下野新聞 2001年10月23日社会

上三川町と地域住民
ダイオキシン 松の葉で測定
−「組織内に蓄積」利用  県内初、来月から採取


 上三川町と地域住民が一体となり、クロマツの葉から町内の大気中のダイオキシン濃度を測定する県内でもはじめての試みを、11月から実施する。ダイオキシン類を組織内に取り込むクロマツの特性を利用し、分析を専門機関に委託して本年度内に結果を得る方針だ。町と町内の測定ボランティア団体が参加住民を募集しており、「身近な環境に対する問題意識を高めてもらいたい」と呼びかけている。


  調査のきっかけは、清掃工場建設をめぐり対策委員会を設けた地元のゆうきが丘自治会が、昨秋、講演に招いた環境コンサルタント「環境総合研究所」(東京)の青山貞一所長から紹介があったこと。

 当時対策委員長だった会社員大野恒夫さん(40)ら三人が「この方法で町内全域を調べてみよう」と企画し、測定ボランティア「くろまつ」を発足。昨年末から町側に働きかけ、松葉の採取は「くろまつ」が中心に行い、分析費用は町が負担することで実現した。

  同研究所によると、クロマツの葉は呼吸を通じてダイオキシン類を組織内に蓄積する特性があり、大気汚染を測定する環境指標として活用されているという。地域の大気中の平均濃度も正確に把握できるとされ、1回の分析で結果が出る。

 町と「くろまつ」は町内を碁盤の目のように20分割し、11月上旬から各地のクロマツの葉、計約600枚を採取。同研究所を通じてカナダの研究機関に輸送し、分析する。結果は早ければ来年2月ごろには出る。

 大野さんは「こうした取り組みが県内全域に広がってほしい」と期待しており、県環境管理課も「本県では初めての試みだと思う。松葉を使った濃度調査に目を向けてみたい」と注目している。

 今月28日には青山所長から測定方法などを学ぶ環境講座が宇都宮市茂原のクリーンパーク茂原で開かれる。入場は無料。
 ボランティアと環境講座の問い合わせは上三川町生活環境課、電話0285-56-9133へ。

 写真:町内のクロマツの葉を事前に観察する測定ボランティア団体の大野さん=12日午後、上三川町多功の明治南小校庭