Konzerte in Schoenbrunn

青山 貞一 Teiichi Aoyama
 

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keyword 真冬の夜のウィーン シェーンブルン宮殿コンサート

 2003年1月早々から仕事でオーストリアのウィーンに鷹取 敦さんと一緒に出かけた。

 どんなに仕事のスケジュールが一杯で厳しくても、その国の文化を味わうのが私流だ。昨年夏、訪れたウィーンとがらっと異なり、日中でも摂氏数度、夜となるとマイナス10度にもなる。 

 15日夜、ウィーンにいる友人のすすめで午後8時30分からシェーンブルン宮殿内で開かれるモーツアルトとヨハン・シュトラウスのコンサートにでかけた。わたくしが大のクラシック音楽ファンであり、ニューイヤーコンサートのことをよく話すことを彼らも知っているのだろう。

 コンサートが開かれるシェーンブルン宮殿は宿泊先のホテル、ホテル・アナナスの真ん前にある地下鉄駅、ピルグラムガッセからわずか4駅、時間で10分ほど郊外に行ったところにある。

 ウィーンではかなり慣れても地下鉄のキップを買うのが難しい。時間が近くなりホテルをでる。案の定、私達がピルグラムガッセ駅で切符を買おうとすると、すでに5名ほど韓国か香港から来たとおぼしき人たちが切符をうまく買えなくて大騒ぎしていた。いつになってもキップが出てきそうもないので、割り込んでアシストしてあげようとしたが、うまく行かない。時間が迫ってきたので、先に買わしてもらう。

 シェーンブルン駅から宮殿はすぐ近くのはずだが、何しろ夜8時過ぎ、真っ暗で世界一広大な土地に立つ宮殿のどこがコンサートの入り口か分からない。うろうろしていると宮殿の一角にある事務所から男性がでてきた。コンサートチケットを見せると、入り口を教えてくれた。昼間は世界中の見物客でごったがえすシェーンブルン宮殿も夜はひっそり静まりかえっていて、夜間照明がわずかに宮殿のごく一部を映し出しているだけ。

 クラシックコンサートの会場は、マリア・テレジアやフランツ・ヨゼフなども余暇の部屋として使ったと言う、白金の間(White-gold Rooms)だ。チケットはあらかじめホテルで予約、1/3を前払いした。残りを宮殿の受付で払った。特等席(S席)が何と6500円である。

 コートをあずけコンサートの部屋に入ってびっく。この室内管弦楽のコンサートは最大でも70人程度しか入れないのだ。S席は1〜2mの間近に世界のウィーンフィルやウィーンで選りすぐりのバイオリン、チェロ、ピアノ、木管楽器なの奏者が演奏する。これにはびっくり。フルオーケストラではないが、数10人を相手に、まさにまちがいなく本物の室内管弦楽者によってオーストリア出身の世界的音楽家、モーツアルトやシュトラウスの代表的な曲を生演奏してくれる。

 午後8時30分になると6名の演奏者が部屋に入ってきまた。
 前半はモーツアルトの曲、後半はシュトラウスの曲、その間に15分間の休憩がある。最初の曲は、かの有名なモーツアルトの小夜曲。アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク。シェーンブルン宮殿の白金の部屋でオーストリア選りすぐりの若手演奏家によるモーツアルトの小夜曲、これ以上の贅沢はないだろう。うっとり聞き入ってしまう。


 その後、オーストリアが世界に誇るピーターというバリトン歌手とソプラノ歌手が私達の真ん前にあらわれた。フィガロの結婚、ドン・ジョバンニなどを次々に歌いまくる。最前列(とはいっても列はわずか5つしかない)の客全員にバリトン歌手が握手してまわる。1000人規模の観衆のオペラでも生の声なのに、わずか数10名の場所で思い切り歌い上げるのだからその迫力は絶大、圧倒される。

 モーツアルトの曲が一通り終わると15分の休憩がある。白金の部屋のとなりで、モーツアルトグッズやお酒が売られている。ここで後半が開始。ヨハン・シュトラウスらシュトラウス一家の曲に移る。これは何と、元旦恒例、世界中に衛星中継されるウィーンフィルの有名な楽友協会のニューイヤーコンサートのミニ版が眼前で展開し出しだした。ニューイヤーコンサートは日本でもNHKのBSが生が中継している。昨年は現在、常任指揮者となった小澤征爾氏が指揮をとっていた。ウィーンにいる友人の話ではこのニューイヤーコンサートのキップは5年前から予約がいっぱいで、ウィーン市民でもまずキップが手に入らないそうだ。


 ここでは目前でシュトラウスのワルツにあわせバレリーナが踊る。客と室内管弦楽員との2,3mしかないところでニューイヤーコンサートさながらのすばらしいワルツ、ポルカがつぎつぎと展開される。

 シュトラウス最後の曲はかの美しき蒼きドナウ(An der schonen blauen Donau)だ。
 ニューイヤーコンサートではこの曲がかかると、シェーンブルン宮殿やウィーン市街中心にある宮殿のフロアーで10人ほどの男女によるバレーが行なわれる。そのミニ版が眼前で展開されている。友人によると、ドナウ川の水質は美しき蒼きドナウと言えるほど綺麗ではないそうですが、当然今もウィーン市街の北部を流れている。

2002年の夏、ウィーンタワーから撮ったドナウ川

 午後10時近くで演奏は終わりとなった。当然、アンコールの拍手は鳴りやまない。すると、ニューイヤーコンサート同様、ラデツキー行進曲の登場だ。聞き手がニューイヤーコンサート同様、曲に併せて手拍子をとる。こうしてシェーンブルンのコンサートが終わった。まさに感無量。

 しかも当日の予約で誰でもS席が手に入るのもすばらしい。ちなみに一番安いキップは4000円ちょっと、もちろん全部で数10席なので、悪い席ではない。後で友人に聞いたら、場所がシェーンブルンでなければもっと安い切符が入手できると言っていた。

 もし、ウィーンに来られる方がいらしたら、ぜひ、シェーンブルン宮殿のこの夜のコンサートを楽しんで欲しい。もちろん、音楽、芸術の都、ウィーンやザルツブルグでは毎日、各地でさまざまなコンサートが行なわれている。