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第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した
致命率(CFR)による

世界各国・地域・グループ別

COVID-19
リスク評価


青山貞一 Teiichi Aoyama
(東京都市大学名誉教授、環境総合研究所顧問、元ローマクラブ日本事務局)
池田こみち Komichi Ikeda 
(環境総合研究所顧問、元東京大学医科学研究所
、元ローマクラブ日本事務局)
鷹取敦 Atsushi Takatori (環境総合研究所代表取締役、所長
独立系メディア 
E-Wave Tokyo
 
掲載月日:2020年11月21日  無断転載禁

キーワード:新型コロナウイルス、COVID-19、致命率、CFR、死亡者数/感染者数、リスク総合評価、Case Fatality Rate、
     世界各国、世界地域、日本、G7,G20、BRICS、ASEAN、旧社会主義諸国、北欧諸国、
     中南米カリブ諸国、アフリカ諸国、中東諸国


           ◆第五回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評

         ◆第四回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価
         ◆第三回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価
         ◆第二回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価
         ◆第一回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価

はじめに  前提について

 致命率(CFR)の解説は本稿末尾にある。

 5月15日からほぼ3週間おきに世界の主要国の新型コロナウィルスによる致命率(死
亡者数/感染者数)を見てきたが、
日本においては、今回の新型コロナ感染症(COVID-19)
に感染して、すぐに死に至るわけではなく、おおよそ3週間のタイムラグをおいてから
重篤化し亡くなるケースが多く見られている。

 下図は、その日本における感染者数と死亡者数を示したものだが、死亡までのタイム
ラグにはばらつきがあるものの、それぞれのピークに概ね3週間のずれがあることがわ
かる。

 ただし、この3週間というタイムラグは、あくまでも日本の実証例であり、他国にその
まま当てはめられるものではない。このタイムラグは、高齢者割合、重篤者割合、既往症
割合、医療実態(病床数、医療スタッフ数、医療機器、医療技術、ICU、対症療法医薬品
使用など)により異なってくることが推定されるからである。

 また、中国やイタリアで猛威を振るっていた感染拡大の初期のころ(2019年末から2020
年4月頃まで)と半年が過ぎて世界に広まった7月~8月では、感染から死亡に至る期間も
当初に比べて長くなっている可能性も考えられるため、どの時点で評価するかによっても
異なる。

 
しかし、現時点では他国の詳細データがないため、本調査では、従来のCFR調査の対象国
とグループのすべてに3週間のタイムラグをあてはめ掲載してみた。



図1 日本の感染者数と死亡者数の時系列グラフ      出典、作成:鷹取敦環境総合研究所代表

 このことから、この間実施してきたCFR調査対象国について、感染から死
亡までに概ね3週間のタイムラグがあると仮定して改めてCFRを算出してみ
た。

注)従来第1回から6回まで続けてきた累積感染者と累積死亡者を
  対象とした第七回の致死率(CFR)リスク評価は本稿に含めている。


◆調査年月日時

 調査日は、2020年11月18日 UTC 午前4時27分(日本時間で午後1:27)である。


◆赤色線(グラフの横線)

 赤線は本調査が対象とする105ヶ国の11月18日時点の平均CFR値である。

 なお、今回から、3週間のタイムラグを考慮した推移については、累積の平均ではなく、タイム
ラグを考慮した平均値を示した。11月18日の累積のCFR平均値は2.4%と微減、タイムラグを考
慮したCFR平均値は6.2%と大きく上昇した。



◆第十回調査により判明した顕著な傾向と事実


<累積感染者数と死亡者数によるCFRの推移>

 5月15日~11月18日の約6ヶ月の推移は以下に示すとおり、減少傾向となっており、
105ヶ国対象としている本調査では2.4%(前回2.6%)、タイムラグを考慮した場合には6.2%
(前回2.4%)となり、累積では微減であったが、タイムラグを考慮した場合、大幅に上昇した。

 累積のCFRが低下しているのは地球規模で感染拡大が続いていることがある。一方タイ
ムラグを考慮した場合、第二波、第三波の襲来により医療資源が逼迫している国や地域が
見られることをうかがわせる。

 第1回調査から約6ヶ月となり、世界の感染者数は12.4倍、死亡者数は4.5倍へと増加して
いる。感染者数の増加が止まらないことから、累積の致命率は引き続き低下傾向となって
おり、この間に2.0ポイント低下している。

 春の第一波が6月頃に一段落した後、夏休みに向けて各国が経済を再開し、バカンスに
よる人の移動が増大したことなどがあり、気の緩みや対策の緩みにより、秋から冬にかけて
の第二波、第三波が第一波を上回る大きな波となり、全体として致命率が低下している。欧
米では、一日に数万人から18万人超といった新規感染者が確認されるなど社会の混乱を招
いている。死者数も増加している。

 ちなみに、感染者数上位10ヶ国について11月に入ってから11月20日までの新規感染者数
と死者数の最大値をJohns Hopkins Universityのデータから見てみると以下の通りである。
ブラジルは山を超えつつあるが、欧米各国は感染者数、死亡者数共に危機的な状況となっ
ている。

<感染者数上位10ヶ国の11月20までの最大感染者数と死亡者数>


出典:第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価

 昨年末から1年近くにおよぶCOVID-19との闘いを経て、各国とも医療現場はもと
より、一般社会においても経験、知見が積み重ねられ、高齢者が比較的守られる様
にはなったものの、その一方で50歳以下の若年層への感染拡大は急速に進み、感染
が広まっている状況は世界共通となっている。

 結果としてコロナ疲れ(Covid-Fatigue)が社会に蔓延し、対策がおろそかになっ
ていることが見て取れる。そうした中でWHOは、10月末になって、新型コロナウィル
スに感染した人々の中に深刻な後遺症が残っていることを発表し注意喚起を行った。
感染拡大しても「死亡者が少なければ問題ない」とする考え方に警鐘を鳴らすもの
である。

 また、ワクチンの開発が各国で進み期待が高まっているが、その安全性の問題と
共に、変異するウィルス、人種間の免疫力の差などから、どこまで効果があるのか
依然として未知数である。ワクチンへの過度な期待をせず、地道な感染拡大防止対
策を各地域で着実に実施していく必要がある。

 経済を再開していくためにも感染のコントロールは不可欠であり、感染者の増加
は結果として医療現場を逼迫させ、再度のロックダウンなど経済社会を疲弊させて
いくことになる。既にヨーロッパ各国がそうした厳しい現状に直面し政府への反発
が強まり、社会の不安と混乱が続いている。

「死者が少なければ問題ない」とする自己中心的な考え方を言い訳にすることなく、
いかに感染拡大を止めるために人類が賢明な対策を講じてウィルスとの闘いを制す
ることができるのか、そのために個々人が何ができるのか、改めて問われている。

(1)世界の致命率(CFR

 以下は感染者数と死亡者数に基づくCFRの推移である(数字は各調査日11月20日のグラフ
取得時の数字を四捨五入したもの)

 世界190の国と地域の感染動向グラフ 出典:Johns Hopkins University Covid-19 World Map より
 グラフは2020年11月20日 JST午前9:26時点のもの  

1.感染者数推移 (56,991,000件)と 右端:11月19日(650,000人)(データとして反映されているのは2020年11月18日分まで)

  

2.死亡者数推移 左:累積(1,362,000人)と 右端:11月19日(11,000人)
  

 上図より11月18日時点の世界の感染動向を見ると、感染者数、死者数ともに依然として減
少傾向=収束の兆しは見えていない。

 北半球の先進国、人口集中エリアが冬に向かい再び感染が拡大している傾向が見て取れる。

感染者数と死亡者数に基づくCFRの推移(数字は各調査日のデータ取得時間の数字を四捨五入したもの)

出典:第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価

注)WHOがとりまとめている感染が確認された国・地域は10月には189、11月には190まで増
  えている。新たに追加されたのはソロモン諸島、マーシャル諸島の2地域となっている。


 上図はWHO及びJohns Hopkins University がとりまとめている世界190の国及び地域(クル
ーズ船を含む)の感染者数、死亡者数の推移と累積データによる調査日時点の致命率(CFR)
を示すとともに、本調査が対象としている105ヶ国のCFRを同時に折れ線グラフで示した。5月
には188ヶ国・地域と105ヶ国のCFRにはおよそ2.4ポイントの開きがあったが、次第に縮まり、
8月5日の第5回調査以降、致命率はほぼ同じになっている。国による差が小さくなってきてい
ると思われる。

表 <累積感染者数と死亡者数によるCFRの推移>    

出典:第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価

<対象としている105ヶ国の累積のCFR>

 上の表を見ると3週間毎に実施している世界105ヶ国のCFR調査の推移を見ると、5月15日には、
4.4%だったものが10月下旬には2.6%まで約2.0ポイント低下した。

 カナダでは、東部の大都市トロントでの感染拡大が著しいことから、政府は11月23日から28日間
のトロント市内のロックダウンを決定している。ここ7日間では1日当たりの新規感染者と死者が急
増しており、1日平均の感染者は約4,800人、死者は約65人となっている。(Source:AFP 11/21)

 この間に感染者数はおよそ12.4倍に、死亡者数は、およそ4.5倍に増加した。北半球が秋から冬
に入り大幅に感染者数が増加しており、結果としてCFRを低くしている。ただ、感染者の内訳は高
齢者に移っていることから今後死亡者が増加することが危惧される。


図 対象としている105ヶ国の累積の平均致命率の推移(%)
出典:第十回 発症・死亡のタイムラグを考慮した致命率による世界COVID-19リスク総合評価


(2)世界の地域別・経済圏別の致命率(CFR)

(2)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第九回
      注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・先進諸国及び中進国からなるG7,G20、EU諸国、それ以外(ISN:アイスランド・スイス・ニュー
 ジーランド)、旧社会主義国、北欧諸国は10月以降も右肩下がりの傾向が続いている。しかし、
 世界の累積の感染者数・死者数によるCFR2.4%を下回ったのはEU加盟国、それ以外のISN、
 ASEAN諸国、旧社会主義国、北欧諸国であり、G7、G20の先進諸国及び中南米、アフリカ諸国、
 中東諸国は世界平均を上回っている。

・BRICSは中国以外の国で感染拡大が止まらないため、7月中旬以降、2.8%のまま横ばいとな
 っている。

・ASEAN諸国は、5月から7月中旬まで低下傾向が続いたが、その後は1.5%前後でほぼ横ばい
 となっている。

・中南米も感染者数が増加傾向の国が増えているため6月初旬からCFRは3%前後で横ばい状
 態が続き、改善が見られていない。

・アフリカ諸国は5月から6月にかけて低下したが、その後は0.2ポイントの低下に留まり、2.6%前
 後で横ばいとなっている。

・中東諸国は6月から増加傾向となっていたが、8月5日以降は3.7%と高止まりとなっている。


第十回 累積データに基づく地域別致命率の推移


(2)-2  3週間のタイムラグを考慮したCFRの推移

・3週間のタイムラグを考慮した場合、全世界の平均は8月下旬にかけて次第に低下したものの、
 その後は各地で感染が再拡大したこともあり、2.4%前後で推移していた。しかし、11月に入り、
 6.2%と大幅に上昇した。

・グループ毎に10月から11月にかけての変化を見てみると、ほとんどのグループが比較的小さな
 変化で留まっているのに対し、アフリカ諸国が2.7⇒20.6、中東地域が3.8⇒6.8と大幅に上昇して
 いることが分かる。この2グループが全平均を押し上げる結果となった。

・アフリカでは、スーダンで大幅なタイムラグCFRの増加が見られた。10月8日から28日の3週間の
 間に発症したのが94名だったのに対し、10月下旬から11月18日までに亡くなった人数が338人と
 多かったため、CFRが360%となったことが要因となっている。

・中東地域では、戦争状態が続いていたイエメンにおいて、人数は少ないが、スーダンと同じ期間
 に13人が感染したのに対して、三週間後に8人が死亡しているため、CFRが6.2%へと上昇して
 いる。こうした政情不安地域においてはデータそのものが不確実となり、実際の状況はより深刻
 となっている可能性がある。

・秋が深まり、寒冷化に伴い乾燥と換気不足などによるウイルスの活発化もあり、東欧も含めて欧
 州各国での感染拡大が目立っている。イタリア、スペイン、イギリス、フランスなどと比べて東欧地
 域はゆっくり感染が進み、秋から冬にかけて大きなピークを迎えている。その背景には、貧困やア
 ルメニアvsアゼルバイジャンといった政情不安地域も影響も考えられる。


第六回 3週間のタイムラグを考慮した地域別致命率の推移


(3)G7諸国の国別致命率(%)の推

(3)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%) 第十回
      
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である

・5月中旬~11月中旬の6ヶ月の間でG7諸国の累積データに基づく平均CFRは10%から2.7%へと大
 きく減少した。G7の平均値の2.7%を上回っているのは、イギリス、イタリア、カナダの3カ国
 である。世界の平均である2.4%を下回ったのは、フランス(2.3)、アメリカ(2.2)、ドイツ
 (1.6)、日本(1.6)となっており、日本が低い数値を維持している。

・イタリアを初めとするヨーロッパ各国は感染拡大が早かったため、6月下旬から改善傾向にあ
 るが、経済再開後、夏から再び感染者数が増加し、秋に入って第三波とも言われる著しい感染
 拡大が続いている。大都市部を中心に、再びロックダウン対策を取らざるを得ない状況となり社
 会の混乱が広がっている。

・フランスは5月には20%と高いCFRであったが、その後は大きく低下し、半年後の11月末には
 ほぼ1/8の以下の2.3%まで下がっている。しかし、10月からの感染の拡大により11月8日に
 は一日で12万人超の感染者が確認され、11月14日には累積の感染者数が200万人を超過し、
 世界第4位に浮上し、社会に不安が広がっている。

・イギリスは4月の第一波の後、しばらく感染者も少なく安定していたが9月に入ると急激に増加
 し初め、10月、11月と拡大し続けている。10月に入ると一日の感染者数が2万人を超える日が
 複数回あり、第二波は第一波を凌ぐ大きさとなっている。死亡者は春に比べて低く抑えられて
 いるが、11月17日には600人が死亡するなど医療体制の逼迫が心配されている。

・ヨーロッパで感染が最初に拡大したイタリアの第一波は3月にピークがあり感染者数は一日最
 大7,000人ほどであったが、10月に入り、感染者数は急増し、第一波の6倍にも跳ね上がり11月
 17日には、1日に4万人を超過した。イタリアでは感染が南部のカンパニア州一帯に広がり初
 め地方都市での拡大が心配されている。感染拡大により累積のCFRは3.8%まで低下している。

・カナダは春の第一波では一日の感染者数が2,000人台が最大だったが、10月以降の第二波では
 春を大きく凌ぎ、11月に入ると1日に6,000人超の新規感染者が確認されるようになっている。
 一方で死亡者数は、春ほどは大きく増えていないため、累積のCFRは3.6まで低下した。

・米国の感染者数は、10月28日から11月18日の三週間で約270万人増加し、累積で世界第一位、
 1,170万人に迫った。また、死者数も三週間で22,300人増加し25万人を超えた。特に11月に入
 ってからは毎日10万人を超える新規感染者が確認され、11月19日には18万7000人以上が感染し
 た。結果として、累積のCFRは低下し続け2.2%まで落ちている。死者数は春4月中旬の第一波
 のピークで1日に2,600人超の死者が出ていたが、6月中旬に一旦山を下りたものの、再び上昇
 に転じその後は一日1,000人から数百人の死亡が続いている。秋から冬にかけての感染者で死亡
 が増加することが危惧されている。全米の州ごとの陽性率を見ると、東部のヴァーモント、
 メイン、ニューヨークとともにハワイが2%台と低いが、一方でサウスダコタ、アイオワ、カ
 ンサス、アイダホといった中南部の州では40%~50%の高い陽性率となっており、全米が感染
 拡大の波に吞まれている。大統領選は終わったものの、全米が政治的、社会的に二分された状
 態が続いており、国としてのリーダーシップがとられていないこともあり、各州知事の力量が
 問われている。CFRは5月から11月にかけての6ヶ月で概ね1/3の、2.2%まで低下したが、
 秋冬のサンクスギビングやクリスマスなどのホリデーシーズンにさらに感染が拡大すれば再び
 CFRが上昇に転じることも懸念される。

・ドイツは、G7諸国の中で当初から好成績で春の第一波は優秀な成績で乗り切り夏も感染者数、死
 者数共に少なく推移した。感染者数は最大一日7,000人程度で済んでいた。しかし、10月に入って
 右肩上がりに急激に感染が拡大し、1日当たりの感染者数も7000人超から11月初旬には3万人を
 超えるに至った。感染者の急増に伴い、死者数も第二波の山を迎えたが。4月半ばに一日の死者
 数が500人を超えたが、11月初旬のピークでも300人超で済んでいる。そのため、感染者数が増加
 した分、CFRは低下し11月18日には1.6%まで下がっている。

・日本は、8月の第二波で感染者数が第一波を上回り大幅に増加したため、致命率は2%を下回り、こ
 のグループでは最も優秀な数値となっているが、その後は改善が見られていない。第二波が収まり
 きらないうちに秋冬の増加傾向が顕著となり、一日の感染者数が2,000人を超過する事態となって
 いる。欧米に比べて検査数が少ないため、潜在的な感染者数が多く、高齢者への感染も広がってい
 ることから、今後死亡者数が増加する可能性が高いことが危惧される。



第十回 累積データに基づくG7諸国の致命率の推移

 下図は、各国の主な国の日ごとの感染者数、死亡者数を示したものである。左の黄色いグラ
フが感染者数の推移、右の白いグラフが死亡者数の推移を示している。横軸は経過月日、縦
軸は人数で国毎にスケールが異なっているので注意が必要。
 (出典はJohns Hopkins University, Covid-19 World Map)

 アメリカとフランス日々の感染者数及び死亡者数のデータを以下に示した。アメリカは、春の第
一波では感染者数に対して死亡者数が多くCFRが高かったが、第二波の夏以降の感染拡大時
期の死亡者数も1,000~2,000人超/日と高い状況が続いていた。一方、フランスを見ると、3月の
第一波が収束して以降、長く安定期が続いたが、9月中旬からの第二波は第一波を上回り、死亡
者が急増している。

アメリカの感染者数と死亡者数の推移(累積感染者:11,350,143人、累積死亡者:248,600人)
  
 

フランスの感染者数と死亡者数の推移(累積感染者:2,036,755人、累積死亡者:46,273人) 
  

出典:ジョンズ・ホプキンス大学 Covid-19 World Map Webサイトより
数値は2020年11月18日 JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日 午前9:26 JST


(3)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・G7全体では、6月前半の死亡者数が多く、平均で9.2%と高い致命率となっていたが、その後は
 大幅に低下し、4ヶ月後の9月上旬の死亡が最も少なくCFRも0.3%まで低下した。その後は僅
 かながら上昇に転じ、6ヶ月後の11月半ばには2.1%と8月上旬と同レベルとなった。

・東欧も含めたヨーロッパ諸国やアメリカ、日本などでの感染拡大とそれに伴う死亡の増加が影
 響していると考えられる。各国とも8月下旬から10月下旬にかけて上昇傾向に転じ、中でもイタ
 リアは10月に入り大きく数値が上昇した。10月末に引き続き、今回の調査でもG7の中ではイタ
 リアが3.7%と最も致命率が上昇している。

・フランスでは、夏に第二波の感染拡大が見られたが、致命率は8月末に0.3%まで低下していた。
 しかし、秋に入って急激に感染が拡大し、全土ロックダウンへと逆戻りしている。医療機関が逼
 迫しているとの情報が伝えられていることから今後の死亡者数の増加が懸念される。

・イギリスも8月下旬には1.0、ドイツは0.3%まで下がっていたが、都市部を中心に感染が拡大し、
 両国とも致命率は11月には1.9まで上昇した。

・日本はタイムラグを考慮した場合、6月以降横ばいとなり1.0%~1.5%の範囲で推移している。
  秋からは高齢者の感染が増加し、重症者も少しずつ増えていることから今後もCFRは上昇する
 可能性が高い。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したG7諸国の致命率の推移(%)


 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

イギリスの感染者数と死亡者数の推移(累積感染者数:1,414,359人、累積死亡者数:52,839人)
    

日本の感染者数と死亡者数の推移(累積感染者数:121,247人 累積死亡者数:1,895人
   


(4)G20諸国の国別致命率(%)の推移

(4)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%) 第九回
   
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・中進国を含むG20諸国の平均を見ると、累積値ではこの6ヶ月で6.2%から3.0%へと半減して
 いる。G7の11月中旬の平均値は2.7%であったが、中進国が加わったG20諸国では10月末
 の3.4%から3.0%へとわずかに低くなったもののG7の平均を上回った。

・G7を除く各国をみると、メキシコが僅かに下がったとはいえ、今もなお9.8%と高い値のまま推
 移しG20全体の平均を押し上げている。

・ブラジルは、3月から始まった感染拡大の山が8月にピークを迎えゆっくりと下りつつあるなか、
 再び感染が拡大し、そのまま第二波へと流れ込んだようなカーブとなっている。累積の感染者
 数は598万人を超え、まもなく600万人の大台に達しようとしている。死亡者の山も日々1,000人
 を超える日が5月から10月まで長く続いた。10月末にはようやく第一波の山を下りたと思われた
 が、再び感染拡大と死亡者の増加に見舞われている。結果として、CFRは相対的に低く3%前後
 で推移している。

・インドネシア(感染者数約49万人、死亡者数約16,000人)もこの6ヶ月余りでCFRは6.5~2.3%へ
 と右肩下がりに低下してきているが、感染者数のピークは9月中旬に出て、10月末には一旦減
 少していたにもかかわらず、11月に入って再び感染が拡大している。1日当たりの新規感染者数
 は9月より1,000人近く増加し、11月13日には5,000人を超過している。

・中国は5月以前にピークがあるため、本調査期間においては、概ね5%程度で推移している。

・アルゼンチン(感染者数約135万人、死者数約37,000万人)は感染者数が緩やかな右肩上がりで
 増加し、10月21日の18,326人がピークとなった。その後は次第に感染者数が低下している。死亡
 者数は300人/日から400人/日の期間が長く続いたが11月中旬から低下傾向を示している。ただ、
 10月1日には特異的に3,350人もの死亡者が出ている。原因については明らかではない。累積の
 CFRは2.5~3%の間で推移している。

・インド(感染者数888万人、死者数13万人)はこの5ヶ月でCFRが1.5%まで低下し半減したが、その
 背景に感染者数の爆発的拡大がある。既に11月20日夜には、900万人に達している。感染者数・
 死亡者数ともに大きな山をゆっくり登り、9月中旬にピークに達し、1日に1万人弱が感染し、1,000
 人以上が死亡する事態となっていた。しかし、その後はゆっくりと感染者、死亡者ともに低下しつつ
 あり、CFRは1.5%前後で横ばいの状態となっている。

・トルコ(感染者数約43万人、死亡者数約1.2万人)のCFRはこの間2.8~2.6%で推移し横ばいとなっ
 ている。4月中旬に第一波のピークを迎え、感染者数は一日5,000人を超えたが、その後十分に下
 がりきらないまま、11月には再び感染者数が急増し一日当たり4000人超の感染が確認されている。
 死亡者数のピークも4月中旬に1日100人を超えるところまで達したが、その後一旦低下したものの、
 8月中旬から増加に転じ、減少しきらないまま11月に再度上昇に転じている。

・韓国(感染者数3万人、死者数500人)も当初から感染拡大をうまくコントロールし、2%前後で横ば
 いが続いており、安定した状態となっている。

・南アフリカ(感染者数76万人、死者数2.1万人)は、7月中旬に山のピークに達し、その後はゆっくり
 と低下しているが、9月以降は1日1000人前後の感染者数が続いている。死者数も7月下旬にピー
 クとなり、その後は減少しているものの、1日に100人超の死者がでる日が多く見られている。そのた
 め、CFRは夏以降はわずかながら上昇傾向を示している。

・オーストラリア(感染者数28,000人、死者数910人)は7月中旬までCFRが低下してきたが、その後再
 び右肩上がりにCFRが上昇している。オーストラリアは8月~9月にかけて、3月の第一波を大きく上
 回る第二波に襲われ、感染者数も死者数も大幅に増加したが10月に入り沈静化している。死者数は
 多くの国で第一波の方が多いが、オーストラリアの場合には春のピークでも死者数は一桁だったが、
 秋の第二波では最大60名近くの死者が出るなど大きな山となっている。

・ロシア(感染者数202万人、死者数3.5万人)は、春はCFRは低かったがその後、9月以降は、感染者
 数・死亡者数ともに増加し続け二倍の1.8%まで増加しその後は横ばいとなっている。一日の感染者
 数は11月19日には最大の23,000人を超え、第一波を大きく超えた。死亡者数も第一波のピークであ
 る8月には200人超だったものが、11月には450人を上回る状況となっている。

・サウジアラビア(感染者数35万人、死者数5,700人)の致命率はこの6ヶ月で0.8から1.6%へと倍増した。
 5月から急激に感染者数が拡大し、6月中旬のピークでは一日当たり5,000人に迫り、でそれに伴って
 死亡者数も増加した。その後はゆっくりと感染者数、死亡者数ともに減少し続けている


第十回 累積データに基づくG20諸国の致命率の推移-1


第十回 累積データに基づくG20諸国の致命率の推移-2


4)-2 3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・タイムラグを考慮すると、G20諸国の平均の致命率はこの約半年の間に6.7%から2.50%
 まで低下しているが、8月下旬以降は横ばいとなっている。

・多くの国で10月前半には1%前後まで低下してきていたが、10月下旬から11月中旬にか
 けて、フランス、メキシコ、カナダ、ドイツ、トルコ、サウジアラビアなどで上昇傾向
 が見られた。10月下旬からの変化を見ると、フランスは1.3⇒1.9、メキシコは6.3⇒8.6、
 カナダは1.4⇒2.1、ドイツは1.3⇒1.9、トルコは、4.2⇒4.5、日本は、1.2⇒1.5、サウ
 ジアラビアは3.9⇒4.3と僅かながら上昇している。

・メキシコは3週間で2ポイント以上増えて8.6%となり、大きく上昇に転じた。2月中旬
 からゆっくりと感染者数が増加し、8月1日には1日に1万人弱が新たに感染した。その
 後はゆっくりと減少しつつあるが9月以降は横ばいから微増傾向が続き10月5日にはこれま
 でで最高の28,000人超の感染が確認されている。死者数は6月3日に1,000人を超えて以降高
 止まりが続き、500人から900人の間で推移していた。ただし、10月5日には、一日に
 28,000人超の感染者が確認され、死者も2,800人余と異常なピークが見られた。原因は不明。

・日本は、5月に感染して6月中旬までに死亡した人が8.5%と高かったがその後は1.5%ほど
 で推移している。高齢者の感染・死亡が一段落したものと思われる。

・インドネシア、アルゼンチン、トルコ、南アフリカ、サウジアラビアなど、致命率が大き
 く改善しない国は感染者数の増加とともに、死亡者数が抑えられていない状況となってい
 ることから引き続き注意が必要である。

・オーストラリアでは、3月頃にはうまくコントロールできていた。その後、季節が冬に向
 かうにつれ8月に第二波のピークを迎えたが、季節が次第に春から夏に向かうにつれて減
 少してくる傾向が見られる。

・春の第一波の時の死亡者数が秋の第二波で上回っている国では、急激な増加に医療が追い
 つかない状況を示しており、今後の死亡者数の上昇が危惧される。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したG20諸国の致命率の推移(%)-1


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したG20諸国の致命率の推移(%)-2

 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)
 数値は2020年11月18日 JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日 午前9:26 JST

韓国   感染者:26,146 ⇒ 29,311人 死亡者: 461 ⇒ 469人 (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)
 

ロシア  感染者:1,537,142 ⇒ 1,954,912人  死亡者: 26,409 ⇒ 33,619人
 

オーストラリア 感染者:27,553 ⇒ 27,771人 死亡者: 907 ⇒ 907人(この間ゼロ)
 


(5)EUの国別致命率(%)の推移

(5)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第十回
      
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・EU諸国の平均CFRは、約半年で、6.7%から1.7%まで5ポイント低下した。各国とも6月前半
 までは高い傾向が続いていた。

・EU全体として、夏が終わり秋から冬に入り、感染の再拡大が止まらない状態が続き再度の
 ロックダウンにより社会の混乱が広がっている。

・CFRは感染者数が増加したため、相対的に低下しているが、死者の数が再び増加傾向にあ
 るため今後は上昇する可能性もある。

・11月中旬、調査開始から半年たった時点で世界の平均を上回っているのはベルギー、イタリ
 ア、スウェーデン、スペイン、アイルランドなどであり、総じて、東ヨーロッパ諸国(旧社会主義
 国)の致命率は低く維持されている。しかし、ブルガリア、ハンガリーなどではピークが遅く来
 ていることもあり、今後上昇する危険をはらんでいる。


第十回 累積データに基づくEU諸国の致命率の推移-1


第十回 累積データに基づくEU諸国の致命率の推移-2


(5)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・EU諸国の致命率は、タイムラグを考慮した場合、6月中旬までのCFRは5.8%と高かったが、
 9月中旬には1.3%まで低下した。しかし、その後は増加傾向が続き、11月中旬には2.4%ま
 で上昇した。

・総じて、8月に底(最も低い値)となり、その後秋に向けてじわじわ上昇している国が多く見られ
 る。中でも、ハンガリー、スペイン、ギリシャ、ポルトガル、オーストリアなどで顕著となっている。

・スウェーデンは、9月中旬には非常に低く0.6%であったにも拘わらず、9月上旬には7%と10倍
 以上上昇しその後が懸念されたが、10月下旬には再び大きく0.4%まで低下した。11月には再
 び上昇に転じ1.6%となっている。死者数のピークは4月中旬で一日当たり100名を越えていた
 が、11月18日には、再び100名に迫る数の死者がでており、第二波の深刻さを示している。

・ハンガリー、ギリシャ、ブルガリアの3カ国は11月に入り、タイムラグを考慮したCFRが5%を超
 える高い数値となっている。11月に入ってからの死者数の急増により今後のCFRの上昇が危
 惧される。

・クロアチア、チェコなどでも11月に入って死者数が急増しているため、今後もCFRは上昇すると
 思われる。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したEU諸国の致命率の推移(%)-1


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したEU諸国の致命率の推移(%)-2


 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)
 数値は2020年11月18日JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日午前 9:26 JST

スウェーデン 感染者:115,785 ⇒ 192,493人  死亡者: 5,918 ⇒ 6,225人 
 (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)
 

クロアチア 感染者:38,621 ⇒ 87,464人   死亡者: 470 ⇒ 1,113人
 

チェコ 感染者:284,033 ⇒ 469,769人  死亡者: 2,547 ⇒ 6,558人
 


(6)G7・G20・EU以外の国別致命率(%)の推移

(6)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第十回
      
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

 ここでは、上記各経済圏に含まれないアイルランド、スイス、ニュージーランド(ISNと略す)の
3ヶ国について見ている。

・この3ヶ国の累積感染者数、死者数のCFR平均は約6ヶ月の間に4.6%から1.8%へと約2.8ポ
 イント低下している。

・アイルランド、スイスともに右肩下がりに低下しているが、アイルランドは依然として世界の平
 均を上回っている。

・スイスは11月には1.3%まで低下し平均を大きく下回った。スイスでは春、3月の第一波のピー
 ク時には感染者数も少なく、その後夏も順調に低いレベルを維持できていたが、10月以降は
 感染者数も急増し、11月2日には一日当たり2万人を超える感染者が確認され、春を凌ぐ勢
 いとなっている。死者数も4月の第一波では、1日当たり最大75名程度だったものが、11月
 16日には、170人に迫る死者数を出し、緊張感が高まっている。11月下旬以降のCFRの推移
 に注目したい。

・ニュージーランドは初期の段階から感染拡大を押さえ込んだことにより、低い数値で安定して
 いる。


第十回 累積データに基づくG7/G20以外の国の致命率の推移


(6)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・11月18日時点のタイムラグを考慮した致命率を見ると、3ヶ国の平均は夏の終わりからじわじわ
 と上昇し続け0.5から0.9へと変化した。

・アイルランドは10月に第二波の感染拡大が見られているが、死者数は低く抑えられ、1.1%から
 0.5%へと低下している。

・一方でスイスは、第二波の方が死亡者が多く、前回より3倍もCFRが上昇し0.7%が2.2%へと変
 化し、この3カ国の平均を押し上げている。

・ニュージーランドは、季節も次第に春に向かっていることもありほぼ収束している。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したG7・G20以外の国の致命率の推移(%)


 以下に、スイスの日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)
 数値は2020年11月18日JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日午前 9:26 JST

スイス 感染者:127,042 ⇒ 274,534人  死亡者: 2,147 ⇒ 3,664人 (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)
  


(7)BRICSの致命率(%)の推移

(7)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第十回
      
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・BRICS諸国のこの間6ヶ月の累積データに基づく致命率の平均値は前回同様、3.7%から2.8%
 へと1ポイント低下しており、7月から横ばいとなっている。

・感染者数の世界第一位のアメリカに次いで、前回までは、2~4位がインド、ブラジル、ロシアと
 なっていたが、フランスが急増したために、第二位インド、第三位ブラジル、第五位ロシアの順
 に変わっている。しかし、インド、ブラジル、ロシア3ヶ国の感染者数は三週間で200万人増加し
 1700万人を超え、世界の30%を占めるに至っている。

・ブラジルは、6.8%だった致命率が2.8%まで改善しているが、3月中旬から始まった感染拡大は
 7月下旬になって一日7万人の感染者を出し、ピークを迎えるが。その後も、山を下りながらも
 一日当たりの感染者数は9月下旬に6.8万人、11月中旬に4.9万人が確認され、死者も1日1000
 人前後と多く、確実に山を下ることができるか、CFRは下げ止まっているが予断を許さない。

・インドは11月19日で感染者総数が900万人を超え、世界第二位の感染者数となっている。9月
 中旬に1日97000人の感染者を出したのがピークで、その後は山を下りつつあるが、10月末か
 ら11月中旬まで、依然として日々4~5万人の感染者が出ているので今後のCFRの上昇が危
 惧される。死者数も感染者の山と平行して下降傾向を見せているが、10月~11月にかけて依
 然として日々500人前後の死亡者が出ている。

・南アフリカの感染状況は、第一波の山が7月中旬となっており、その後は次第に低下している。
 ピーク時の一日当たり感染者数は約1.4万人、死者数は7月下旬から8月に掛けてピークとなり、
 最大600人に迫る勢いだった。
 その後は次第に低下しているが、10月以降も日々100~150人の死者が確認されているため、
 どこまで死亡者を抑えられるかが課題である。

・ロシアの致命率は8月以降、1.7%で横ばいとなっている。5月に一日1万人を超える感染者が出
 て、その後6月~7月に一日200人を超える死者が確認され第一波のピークとなったが、その後
 一波の山を下りきらずに再び秋に上昇に転じ、第二波は第一波を上回る勢いとなっている。
 11月中旬の感染者数は一日2万人を超え、死者数も500人に迫っている。第一波の経験が十分
 生かされていないことが伺える。


第十回 累積データに基づくBRICS諸国の致命率の推移


(7)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移-BRICS

・3週間のタイムラグを考慮した場合、BRICS諸国の平均CFRはこの半年で、4.5%から1.9%
 へと低下している。

・ブラジルとインドは感染者数の拡大が続き、CFRは相対的に右肩下がりに低下しているが、
 ブラジルでは、8月からは足踏み状態で大きな改善は見られていない。

・その一方、南アフリカは8月からCFRが上昇傾向となり、10月に入って6.1%と6月を超える厳
 しい状況となった。しかし、11月中旬には再び低下し、4.0%まで戻している。

・ロシアでは、夏までは、ほぼ2%前後で推移してきたが、8月下旬から右肩上がりに上昇し、
 10月下旬には3.0%となり6月を上回った。11月に入って若干CFRは低下しているが、感染者、
 死亡者共に第一波を大きく超える勢いとなっているため、今後のホリデーシーズンでの感染
 者の増加、死亡者の増加が再びCFRを押し上げる要因として危惧されている。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したBRICS諸国の致命率の推移(%)


 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

インド  感染者:7,946,429 ⇒ 8,874,290人   死亡者: 119,502 ⇒ 130,519人 
  (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)
  

ブラジル  感染者:5,439,641 ⇒ 5,911,758人   死亡者:157,946 ⇒ 166,699人
  

南アフリカ  感染者:717,851 ⇒ 754,256人    死亡者:19,053 ⇒ 20,432人
  


8)ASEANの致命率(%)の推移

(8)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第十回
      
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・ASEAN諸国のこの間のCFR平均値は2.1%から1.4%へとわずかに低下しているが、7月中旬
 から横ばいの状態が続いている。

・フィリピンは、8月末まで順調にCFRが低下していたが、その後再び上昇に転じ1.9%程度で推
 移している。感染者数のピークは8月に入って6700人を出しており、死者数も100人規模に達
 する日が見られていた。死者数のピークは9月中旬で250人を超えている。その後はゆっくりと
 減少しつつある。

・インドネシアは右肩下がりに低下し、この6ヶ月ほどで約1/2、3.3ポイント下がった。3月から
 感染者が次第に増加し、9月に入ってから一日当たりの感染者数が5000人に迫り、遅めのピ
 ークを記録している。その後下降傾向に入るが、11月になって再び感染者数が一日5000人を
 超える日があり、十分に山を下りきれるか心配されている。死者数も9月中旬の220人をピーク
 に減少傾向に入っているが、日々100名程度の死亡が確認されており、ゆっくりとした足取りと
 なっている。

・ミャンマーは5月~9月まで4ヶ月減少傾向が続いたが、10月に入り6月末の水準まで大きく上
 昇し2.3%前後で横ばいとなっている。春から8月までは感染者数も一日一桁に留まるなどほと
 んど影響を受けていなかったが8月下旬から感染が拡大し始め、10月10日は一日2,000人を
 超える感染者数を確認している。死亡者数も10月11日に48名が死亡し、死亡者数のピークを
 記録した。今後、下降傾向が続くかどうかが重要となる。

・タイ、ブルネイは1~2%程度で横ばいとなっており、大きな変化がない。

・マレーシアはCFRを見ると順調に低下しているようだが、春の第一波の感染の波は小さかった
 ものの、9月中旬から拡大し始めた第二波の波は大きく、11月6日には1,800人近い感染者数が
 確認され、死亡者数も12名と第一波を上回っている。11月中旬以降、低下傾向を示しているが、
 今後それが維持されるかどうかにかかっている。

・カンボジア、ラオス、ベトナムなどのインドシナ半島諸国は死亡者0が続いていたが、ベトナムで
 8月に入り死亡者が確認され致命率が右肩上がりに上昇したが僅かながら減少しつつある。ベ
 トナムでは、1月中旬から感染が確認され始め、何度か山谷を繰り返しながら7月に一日45人の
 感染が確認されたのがピークとなっている。死亡者は7月末から9月初旬の間に集中し、合計35
 人となっている。その後は死亡者は確認されていない。


第十回 累積データに基づくASEAN諸国以外の国の致命率の推移


(8)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移(ASEAN)

・タイムラグを考慮した場合、ASEAN諸国では、この6ヶ月の間にCFRの数値が大きく上下に変動
 したが11月中旬には0.7%まで低下してきた。

・こうした変動の背景には、7月末にはベトナムで初めて死亡者が確認され、また、9月に入って、
 ミャンマーで死者が急増したことが報告されたことにより、これらの国々で一気にCFRが上昇した
 ことが原因となっている。ただし、ベトナムの死者数は最大でも一日3名、累積で35名と変化がない。

・ブルネイ、シンガポール、カンボジア、ラオスは死者数が少ないため、このグループのCFR平均値を
 引き下げている。ちなみに、これらの国々の合計死者数はブルネイが3人、シンガポールが28人、
 カンボジアとラオスはゼロと報告されている。

・ASEAN地域はヨーロッパ、アメリカなどに比べて感染拡大の時期が大幅に遅かったため、世界の様
 々な経験知見が生かされ、死亡者数も低く抑えられている傾向がある。高温多湿という気候的な特
 徴に加え、アジア人という人種的な特性もウイルスの感染拡大には有利に働いている可能性が指
 摘されている。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したASEAN諸国の致命率の推移(%)


 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
  (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)
 数値は2020年11月18日JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日午前 9:26 JST

ミャンマー 感染者:47,666 ⇒ 71,730人    死亡者: 1,147 ⇒ 1,625人 
  (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)
  

インドネシア 感染者:396,454 ⇒ 474,455人  死亡者: 13,512 ⇒ 15,393人
  

フィリピン  感染者:373,144 ⇒ 410.718 人  死亡者: 7,053 ⇒ 7,862人
  


(9)旧社会主義諸国の致命率(%)の推移

(9)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第十回
      
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・東欧諸国にキューバと中国を加えたこのグループの平均CFRは6ヶ月で4%から1.7%へと2.3
 ポイント低下した。

・高い数値で推移したのがハンガリーであったが、実際の感染拡大は9月中旬から本格的に始
 まっている。それまでは1日30から40名の感染者が最大であったが、9月以降は急激に増加し、
 11月18日には一日に8,000人近い感染者を記録しピークとなった。死亡者数も8月下旬から増
 加し始め、11月11日には80名を超えている。今後、この遅くきた第一波をどこまで速やかに押
 さえ込めるかにかかっている。

・東欧諸国は総じて、感染者数、死亡者数も少なくCFRが低く維持されていたが、その中でも10月
 以降増加傾向にある国々については、今後の推移が注目される。

・11月18日の時点で、世界の平均を上回っているのは中国を除けばルーマニアのみで、ブルガリ
 アは2.3%となりかろうじて下回った。

・ブルガリアでは、10月以降の第二波が実質的な第一波となっており、前回から今回の間に42,701
 人から 106,598人へと感染者数が大幅に増加した。死亡者数も1,161人から2,413人へと増加して
 いる。

・CFRは低いものの、9月以降に僅かながらでも増加傾向を示しているのは、チェコとスロバキアの
 2カ国である。チェコは春には感染者数も死者数も少なかったが、秋から始まった感染拡大が実
 質的な第一波となり10月下旬から一日15000人を超える感染者が確認されている。死亡者数の
 ピークは11月10日で300人に迫る勢いとなっている。今後も増加傾向が続くとCFRがさらに高くな
 る可能性が危惧される。現状の感染者数は48.8万人、死亡者数は7,000人超となっている。

・隣国のスロバキアもチェコとほぼ同様の傾向を示しており、現状では感染者数9.3万人超、死亡
 者数600人余りとチェコに比べて少ないが、感染拡大のパターンは類似している。両国における
 人々の往来が頻繁であれば、今後も増加する可能性があるので注意が必要である。

・アゼルバイジャン、アルメニアは停戦となっていることもあるのか、僅かながら右肩上がりとなって
 いる。

・総じて感染拡大が先行した西ヨーロッパ諸国に比べて、感染者数、死亡者数共に低く維持されてい
 る。先行した西欧諸国の経験がEU内で共有されることが望まれるが、西欧社会とは経済的な格差
 もあるためこれ以上拡大して行った場合には死亡者数の増加に伴うCFRの上昇が危惧される。


第十回 累積データに基づく旧社会主義諸国の致命率の推移-1


第十回 累積データに基づく旧社会主義諸国の致命率の推移-2


(9)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・11月18日時点では、タイムラグを考慮した場合のグループのCFRの平均が10月下旬より僅
 かに改善し、2.7%となった。

・11月中旬に高くなったのは、ハンガリー、リトアニア、エストニア、セルビアとなっているが、今
 回はアフリカの平均値が6.2%と異常に上昇したため、世界の平均は概ね下回っている。西ヨ
 ーロッパ諸国に比べてピークが遅い時期となっている点が影響している。

・アルメニア、アゼルバイジャンは前回より改善しているが、平和が続くかどうかによって、今後
 も注意が必要である。

・この間最も大きく変化したのはクロアチアで17%から夏には1.4%へ低下したが秋になって再び
 上昇に転じている。

・東欧以外では、中国が再び0.5%のCFRとなった点が注目される。具体的には、中国では、10
 月中旬に発症した人数が550人であるのに対して、三週間後の10月下旬から11月中旬に死亡
 した人数は3名と少ないため、CFRは0.5%となてっており、感染が押さえ込まれている状況が
 見て取れる。

・キューバは、夏場に若干上昇したが、秋には再び低く抑えられている。現状の感染者数は
 約7,800人、死亡者数は130人余りとなっている。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した旧社会主義諸国の致命率の推移(%)-1


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した旧社会主義諸国の致命率の推移(%)-2

 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)
 数値は2020年11月18日JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日午前 9:26 JST

 ハンガリー、ブルガリアなど東欧地域が10月以降急増している。また、アゼルバイジャンと
アルメニアは戦争の影響もあり双方とも感染者数は三週間でおよそ3万人程度の増加とな
っている。

ハンガリー  感染者:63,642 ⇒ 152,659人    死亡者: 1,535 ⇒ 3,281人 (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)
  

アゼルバイジャン 感染者:51,149 ⇒ 79,158人   死亡者:688 ⇒ 1,005人
  

ブルガリア   感染者:42,701 ⇒ 106,598人   死亡者: 1,161 ⇒ 2,413人
  


(10)北欧諸国の致命率(%)の推移

(10)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第十回
      
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・北欧諸国においては、この6ヶ月で累積のデータに基づくCFRが5.1%から1.6%まで概ね3.5ポイン
 ト低下している。

・このグループでは、特段の対策を講じないという独自路線をとってきたスウェーデンの改善が著しく
 13%から3.2%にまで約10ポイント低下しているがグループ内ではCFRが3.2%と最も高く、世界の
 平均値である2.6を大きく上回っている。

・他の国々は安定した推移となっている。


第十回 累積データに基づく北欧諸国の致命率の推移


(10)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・9月の時点では、グループ平均の3週間のタイムラグを考慮したCFRが3.1%から0.4%へと大き
 く減少したが、10月にはスウェーデンが大きく上昇したために再び上昇に転じ、1.8%となった。
 しかし10月下旬には大幅に低下し0.3%と8月末の水準にもどっていたが、11月には再び上昇に
 転じている。原因としては、スウェーデンの上昇とともに、ノルウェーやアイスランドなどの第二波
 の影響があると思われる。

・スウェーデンは、9月中旬までは非常に低く0.6%であったにも拘わらず、その後は上昇と下降を
 繰り返し、11月18日には1.6%まで前回の4倍近い上昇となった。春から7月までの感染者数は
 最大1,700人程度で抑えられていたが、夏休み明けの9月末から急激な感染拡大が始まり、11月
 に入って、一日1.5万人を超える感染者が確認されている。一方、死亡者については、4月中旬が
 春のピークで1日当たり115名程度であったが、第二波では既に11月18日に100名に迫る死亡者
 がでており、今後が危惧される。

・デンマーク、フィンランド、ノルウェーともに10月に入って上昇したが、下旬には低下に転じている。
 ただ、スウェーデンに隣接するノルウェーもほぼ同様の傾向を示していることから今後の対策如
 何に架かっているといえる。

・アイスランドは、4月20日の死者1名以降は、死亡者が出て居なかったが、10月に入って再び死亡
 者が確認され、二つの山となっている。そのため、CFRは0.1%から0.9%へと上昇した。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した北欧諸国の致命率の推移(%)


 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。(出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)
数値は2020年11月18日JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日午前 9:26 JST

デンマーク  感染者:42,668 ⇒ 65,067人  死亡者: 709 ⇒ 768人 
 (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)
  

ノルウェイ 感染者:18,666 ⇒ 30,114人  死亡者: 280 ⇒ 298人
  

(11)中南米島嶼国の致命率(%)の推移


(11)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・済圏別の致命率の推移(%)第十回
      
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・このグループの累積値によるCFR平均値は、この間ほぼ横ばいで3.7%~3.1%で推移している。

・メキシコの致命率は11月下旬になってもおよそ10%と引き続き高い状態が続いている。累積の
 感染者数は11月14日に100万人を突破し、世界で11位となっている。11月19日には累積の死者
 数が10万人を突破し、高い致命率を裏付けている。

・11月18日の時点で、世界の平均である2.4%を上回ったのは、メキシコ以外に、ブラジル、ホンジ
 ュラス、アルゼンチン、ボリビア、コロンビア、ペルー、グアテマラ、エルサルバドール、チリの10ヶ
 国におよび、中南米の厳しい状況が見て取れる。

・平均を下回ったのは、キューバ、ドミニカ共和国、パナマ、ウルグアイ、パラグアイ、コスタリカの6
 ヶ国で、いずれも前回から横ばいのまま改善が見られていないが、キューバ、ウルグアイについて
 は低下傾向が見られる。

・山岳地帯や点在する農村地帯での感染拡大は対応が困難となるため、注意が必要となる。


第十回 累積データに基づく中南米諸国の国の致命率の推移-1


第十回 累積データに基づく中南米諸国の国の致命率の推移-2


(11)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・タイムラグを考慮した場合、このグループの致命率は6ヶ月で5.6%から2.5%へと3.1ポイン
 ト低下し前回と同じレベルに留まった。

・メキシコでは6月の致命率が23%と極めて高かったが、9月上旬に8%まで低下し、一旦10
 月初旬に再び10%近くまで上昇した。その後は、再び低下するも、11月には再度9%近くま
 で上昇し改善の兆しが見られていない。10月5日に28,000人超の感染があり、同日2,700人
 超が死亡したことが影響している。

・アルゼンチンは、春から始まった感染拡大は10月半ばにピークを迎え一日に1.8万人が感染
 し、それに先立つ10月14日に総数で100万人を突破していた。感染者数では、世界第8位と
 なっている。死亡者数は、7月半ばから増加し始め100人超の日が続いていた。10月半ば以
 降は感染者数は減少に転じているが、死亡者数がどこまで抑えられるかが課題となっている。
 10月1日には3,351人が死亡している。

・アルゼンチンの北に位置するボリビアでは感染のピークが7~8月の冬の乾季に重なってい
 る。ピーク時には2,000人を超える感染者が報告されていたが、8月半ば以降は減少に転じて
 いる。現状では第一波の山が大きく第二波には至っていない。タイムラグを考慮したCFRは9月
 に10%まで上昇し、メキシコを上回ったが、その後は4%まで低下した。しかし、10月中旬から
 11月中旬にかけて再び上昇し5%台で推移している。死亡者数はずっと50人前後で推移して
 いたが、9月7日には1,656人が死亡している。原因は把握できていないが、異常な数値となっ
 ていた。

・グアテマラは1日1,000人規模の感染が長く続いていたが、9月後半から漸く減少の兆しが見え
 ている。7月中旬に1日に5,000人弱の感染が確認されたのがピークとなっている。死亡者は7月
 後半の一日60人がピークとなっているが、その後緩やかに減少するも11月には再び60人超の
 死亡が確認されている。メキシコと国境を接していることによる影響も考えられる。

・チリは、6月初旬に感染のピークを迎え、一日の感染者が1.2万人を超える事態となっていた。
 その後8月末には感染者数が2,000人前後まで低下したが、今もなお一日1,800人前後の感染
 者が報告され、横ばいの状態が続いている。死亡者数は累積で1.5万人を数え、7月17日には
 1,000人を超える規模の死者が報告されている。

・コスタリカは9月に入ってから感染のピークを迎え一日に2,000人規模が感染する日が複数報告
 されている。死者数も9月にピークとなり、1日40人近くが死亡したが、その後は減少傾向が続い
 ている。

・エルサルバドールは、7月中旬から8月中旬にかけて感染のピークを迎え、一日450人ほどが感
 染していたが、その後は一旦下落し、再び9月から第二波に襲われ、感染者数も第一波の二倍
 近い人数が報告されている。死亡者数は累積で1,000人を超えているが、ピークは8月で一日に
 現状で15人前後が続いていた。

 総じて、中南米地域は、国によってピークの時期が異なっているため、全体としてなかなか収束
 に至らない傾向が見て取れる。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した中南米諸国の致命率の推移(%)-1


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した中南米諸国の致命率の推移(%)-2


 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)

 数値は2020年11月18日JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日午前 9:26 JST
 (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)

メキシコ 感染者:901,268 ⇒ 1,011,153人 死亡者: 89,814 ⇒  99,026人  10月5日に28,000人超の感染があり、同日2,700人超が死亡
  

アルゼンチン 感染者:1,116,609 ⇒ 1,329,005人 死亡者: 29,730 ⇒ 36,106人 10月1日に3,351人死亡
  


コロンビア 感染者: 1,033,218 ⇒ 1,211,128人  死亡者:30,565 ⇒ 34,381人 
  

(12)アフリカ諸国の致命率(%)の推移

(12)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第十回
      
注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・アフリカ諸国のこの間6ヶ月の平均CFRは、5月中旬に4.1%だったものが2.6%まで低下している
 が、6月下旬からは横ばいの状態となっている。

・11月に入り、多くの国が世界平均の2.4%を下回っているなか、アフリカ地域では、ジンバブエ、ア
 ルジェリア、マリ、エジプト、スーダン、チュニジア、ソマリア、タンザニア、南アフリカで平均を上回
 る状態となっている。中でもスーダン(7.8%)、エジプト(5.8%)、タンザニア(4.1%)、マリ(3.5%)な
 どが高いCFRとなっている。

・11月に入って大きく上昇したのがスーダンとチュニジアの2カ国である。スーダン(感染者数:15,047
 人、死亡者数:1,175人)については、前回10月下旬から大幅に上昇した。その背景には、11月8日
 に278人が死亡する事態となったことがある。

・チュニジア(感染者数:81,723人、死亡者数:2,445人)は、8月以降に急激な感染拡大に見舞われ、
 10月17日には5,000人超の感染が報告されている。死者についても、感染の拡大に併せて9月半
 ばから増加し続け、11月7日には一日で217人がなくなっている。そうしたことから、9月始めには
 低かったCFRが再び上昇に転じている。


第十回 累積データに基づくアフリカ諸国の国の致命率の推移-1


第十回 累積データに基づくアフリカ諸国の国の致命率の推移-2


(12)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・この半年間、このグループの平均CFRは、タイムラグを考慮すると途中上下しながらも、
 10月末までは、5.1%から2.7%へと低下していた。しかし、11月に入り、スーダンの死亡
 者数が増加したことにより、世界の平均が6.2%、アフリカの平均値が21%へと大きく上
 昇させることとなった。

・スーダン(感染者数:15,047人、死亡者数:1,175人)でタイムラグを考慮したCFRに大幅
 な増加が見られた。それは、10月8日から28日の3週間の間に発症したのが94名だっ
 たのに対し、10月下旬から11月18日までに死亡した人数が338人と多かったため、CFR
 が360%となったことが要因となっている。

・アフリカの対象国の中で最も感染者数、死亡者数が多いのはBRICSの一角を占める南
 アフリカ(感染者数75.4万人、死亡者数2万人)であるが、南アフリカに次いで人口密度の
 高い都市を内包し、ヨーロッパとも関係が深いモロッコ(感染者数約30万人、死亡者数
 5,000人)、エジプト(感染者数約11万人、死亡者6,500人)、エチオピア(感染者数約10万人、
 死亡者数約 1,600人)となっている。

・11月中旬の世界の平均値6.2%を超えているのはエジプト(8.7%)とスーダン(360%)の2カ
 国となっている。

・10月下旬から増加傾向にあるのは、ジンバブエ、アルジェリア、モーリタニア、チュニジア、
 ソマリア、ナイジェリアなどである。

・アルジェリアでは3月の第一波の後、8月に第二波、11月に第3波に襲われ、次第にその
 ピークが高くなっている。感染者数、死亡者数で見ると、4月~5月にかけての第1波では、
 感染者数一日最大200人、死亡者数4月19日に30人であったものが、7月中旬の第2波で
 は、ピーク時に感染者数が800人/日まで増加、死亡者数は第1波のあと数ヶ月15人/日
 前後で推移していた。そして、11月中旬の第3波では、感染者数が1,000人/日を記録し、
 死亡者数も20人/日を数えるに至っている。

・ソマリア(感染者数4400人、死亡者数100人)は5月には1.4%だったが、9月上旬には5.5%
 まで上昇した。その後一旦低下するも、9月末から11月に入り再び上昇している。

・南スーダン(感染者数3,000人、死亡者数60人)は数値の凸凹が激しく、10月に入り1.2%ま
 で低下したものが11月には再び4.2%にまで上昇し、その後再度1.9%まで低下している。
 第1波のピークは7月中旬で一日140人程度の感染が見られたが、その後低下し、11月に
 入って第2波では一日100人には達しないものの、70~80人の感染者が出ている。死亡者
 数は7月に一日3人の死亡が5日ほど続いてピークとなっていた。11月に入ってからの死亡
 者は4人/日のみとなっている。

・データの確実性に疑問が残るが、人口密集地での感染拡大と共に、分散した集落での感
 染も致命率を上げる可能性があり、感染拡大を抑えていく必要がある。

・大陸内の陸路での移動が感染を広げている可能性もある。

・リビア、ケニア、アルジェリアの3カ国は7万人~7.5万人規模のほぼ同程度の感染者数、
 1,000人から2,000人の死者数となっているが、リビアとアルジェリアは国境を接しており、両
 国の往来は相互に影響し合う可能性が高い。

・リビアは感染のピークが10月末(1,700人/日)となっていることから、今後も死亡者数が増加
 し、それに伴ってCFRが上昇する可能性がある。死亡者数のピークは9月~10月にかけて
 続き、一日当たり20~25人の日が続いていた。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したアフリカ諸国の致命率の推移(%)-1


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮したアフリカ諸国の致命率の推移(%)-2


 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
 (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)
 数値は2020年11月18日JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日午前 9:26 JST

アルジェリア  感染者:56,706 ⇒ 69,591人  死亡者:1,931 ⇒ 2,186人   (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)
  

スーダン  感染者:13,747 ⇒ 15,047人  死亡者:837 ⇒ 1,175人
  

エジプト  感染者:106,877 ⇒ 111,284人  死亡者:6,222 ⇒ 6,481人
  


(13)中東諸国の致命率(%)の推移

(13)-1 死亡数及び発症数の累積値による地域別・経済圏別の致命率の推移(%)第十回
       注)これは第一回から続けているタイムラグ無しCFR調査の第十回目報告である。

・中東諸国の累積データに基づくCFRの平均は5月から11月の6ヶ月間で、3.2%から3.7%へと
 わずかに上昇したが概ね横ばいである。

 その原因はイエメンのCFRが極めて高いこととともに、シリア、イランなど政情不安の国々での
 CFRが下がらないことによると思われる。

・レバノン、イスラエル、ヨルダン、クウェート、UAE、カタールなどは次第に低下し低く維持されて
 いる。

・トルコは2.8~2.6%の横ばいで推移している。

・中東地域で最も感染が激しいのはイランであり、感染者数83万人、死者数4万人超と
 なっている。感染者数では、3月の第1波の後、夏の間は平準化していたが、秋に入っ
 て急増し、春の4倍の感染が確認されている。死者数で見ると明らかに3月の第1波、
 7月の第2波、11月の第3波と次第に増加しているため、今後もCFRが増加する可能
 性がある。

・イランに次いで、感染者数が50万人台のイラク、40万人台のトルコ、30万人台のサウジ
 アラビアとイスラエルと続くが、それぞれ、感染拡大のパターンが異なっている。ヨル
 ダン、オマーン、クウェート、カタール、レバノン、UAEなどの湾岸エリアはいずれも
 累積で12~16万人程度の感染となっている。

・レバノンは春から低いレベルに抑えていたが、7月以降は右肩上がりに感染者数が増加
 し11月には2,000人/日を超えるまでに至りピークに近づきつつある。爆発事故後の社会
 の混乱、経済の疲弊が影響している可能性がある。

・イエメンを除いてみると、シリア、イランのCFRは他の国々に比べて高く5%を上回って
 いるが、その他の国は比較的低く維持されている。緩やかに減少傾向を示しているイラ
 ク、レバノン、UAE、クウェートと、7-8月頃からわずかに右肩上がりの傾向を示している
 トルコ、ヨルダン、サウジアラビア、オマーン、さらにほとんど変化がないバーレン、カ
 タールに分けられる。

・地域で最も感染者数が少ないのはバーレンで、累積でも1万人に達していない。死者数は
 330人ほどである。しかし、カタールは感染者数が13万超と多いのに対して、死亡者数は
 累積で235人と少なく維持されている。カタールでは5月にピークを過ぎ、7月以降の感染
 者数は200人前後で推移していることによる。そのため、累積のCFRは最も低く0.2%に留
 まっている。



第十回 累積データに基づく中東諸国の国の致命率の推移


(13)-2  3週間のタイムラグを考慮した致命率(CFR)の推移

・タイムラグを考慮した場合には、中東地域全体の平均値は6.8%から10月末に3.8%へとほぼ
 半減したものの、11月には再び上昇し5月と同じレベルの6.8%まで戻った。

・イエメンのCFRは6月には55%だったものが10月初めには11%まで低下したが、10月下旬に
 は再び19.4%へ、11月には更に62%へと上昇している。

・シリア、イランともに11月に入っても8~9%前後の高い値となっている。イランは、死亡者数の
 推移でみると第三波に襲われている状況となっている。

・その他の国は低く維持されているが、ヨルダンについては、10月上旬に大きく上昇したが下旬
 にはやや低下した。ヨルダンについて具体的に見てみると、9月初めまでは感染者も死者も少
 ないまま経過したが、9月中旬から右肩上がりに上昇し、11月に入ってピークを迎え、感染者数
 が8,000人/日まで上昇、死亡者数も11月初旬に100人/日に迫っている。11月下旬にはピークを
 過ぎて下降していくかが今後の鍵となる。

・政情不安地域を除く中東諸国はいずれも低く維持されているが、トルコとサウジアラビアで11月
 に入っても高いレベルとなっていることが注目される。トルコでは、11月に入り、感染者数、死亡
 者数共に上昇している。サウジアラビアでは、第1波の大きな山は6月~7月にかけて到来してい
 る。その後感染者数は400~500人/日の間で推移し十分に下がりきっていない。そうした中で、
 死亡者数は7月4日の57人をピークに減少に転じたものの、春の10人/日のレベルまでは下がり
 きらず、1ヶ月以上20人/日の死亡者が続いているため、今後もCFRが上昇する可能性がある。


第六回 発症・死亡のタイムラグを考慮した中東諸国の致命率の推移(%)

 以下に、主な国の日ごとの感染者数と死亡者数の推移を示したグラフを掲載する。
  (出典はいずれもJHU, Covid-19 World Map)
 数値は2020年11月18日JHUデータ取得時 グラフは2020年11月20日午前 9:26 JST

イラン 感染者:581,824 ⇒ 788,473人  死亡者: 33,299 ⇒ 42,461人  
 (変化は前回10/28から今回11/18 以下同様)
  

レバノン 感染者:73,995 ⇒ 107,953人 死亡者: 590 ⇒ 839人
  

トルコ  感染者:366,208 ⇒ 421,413人  死亡者: 9,950 ⇒ 11,704人
  



◆解説 COVID-19リスクの調査評価指標

 本調査の目的は世界各国。地域、経済グループ等を対象に、致命率(CFR:死亡者数/感染者数)を
明らかにすることである。

 本稿では、
致命率(CFR: Case Fatality Ratio)をCOVID-19感染がもたらすリスクの代表的な
指標として、総合評価を行うこととした。それは、単なる感染者数、死亡者数だけでなく、感染者がそ
の国、地域で死に至った背景、具体的には、今回のようなパンデミックに対応できる救急搬送体制か
ら病院数・病床数・医療設備・医師・看護士などの医療リソースの充足度、また、医療体制の有無、さ
らには国や自治体のリスク管理政策の妥当性など、如何に死者を減らせるか、医療崩壊に至らずに
済むかを反映した指標であると考えたからである。

 
なお、CFRが10%の場合、感染者100人の場合、10人が死亡者となる。CFRが5%の場合は、感
染者100人の場合、5人が死亡者となることになる。


 その結果、これまで分からなかったCOVID-19がもたらす「医療に関するカントリーリスク」についての
国際比較が可能となりつつある。

 以下は致命率とは何かの説明である。

 まず、類似の指標として死亡率があるが、致命率と死亡率との関係は以下の通りである。分母が罹患
数の場合が致命率、分母が人口の場合が死亡率である。ここでは、世界各国のCOVID-19に感染した
人を対象としているので、致命率となる。


 


<用語解説> 

 致命率 (CFR: case fatality rate) は、疫学において特定の疾病に罹患した母集団のうち、その感染が
死因となって死亡する割合。致命率は通常、%で表されリスクの測定値を表す。


 なお、致命率は英語では
Case Fatality Ratioであり、略称CFRである。致命率が、10%の場合、
感染者の10人に1人が死亡数、5%の場合、20人に1人の場合の死亡数となる。

 CFRはさまざまな目的に援用できるが、これが増えるのは、総じて死亡者が増加することの警報
である。


 CFR(致命率)は、各国の救急搬送(ネットワーク)、救急医療、病床数、院内リスク管理体制、医師・看
護数、既往症・持病者対応、高齢者対応など院内感染、医療崩壊に通ずる重要な観点の総合指標と言
える指標である。