットランドの過去10年の再生可能エネルギーの電力設備容量(MWh)
出典:スコットランド政府

 以下のグラフは、2000年から2010年のスコットランドの全発電量に占める再生可能エネルギーの割合の実績値である。2010年に一旦下がっているが、2011年度は持ち直し、31%になっている。


スコットランドの過去10年の発電量(GWh)
右の割合(%)はスコットランド全発電量に占める再生可能エネルギーの割合
 出典:スコットランド政府

<2020年に電気の100%を再生可能エネルギー
  とするスコットランドの野心的なエネルギー開発戦略>

 以下のグラフは、2011年から2021年までの10年間における再生可能エネルギーの戦略的開発シナリオである。

 この戦略はA、B、C、Dの4つの代替案となっている。

 一番上(A)が100%再生可能エネルギーでまかなうシナリオである。非常に野心的かつ戦略的な計画だ。


2020年までの将来シナリオ  出典:スコットランド政府

 今回、北部地域を含めスコットランドの70%、2200kmを車で走行し、地形、海洋地形、植生、気象、水象、気象などを膚で感じてきたが、北海道より少し広い地域に人口が500万人超の密度を考えると、風力、水力のみならず、波力、潮力を含め、再生可能な自然エネルギーを景観を考慮しながら相当拡大できると感じた!
★「ポスト福島事故」、世界はどう変わる?
朝日新聞編集委員 竹内敬二 2011年7月1日

ホワイトリー風力発電所。欧州最大という。グラスゴー近郊 英国北端にあるオークニー諸島を訪れた。北緯59度。夏の今は、午後10時
でも夕暮れだ。

 時差ぼけの頭で宿のバーに座っていると、宿の主人が「津波と原発事故はどうだ」と話しかけてくる。日本人と見れば多くの人がこの話をする。

 「悲惨だなあ。でも原子力は必要だと思うよ。化石燃料はどんどん高くなるだろうし、健康にも悪い。危険だが、フランスなんかはうまく使っているじゃないか」。「原子力をどうするか」は、だれでも、どこの国でも「福島後」の大問題
だ。

 英国では、国とスコットランドとの方針がすれ違っている。

 スコットランドの「首相」のような立場にあるサモンド首席大臣は、5月、「2011年に電力の31%を自然エネルギーにする目標は達成した。2020
年までに80%だった目標を100%に上げる」と述べた。

 「100%」とは、火力発電などがあっても、スコットランドの需要分は風力などの自然エネルギーで発電するということだ。余った電気は輸出する。スコットランドでは原発の建て替えは認めない。

 この「脱原発、自然エネルギー大推進」の方針で、注目を集めているのがオークニー諸島だ。大西洋と北海の間にあり、強い潮流と波にさらされている。世界の多くの企業が潮流発電と波力発電の設備をここに設置し、海洋エネルギーの実
験センターになっている。

 一方、英国政府の気候変動委員会(CCC)は5月、エネルギー政策の評価報告書を発表した。内容は「2030年までに15基の原発を建設する。30年の発電を原子力40%、自然エネルギー40%、天然ガス発電5%にする。残り15%は二酸化炭素の地下貯蔵(CCS)でかせぐ」などだ。

 「福島後に原発重視策」と話題になった。ロンドンでCCCのケネディー委員長に聞くと、「福島事故の原因は強い地震、高い津波などだ。英国の原発計画には影響しない」という。「しかし、英国では世論の反発も強いと思いますが」と聞くと、「原発なしで、どうやって安く二酸化炭素を減らすのか」と強い調子で答えた。

 自然エネルギー、発電コスト、二酸化炭素削減、世論。世界の縮図のような英国の議論はまだまだ続くだろう。

 福島後の各国の反応はさまざまだ。ドイツは「22年までの原発全廃」を決めた。緑の党のトリッティン元環境相は、「自然エネルギーを増やしてきたから脱原発ができる」と強調する。10年前のドイツでは自然エネルギー発電が4%だったが、昨年は17%だ。

 スイスも現在5基ある原発を2034年までに全廃する。イタリアは国民投票で、原発の凍結続行を確認した。

 しかし、中国は「日本で重大な事故があったが、原子力開発を止めることはできない」との方針だ。

 米国はどうか。政府は原発の新規建設を支持するが、福島事故以前から、電力会社の動きは鈍い。風力や天然ガスの発電所より、建設コストがかなり高くなっているからだ。米国では、05年ごろに「原子力ルネサンス」という言葉ができたが、その勢いはない。

 どこの国でも、原子力政策は変わりにくい。原子力へ踏み出し、時間が経つと、社会全体が原子力を支える体制になるからだ。

 しかし、政策を変えうるきっかけとしては、福島事故は最大級の衝撃だろう。世界をどう変えるか。そして日本をどう変えるか。その議論もこれからだ。

    ◇

 竹内敬二(たけうち・けいじ) 朝日新聞編集委員(環境、エネルギー担当)。1980年入社、科学部記者やロンドン特派員、論説委員として、地球温暖化の国際交渉やチェルノブイリ原発事故、各国の自然エネルギー政策を取材。今は福島原発事故後の日本のエネルギー政策が最大の関心事。


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