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開示されない
「災害廃棄物安全評価検討委員会」
の会議録音データ

環境行政改革フォーラム 事務局長 鷹取敦

掲載月日:2011年11月17日
 独立系メディア E−wave 無断転載禁


 前回までの経緯を以下にとりまとめように、放射性物質で汚染されている可能性のある災害廃棄物の処理処分に関して、環境省が設置している「災害廃棄物安全評価検討委員会」は非公開で開催されており、議事録も公開されていない。
環境省への議事録開示請求の経過報告
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col104.htm
 開示請求を行って第1〜4回までの議事録は開示されたものの、開示された議事録は環境省のウェブサイトには掲載されていないので、一般向けに環境省が公開しているとは言えない。

 さらに第5回以降については、議事録を作成しておらず、不存在のため不開示決定ということであった。ちなみに第4回までの議事録開示請求直後に議事録を作成しないことを決めたようだ。

 そこで、第5回以降の会議の録音データの開示請求を行った。議事要旨のみの公開とはいえ、実務として会議を録音しないはずがないからである。ついでに、第7、8回の議事録も開示請求した。こちらは「作成するのをやめた」ままであれば、「不存在のため不開示決定」となることを予想した上の請求である。

 2011年11月16日、環境省大臣官房総務課情報公開閲覧室から「不開示決定通知書」が届いた。不開示とした理由を不開示決定通知書から抜粋する。

 「災害廃棄物安全評価委員会第5〜7回の会議録音データの内容は、放射性物質により汚染された(おそれのある)災害廃棄物の処理を円滑に実施するため、また災害廃棄物の処分方法の技術的な検討を行うため、非公開のデータ等も含め、可燃廃棄物の焼却方法や焼却灰の埋立方法、これらの施設の満たすべき要件などの議論が録音されており、これらを公にすることは、委員による率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあることから」

とある。さらに

「議論の録音内容が公にされることで、発言内容が過大に、広く訴えられること等により、処理方針に基づく市町村等による災害廃棄物の処理事業の適正な遂行に支障をおよぼすおそれがある」

 やはり録音データは存在していた。一体いつの時代、どこの国かと思われるような不開示理由である。いまどき政策決定にかかわる会議は全て公開が原則であるのは当然ではないか。特許に関わる内容、プライバシーに関わる内容があれば、その部分だけをマスクして公開するべきである。公開になることで議論できない、自らの発言に責任を持てない委員がいるのであれば委員を差し替えるべきである。

 会議、議事録、録音データは全て公開にすべきであるし、プライバシー等に関わる部分があればそこだけを非公開・不開示にすればいいのである。そもそも災害廃棄物検討会は、配付資料をウェブに載せて公開している。他に公開できないどのような情報があるというのだろうか。第4回までは開示請求に応じて、ではあるが議事録が開示されているからいまらさ全面不開示する理由が分からない。

 議論の内容が公開されないことにより、放射性物質により汚染された(おそれのある)災害廃棄物を処理・処分する地域の住民の不安は増すのである。

 ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告(Publication 111)でも徹底的な公開と住民の関与が不可欠である、とチェルノブイリ等の教訓に基づいて指摘している。日本政府はICRP勧告から「都合のいい」部分だけをつまみぐいして、規制を不当に緩和しているが、本質的に重要な部分を無視しているのが現実である。

 公開しない、測らせない結果として、災害廃棄物の処理・処分から全国の国民から拒否されている現状がある。受け入れの可否を検討する都道府県、基礎自治体も肝心の議論の詳細を見ないまま、その意向を問われても判断のしようがないではないか。現に筆者のもとにも基礎自治体の議員からそのような相談が来ている。

 徹底的な公開と住民の関与こそが、「事業の適切な遂行」を促す、というのが民主主義におけるコンセンサスであり、世界がチェルノブイリはじめとする災害、公害紛争等から学んできたことではないだろうか。

 即日、異議申し立てを行った(異議申立書(PDF))。あわせて行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)に基づき不開示決定の取り消しを求め東京地方裁判所における訴訟提起を検討している。