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第四回 発症・死亡のタイムラグを考慮した
致命率(CFR)による

世界各国・地域・グループ別

COVID-19
リスク評価


青山貞一 Teiichi Aoyama
(東京都市大学名誉教授、環境総合研究所顧問、元ローマクラブ日本事務局)
池田こみち Komichi Ikeda 
(環境総合研究所顧問、元東京大学医科学研究所
、元ローマクラブ日本事務局)
鷹取敦 Atsushi Takatori (環境総合研究所代表取締役、所長
独立系メディア 
E-Wave Tokyo
 
掲載月日:2020年10月10日  無断転載禁

キーワード:新型コロナウイルス、COVID-19、致命率、CFR、死亡者数/感染者数、
     リスク総合評価
、Case Fatality Rate、世界各国、世界地域、日本、
     G7,G20、BRICS、ASEAN、
旧社会主義諸国、北欧諸国、
     中南米カリブ諸国、アフリカ諸国、中東諸国


         ◆第三回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価
         ◆第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価
         ◆第一回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価

はじめに  前提について

 致命率(CFR)の解説は本稿末尾にある。

 5月15日からほぼ3週間おきに世界の主要国の新型コロナウィルスによる致命率(死亡者数/感染者数)
を見てきたが、日本においては、今回の新型コロナ感染症(COVID-19)に感染して、すぐに死に至るわけ
ではなく、おおよそ3週間のタイムラグをおいてから重篤化し亡くなるケースが多く見られている。

 下図は、その日本における感染者数と死亡者数を示したものだが、死亡までのタイムラグにはばらつきが
あるものの、それぞれのピークに概ね3週間のずれがあることがわかる。

 ただし、この3週間というタイムラグは、あくまでも日本の実証例であり、他国にそのまま当てはめられるも
のではない。このタイムラグは、高齢者割合、重篤者割合、既往症割合、医療実態(病床数、医療スタッフ
数、医療機器、医療技術、ICU、対症療法医薬品使用など)により異なってくることが推定されるからである。

 また、中国やイタリアで猛威を振るっていた感染拡大の初期のころ(2019年末から2020年4月頃まで)と半年
が過ぎて世界に広まった7月~8月では、感染から死亡に至る期間も当初に比べて長くなっている可能性も考
えられるため、どの時点で評価するかによっても異なる。

 しかし、現時点では他国の詳細データがないため、本調査では、従来のCFR調査の対象国とグループの
すべてに3週間のタイムラブをあてはめ掲載してみた。



図1 日本の感染者数と死亡者数の時系列グラフ
      出典:作成:鷹取敦環境総合研究所代表

 このことから、この間実施してきたCFR調査対象国について、感染から死亡までに概ね3週間の
タイムラグがあると仮定して改めてCFRを算出してみた。

注)従来第1回から6回まで続けてきた累積感染者と累積死亡者を
  対象とした第七回の致死率(CFR)リスク評価は本稿に含めている。

◆調査年月日時

 調査日は、2020年10月7日 UTC 午前4時23分(日本時間で午後123)である。


◆赤色線(グラフの横線)

 赤線は本調査が対象とする105ヶ国の10月7日時点の平均CFR値である。今回の場合
CFR
2.9となり、3週間前の9月16日から0.3ポイント低下した。


◆第八回調査により判明した顕著な傾向と事実

<累積感染者数と死亡者数によるCFRの推移>

 515日~10月7日の約5ヶ月の推移は以下に示すとおり、減少傾向となっており、105
国を対象
としている本調査では、2.9%となった。

 第1回調査から約5ヶ月で、世界の感染者数は約8倍、死亡者数は3.5倍へと増加している。
感染者
数の増加が止まらないことから、致命率は引き続き低下傾向となっており、この間に
1.5ポイント低下した。

 また、第四回調査以降、世界的に感染者が3・4月頃のような高齢者から、若者世代に広が
って
おり、無症状や軽症の患者が増えていることから、死亡者数は各国とも抑えられている。
その背景
としては、ウイルス事態の変異(遺伝子レベルの変異)も指摘されているが、総じて、
新型コロナ
ウイルスとのこの半年余りの闘いを経て、医療関係者の経験・知見・努力が積み重
ねられ死亡者が減少していることが大きな要因と言える。また、検査態勢が拡充され、陽性者
の早期発見、隔離な
どの対策が進んでいることもある。各国で政治リーダーのCovid-19パンデ
ミックに対する姿勢が
感染者数、死者数の動向に大きな影響を及ぼしている。

 一方、各国や地域の動向を細かく見ていくと、それぞれの国、地域によって社会経済状況が
異な
り、医療体制が感染者数の増加に追いつかず、死亡者が増加している地域もあり、依然と
してパン
デミックのリスクは続いている状況である。特に北半球においては、夏休み前から経
済の再開に伴
い再び各国で感染者数の増加が目立ち始めている。多くの先進国で第二波、第三
波に襲われている

また、アジア、アフリカ、南米諸国では感染拡大の時期が先進国とはずれていることから、今
後も
死者が増加する可能性があり、引き続き国際的な協力関係を維持しながら慎重に対応して
いく必要
がある。


(1)世界の致命率(CFR

以下は感染者数と死亡者数に基づくCFRの推移である(数字は調査日10月7日のデータ取得時間
の数字を四捨五入したもの)

2020年10月7日午後1:23JSTデータによるCFR分析(第8回)

世界188の国と地域の感染動向グラフ 
出典:
Johns Hopkins University Covid-19 World Map より

1.感染者数推移 左:累積(35,733,000件)と 右端:105日(325,416人)
  (データとして反映されているのは
202010月5日分まで)

  


2.死亡者数推移 左:累積(1,049,000人)と 右端:105日(7,004人)

    

死亡者凡例
                                            

 上図より10月7日時点の世界の感染動向を見ると、感染者数、死者数ともに依然として
減少傾向=収束の兆しは見えず、7月~10月にかけて、1日あたりの死者数は、7,000人
から1万人を超える日もあるなど、感染拡大の時期のずれ、地域の拡大に伴い、引き続き
地球規模のパンデミックが続いていると言える。北半球の人口集中エリアが秋から冬に近
づくにつれ再び感染が拡大している傾向が見て取れる。

 感染者数と死亡者数に基づくCFRの推移(数字は各調査日のデータ取得時間の数字を
四捨五入したもの)



 WHO及びJohns Hopkins University がとりまとめている世界188の国及び地域(クルー
ズ船を含む)の感染者数、死亡者数の推移と累積データによる調査日時点の致命率(CFR)を
示すとともに、本調査が対象としている105ヶ国のCFRを同時に折れ線グラフで示した。5月
には188ヶ国・地域と105ヶ国のCFRにはおよそ2.4ポイントの開きがあったが、次第に縮
まり、8月5日の第5回調査以降、致命率は同じになっている。国による差が小さくなってきて
いると思われる。

<累積感染者数と死亡者数によるCFRの推移> 表

感染者数 年月日 感染者数 死者数 致命率(CFR)
WHO
188ヵ国
本調査
105ヵ国
第一回調査日 2020年5月15日 4,477,000人 303,400人 6.8% 4.4%
第二回調査日 2020年6月 3日 6,405,000人 380,800人 5.9% 4.1%
第三回調査日 2020年6月24日 9,293,000人 478,000人 5.2% 4.0%
第四回調査日 2020年7月15日 13,286,000人 579,000人 4.4% 3.9%
第五回調査日 2020年8月 5日 18,443,000人 700,600人 3.8% 3.7%
第六回調査日 2020年8月26日 23,889,000人 819,000人 3.4% 3.4%
第七回調査日 2020年9月16日 29,571,000人 935,000人 3.2% 3.2%
第八回調査日 2020年10月 7日 35,733,000人 1,049,000人 2.9% 2.9%

     
<対象としている105ヶ国の累積のCFR>

3週間毎に実施している世界105ヶ国のCFR調査の推移を見ると、5月15日には、4.4%だっ
たものが10月には2.9%まで約1.5ポイント低下した。

 この間に感染者数はおよそ8倍に、死亡者数は、およそ3.5倍に増加した。世界各地の感染
者数の拡大が結果としてCFRを低くしている。




(2)世界の地域別・経済圏別の致命率(CFR)

(2)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
  注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・先進諸国及び中進国からなるG7,G20、EU諸国、それ以外(アイスランド・スイス・ニュージ
 ーランド)、旧社会主義国、北欧諸国、はいずれも右肩下がりの傾向が続いている。

・BRICSは中国以外の国で感染拡大が止まらないため、7月中旬以降、2.8%のまま横ばい
 となっている。

・中南米も感染者数が増加傾向の国が増えているため6月以降CFRは3.3%のまま横ばい状
 態が続き、改善が見られていない。

・アフリカ諸国は5月から6月にかけて低下したが、その後は0.1ポイントの低下に留まり、横ば
 いとなっている。

・中東諸国は6月から増加傾向となっていたが、8月5日以降は横ばいが続いている。




(2)-2  3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移

・ほとんどの地域で6月前半の致命率が高く、9月中旬までは各地域とも大幅に低下傾向が
 続いたが、9月中旬から10月上旬にかけて先進諸国において、再びCFRが上昇に転じて
 いる。G7は1.1⇒1.5、G20は2.4⇒2.7、EU諸国は1.3⇒2.0、北欧は0.4⇒1.8となっており、
 ヨーロッパ諸国での上昇が目立っている。夏休み以降の経済活動の活発化が原因とみら
 れている。

・BRICSは中国を除く、ブラジル、インド、ロシアの3カ国で感染拡大が続いているため、8月
 から横ばいとなっている。

・ASEAN諸国では先進国と異なり7月が死亡者数のピークとなっている。グラフの変動が大
 きいが、前回のCFR(3.6)より大幅に低下した。

・旧社会主義国ではアルメニア、アゼルバイジャンなどで戦争状態が続いていることもあり、
 8月以降横ばいであったが、10月に僅かに上昇している。

・中南米諸国は感染者数の拡大が続いているため、CFRは右肩下がりとなっている。4ヶ月
 半で2.7ポイントの低下である。

・アフリカ諸国は、6月上旬と7月後半にピークが見られ、その後は大きく低下した。8月~9月
 にかけて2.4だったものが10月には1.9まで低下した。

・中東諸国は政情不安の国も多く、CFRは3%前後で推移している。グループ全体が突出して
 致命率の高いイエメンの影響を受けている。




(3)G7諸国の国別致命率(%)の推

(3)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%) 第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・5月~10月の約5ヶ月の間でG7諸国の累積データに基づく平均CFRは10%から5.3%へと
 ほぼ半減した。

・イタリアを初めとするヨーロッパ各国は感染拡大が早かったため、6月下旬から改善傾
 向にあるが、経済再開後、夏から再び感染者数が増加し、マドリッド、ロンドン、パリ
 などの大都市部では、再びロックダウン対策を取らざるを得ない状況となり社会の混乱
 が広がっている。

・フランスは5月には20%と高いCFRであったが、その後は大きく低下し、10月にはほぼ
 1/4の5%まで下がっている。

・イギリスは8月下旬から漸くCFRの低下が見られるようになり、6ポイント低下して8%と
 なったが、9月からロンドンを中心に、再び感染拡大傾向が続いている。

・ヨーロッパで感染が最初に拡大したイタリアはその後収まったように見えるが、依然と
 してCFRは10%を超えており、G7グループの平均値を押し上げている。

・カナダは5月に7.5%だったものが、5ヶ月経っても2ポイントの低下に留まっており、
 低下のスピードは緩やかと言える。

・米国の感染者数は、10月7日時点で750万人を超え、世界の20%、死者数も21万人を超
 え、同じく世界の20%を超えている。ニューヨーク州を先頭に検査数が極めて多いこと
 もその背景にあるが、経済格差が大きい社会にあって政治的に二分している現状ではな
 かなか感染拡大に歯止めがかからない。CFRは5月から概ね半減し、2.8%と低い状況に
 あるが、秋冬に向けてさらに感染が拡大すれば再びCFRが上昇に転じることも懸念される。

・ドイツは、G7諸国の中で当初から好成績でCFRも4.5%~3%の範囲で低く推移しているが、
 依然として世界の平均を僅かながら上回っている。感染者数は8月以降再び増加傾向を
 示しているが、死亡者数は4月をピークに低く維持されている。

・日本は、8月の第二波で感染者数が第一波を上回り大幅に増加したため、致命率は2%を下
 回り、このグループでは最も優秀な数値となっているがその後は改善が見られていない。





 下図は、各国の主な国の日ごとの感染者数、死亡者数を示したものである。左の黄色
いグラフが感染者数の推移、右の白いグラフが死亡者数の推移を示している。横軸は経
過月日、縦軸は人数で国毎にスケールが異なっているので注意が必要。

 アメリカとドイツの日々の感染者数及び死亡者数のデータを比較してみると、アメリ
カでは、春の第一波の感染者数に対して死亡者数が多くCFRが高かったが、第二波の夏
以降の感染拡大時期の死亡者数も高く、依然として厳しい状況が続いている。一方、7月
以降ドイツは感染が再び拡大する中でも死亡者数は抑えられている様子がわかる。


アメリカの感染者数と死亡者数の推移(累積感染者:7,500,964人、累積死亡者:210,886人)

  
出典:ジョンズ・ホプキンス大学 Covid-19 World Map Webサイトより(2020年10月7日13:23取得データ。
    10月6日までのデータを含む。以下同様)

ドイツの感染者数と死亡者数の推移(累積感染者:307,127人、累積死亡者:9,566人)
  

日本の日々の感染者数と死亡者数の推移:感染者数 89,400人、死亡者数 1,628人(2020年10月12日 13:23 JST)
  
出典:ジョンズ・ホプキンス大学 Covid-19 World Map Webサイトより(2020年10月7日13:23取得データ。
    10月6日までのデータを含む。以下同様)


(3)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

 ・G7全体では、6月前半の死亡者数が多く、平均で9.2%と高い致命率となっていたが、
  その後は大幅に低下し、8月後半には1/9の1.1%まで下がった。しかし、その後
  0.4ポイント上昇し、10月には1.5%となった。ヨーロッパ諸国やアメリカ、日本などで
  の感染拡大が影響していると考えられる。

 ・イタリアを除く各国とも8月にかけてCFRは低下したが、10月に入り再び僅かながら
  上昇している。中でも、カナダは1.4ポイント上昇し、2.6%となった。

・フランスでは、夏に第二波の感染拡大が見られたが、死亡者は低く抑えられている。

・イギリスは対応が遅れたため、6月~7月まで高い致命率が続いたがその後は大きく改
 善している。しかし、8月後半から再び感染が拡大しロンドンを中心に危機感が強まっ
 ている。しかし、死亡者数は、フランス同様に低く抑えられている。




 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

イギリスの感染者数と死亡者数の推移(累積感染者数:532,779人、累積死亡者数:42,535人)
  

カナダの感染者数と死亡者数の推移(累積感染者数:173,756人、累積死亡者数:9,582人)
  



(4)G20諸国の国別致命率(%)の推移

(4)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%) 第八回
   注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・中進国を含むG20諸国の平均を見ると、この5ヶ月で6.2%から4.1%へと2ポイント弱
 の低下が見られる。G7の10月の平均値が5.3%なので中進国が加わった分感染者数が
 増大し、1ポイント以上低くなっている。

・G7を除く各国をみると、メキシコが今もなお10%と高い値のまま推移し8月から横ば
 いとなっている。

・ブラジルは、世界第三位の感染者数となりまもなく10月7日中に500万人を超過した。
 その一方で、CFRは相対的に低くなっている。

・インドネシアもこの5ヶ月余りでCFRは右肩下がりに低下してきているが、感染者数
 のピークは9月中旬に出ているため、今後も死亡者数が増加する可能性はある。

・中国は5月以前にピークがあるため、本調査期間においては、概ね5%程度で推移し
 ている。

・アルゼンチンの感染者数は右肩上がりに増加しており、は7月中旬にCFRが最も低く
 なったが、その後は微増傾向となっている。10月1日には3,350人もの死亡者が出て
 いる。

・インドはこの5ヶ月でCFRが半減しているが、その背景に感染者数の爆発的拡大が
 ある。感染者数・死亡者数とものピークは9月中旬にあり、1日に1,000人以上が死
 亡していた。10月にかけていずれも減少しつつある。

・トルコはこの間2.8~2.6%で推移し横ばいとなっている。

・韓国も当初から感染拡大をうまくコントロールし、2.4%~1.7%へと低下傾向を示
 している。

・南アフリカとオーストラリアは7月中旬まで低下していたが、その後再び右肩上が
 りにCFRが上昇している。

・オーストラリアは8月~9月にかけて、3月の第一波を大きく上回る第二波に襲われ、
 感染者数も死者数も大幅に増加した。

・ロシアは当初低かったがその後、感染者数が増加し続け二倍の1.8%まで増加し横ば
 いとなっている。

・サウジアラビアの致命率は0.6から1.5%へと上昇した。5月末から急激に感染者数が
 拡大し、それに伴って死亡者数も増加した。感染者数は減少傾向を示し始めている
 が、死亡者数は7月以降も30~40人/日が続いている。




4)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・タイムラグを考慮すると、G20諸国の平均の致命率はこの5ヶ月余りで6.7%から2.7%
 まで改善しているが、8月からわずかに上昇に転じている。

・多くの国で10月には1%前後まで低下してきている。最も顕著に改善したのはフランス
 で、累積のCFRでみると10月7日には5.18%だったが、8月末から9月中旬に発症して
 10月7日までに死亡した人数は0.9%と極めて低くなっている。ドイツも0.7%と低いが
 9月中旬よりは上昇している。

・イタリアは春に最も厳しい状況を経験したが、本調査期間では、6月以降は低下傾向が
 続き、10月には1.4%まで低下した。

・メキシコの致命率は当初、フランスと同程度で極めて高かったが、その後9月に8.6%ま
 で低下した。しかし、10月には再び10%まで上昇しており、依然として厳しい状況であ
 ることが分かる。

・日本は、5月に感染して6月中旬までに死亡した人が8.5%と高かったがその後は1%程度で
 推移している。高齢者の感染・死亡が一段落したものと思われる。

・インドネシア、アルゼンチン、トルコ、南アフリカ、サウジアラビアなど、致命率が大き
 く改善しない国は感染者数の増加とともに、死亡者数が抑えられていない状況となってい
 ることから引き続き注意が必要である。

・オーストラリアでは、3月頃にはうまくコントロールできていたが、その後、季節が冬に
 向かうにつれ感染者も死亡者も増加傾向となっている。





 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
  (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

インドネシア    感染者:311,176  死亡者: 11,472
  


アルゼンチン  感染者:824,468  死亡者: 21,827
  


オーストラリア  感染者:27,181  死亡者: 897
  



(5)EUの国別致命率(%)の推移

(5)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・EU諸国の平均CFRは、この5ヶ月で半減し、6.7%から3.1%まで3.6ポイント低下した。各国
 とも6月前半までは高い傾向が続いていた。

・G20以外のEU諸国を見てみると、ベルギーが10月7日時点で7.5%とイタリアに次いで高い
 値となっている。

・次いで、スウェーデンが6.2%と全平均の2倍を上回っている。

・オランダは4.4%まで低下し、5月の1/3となっている。

・5月に10%を超えていた7ヶ国の中では、ハンガリーが2.7%まで低下し、平均を下回った。

・東欧諸国のなかでは、ルーマニア、ブルガリアが若干高く、4%弱となっている。
 総じて、東ヨーロッパ諸国(旧社会主義国)の致命率は低く維持されている。



  以下は上記グラフを半分ずつしめしています。






(5)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・EU諸国の致命率は、6月中旬までのCFRは5.8%だったものが、タイムラグを考慮した場合、
 9月16日には、ほとんどの国で1%以下まで低下した。しかし、10月に入って再び上昇し、
 2.0%となった。

・スウェーデンは、9月中旬には非常に低く0.6%であったにも拘わらず、この3週間で致命率
 が7%まで10倍以上上昇した。スウェーデンの9月末から10月初旬にかけての死亡者数は
 32人、感染者数は454人となっている。

・G20以外の国々の中では、そうしたなかで、スロベニア、ルーマニア、ポーランド、ブルガリア、
 ラトヴィア、マルタなどで上昇傾向が見られる。

・ハンガリーは、9月に比べて低下している。

・ヨーロッパ全体で夏以降の感染拡大と死亡者数の増加が目立っているため、CFRは下げ止
 まっている。 



 以下は上記グラフを半分ずつしめしています。






 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
  (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

スウェーデン   感染者:96,145   死亡者: 5,883
  


ポーランド   感染者:104,316   死亡者: 2,717
  


ブルガリア  感染者:22,306   死亡者: 862
  



(6)G7・G20・EU以外の国別致命率(%)の推移

(6)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

 ここでは、各経済圏に含まれないアイルランド、スイス、ニュージーランドの3ヶ国について見ている。

・この3ヶ国の平均は約5ヶ月の間に4.6%から3.2%へと約1.4ポイント低下している。

・アイルランド、スイスともに右肩下がりに低下しているが、10月に入っても5%~4%と世界全体の
 平均値より高い値となっている。

・ニュージーランドは初期の段階から感染拡大を押さえ込んだことにより、低い数値で安定している。




(6)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・10月7日時点のタイムラグを考慮した致命率を見ると、アイルランドとスイスはいずれも
 前回の0.5%、0.6%からわずかに上昇し0.7%となった。

・ニュージーランドは、8月中旬から感染者が再び増加し始め、9月に入り3名が死亡した
 ため、9月の調査ではCFRが2.4%となったが、政府が厳しい措置をとったことによりその
 後は再び感染者数が抑えられ、死亡者がゼロで推移している。




(7)BRICSの致命率(%)の推移

(7)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・BRICS諸国のこの間約5ヶ月の致命率の平均値は3.7%から2.8%へと1ポイント低下し
 ており、7月から横ばいとなっている。感染者数の上位2~4位がインド、ブラジル、ロ
 シアとなっており、3ヶ国の感染者数は1300万人を超え世界の36%を占めるに至って
 いる。

・BRICSのうち、感染発祥地である中国では、早期に感染が抑えられたため、この間は
 5.5%から5.2%へとわずかな改善で推移している。

・ブラジルは、6.8%だった致命率が3.0%まで改善しているが、依然として1日に1万人~
 4万人の感染者数の増加が続き、CFRは下げ止まっている。感染者数は10月7日に
 500万人を突破した。

・インドはアメリカに次いで世界第二位の感染者数となっている。9月中旬に1日97000人
 の感染者を出したのをピークに少しずつ感染者数は減少し、死亡者数も減少に転じて
 いるが、依然として厳しい状況が続いている。

・南アフリカは7月中旬を底に、その後はCFRの値が上昇し続けている。

・ロシアの致命率は8月以降横ばいとなっている。5月に一日1万人を超える感染者が出て
 第一波のピークとなったが、10月にほぼ同規模の感染者が出ており、第二波が続いて
 いる状況となっている。




(7)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移-BRICS

・3週間のタイムラグを考慮した場合、BRICS諸国の平均CFRは4.5%から2.1%へと2.4
 ポイント低下した。

・インドとブラジルは感染者数の拡大が続き、CFRは相対的に右肩下がりに低下している。

・その一方、南アフリカは8月からCFRが上昇傾向となり、平均値を1ポイント近くも上回る
 厳しい状況となっている。

・5月~9月の間、ロシアはほぼ2%前後で推移してきたが、10月に入り上昇している。グラフ
 からも分かるようにこれらの国々では、人口規模が大きく依然として感染拡大が続いており、
 南アフリカやロシアのように再びCFRが上昇する可能性があり注意が必要である。



 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

インド   感染者:6,685,082   死亡者: 103,569
  


ブラジル   感染者:4,969,141   死亡者: 147,494
  


ロシア    感染者:1,231,277   死亡者: 21,559
  



8)ASEANの致命率(%)の推移

(8)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・ASEAN諸国のこの間のCFR平均値は2.1%から1.6%へとわずかに低下しているが、7月中旬
 から横ばいの状態が続いている。

・フィリピンは、8月末まで順調にCFRが低下していたが、その後再び上昇に転じている。

・インドネシアは右肩下がりに低下し、この5ヶ月ほどで約1/2、3.2ポイント下がった。しかし、
 感染者数、死亡者数共に増加傾向が止まっていない。

・ミャンマーは5月~9月まで4ヶ月減少傾向が続いたが、10月に入り6月末の水準まで大きく
 上昇した。

・タイ、マレーシア、ブルネイは1~2%程度で横ばいとなっており、大きな変化がない。

・カンボジア、ラオス、ベトナムなどのインドシナ半島諸国は志望者0が続いていたが、ベトナム
 で8月に入り死亡者が確認され致命率が右肩上がりに上昇している。




(8)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移(ASEAN)

・ASEAN諸国では、この4ヶ月の間にCFRの数値が大きく上下に変動している。5月に1.8%
 だったものが7月後半には6%まで上昇、8月に一旦低下したが、9月に入って再び3.6%ま
 で上昇し、10月には2.2%まで低下した。

・こうした変動の背景には、7月末にはベトナムで初めて死亡者が確認され、また、9月に入
 って、ミャンマーで死者が急増したことが報告されたことにより、これらの国々で一気にCFR
 が上昇したことが原因となっている。ただし、ベトナムの死者数は最大でも一日3名、累積で
 35名と少ない。

・ブルネイ、シンガポール、カンボジア、ラオスは依然として死者が報告されていないため、こ
 のグループのCFR平均値を引き下げている。

・ASEAN地域はヨーロッパ、アメリカなどに比べて感染拡大の時期が大幅に遅かったため、世
 界の様々な経験知見が生かされ、死亡者数も低く抑えられている傾向がある。




 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)


ミャンマー   感染者:20,033   死亡者: 471
  


ベトナム   感染者:1,098  死亡者: 35 
  



(9)旧社会主義諸国・北欧諸国の致命率(%)の推移

(9)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・このグループの平均CFRは約5ヶ月で4%から2.2%へと1.8ポイント低下した。

・高い数値で推移したのがハンガリーであったが、8月から9月に掛けて大きく減少し10月には
 105ヶ国の平均値を下回った。

・最もCFRが低かったのはスロバキアの0.4%であった。

・多くの国でグラフは右肩下がりであるのに対して、ブルガリアは7月中旬までは下がっていた
 が、8月以降再び僅かに上昇し世界の平均を1ポイント上回っている。

・アルメニア、アゼルバイジャン、僅かながら右肩上がりとなっている。両国の間では戦争状態
 が続いており、引き続き注意が必要である。

・総じて西ヨーロッパ諸国に比べて、感染者数、死亡者数共に低く維持されている。




(9)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・タイムラグを考慮した場合には、グループのCFRの平均が4.7%から2.2%へと2.5ポイント減少し
 ている。

・クロアチア、ブルガリア、ルーマニアでは、6月中旬までの致命率が高いが、ハンガリー、セルヴ
 ィアでは7月に入って高くなっており、地域によってピークの時期が大きく異なっている。

・この間最も大きく変化したのはクロアチアで17%から1.4%へと1/10以下に改善している。

・多くの国で9月に入ってCFRは2%以下となっているが、10月に上昇に転じた国が多い。ルーマ
 ニア、ポーランド、リトアニア、チェコ、ラトヴィア、アルメニア、ロシアなどが上昇している。寒冷
 地が多いことから今後も上昇する可能性が高く、注意が必要である。




 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

アルメニア    感染者:53,083   死亡者: 990
  


アゼルバイジャン  感染者:40,931   死亡者: 600
  


ブルガリア   感染者:22,306   死亡者: 862
   


(10)北欧諸国の致命率(%)の推移

(10)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・北欧諸国においては、この5ヶ月間で累積のデータに基づくCFRが5.1%から2.7%まで概ね
 2.4ポイント改善している。

・このグループでは、特段の対策を講じないという独自路線をとってきたスウェーデンの改善が
 著しく13%から6%にまで約7ポイント低下しているが、グループ内ではCFRが最も高く、世界
 の平均値の2倍となっている。

・他の国々は安定した推移となっている。




(10)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・9月の時点では、グループ平均の3週間のタイムラグを考慮したCFRが3.1%
 から0.4%へと大きく減少したが、10月にはスウェーデンが大きく上昇したため
 に再び上昇に転じ、1.8%となった。

・スウェーデンは、9月中旬には非常に低く0.6%であったにも拘わらず、この3週
 間で致命率が7%まで10倍以上上昇した。9月末から10月初旬にかけての死
 亡者数は32人、感染者数は454人となっている。

・デンマーク、フィンランド、ノルウェーともに10月に入って上昇している。

・アイスランドは、5月以降のCFRは引き続きゼロを維持している。




 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

デンマーク   感染者:22,306   死亡者: 862
  


ノルウェー   感染者:22,306  死亡者: 862
   


(11)中南米島嶼国の致命率(%)の推移


(11)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・このグループのCFR平均値は、この間ほぼ横ばいで3.7%~3.3%で推移している。

・メキシコの致命率は10月に入っても10%を上回っており高い状態が続いている。

・キューバは順調に低下して5月の1/2まで下がっているが、他の中南米諸国では、8月
 以降上昇している国が多く見られる。

・アルゼンチン、ボリビア、パラグアイ、コスタリカなどで7月以降も上昇傾向が続いている。

・ホンジュラス、コロンビア、パナマ、ウルグアイ、エルサルバドール、チリなどでは横ばい
 のまま改善が見られていない。




(11)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・タイムラグを考慮した場合、このグループの致命率は5.6%から2.9%へと2.7ポイント
 低下している。

・メキシコでは6月の致命率が23%と極めて高かったが、9月に入って右肩下がりに6%
 まで大きく低下した。しかし、10月に再び10%と上昇に転じている。10月5日に28,000人
 超の感染があり、同日2,700人超が死亡している。

・アルゼンチンも7月から改善が見られておらず、10月には上昇に転じ、5月のレベルに
 戻っている。

・ボリビアは9月に10%まで上昇し、メキシコを上回ったが、10月には4%まで低下してい
 る。

・コロンビア、パナマ、ウルグアイ、グアテマラ、エルサルバドールなどでは9月から10月
 にかけて僅かながら上昇に転じている。

・キューバは9月まで0.8%~1.6%へと僅かに右肩上がりとなっていたが10月には0.2ポイ
 ント低下した。

・総じて、9月、10月になって各国ともCFRが低下している。




 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。(出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

メキシコ   感染者:794,608  死亡者: 82,348
  


エルサルバドール   感染者:29,634   死亡者: 869
  


キューバ   感染者:5,883   死亡者: 123
  


(12)アフリカ諸国の致命率(%)の推移

(12)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・アフリカ諸国のこの間の平均CFRは、5月中旬に4.1%だったものが2.6%まで低下しているが、
 6月下旬からは横ばいの状態となっており、足踏み状態となっている。

・10月に入って最もCFRが高かったのはスーダンの6.1%である。

・10月に入り、多くの国が世界平均の2.9%を下回っているが、各国とも横ばいの状態が続いて
 いる。

・平均(2.9%)を上回っているのはアルジェリア、マリ、エジプト、スーダン、アンゴラ、タンザニア
 などである。

・中でもエジプトは6月以降右肩上がりにCFRが上昇している。




(12)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・この間のこのグループの平均CFRは、タイムラグを考慮すると5.1%から1.9%
 へと概ね3ポイント低下している。

・10月の世界の平均値2.9%を超えているのはケニア、エジプト、チュニジア、ア
 ンゴラ、南アフリカなどで、特にエジプトが約9%と高い。

・10月に入って増加に転じたのは、アルジェリア、ケニア、チュニジア、アンゴラ、
 南アフリカである。アンゴラでは10月6日に195人の感染者が確認され、これま
 でで最大の12人が死亡している。

・ソマリアも5月には1.4%だったが、9月には5.5%まで上昇している。国境を接す
 るエチオピアとは感染拡大のピーク時期が1ヶ月以上ずれている。

・南スーダンは6月下旬に一旦致命率が改善したものの、その後再び上昇に転じ、
 3%程度で推移していたが10月に入り1.2%まで低下した。

・データの確実性に疑問が残るが、人口密集地での感染拡大と共に、分散した集
 落での感染も致命率を上げる可能性があり、感染拡大を抑えていく必要がある。

・大陸内の移動が感染を広げている可能性もある。




 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。(出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

エジプト  感染者:103,902  死亡者: 6,001
  


ケニア  感染者:39,586  死亡者: 743
  


アンゴラ   感染者:5,725   死亡者: 211
  


(13)中東諸国の致命率(%)の推移

(13)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第八回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第八回目報告である。

・中東諸国の平均CFRは5月から10月7日の4ヶ月余の間、3.2%から3.6%へとわずか
 に上昇したが概ね横ばいである。その原因はイエメンのCFRが極めて高いことととも
 に、シリア、イランなど政情不安の国々でのCFRが下がらないことによると思われる。

・レバノン、イスラエル、ヨルダン、クウェート、UAE、カタールなどは次第に低下し低く維
 持されている。

・トルコは2.8~2.6%の横ばいで推移している。




(13)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・タイムラグを考慮した場合には、中東地域全体の平均値は6.8%から3.2%へとほぼ
 半減している。

・イエメンのCFRは55%だったものが11%まで低下しているが依然として高い値となっ
 ている。

・シリア、イランともに7月に比べて9月に入ってからのCFRは5%前後に下がってき
 ているが、イランは10月に上昇に転じている。

・その他の国は低く維持されているが、ヨルダンについては、9月に低下したものが10
 月に再び2倍以上上昇に転じている。

・政情不安地域を除く中東諸国はいずれも低く維持されているが、トルコ、サウジアラ
 ビア、オマーンなどで9月から10月にかけて上昇している。





以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。(出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

イラン   感染者:387,121  死亡者: 9,531
  


トルコ  感染者:327,557  死亡者: 8,553
  


オマーン  感染者:102,648  死亡者: 990
  


全体コメント

 今回で5月から3週間毎に実施してきた世界の新型コロナウィルス致命率(CFR)推移
の調査は第8回目となる。累積データに基づく分析と共に、8月から始めた感染から死
亡までのタイムラグを3週間と仮定した分析は4回目となる。

 中国に端を発したCovid-19の感染は世界を駆け巡り、もうすぐ一年になろうとしてい
る。

 2020年1月には世界の感染者数は500人ほどであったものが、10ヶ月後には3600万人を
超える猛烈なスピードで拡大した。死者の数も1月には20人に満たなかったものが、10月
9日時点で106万人超まで増加した。いずれも今年3月から急激に世界に蔓延し未だにその
勢いは衰えていない。先進国も途上国もパンデミックの波を除けることは出来なかったの
だ。

 日本はと言えば、現在(10月9日10:23時点)下図の通り、感染者数87,656人、死亡者数
1,617人となっており、WHOがとりまとめている世界188の国と地域の中で感染者数では第47
位、死亡者数では第46位の位置となっている。(但し、ダイヤモンド・プリンセス号は別
扱い)


新型コロナウィルス感染者数の状況:日本の位置 2020年10月9日現在





新型コロナウィルスによる死亡者数の状況:日本の位置 2020年10月9日現在





 本調査が着目してきたCFRの推移についてみれば、感染拡大初期には未知のウイルスへ
の対処法も分からず人類が模索する中、高齢者や既往症のある人、社会的弱者が多く感染
し命を失っていったため、各国とも高いCFR値となったものの、夏前には、各国ともに、各
分野の専門家も一般の人々も経験を積み重ね、様々な対処法が少しずつ確立していき、世
界全体でCFRは大きく改善していった。

 しかし、改めて、世界の188の国と地域の中の上位50番までの国々を見ても、地球上
の地理的分布はもとより、経済、文化・宗教、言語などにかかわりなく、世界中に拡大し
ている状況が分かる。順位は時々刻々変化するが、このような状況が何に起因するものな
のか、考えさせられる。アメリカのような経済大国であってもロシア・中国のような軍事
大国であっても、資本主義社国であっても社会主義国であっても、国土が広くても狭くて
もウイルスには関係ない。

 そうしたなかで、各国の首相・大統領といった政治的リーダーの言動や振る舞いにも注
目が集まった。ウイルスに感染したブラジルのボルソナル大統領、イギリスのジョンソン
首相、アメリカのトランプ大統領らの言動が注目されている。また、アメリカでは、各州
自治の打ち出す対策で感染状況に大きな差が生じている。まさに新型コロナウイルス対策
が政治問題と化し、世論を二分し社会を分断している現実も見せつけられている。

 有効なワクチンの開発も道半ば、また、庶民に平等に処方されるような治療薬もない状
況は続いており、地球規模のパンデミックの収束時期は見えていない。こうした状況にお
いてひとつはっきりしていることは、ウイルス感染を左右する肝心なことは、国や地域に
暮らす人々のデータを把握している政府、自治体が事実/現実を科学的な知見に基づいて
分析し、情報の共有化を進め、予防的観点から対策を打ち出すことに他ならない。それが
有効に機能するかどうかは政府に対する人々の信頼があるかどうかにかかっている。

 改めて、ニューヨーク州知事の言葉を思い出したい。現時点で33,000人を超える死者を
出し、全米で、いや、世界の自治体の中で最も厳しい状況を経験してきたニューヨーク州
だが、現在では全米一感染率を抑えることに成功している。4月中旬、一日に800人規模の
死者を出す事態となった。ニューヨーク州の累積データに基づくCFRは現時点8%ほとなっ
ている。今年2月から頻繁にブリーフィングを行い市民との情報の共有化に努めてきた。

 知事は急激に増加する感染者への対応を進めるため、今年3月から毎日必ずブリーフィン
グを行い、データを示しながらロックダウン、マスクの義務化、ソーシャルディスタンシ
ングの義務化など次々と厳しい条例を制定し、徹底したルールの遵守=コンプライアンス
を市民に強いた。州警察も動員して違反者の摘発も行った。

 同時に、州内に700箇所以上の検査所を設け、誰でもいつでも予約無しに無料で検査が受
けられる体制を構築し、徹底した感染者の洗い出しと追跡調査を行ってきた。一日当たり
10万件を超える日もあるなど、今や世界1の検査数を誇っている。まさに、検査結果を政
策に生かすことが重要であり、それを徹底してきたのがニューヨーク州である。

 行政が公平平等にやるべきことをやって、厳しいルールに市民が理解を示し、ともにウ
イルスに打ち勝とうとする意思と行動力がニューヨーク復活の原点となっている。

 “New York Tough, Smart, United, Discipline and Loving! “

これこそがニューヨークの合い言葉となって人々を今も勇気づけている。以下はニューヨ
ーク州のポスターである(クオモ知事のツイッターより)。
https://twitter.com/NYGovCuomo/status/1282761632683261952/photo/1

 翻って日本においては、政治リーダーと国民との間にそうした信頼関係が築かれていない
のが大きな問題である。提示されるデータ、情報、対策に対する信頼がなければますます収
束は遅くなるだろう。

Wake up America! Forget the Politics, Get Smart!

みんなで賢く頑張れば必ず山は超えられるという力強いメッセージが込められている。



◆解説 COVID-19リスクの調査評価指標

 本調査の目的は世界各国。地域、経済グループ等を対象に、致命率(CFR:死亡者数/感染者数)を
明らかにすることである。

 本稿では、
致命率(CFR: Case Fatality Ratio)をCOVID-19感染がもたらすリスクの代表的な
指標として、総合評価を行うこととした。それは、単なる感染者数、死亡者数だけでなく、感染者がそ
の国、地域で死に至った背景、具体的には、今回のようなパンデミックに対応できる救急搬送体制か
ら病院数・病床数・医療設備・医師・看護士などの医療リソースの充足度、また、医療体制の有無、さ
らには国や自治体のリスク管理政策の妥当性など、如何に死者を減らせるか、医療崩壊に至らずに
済むかを反映した指標であると考えたからである。

 
なお、CFRが10%の場合、感染者100人の場合、10人が死亡者となる。CFRが5%の場合は、感
染者100人の場合、5人が死亡者となることになる。


 その結果、これまで分からなかったCOVID-19がもたらす「医療に関するカントリーリスク」についての
国際比較が可能となりつつある。

 以下は致命率とは何かの説明である。

 まず、類似の指標として死亡率があるが、致命率と死亡率との関係は以下の通りである。分母が罹患
数の場合が致命率、分母が人口の場合が死亡率である。ここでは、世界各国のCOVID-19に感染した
人を対象としているので、致命率となる。


 


<用語解説> 

 致命率 (CFR: case fatality rate) は、疫学において特定の疾病に罹患した母集団のうち、その感染が
死因となって死亡する割合。致命率は通常、%で表されリスクの測定値を表す。


 なお、致命率は英語では
Case Fatality Ratioであり、略称CFRである。致命率が、10%の場合、
感染者の10人に1人が死亡数、5%の場合、20人に1人の場合の死亡数となる。

 CFRはさまざまな目的に援用できるが、これが増えるのは、総じて死亡者が増加することの警報
である。


 CFR(致命率)は、各国の救急搬送(ネットワーク)、救急医療、病床数、院内リスク管理体制、医師・看
護数、既往症・持病者対応、高齢者対応など院内感染、医療崩壊に通ずる重要な観点の総合指標と言
える指標である。