エントランスへはここをクリック   


議事録作成をやめた
「災害廃棄物安全評価検討会」

環境行政改革フォーラム 事務局長 鷹取敦

掲載月日:2012年2月17日
 独立系メディア E−wave 無断転載禁


■議事録開示請求問題の経緯

 地震・津波に伴って発生した災害廃棄物(いわゆる瓦礫、以下「瓦礫」)のうち福島県内のものは放射性物質に汚染されている可能性が高いため、環境省は「災害廃棄物安全評価検討会」(以下「検討会」)を設置して2011年5月から12月まで11回にわたりその処理・処分の方法について検討を重ねてきた。

 検討会では途中から、福島県内の瓦礫だけでなく、岩手県、宮城県などの瓦礫の処理方法についても検討を行い、環境省が示している広域処理の安全性の根拠となっている。

 この検討会は非公開であり、当事者である被災地および受け入れ側の自治体の参加もなく、議事録も公表されていないという問題があることは、これまで以下に報告してきたとおりである。

(1)環境省の信頼性損なう正当性のない意思決定手続き
〜放射性廃棄物の処理方針の決定〜
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col101.htm

(2)災害廃棄物安全評価検討委員会(第1〜4回)議事録−情報開示−
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col102.htm

(3)環境省の不透明な政策決定過程
〜「災害廃棄物安全評価検討委員会」議事録問題〜

http://eritokyo.jp/independent/eforum-col103.htm

(4)環境省への議事録開示請求の経過報告
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col104.htm

(5)開示されない「災害廃棄物安全評価検討委員会」の会議録音データ
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col105.htm

(6)災害廃棄物広域処理に関する国の不透明な検討と地方自治体の不信
http://eritokyo.jp/independent/eforum-col106.htm


■回を重ねるごとに不透明さを増す検討会

 2012年2月10日付けで第10、11回の議事録と会議録の不開示の決定書が届いた。当初からの経緯は上記の(4)に示したとおりである。

 議事録と会議録音の請求に対して、開示・不開示決定は以下のように変遷してきた。議事録は4回までは存在(開示)、会議録は第7回までは存在(不開示)していたが、その後はいずれも作成すらしていないことがわかる。

第1〜 4回:議事録 開示

第5〜 7回:議事録 不開示(作成せず・不存在)
        会議録 不開示(存在)

第8〜11回:議事録 不開示(作成せず・不存在)
        会議録 不開示(作成せず・不存在)


■議事録を作成しないことが問題との認識のない検討会

 2011年1月には東日本大震災に関連する政府の重要会議のうち「原子力災害対策本部」、「緊急災害対策本部」、「被災者生活支援チーム」で議事録も議事概要も作成されていなかったことが大きな問題となり、岡田副総理の指示によりほかの重要会議についても点検され10の会議で議事録が作成されていなかったことがわかった。

 しかし、災害廃棄物安全評価検討会はこの際の点検の対象になっていなかったのか、議事録概要で十分とされたのか、その後も議事録作成が行われた形跡がなく、事実開示請求に対して「作成・取得しておらず、不存在」であった。


■不透明な政策決定過程に起因する混乱

 瓦礫の広域処理の受け入れを表明した東京都、神奈川県、島田市(静岡県)などで、大きな反対の声が上がっており、被災地と一部の地域の間に亀裂が生じているように見える。このことからも、岩手県、宮城県の瓦礫の汚染の程度がどれくらいで、それを焼却し、灰を最終処分した時にどのような課題があるのか、それをどう克服できるのかできないのかについて検討している災害廃棄物安全評価検討会が、被災地の復興にとって「重要会議」であることは当然のことではないだろうか。

 会議録音が存在するが不開示とされた理由にとして、不開示決定書に下記の理由が記載されている。
  • 委員の率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、
  • 発言内容が過大に、広く訴えられること等により、処理方針に基づく市町村等による災害廃棄物の処理事業の適性な遂行に支障を及ぼすおそれ
 1つ目の理由は意味が不明でこれで不開示にできるのであればどんな会議も不開示となるから、不開示の理由たり得ない。

 2つ目は、当事者の参加や公開どころか、議事録の公開すらない不透明さに象徴される政策決定手続きが「適正な遂行に支障及ぼす」根本的な原因となっていると考えるべきである。


■透明性のある意志決定を

 2011年12月28日に放映されたNHK「追跡!真相ファイル・低線量被ばく 揺らぐ国際基準」では、批判の矢面となったICRP(国際放射線防護委員会)であるが、ICRPはその勧告(Publication 111:事故の緊急時が経過した後の現存被曝状態における対応についての勧告)には重要な点が含まれている。そしてそれに日本政府がほとんどまともに対応していない。

 それは、原発事故後の放射線防護に関わる意志決定の正確な記録と公開、決定への当事者の関与が必要だ、という点である。これは福島県内でのみ必要なものではなく、放射線防護に関する意志決定(本来は放射線防護以外にとっても重要なことであるが)には欠かすことができない点である。

 日本政府はICRP勧告の一部の数値だけを、その本質も踏まえずにつまみぐいするのではなく、チェルノブイリや過去の放射線に関わる事故の教訓を踏まえたICRPの勧告をもう一度読み返して、正確な記録と公表、当事者の意志決定への関与を徹底すべきである。

 会議の公開、正確な議事録の作成と公表などは、そのほんの入り口に過ぎない。